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第11話 打ち合わせ/死体の確証

《登場人物》


 アラン・ダイイング    探偵

 マリア・シェリー     探偵助手

 モーリス・レノール    シュゼット警察刑事部捜査1課警部

 カール・フリーマン    同刑事 モーリスの部下


 -被害者-

 エリー・アンダーマン  シュゼット国立中央図書館司書(第1被害者)

 イーライ・ゲイル   ブレーンスタイン博物館職員(第2被害者)


 -容疑者-

 ジョルジュ・カイマン  シュゼット国立中央図書館司書

 シリル・プレヴェリネ    同         司書

 エリック・シルヴァ     同         司書

 クロード・モーマン     同         司書

 アリス・パルマー      同         司書

 ロビン・フィリモア     同         館長

  

―  午前0時  シュゼット国立中央図書館  ―



 深夜の国立中央図書館。誰もいない中、1台のパソコンの画面に向かっている者がいる。画面には、誰もが自由に使える公共用チャットであり、特定のアドレスに宛てで送ることも可能のいわゆるフリーチャットである。

 チャットの画面にはある事が書かれている。



 ―――――――――――――



《E:→E・R・J:やはりやるべきか?》


《А:→E:危ない気がする。5月6日から少しずらそう》


《J:→A:でもそれでは、間に合わない。アフガニスタンの顧客は6日には、取引をしたいと言って来ている》


《A:→J:なんだと!? じゃあどうするんだよ? 警察には目をつけられているし、あの芸術品や美術品を頂くには6日絶好のチャンスだったんだぞ?》


《E:→A・J:やはり決行したほうがいいんじゃないか?》


《J:→E:確かに……》


《A:→R:元を言えばあんたがあの女を始末するからこんなことになったからじゃねぇのか?》


《R:→A:あれは仕方のない犠牲さ。あの女「あなたを告発する」って言いやがったからな。警察に捕まらないならそうするしかなかった。》


《J:→R:博物館の職員見つかったらしいな死体で……》


《R:→J:あいつは自業自得だよ。あいつ自分の取り分だけ3倍もらってやがったからな。死んで当然さ》


《E:→R:それは確かにな》


《J:→R・E:だな。》


《R:→A・J・E:どちらにせよ5月6日には取引を成功させないといけない。だが、当初の予定より大幅な変更はいるだろう。明日決行する。》


《A:→R:明日!? 正気か? その間の時間はどう稼ぐんだ? 牙とかだと隠すのも面倒だろ?》


《R:→A:時間を早くするしかないだろう。このままの予定で進めば確実に怪しまれるからな》


《J:→R:分かった。それで行こう。あんたに従うよ》


《E:→A・R:仕方がないな。Rに従う》


《A:→R:わかったよ。予定はいつだ?》


《R:→A・J・E:予定は5月4日に変更だ。5月4日午前0時丁度に、図書館へ侵入。芸術品はそのまま運んで、5月6日午前3時 アフガニスタンのお客様とグリム港の7番倉庫で取引だ。それでいいな? 連絡はまたここで。》


