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第15話 確信

《登場人物》


 アラン・ダイイング    探偵

 マリア・シェリー     探偵助手

 モーリス・レノール    シュゼット警察刑事部捜査1課警部

 カール・フリーマン    同刑事 モーリスの部下


 -被害者-

 エリー・アンダーマン シュゼット国立中央図書館司書(第1被害者)

 イーライ・ゲイル   ブレーンスタイン博物館職員(第2被害者)

 アリス・パルマー   シュゼット国立中央図書館司書(第3被害者) 


 -容疑者-

 ジョルジュ・カイマン  シュゼット国立中央図書館司書

 シリル・プレヴェリネ    同         司書

 エリック・シルヴァ     同         司書

 クロード・モーマン     同         司書

 ロビン・フィリモア     同         館長


 ― シュゼット国立中央図書館 パソコン室 ―



 アランとマリアの2人はパソコンの画面と向き合っている。アリスが遺したUSBメモリに入っている中身を確認する為に。

 番号でロックされている中身を、アランはキーボードの番号キーを押して開錠し、閲覧する。

「これが、彼女が調べていたものか……」

 中身は、先月起きた強盗事件から、エリー・アンダーマンが殺害された事件についての概略、周辺での噂話など、プロの探偵とは至らないがそれなりの調査力があったらしくある程度手がかりになりそうな要素が掴めた。

 特にそれが大きいのは、《R》の意味。彼女は分かっていたらしい。まだ探偵には理解できていない。

 だから犯人を呼び、屋上で告発しようとしていたのだが、空回り。逆に返り討ちに遭い、この世から消えてしまった。

 アランにとって手痛いミス。あの時の電話でレノールの要件を後にして図書館に向かえばよかったと心の中で公開しながらパソコンの画面に目を通していく。

「目ぼしいものはない感じですかね?」

「まだわからない」

 アランは、目を通しながら、右人差し指でマウスカーソルを下へと動かす。

「ん? これは?」

 マウスカーソルに置いている指を止め、画面を2人は凝視する。

「どうしたんですか? 先生?」

 マリアはアランが見つめているパソコンの画面の後ろでよく見てみた。

 何気ない英語文体の文章で記されている。


 


《私の考えで怪しいのはRが何かという事。Rはおそらく人名だ。間違いない。確信は持っている。あの人の予定を調べ上げた結果一番怪しい。

博物館で起きた事件もおそらく彼やその仲間だったと合点が着く。Rと言うのは人名だったんだ。彼らは動く5月6日。

 


絶対に阻止しなければ!》



 アランは立ち上がり、マリアに告げる。

「それ、保存、頼むわ」

「えっ? どういう事ですか?」

「もう一度、倉庫へ行く。マリア、それ保存して、事務所のパソコンに管理しておいてくれよ。じゃあ、頼むよ!」

 アランは、マリアを置いてパソコン室を出て行く。

「あっ!? ちょっと……」

 出るタイミングを見失った助手は、アランに言われた通りにパソコンに画面に出る情報を整理する為に、アランに代わって座り、保存作業を行い始めた。

 パソコン室を出て、アランは、廊下を歩きながら、両人差し指を左右のこめかみに軽く当てる。 

 脳内では事件で関わった人物達の言葉、彼らの音声で巡り巡る。

 


『被害者の名前は、エリー・アンダーマン 23歳。 フィルストリート5番街にあるシュゼット中央図書館の司書ですね。左下腹部をナイフで1突きされ、その影響による失血死かと思われます。所持品は荒らされ、現金を奪われてました』


 

『不謹慎だが、同感だよ。この手で犯人を牢獄へぶち込んでやるさ。でもこれで連続殺人が始まったわけだな。死体は第一被害者と関係を持っていた人間か、それとも犯人が遺した挑戦状というべきか……どう思う? ダイイング』



『あの僕たちがどうして呼ばれたのでしょうか?』



『倉庫は主に書物は勿論ですが、あちらを見て頂くと分かります通り、博物館の芸術品や化石標本、美術品を運んで保管します』



『搬入の際や保管の際は、館長及び図書館・博物の幹部職員もしくはグレード3以上の国家職員のみここに立ち入って作業する事が可能です。入ったばかりの新入社員ではここに入る事は出来ません』



『そうですね。今の職員表を見ないといけませんが、現時点で、それぞれの担当書物のリーダー数人と、部長級職員が数名……』



『彼は私と一緒に図書館への博物館移動の手続きや芸術品などの移動、設置、保存の事を話し合っていたんだ』



『私はその人に会って、追求するんです。その立会に来てください』



「……やはり、そうだったんだな」

 アランは急いで、倉庫に向かうエレベーターに乗り込む。

「ダイイングさん!?」

 エレベーターにはクロードとシリルがいた。

 2人もどうやらアリス・パルマーについての取り調べを受けて、頭を抱えているらしく、シリルは涙をハンカチで拭いていた。

 アランはクロードに告げる。

「今から地下に行きたいんだ。地下4階に……」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。あそこは、関係者以外立ち入り禁止ですよ? 以前だって館長の許可があったから入れただけで……」

