名前をもらった日
今後の話
……目が覚めたらファンタジー感満載の女の人たちが2人いた。
だから混乱して暫くフリーズしてしまった。
「え……?ここは……?」
この女の人たちは誰なんだろうとかどうして耳がエルフみたいに長いんですかとか次から次へと湧いてくる疑問に頭がパンクしていて、まあ、分かりやすく言うとパニクってた。
暫くすると2人のうち1人がこっちに語りかけてきた。
「ーーーー、ーーーーーーー」
その時、俺は恐るべきことに気付いた。
やばい。異世界言語わからない。
こういうのって大体ご都合主義的に何とかなるもんじゃないの!?やばいやばいやばい!この人も不審がってるし!ここでコミュニケーション出来ないと色々まずい!
待て落ち着け、取り敢えず助けてくれたお礼……いや、日本語が通じるか確認しないといけない。ここは最大限に注意を払って――
「すみません……何言ってるか分からないです……」
あ、ダメだこれ。通じてるかわかんないけど何か失礼なこと言っちゃったぽい。だって表情がもうそういう感じだもん。明らかに良い感じの反応じゃない。
あーー終わった……俺このまま捨てられて、またあの狼に襲われて死ぬんだぁ……
「ーー、ーーーーー」
「ーーーー、ーーーーーーーーーー」
あ、もう1人が喋った。というか2人とも美人だなぁ。来世はこの人たちみたいな美人と結婚したいなぁ。
とか下賤なことを考えているのも束の間。
先程話していたエルフの人がこちらに手を差し出した。
(何だろ、握手?)
半ば反射的に手を握ると、女の人の表情はまた一層暗くなって、すぐに俺の視界は彼女の金髪で埋め尽くされる。
(えっ……)
「ーーーーー、ーーーーー……ーーーーー……。ーー、ーーーーー。ーーーーーーーーーーーーーーーーーー、ーーーーーーーー」
優しく背中を叩かれ、優しい声色で囁かれる。
柔らかい双丘が押し付けられるが、どぎまぎするよりも前に深い安らぎを感じていた。
生きている人の肌、「生」の感触だ。
あれだけ恐ろしい思いをして、何度も「死」に晒された。
けれど、今、自分はここで生きて、人の体温を感じられている。
ずっと張り詰めていた緊張の糸が、切れた気がした。
いつのまにか瞳から溢れた涙が、頬を伝って流れ落ちている。
「うぅ……ふぇっ……」
やばい……なんか自然と涙が……このままじゃ年甲斐もなくギャン泣きしちゃう。耐えなきゃ。耐えて……たえてぇ……。
意思とは反対に瞳からはどんどん洪水のように涙が溢れ、止まらない。でも男としての矜持を守るため、必死に、必死に耐える。
暴風雨のような感情の波が通り過ぎた後、泣き疲れたからか、緊張の糸が途切れたからなのか……少女は落ちるように眠りについた。
◇
「姉貴」
「分かってるわ。なんて可哀想な子。あんなに小さな子が、声をあげて泣かないのよ……」
すやすやと寝息を立てる少女に布団をかけ、ラウラとアウラは部屋を出た。
お互いにやりきれないといった表情をしている。
「多分人間たちに殴られて、泣いて、うるさいってまた殴られて……そんな目にあったから、泣いても声を出さなくなる。辛かったでしょうね……」
「あんな小さな子供になんてことを…っ!」
「アウラちゃん落ち着いて。あの子が起きちゃうわ」
「う……ごめん」
「……それでアウラちゃん、相談なんだけど」
ラウラが突然深刻そうな顔でアウラに話す。だがアウラはそんな姉の考えていることなどわかっているようで――
「分かってるよ、あいつをここに住まわせたいって話だろ?そんなこと聞かなくても大丈夫だっつーの。あいつも私たちと同じような境遇なんだろ?だったらほっとけねぇよ」
「……そうね。ありがとうアウラちゃん」
「礼なんていらねぇよ。それよりあいつのことをなんとかしてやんねぇと」
「そうね……まずはあの子の怪我をどうにかしないと。全身血だらけの傷だらけだったから綺麗に治ればいいんだけど」
◇
……穴があったら入りたい。
いい歳して無様にしかも女性の胸元で泣いてしまうとは……死んでしまいたい…。でも今の自分は年端のいかない幼気な少女だから絵面的には姉妹みたいな感じで割と尊い感じに……いやいや何考えてんだこんなの許されないのに。
