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転生した話

初投稿です。

読んだ感想など書いてくれると嬉しいです!

転生した話

 ん……?あれ?ん?どこだ…ここ?俺こんな森森した場所にいたっけ……?周り見ても木と草しかないし……人もいない。

 てか足裏が痛い。ああ裸足なのか……ん?あれ?足がなんかいつもより小さいような……?というか視点がいつもより低いし、心なしか手が小さいような感じがした。そして、自分の身体をまじまじと見ると顔から一気に血の気が引いていく気がした。

 

 断言しよう。俺の腕はこんな子供みたいなぷにぷにな腕ではなかった。

 困惑していると風が周りの草木を揺らしながら吹いた。その時視界に入ったのはきめ細やかで綺麗な金色の糸。

 いやこれは糸ではない。髪だ。風が靡いて髪が視界に入ったということはこれは自分の髪の毛ということで……


 嫌な予感がする。恐る恐る着ていたボロボロなローブの中に手を入れ、自らの下半身を触った。


 ……ない!跡形もなく、全く!


 長らく付き添ってきた我が具足は跡形もなく消え去り、そこにはもう何もない。やばい。泣きそう。

 あれがなくなったということはつまり俺は今女……?


 (いやいや!!ありえんでしょこんなの!いきなり森に飛ばされて幼女になってるとか!なんでこんなことに……周りに人もいないし、どこかもわかんないし……やばい泣きそう。てかやばい俺ってこんな涙腺弱かったっけ?勝手に涙が……)


「うっ……えぐ……ふぇぇ……」



 ◇


 抑えきれない感情の波に飲まれ、ぽろぽろと涙を流す。

 声を上げて泣かないのは、ギリギリ残った大人としての理性が、獣やそれ以外の恐ろしい何かを呼び寄せないようにと警告しているからだ。感情だけではなく、怪我をしているのか全身がズキズキと痛む。


 何とかして泣き止もうと努力していたが、しゃくりあげるような嗚咽は隠せない。こんな夜中の森の中で危険がない訳がない。だが、音は隠しても匂いを隠せない。

 “それ”が彼女の存在に気づいたのは必然だった。


「グルルル……!」


「ひっ……」


 両手で口を押さえるがもう遅い。

 いつの間にか彼女の目の前には飢えた一匹の狼が佇んでいた。群れとは別で行動し、獲物を探す役割を持っていた彼は幼い子供を見て、絶好の獲物と判断した。そして群れにこのことを伝えるため遠吠えをすると、


「あ……わああああ!!」


 恐怖が臨界点を超えたのか少女はとにかく狼から離れるようにやたらめったらに走る。裸足なので木の枝や石を踏んで痛い。それに少女の柔い肌は木の葉や枝に多少擦っただけでも傷がつき、徐々に血で染まっていく。


「いっ……うぅっ!」


 鋭い痛みがはしる。足の裏が、身体中がズキズキと針が突き刺さるような痛みが、走って身体を動かすとそれが目覚めるように身体が徐々に認識していく。


 狼は付かず離れずの距離を維持した。深追いをして万が一見失うなんてことがあれば群れを追い出されてもおかしくはない。よって今やるべきことは他の仲間が到着するまで獲物を見失わないようにすること。それが彼のすべきことだった。


「はぁっ…はぁっ…!あぐっ!ぷえっ!」


 緑が生い茂ったこの森で、方向も分からずがむしゃらに動いているので葉っぱなどが口の中に入りそうになる。今狼が襲う気がないということはつゆ知らず、彼女は「止まったら死ぬ」その思いでどれだけ傷が増えようが、裸足で傷つく足の裏に激痛があろうが走り続けた。

 そして狼の群れが彼女の周りに集まり始めた頃。


「……え?」


 不意に地面の感覚がなくなる。

 転がるように飛び出した先は崖になっていた。


「うひゃあああああああああああ!!!」


 痛恨の表情で崖上に留まる狼。さすがに獲物を追って飛び降りるような事はしなかった。


「あああぁぁぁあああっ!!!」


 悲鳴を上げながら落下していた彼女は、ザッパーン! と大きな水音を立てて派手に着水した。

 崖下が川になっていたのは、彼女にとっては幸運だった……のかもしれない。


 ◇


「……?」


 その日ラウラはいつもと同じように守り人として森に異常がないか見回りをしていた。里に危険な獣が近づいていないかやエルフを捕獲して奴隷にする人間などが近づいていないかなど、里に危険があるものを近づかせないのが守り人の役目だ。


 そんなラウラがいつものように里の周辺を見回りしていると、エルフ特有の長い耳が近くの川で何かが着水するような音を聞き取った。


「なんでしょうか……?魚でも暴れているのでしょうか……」


 そんなことを思いながらラウラが川の方へ目を向けると……


ラウラが見つけたのは、ばしゃばしゃと水面を叩きながら流されてきた金髪の子供。

 