「頼む。ちょっと確認したいことがあって」

 シリルはアランの険しく、大きく出た態度に、少々、不満と疑念を感じている。

 涙を拭いたハンカチをしまった後で低めの声でアランに返す。

「確認って……何を……」

「ちょっとしたことです。すぐ終わらせますから」

 クロードは少し眉間にしわを寄せながらもアランの言うとおりに、もう一度エレベーターのボタンを押した。

 鉄箱の中に入っているクロードとアラン、シリルの3人の間に空調の空気と共に冷たい感覚を感じている。

 その間に、エレベーターのデジタル数字板が《4》となり、鉄の箱は、止まった。

 アランはすぐにエレベーターを出て、走り始める。

 いきなりの行動にクロードはアランの後を追い掛ける。

「ちょっと! どこへ!」

「ご心配なく! すぐ終わらせますから」

「倉庫には、書物と美術品ぐらいしかないですよ。犯人なんているわけないじゃないですかー」

 シリルは呆れながら、エレベーターで立ち尽くしていたが、ボタンを押して、エレベーターを閉めた。

アランは、広い倉庫の中を走りながら、あるものを探していく。保管書物の棚を無視して、芸術品や美術品の棚を1つずつ確認。

「これじゃない。これじゃない……ん?」

 アランは、大きな木箱のある棚で足を止め、箱に打ち付けられている記録用紙を見てみる。




《Fang move Mammoth from Blaine Stein Museum『ブレーンスタイン博物館より移動 マンモスの牙』 》




「あった。やはり全てはこれだったのか」

確信。アランの心に、すべての手がかりと被害者が遺した暗号が全て、解読した瞬間を脳から走る血の巡りと共にやってきた。

そのまま事件の全貌と言えそうな映像が頭の中で回り始めている。

「大丈夫ですか?」

 クロードが息を整え、呆れを含んだ口調でアランに言葉を当てる。

 その言葉に対して、アランは、笑顔で返した。

「ええ、モーマンさん。今日はいい夢が見れそうですよ」

 アランは踵を返してエレベーターに向けて戻っていく。戻ろうとしているアランの行動に対して、クロードは、それついて同じように踵を返し、後を追いかけ直す。

「あれ? 終わりですか?」

「ええ。後は事務所に戻りますよ」

 アランはエレベーターのドア前で立ち止まり、降りてくるのを待った。

 2分後、エレベーターを降りて、マリアを呼びにパソコン室へと歩いていく。

 パソコン室では見覚えのある刑事2人と探偵助手が立っている。

「そろそろ話してくれないか? 名探偵」

 レノールの声が気持ちよく響いた。アランは笑顔で2人に返す。

 フリーマンはアランの笑顔に、何かを感じとった。

「えっ!? 何か分かったんですか?」

 マリアも期待がこもった眼差しをしている

「教えてくださいよ! 先生」

「3人ともその話は後だよ。事務所で話す。戻ろう」

 レノールは出入口に向かう為に、階段を降りようとするアランとマリアに声を放つ。

「俺達は、ある程度、見分を済ませてから、そっちへ向かうとしよう」

 アランもそれに対し、頷き、言葉を返す。

「分かった。事務所で」

 アランは、後ろ姿ながら手を振りレノールとフリーマンにいったん別れを示した。

探偵と助手は図書館の出入り口に向けて歩き始めていく。

「エレベーターは使わないんですか?」

 マリアの問いかけに対してアランは、歩きながら答えた。

「健康のためさ」

 マリアは、アランの変わりぶりに少し笑いながらあとを追いかけていく。

 階段を降り、図書館の出入口前で、警察官に事情聴取を受けているロビンの姿があった。

「ええ、そうです。私が職務中にこんな事が起きるなんて……あ、すいません。ミスター、ダイイング!」

「フィリモアさん」

「なんと言えば、よいのか……その、信頼していた職員がまた1人この世から消えてしまった」

「犯人を絶対に捕まえますよ。暗号を解いてね」

 ロビンは下を向いて、苦々しい顔を探偵に見せない様に下に向けた。

「あの暗号かね」

「ええ、そうです。我々は事務所に戻って、それを解読しますよ。では……」

 アランは、また歩き始め、駐車場へと歩き始める。マリアも館長に一礼してから探偵について歩いていく。

 ロビンは、図書館を後にする2人の姿を見送った。


第15話です。 何かを掴んだアラン。次回が見逃せなくなってきましたね。話は続きます。では、次回をお楽しみに!

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