そういえばさっきは触れなかったけどこの包帯……全身ぐるぐる巻きでミイラみたいになってるけど……こんなに怪我してたったっけ?あの時は逃げるのに必死であんまり覚えてないや。
いや、それより今着ている服……白のワンピース……当然のように女の人の服だなぁ……俺の男としての尊厳がぁ……。
はぁ〜〜〜……なんでこんなことに……これからどうしよ……取り敢えず此処を出てみようかな。
「んしょ……いっ…」
寝かされていたベッドから降りようとしたら足に鋭い痛みが走った。
痛ったぁ……ちょっと動かしただけなのに……。
てかよく見たら血だらけじゃん、潰れたトマトみたいになってるじゃん。足の裏とかヤバいな、赤い通り越して黒い。歩けるか試してみようかな……
そう思ってそーっと足を床につけてみると痛みはあったものの、思ったよりではなかった。
これは行ける……と思ったので体重をかけてみると先程より更に強い痛みがはしった。
「いっ〜〜〜〜!」
あまりの痛みに身体が反射で跳ね上がるように動いた。
そのままの勢いでベッドに倒れる。背中にベットの柔らかい感触が伝わるのと同時に先程のような痛みを感じた。
「い"っ……たぁ!」
全く予想していない痛みだったので声なんてだだ漏れで結構大きい声が部屋に響いた。突然のことだったのですぐ起き上がって混乱して辺りを見渡して状況を確認した。
「え……何これ……?」
ベッドの上にあったのは先程自分が寝転んでしまったことを如実に表す赤い血の跡だった。
(えちょ、え?あっそっか、背中にも傷あったんだ……いやいや!こんな冷静に考えてる場合じゃない!どうしようこの血の跡!こんなのあの人たちに見られたら追い出される!ヤバいヤバいヤバい!)
あたふたしていると物音を聞き取ったのか部屋の外からこちらに近付いてくる足音が聞こえた。しかもかなり速い足取りで。
(マズイマズイ!隠すか!?いやもう間に合わな)
部屋の扉がゆっくりと開いていく。
◇
「何か物音がしたけど……って」
「あら、起きてたのね」
扉からラウラが入ると、先日保護した少女が首から上を布団から出しながら寝そべっていた。少女は多少の汗をかいているものの、体調が悪い様子ではなく、ほっと胸を撫で下ろした。
近付いて巻かれている包帯が目立つ頭を撫でると、汗をかいていたせいか少し熱気を感じたが、病気のような感じではないし、寒気があるよりかはマシかと思った矢先に自分がしていることに気づいた。
「あっ……ごめんなさい。怖いわよね……ごめんなさいいきなり、無神経だったわ……」
そう、この子はつい最近まで人間たちに暴力を振るわれながら過ごしていたんだ。まだ会って間もないのに身体を触るなどトラウマを呼び起こしてしまってもおかしくない。
でも自分が想定していたよりは彼女の反応は自然だった。思えば目が覚めた時も自分から私に触ってくれたし、危険なものとそうではないものの区別がしっかりとついている。もしかするとこの子は頭が良いのかもしれない。
「……?」
事実、頭を撫でてしまってもこんな風に嫌そうな顔を全くしていない。それどころか私の言っている言葉が分からないのかキョトンとしていた。
「うん、思ったより元気そうで良かった。じゃあ怪我の様子も見せてもらおうかな。ちょっとお布団剥がすからね」
いくら体調が良いとはいえ全身傷だらけの怪我を負っている彼女の身体の状態はこまめに観察しておくに越したことはない。
「?」
相変わらず少女はキョトンした顔をしながらこちらを見ているが、言葉がわからないからこればっかりは仕方ないと思いながら彼女から布団を剥がした。
「ーー……!?」
布団を剥がされた瞬間、少女が声になっていない、変な声を出したかと思うと、
「なっ……」
布団にひろがる赤黒い染み。包帯どころか着させていた白いワンピースすらも赤く染めていた。そしてそれは誰がどう見ても少女の血液だった。
「っ!……診療所へ……!」
「ーーっ!?」
少し狼狽えてしまったもののこの出血量は不味い。速くしないとこの子の命が危ない。急いで丁寧に抱きかかえて診療所へ急ぐ。
「アウラちゃーん!!ちょっときてくれる!?」