「っ、なんてこと……!」

 


 

 ラウラが駆け出すと同時に、子供は流れに巻かれたのか、それとも力尽きたのか……とぽん、と音を立てて川に沈んでいった。


「くっ……お願い……!間に合って……!」


 ざばん! と音を立てて水に飛び込むラウラ。

 明るい月夜だったのが幸いして、水中で金髪がうっすらと輝いているのを見つけたラウラは、片手で子供をつかむ事に成功する。


「大丈夫!?しっかり!」


 流れに足をとられながらも、ラウラはそのまま子供を川辺に引きずりあげる事に成功したのだった。


 ◇


 なんとか子供を自分の家がある里へと連れて帰り、自分たちが普段寝ているベッドへ寝かせる。里の診療所に行くと薬草で作った薬と包帯が巻かれた。傷はそこまで深くなかったものの、薬草を使った薬は傷に塗るとかなり痛いので子供もが意識を失っていたのは不幸中の幸いなのかもしれない。


 子供は足や手、更には顔にまで傷がついており、ここまでの道のりの壮絶さが見てとれた。診療所の先生曰く、今のところ確認できる限りではしばらく薬と包帯を使えばすぐに治る怪我らしいが、包帯には今も赤く血が滲んでおり、傷が塞がっているような感じがしない。


 そんな子供をベッドの隣で見守っていると……


「ぅっ……うぅ……」



 少女は時折、顔をしかめながら、痛みに耐えかねうなされている。そんな少女の体を見てみると傷が多かったためほぼ全身が包帯に巻かれており、痛々しい有様だ。

 

 (傷が酷い……特に足の裏は皮がめくれて肉が見える。こんな子供が一体どうして……)


「ただいまー」


 ガチャリと家の扉が開く音がした。

 どうやら妹が帰ってきたらしい。妹を迎えるため、玄関へと向かう。いつもなら笑顔で迎えられるのだが今はそうはいかない。


「おかえり、アウラちゃん」


「ただいまー……って、どうしたんだ姉貴。そんな浮かない顔して」


「ちょっと色々あってね……取り敢えず来てくれる?」


「色々?まあいいや……一体何が……え」


 アウラが少女のいる部屋へと入るとその光景に驚きを隠せない様子だった。

 全身が包帯によって巻かれ、うなされながら寝ている少女を見て暫く絶句していた。


「……姉貴……何処から攫ってきたんだよ…」


「そんなことしないわよ!?」


「じゃあどうしたんだよ、こいつ。酷い怪我だし……」


「見回りの途中で川で溺れてるのを見つけたのよ……親も周りにいる様子がなかったし、怪我が酷いからほっとけなかったのよ」


「もしかしてこいつ人間から逃げてきたんじゃ……」


「かもしれないわね……」


「っ…くそ……また人間かよ…!」


 アウラは拳を握り締めながら悔しそうに言う。

 かつて人間たちはエルフを森の加護を受ける存在として特別視していた。しかし、そのような信仰は長くは続かないものでいつしか人間たちはエルフが長命なのをいいことに老いない愛玩奴隷としたり、労働力として見るようになっていった。

 

 この里からは人間による被害も度々出ており、主に薬草を採取や狩りをしに行く時が狙われているらしく、未だに行方のわからない人たちもいる。他の里からも被害が出ているらしく、壊滅的な被害が出た所もあるそうだ。

 そのような被害から守るためにも二人は守り人として毎日の見回りをしており、その役目は重要である。


「あ……」


 二人の会話で起きてしまったのか少女が瞼を動かして瞳を見せた。


「ん……んぇ……?」


 まだ寝ぼけているのか、それとも目の前にいる二人の女性の風貌が自分の知っている人間とは違い過ぎるのか、目を半分開いたまま硬直している。


「◾️……?◾️◾️◾️◾️……?」


 少女は混乱しているのか目をぱちぱちさせながら聞き取れないような言葉で話している。そんな少女にラウラが優しく語りかける。


「大丈夫。ここにはあなたを怖がらせるものはないわ。だから落ち着いて。ね?」


 ラウラが語りかけると少女はビクッと身体を動かし怯えているのか震えていた。また、彼女はなにやら分からぬ言葉はぶつぶつと言っているため、こちらの言葉が理解出来ているのか、いないのかわからない。


 しばらくベッドの布団を握りしめて怯えている様子だったが、何かを決心したのか、少女が口を開いた。


「◾️◾️……◾️◾️◾️◾️◾️…………」


 彼女の言葉を聞いたとき、ラウラとアウラはあまりの衝撃に絶句した。

 彼女が何を言っているかわからない。彼女が使う言語が違う可能性もある。しかし、彼女のそれは人間の使う言語とも違っていた。


 「姉貴……これ……」


「ええ、どうやらこの子は言葉を教えられることもないような環境にいたようね……」


 

読みにくい箇所などありましたら教えてください

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