第45話 葵の狂気
俺は驚愕に指を震わせながら、次々とページをめくっていく。
その文字はどれも赤黒く、文字の太さもバラバラで掠れている。
〖かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き、かずくんが好き〗
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〖かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね、かずくんに近づく女は死ね〗
次のページ。
〖かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの、 かずくんは私のもの、かずくんは私のもの〗
次のページ。
〖かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる、かずくんを愛してる〗
また次のページ。
〖かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい、かずくんと交わりたい〗
ノートの最後のページが終るまで、俺への想いがビッシリと隙間なく書かれていた。
それを間の当たりにし、俺は体が悪寒で震え、手元からノートをバサバサと床に落す。
「……普通じゃない……」
すると、渉が片膝をついて、そのノートを集め、パラパラとページをめくり始めた。
そしてページを進むにつれて、眉間に皺を寄せて、厳しい顔つきへと変っていく。
俺達二人の様子に女性がニヤリと口を歪める。
「その文字は、葵様ご自身の血を竹串の先に浸して書かれたものです。葵様は毎日毎日、何度も繰り返し書かれていました。昔に書かれたノートのほとんどは捨ててしまわれましたが」
「なぜこんなことを葵にさせた。知っていたなら止めることもできたはずだ」
渉が怒りを含む低い声で静かに言うと、女性は楽しそうに口元を手の甲で押えて笑い始めた。
「ふふふふ、それは私が葵様を愛し、葵様が願うことを叶えてほしいと思っておりますから、ノートに毎日、自分の感情や気持ちを書き込むことも、ご自身の血を使うことも、幼い頃の葵様に全て私が教えたこと。言葉には言霊が宿り、血には念が宿ると申しますので」
「あんたは狂ってる! とても正気な考えじゃない!」
「そうでしょうか。女性の愛とはそのようなものでございましょう」
俺の怒鳴り声に、女性は静かに目を細めて笑む。
その顏を見てカッと頭に血が上った俺は、気持ちを収めるために、顔を横へ向ける。
すると天音と楓姉が、蒼白の表情で、身動きできずに立っていた。
二人の姿を見て、俺は呼吸を繰り返し、心の冷静さを取り戻す。
この屋敷に来たのは葵と話すため。
心霊現象の原因を突き止めて葵を助けるためだ。
あの女性の言葉に惑わされるな。
全てのノートを読み終えた渉が、立ち上がって、真っ直ぐに女性を見据える。
「それが葵へのあなたの愛というなら、どうして、そのような歪な愛情になったか、説明してもらえまんせんか」
「もちろんですとも、本日は包み隠さず、皆様にお伝えするつもりです。では場所を変えますので、共にきてください」
女性は丁寧に会釈をすると戸を開けて廊下へと出ていった。
その後ろ姿を見ていた俺は、心霊現象よりも、あの女性に恐怖を感じ、体中に悪寒が走るのだった。