「はいはーい……ってどうしたんだよそいつ!?」
返事をするとすぐにアウラは顔を出した。そしてこちらを見るなり血で赤く染まった少女を見て目を見開いて驚いた様子で言った。
「多分傷が開いちゃったんだと思うけど、速く里長に見せないと……!」
「じゃあ急ごう!」
「ええ!」
2人で家を飛び出し、慣れた足取りで森の中を急ぐ。家から里長のいる里までは距離がある。それは守り人として里からの侵入者をいち早く確認する立場であるからである。
守り人は複数人存在し、里を囲むように拠点を構え、外を監視する、つまりあの家は里を守るための前哨基地でもあるということ。
だが距離が離れているとはいえ、何度も通った道。少女を抱えているとはいえ、里長のいる所まで大して時間はかからない。
本当はアウラちゃんが運んだ方が速いけれど激しく動かしてしまって更に悪化したら目も当てられない。
それに、彼女は軽い、同年代の同じような体型の子供でももう少し体重があるはずなのに、異様な軽さだった。恐らく碌な食べ物を食べてこなかったのだろう。怒りが湧いてくる、それと同時に救ってあげないと、という思いが湧いてくる。
だから、早く、速くしないとこの子が。
◇
「里長!」
二階の個室のドアを勢いよく開け、里長の姿が見えた。
自分たちよりかなり小さく、今抱えている少女より少し大きい程度の背丈のエルフがそこにいた。腰辺りまで伸びている金色の髪を揺らしながらゆっくりと振り返った。
「おやおや、どうした2人ともそんなに慌てて」
こんな状況でも落ち着いている様子の里長はにこやかな表情で言った。
「里長!この子の傷が!」
傷を見せると里長は抱えている少女を見て応えてくれた。
「ああ、開いてしまったのか。処置はした筈なのだが、少し見せてもらっていいかな?」
「はい、お願いします」
そう言って、突然のことだったのか未だ呆然としている彼女を里長が座っている椅子の前の椅子へ座らせる。こうしている間にも包帯や服に血が滲んでいる。乱暴に運んでしまったかもしれないと、少し後悔した。
「痛いかもしれないが……」
そういって里長はまず足の包帯を取っていく。傷に触ると少女が小さく声を上げるが、里長は冷静ににっこりと笑いかけながら「ごめんよ」と謝った。
そして暫く見ていると、
「うん、やっぱり傷が開いただけのようだね、命に別状のあるようなことではないよ。この状態ならそうだね……もう少し質の良い包帯と薬を塗っておくよ」
「そう、ですか……」
安心した。正直言ってあの子の様子を見て不安しかなかったがどうやら杞憂で済んだらしい。
「大丈夫なら良かったけどなんで傷が開いたんだ?その前に里長が治療してくれたんだろ?」
アウラちゃんがようやく安心したといった様子で話します。
確かに里長の治療に不備は無かった筈でしたから、いくら子供とはいえあのまま回復に向かうはずだと思っていたのですが……
「ふむ……もしかしたらこの子は皮膚……というより身体があまり強くないのかもね。皮膚が柔らかくて薄い……体質というより昔から怪我と不完全な治癒を繰り返された結果だろう。だから寝ている間に傷が開いてしまったのかもね」
「暴力行為と治癒魔法の繰り返し。治癒魔法は難しいからこそ、不完全であれば傷は残り、後遺症も残ってしまう。私も治癒魔法は得意ではないからある程度自然に治癒した上で治癒魔法を使うのだが……」
「どうやらこの子はそんな知識もない者たちといたようだ……全く幼子に酷いことをする」
里長はゆったりとした声で淡々と話していく。彼女と森で1人でいたことを考えるとやはり人間が酷いことをしていたに違いない。
「里長……やっぱりこの子……」
「いいよ、分かっているさ。君たちも思い出したくないだろう」
「……すみません」
「君たちが謝ることではないさ。それよりもこの子、先程から喋らないがもしかして喋れないのか?」
里長が薬を塗り、包帯を巻きながら話します。
「それが……」
◇
「なるほど、こちらの言葉がわからないのか」
「そうなんです……話せない訳ではないんですが……なんというか違う言語を話していると思います」
「ふむ……違う言語か。それは人間の言語ではないのか?」