《A:→R:了解。→【退室しました】》


《J:→R:了解した。→【退室しました】》


《E:→R:分かった→【退室しました】》




 ――――――――――――――




 パソコンの画面は閉じられた。



―  5月3日 シュゼット警察検視室 ―




 探偵と助手の2人は、ジール川の遺体の検分に来ていた。

 やはり間近で見ると、首なしの遺体はえぐいものである。マリアは耐えかねて、手洗いにこもっていた。

 アランは吐き気を押し殺しながらも遺体の確認をする。

「うむ。やはり、気味が悪いな。吐き気がする」

 フリーマンは少し微笑みながら呟いた。

「仕方ないですよ。ミスターダイイング」

 レノールも隣に立ち、検視官の仕事を見学しながら、告げた。

「これで確実に遺体の正体が分かる。ダイイングが期待しているイーライの死体か? それともイーライではない人体模型の何かか?」

「おい、よしてくれ。吐きたい意志が押し寄せてくる」

 アランは、腐敗した肉の映像が、鮮明に自分の脳に直撃しているのを理解した。

 作業をしている検視官は手を止めて、遺体の確認が終わり、首なしの遺体にブルーシートをかける。

「やれやれですよ。警部。間違いない彼だ」

「イーライ・ゲイルか」

「ええ。被害者の顔はありませんが、健康診断書やレントゲン過去の記録から照らしても、間違いないですね」

 アランは検視官に尋ねた。

「どうして、イーライのだと?」

 検視官は、解剖記録を探偵に渡し、説明する。

「簡単ですよ。やっこさん。膝にチタン、埋めているんですよ。左膝」

 解剖記録と共に貼られているレントゲンやX線の写真を見て、首なし遺体の左膝にチタンが埋められているのを確認した。

 検視官は、さりげなくアランに訊く

「なんだったら、見てみますか? 左膝、一度肉を開けないといけないけど……」

 アランはすぐに検視官の言葉を拒否する。

「いや、結構ですよ。どうも」

 アランは、検視官に解剖記録を返し、すぐに解剖室から外の廊下へと出ていく。

 部屋を出た後、アランはあの重苦しく、腐敗臭で漂った酸っぱい空気から解放され、自分の体内においしい空気を入れようと近くの窓を開けて大きく深呼吸をした。

 外の空気が数段うまい。

 レノールも部屋を出てきて、深呼吸しているアランに近づいた。

「ダイイング。お前はどう思う?」

 数秒間、深呼吸をし続け、おいしく綺麗な空気を味わい、心を整えてから、言葉を口にした。

「それは警部の仕事だろう。どうであれ遺体がどうなったかなんて知らないね」

 探偵の悪態ついたような態度に、レノールはやれやれと首を横に振りながら呆れる。

「ああ、そうですかい。で、結局、暗号は解けそうかね? 探偵さんよ」

「それだがね。実はちょっと調べて欲しい事があって……」

 レノールは、アランの頼み事を聞き入れる事にした。

「なんだ?」

「先月のブレーンスタイン博物館の強盗事件についての記録を貸してほしいんだ」

「分かった。フリーマンに頼んで、4課から持ってこさせるよ」

「ああ、頼む」

「何か掴みそうなのか?」

 アランはレノールの問いに対して、軽く笑みをこぼして、反応する。

 レノールは探偵の表情から読み取り、心の中で嫌味が半分と《事件解決の一手となるかもしれない情報ではないか?》という期待が半分、渦巻いている。

 アランは、警部に訊いてみた。

「どうして、イーライは首なし遺体になったと思う?」

 突然の訊き返しにレノールは少し戸惑いながらも、独自の持論で回答する。

「よっぽど恨まれていたんじゃないのか?」

 レノールの回答に、探偵は眉間に軽くしわを寄せて首を振った。半分正解、半分不正解と言ったところを表情でレノールに分からせる。

「うーん。それもあるが、そうじゃない」

 探偵の言葉を聞いて、さらに探りを軽侮は入れた。

「じゃあなんだ?」

「イーライの遺体だとばれたくなかったからさ」

「それは何故?」

 アランは皮肉交じりで告げた。

「簡単だよ。彼も何かの犯罪に関与していた。しかし、トラブルが発生し、残念ながら冷たい川の近くに寝る事になったわけだよ。首なしで……」

「ってことは!? イーライは、事件の共犯者だったのか?」

「恐らくそうだろうな」

 レノールは驚きを隠せなかった。

「じゃあまさか、ブレーンスタインの強盗には内部の共犯者がいたわけか!?」

 それに対して、探偵は冷静に答える。

「ああ、強盗犯達が、警備員を死なせずスムーズに強盗を行うことができた事も理解できるはず」

「それで情報を……」

「そうだ。それに警部もしかしたらこの暗号も関わってくるわけさ」

 マリアは手洗い場からハンカチで自分の両手を拭きながら出てきた。

 ハンカチをポケットにしまい、奥の解剖室を見ると、アランがレノールと共に、話しているのを確認し、声をかける。

「ああ、済んだんですか? 先生」

 マリアの言葉に、アランは呆れた。

「済んだんですか? じゃないよ! ひどいよ! マリア。君も立ち会ってくれると思ったのに……元軍人だろう?」

 アランの言葉に対して、少々、嫌な顔をして、返す。

「軍人でも人間の解剖は嫌です!!」

 1人の元女性軍人の声が廊下に響き渡った。

 そんなやり取りの中で、アランの携帯の振動が鳴った。

「おっと」

「誰ですか?」

 相手の名前は登録していない様で表示されない。電話番号だけが画面に表示されている。

「誰だろうね」

 通話ボタンを押し、アランは電話に耳を傾けた。

「アラン・ダイイング」

 電話の相手は、聞き覚えのある声の持ち主、次の一言で誰なのか明確に理解できる。

『ミスターダイイング。アリス・パルマーです。今日の事についてなんですが……』

「ええ、勿論ですよ。午後2時図書館ででしたね」

『実を言うと会って欲しい方もいるんです』

 電話越しの彼女の声は、鮮明に聞こえている。しかし内容は理解できない。《会って欲しい人?》まだ何も聞いていないアランにとって理解しづらかった。

「会って欲しい人ですか?」

 アリスは告げる。

『エリー・アンダーマンを殺害した人に会って欲しいのです』

 しっかりとした声で発せられた彼女の言葉は探偵にとって大きな衝撃と驚愕が脳を伝って身体中に、走らせていく。

「まさか、犯人が分かったんですか!?」

『ええ、私はその人に会って、追求するんです。その立会に来てください。図書館の屋上で待ってます』

 アリスは電話を切った。

「ちょっと待って……! もしもし! もしもし!?」

 探偵の焦った表情を警部と探偵助手は、見つめている。不思議そうにレノールが訊く。

「どうした? 図書館で何が?」

 レノールの言葉はアランの耳には響かなかった。

 アランは携帯をしまい、状況を伺おうとしているマリアに向けて言葉を放つ。

「図書館に向かおう。マリア行くよ」

 踵を返し、アランは急いで図書館へと向かう為に、足を急がせて歩き始める。

「えっ!? あ、ハイ!」

 助手も何かの危機感を感じ探偵の後を追い始めた。

「お、おい!」 

 危機感があまりないレノールの言葉に、アランは歩きながら伝えた。

「警部! 部下を急いで図書館に向かわせるんだ! アリス・パルマーが危ない?」

「なんで、また……」

「急げ! 次の被害者になってしまうぞ彼女が!」

「なんだと!? 分かった!」

 次の言葉を、警部が聞いた瞬間、彼もまた動き始めた。電話を取り出し、連絡を始めていく。

 アランは急いだ。このままでは、第3の被害者が出てしまう事が理解できていたからだ。イーライの死体を見てそれは理解できている。

 首なし遺体を作った結果、エリーという女性が刃物で刺された結果、そこから2つから照らし合わせば、探偵にとってアリスの運命は予測できるものだった。

 彼女の命が危ない。

 アランは足を急がせた。

第11話です。遅れましたすいません。さて、次回はどうなっていくのでしょう乞うご期待!


話は続きます!


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