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第14話 被害者のMessage

《登場人物》


 アラン・ダイイング    探偵

 マリア・シェリー     探偵助手

 モーリス・レノール    シュゼット警察刑事部捜査1課警部

 カール・フリーマン    同刑事 モーリスの部下


 -被害者-

 エリー・アンダーマン シュゼット国立中央図書館司書(第1被害者)

 イーライ・ゲイル   ブレーンスタイン博物館職員(第2被害者)

 アリス・パルマー   シュゼット国立中央図書館司書(第3被害者) 


 -容疑者-

 ジョルジュ・カイマン  シュゼット国立中央図書館司書

 シリル・プレヴェリネ    同         司書

 エリック・シルヴァ     同         司書

 クロード・モーマン     同         司書

 ロビン・フィリモア     同         館長


 


 ― シュゼット国立中央図書館 屋上 ―



 レノールは、頭を悩ませている。理由は簡単。不可解な殺人が3件発生したからである。そしてこのシュゼット国立中央図書館の屋上で3件目となってしまった。

「これで3軒目か……。ふざけやがって」

 屋上が現場となり、警察が来てからは、アランはずっと座ったまま考え事をしている。

 その隣で助手は、それまで持っていたゴム弾の類をすべて鞄にしまって外の景色を見て、心を落ち着かせている。

 珍しく静かにしている探偵にレノールは声をかけた。

「おい。ダイイング。ダイイング!」

「うるさい。聞いている」

 ずっと考え事にふけっている探偵は、メモに記した用紙でエリーが遺した暗号、そして新しくできてしまったアリス・パルマーの暗号を照らし合わせてみた。どれもどこか共通しているようで共通していない感覚がする。

 彼女が殺される前に電話で話した事が、頭に直撃し、痛みを産もうとしているのが分かった。



『私はその人に会って、追求するんです。その立会に来てください。図書館の屋上で待ってます』




「なんてこった。もう少し早ければな……」

 頭を抱え、痛みを押さえようとするが治まらない。

 そして更に増えた暗号。

 


 《54・U4・TF/R》



 仕事自体を投げ出したくなる気分にさえなる。そんな気分を押し殺し、アランは暗号に向き合う。その隣でマリアは、探偵の暗号解読状況を伺ったりしている。

 そんな探偵や探偵助手を置いて、警察関係者達は、3件目の現場となった屋上のあちこちを探しまくったり、写真をとったり、忙しい状況。

 その中で、フリーマンは警部に声で示した。

「警部。こんなものが」

「分かった。今いく」

 レノールはため息をして、座っているアランの肩を軽く撫でた後で、アリスの遺体の元へ歩いていく。

 フリーマンは、警部に対して遺体の遺留品について、説明する。

「持っていた物はこれだけですね。万年筆にメモ帳。そしてUSBメモリですね」

「これだけか……」

「ええ。誰かを待っていたんでしょうかね?」

「知ってるのは、最後に電話で話していたあの男ぐらいだよ」

 レノールの視線は、屋上の床で胡坐をかいて、頭を抱えている1人の男にあてたまま。

 フリーマンは、軽く遺留品のメモ帳に目を通す。

「あれ? 警部」

 あるページで手を止めて、警部に見せる。アランに当てている視線を止め、警部はフリーマンと彼が持っている手帳に視線を向けた。

 フリーマンからそのページが開かれた状態の手帳を手渡され、目を通す。

 そこにはダイイング宛てに書かれたメッセージが記載されていた。

「ダイイング!」

 探偵の名前を叫び、遺留品の手帳を持ってアランに近づく。

「ダイイング!」

「なんだ? 僕はおじいさんじゃない。1回で聞いているよ」

 アランの反応に対してレノールは、ため息と呆れが両方発生し、肩を落とす。

「じゃあ反応してくれ」

 やれやれと両手を上げて、探偵は目線を警部に向ける。

「なんだい?」

「アリス・パルマーがお前に……」

 アランは警部が渡そうとしている手帳に目線が移った。手帳は彼女の血が混じって、一部が赤く染まっている。血が発する生々しい匂いに探偵の鼻に刺激を与える。

 アランは、ゆっくりと血が付かないようにメモ帳を取り、ページをめくった。

 ページは彼女のそれまでを記録した予定や文章が、綺麗に記録されており、それまで生き生きしていた証がよく分かる。

 自分の目で確認していき、1枚1枚の内容を頭に修めていく。

「なるほどねぇ」

 そして、ダイイングに宛てられたページへと到達。

 ページにはきれいな文体で自分の名前である『アラン・ダイイング』と記された文章からゆっくりと左から右へ動かしていく。



《ミスター、アラン・ダイイング

 

 今、読んで頂いているという事は、私が死んだという事になったか、殺されたかどちらかになったという事でしょう。私が持っているUSBの中にエリーが死んでからの事件を独自で調べ始め、真相を追いかけていた記録を残しておきました。事件について先生に是非とも解決してほしいです。

 番号は0212です。

 


             エリーの無念を絶対に……》



「USBは?」

「ああ、フリーマン。USBを!」

「はい」

 フリーマンはUSBメモリを持ってアランのもとへ近づいた。

「これです」

 USBメモリには、シュゼット国立中央図書館の公式ストラップが、一緒につなげられている。

 アランにそれを手渡し、彼は言う。

「どのパソコンでも使う事ができるタイプのものですね。この図書館のパソコン室でも使えると思いますよ」

 手渡されたUSBメモリを探偵は、ズボンのポケットを入れ、立ち上がる。

「マリア」

 助手は探偵の声に反応し、目線を当てた。探偵の表情は少し哀しそうで暗い。

「なんでしょう」

「下に降りよう。ここは冷たい」

 アランはそのまま屋上から去っていく。

「あ、待ってください!」

 探偵助手もアランの姿の後をついていくように追いかけていく。

「お、おい!」

 レノールとフリーマンはただただその2人の姿を立ち尽くしたまま見つめるしかなかった。


 第14話です。 等々3人目の被害者が出てしまい、さらには新しい暗号が出てきましたね。次回どうなっていくのか……お楽しみに……

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