「それがどうも違うというか……聞いたこともない言葉なんです」
「君たちが聞いたことがないとなると人間の言語ですら怪しいね。となると言葉を教えられることがなかったか、こことは全く違うかなり遠くから逃げてきたのか……」
「どっちにしろだろ、こんな小さな子供にやる仕打ちじゃない……!」
アウラちゃんが怒気を強めながら言います。私たち2人にとってこの子のされたことは怒らずにはいられません。ですが、今は彼女のことに集中しないと。
「落ち着いてアウラちゃん。今はこの子のことについて話さないと」
「……分かったよ」
アウラちゃんは渋々といった様子で落ち着きを取り戻します。アウラちゃんは性格故に熱くなりやすいですが、賢いのでやるべきこと、やらなければならないことの違いは区別がしっかりついています。
「そういえば……この子の名前は?何かわからないのかい?」
「確かに名前は聞いてないですね……言葉がわからないので当たり前ですが……」
確かに先程までの我々といえば、あの子とかこの子とか抽象的な呼び方しかしていませんでした。自分から教えてくれるなら問題ないのですが、言葉がわからないようでは仕方ありません。かくなる上は……
「あの、取り敢えず私たちで名前を決めてしまいませんか?少なくともこの子が言葉を話せるようになるまでの間だけでも」
「そうだね、それがいいと思うよ」
「そうだな、いつまでも名前がないのは可哀想だし」
2人共賛成してくれたようなので3人でこの子の呼び名を考えます。そして暫く考えていると名前の案が出てきました。
「……アシュリーなんてどうですか?」
暫しの沈黙の後、里長とアウラちゃんは好意的な反応をくれた。
「良い名だね、可愛らしいこの子らしい名前だ」
「いいんじゃないか?名前の響きが良くて呼びやすいしな」
「ではこの子に伝えてみましょうか」
そう言って未だ里長の前にある椅子に座っている少女を見ると、包帯が気になるのか自分身体中をまじまじと眺めている。私たち三人が何を話しているか分からなかったからきっと飽きてしまったのだろう。
私がアシュリー(仮)の肩を優しく触ってこちらに意識を向かせる。しゃがんで目線を合わせて名前について例え分からなくてもダメ元で伝えてみる。
「あなたをこれからアシュリーと呼びます。もし、あなたに本当の名前があるならごめんなさい。でもこれから私たちと暮らしていく中で、いつか本当の名前を教えてくださいね」
「よろしくお願いしますね、アシュリー」
目の前のアシュリーはこちらの言葉が分からなくて困惑している様子だった。それでも私がアシュリーの頭を軽く撫でると自分が悪く思われてないと分かったのか、少し顔の緊張が取れた。
「これからよろしくな!アシュリー!」
「ッ……!?」
アウラちゃんはアシュリーの小さな頭を私より少し乱暴に撫でしまったのでアシュリーはびっくりした様子で撫でられている腕の持ち主を見ています。
「アウラちゃん、もう少し優しく撫でてあげて。アシュリーがびっくりしてるわよ」
「あ、ごめんなアシュリー」
「ふふ、傷の治療は取り敢えず終わったよ。これから3人で暮らしていくのだろう?この子も疲れただろうし、今日はもう帰るといいさ」
「ありがとうございます、里長」
「いいんだよ。あとこの子の傷のことだけど今している昨日渡したのより、少し質のいい包帯と薬を渡しておく。傷の治りが遅かったら使うといい」
里長は私に包帯と薬を渡してくれた。そうして里長はアシュリーの方へ向き直ると、
「……それとアシュリー、里長として君がここで暮らすことを歓迎する。何かあったら2人か私に言うといい」
里長はアシュリーちゃんに向けてニコッと微笑みながら言いました。それを見たアシュリーちゃんの表情はなにかに気がついたかのようにハッとして、小さな声が聞こえたかと思うと、その頬には一筋の涙が流れていました。
『ぅっ……ふぇ……ひぅ……』
「ど、どうしたの、アシュリーちゃん!?里長は怒ると怖いけど普段は優しい人だから大丈夫よ!」
「そ、そうだぞ!里長は優しいんだ!たまに怖いけど」
