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第13話 新たな問題 

《登場人物》


 アラン・ダイイング    探偵

 マリア・シェリー     探偵助手

 モーリス・レノール    シュゼット警察刑事部捜査1課警部

 カール・フリーマン    同刑事 モーリスの部下


 -被害者-

 エリー・アンダーマン  シュゼット国立中央図書館司書(第1被害者)

 イーライ・ゲイル   ブレーンスタイン博物館職員(第2被害者)


 -容疑者-

 ジョルジュ・カイマン  シュゼット国立中央図書館司書

 シリル・プレヴェリネ    同         司書

 エリック・シルヴァ     同         司書

 クロード・モーマン     同         司書

 アリス・パルマー      同         司書

 ロビン・フィリモア     同         館長


― 同時刻 フィルストリート5番街 ―


 シュゼット警察から国立中央図書館まで、車で約20分。

 アランはアリスの安否を心配しながら運転している。

 もう少しで図書館に着く。

 マリアは、カバンの中に入れていたハンドエアガンを取出し、ゴム弾を装填しておく。

「先生。彼女は大丈夫なんでしょうか?」

「わからない。だが、確実に危ない事を彼女はしている。もしかしたら手遅れかもしれない」

 車はアランが踏むアクセルで確実に加速している。

 制限速度を越していたが、もうそんな事は気にもしていなかった。

 あとで違反切符をもらって払えば済む事。命が狙われているかもしれない状況と違反切符をもらう状況、天秤で測れば前者を急ぐはず。

「もうすぐだ。外観が見えた」」

 アラン車のフロントガラスには、図書館の外観が見えてきているのが分かる。

 緊迫とした空気が車に立ち込める。

 マリアは、エアガンの安全装置をつけ、最悪の事態を覚悟し、瞑想に入った。

 図書館の駐車場に着き、乗り捨てるような形で2人は降り、中へと入る。

 鬼のような形相で入ってきた探偵とその助手。

「おい! ここの屋上へは、どうやって入るんだ!?」

「なんですか!? いったいどうされたんですか?」

 受付の女性は、焦燥に駆られている2人の姿に影響されて焦りだす。

「屋上だよ! 彼女の命が危ない。屋上へはどうやって向かえばいいんだ!?」

 受付はアランの言っている言葉を何とか理解し、状況に凍りつけながらロボットみたいな棒読みで対応する。

「お、屋上へは、奥の階段から上がっていく事でい、いけますが……」

 アランは受付の手が示す方向を見渡すと階段があるのを見つけた。

「ありがとう! 行こうマリア!」

「はい!」

 アランは奥の階段に向けて走る。

「廊下は走らないでください!」

 受付の声が彼らに届くはずもなく、無視され、アランは走って階段へと向かった。

 屋上までフロアは7階以上ある。アランは学生時代に鍛え上げた過去を思い出しながら階段を上がる。

 その後ろをついていく助手も過去の訓練で鍛え上げた膝の筋肉を活かして、エアガンを構えながら、階段を上がっていく。

「助かっていてくれ! 頼む!」

 アランはそう呟きながら、階段を上がった。

 フロアの表示の数は見るたびに増えていく。



《4階》



《5階》

 5階あたりで探偵の足は悲鳴を上げようとしている。疲労感と言うべき筋肉が張っていくのがどんどん感じ取れたが、そんなことは気にしていない。

 後を追うマリアも同じだった



《6階》



《7階》

7階を上がり、階段を上がっていくと、ガラスの入ったドアが一つだけ階段のを上がりきった先にあった。

 アランは階段を上がりきり、ドアを開けようとするが全然開こうとしない。

 ドアノブの方をを見ると、細工が施され、簡単にはかないようになっていた。

「マリア、ドアガラスを撃て!」

 言われた通りに、マリアはドアのガラスにめがけてエアガンに装填されたゴム製の弾丸を放つ。

 ゴム弾の威力は相当なもので、窓ガラスを破壊することは容易だった。

 窓ガラスは音を立てて下の床へと割れて落ちていく。

 アランは残ったガラスを腕で押して力強くのけた。

 窓ガラスの空いたところから手を入れて、内側から鍵を開場し、ドアを開けた。

「パルマーさん!」

「パルマーさん!! どこに……!?」

 2人は屋上へと入り、アリスを探し出すが、簡単に見つかった。

 アランの視線には、靴が見える。その先には倒れている綺麗な足が膝まで見える。

「まさか!? マリア! 来てくれ」

 探偵は走り出し、靴のある所まで近づいた。

「ああ、クソッ!」

 膝から上までの姿が見える。アランは片手で目を隠す様に押さえた。

 マリアもアランの後を追うように近づき、変わり果てたアリスの姿を目にする。予想していた最悪の展開が事実となって2人の目の前に現れてしまった。

「パルマーさん……」

 倒れている彼女は瞳を閉じ口元や刺し傷からゆっくりと流れ出て、ある程度血が固まろうとして進まないでいる。

 間に合わなかった。アランは取り返しのない光景にただただ悔やんでいる。

「マリア」

「……はい」

「レノールに連絡してくれ。『鑑識を呼んでくれ』って……」

 マリアは黙ったまま首を縦に振り、携帯電話を取り出した。

 探偵はアリスの死体を見ず、屋上に光を与えるはずだったであろう空は暗雲が立ち込めている。深呼吸をつき、もう一度倒れているアリスを見つめ彼女の周りを見渡す。

 悲劇の舞台となってしまった国立中央図書館屋上は、無常の風が吹いている。

「ん?」

 アランは妙な血の線を見つけ目線で辿る。赤い線はちょっとした段差の壁の作りになっているところで止まっていた。

 止まった先には、彼女が遺したメッセージといえるべき物が記されている。



《54・U4・TF/R》



 アランは動いて、そのメッセージに近づいてよく見てみた。

 探偵の行動に対してアリスの悲しみと反面、不思議そうに助手が見つめている。

「どうしたんですか? 先生」

 無言のままアランは人差し指を立てて、暗号を示す。

「新しいダイイング・メッセージ……」

 アランは、アリスの無念と彼女を殺し、3件の殺人事件を行った犯人に対する怒りに沸き、屋上で変わり果てた姿の彼女が遺した暗号に向き合い始めた。


第13話です。 話は続きます。


いつも読んで頂きありがとうございます! これからもよろしくお願い致します。

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