「君たちな……それにしても泣かしてしまうとは……気付かないうちに顔が強張ってしまったかな?」
それからはアシュリーちゃんの背中をさすったり、言葉をかけていましたが、中々泣き止まず……少し時間が経ってしまいました。
◇
「それじゃあ里長、何から何までありがとうございました。また来ます」
「うんうん、いつでもおいで。その子も一緒にね」
「はい、ありがとうございました!」
「ありがとう、里長!」
「……っ」
私たち2人が里長に向けて軽く頭を下げるとアシュリーも私たちの真似をするように頭を下げ、感謝の気持ちを伝えるように何かを話した。
◇
そうして私たち三人は里長の診療所を後にした。
今はアシュリーを抱えながら家に帰っている所だ。私たちの家は里から少し離れているので、この機会に里の中を見ても良かったのだが、アシュリーのいる環境を下手に変えると不安になってしまう可能性があるので今回はそのまま帰ることにした。
アシュリーは見た目的にまだ4〜5歳くらいだと思うのだがこの年齢の子どもと比べてかなり大人しい。私に抱えられている今でもアウラちゃんや私の方をたまにチラリと見たり、一人で考え事でもしているように目を瞑ったりしていた。
アウラちゃんもそんなアシュリーのことを興味深いものでも見るかのようにまじまじと見つめていた。
「……アウラちゃん。気になるのは分かるけどそんなに見てるとアシュリーが怖がるわよ……」
「あっ!ああ……確かに。ごめんなアシュリー」
アシュリーに謝って頭を軽く撫でると今度はこっちを見て、
「……なあ、姉貴。俺にも抱っこさせてくれよ」
「え?まあ、いいと思うけど……」
「やった!ほーらアシュリー……おいで〜」
アウラちゃんは両手を広げて、アシュリーちゃんを待っている。……アシュリーちゃんも嫌がっている様子もないし、今のうちに慣れさせておくべきよね。
アウラちゃんにアシュリーちゃんを手渡すとアシュリーちゃんは嫌がるような素振りも見せなかったが、急な出来事で混乱しているのか少しぎこちない表情を見せた。
「おー……やっぱり小さいな〜あったかいし……子供体温……わっ」
「――――!?」
「大丈夫、大丈夫だからねアシュリーちゃん。アウラちゃんはいい子だから……」
アシュリーちゃんが困惑した表情と声をあげてしまってアウラちゃんも少しびっくりしていたのでアシュリーちゃんの手を軽く握って安心できるよう、危なくないことを伝える。
「ほらアウラちゃんも優しく抱きしめてあげて」
「お、おう……」
ラウラちゃんもアシュリーちゃんを安心させるように優しく抱きしめてあげています。
というか、ふむ……妹たちが仲良くしている姿というのはこんなにも尊いものなんでしょうか。
ぐぅ〜……
「お……」
「あらあら……」
アウラちゃんの方向から小さなお腹の音がなりました。音の出所からもこの音はアシュリーちゃんのお腹の音でしょうね。お腹が減るくらいリラックスしてくれたと思うと嬉しい限りです。アウラちゃんもニコニコとアシュリーちゃんの方を見つめて嬉しそうです。
アシュリーちゃんはというと顔を木の実くらい真っ赤にしながら俯いてしまっています。
「――早く帰ってご飯にしましょう!今日は私が腕によりをかけて作るから!」
「おー、やったなアシュリー。今日はきっとご馳走だぞ」
『……!』
……なんということでしょう、私は見てしまいました。アシュリーちゃんの自然な天使のような笑顔を。アウラちゃんも見ていたのか少し目を見開いてアシュリーちゃんを見つめています。やだ、私たちの妹、可愛すぎ……!
「本当にかわいいなお前はー!」
ぎゅうぅ……!
『……!?』
「あっコラ!強く抱きしめすぎよ!」
「なんだよぅ、私のアシュリーを奪う気かぁ?」
「なっ、いつからアシュリーちゃんはあなたのものになったの!?」
「あはは!冗談だけど、今だけはお先に失礼っ!」
「あっ!待ちなさい!」
そう言ってアウラちゃんは飛び上がって森の木の上まで移動し、木の上から木の上へ飛び移って移動していってしまいました!
くっ……相変わらず早いさすがは里1番の機動力……緊急時の伝令役を任されるだけはありますね……!
「こーらー!!待ちなさーい!!」




