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第36話 すれ違う四人

俺は咄嗟に凪沙に問い質す。


「安奈、咲良、愛菜って中学の時、葵をイジメてなかったか?」


「うん、そんな時期もあったわね。葵からは何も聞いてないけど、中学の頃、女子達の間で三人が噂になって、私も何度か注意したんだけどね」


「三人の中でリーダーってあったのか?」


「うん、一番ヤンチャしてたのは安奈ね。 咲良も化粧品を万引きとかして、結構酷かったみたいだけど。愛菜は二人がやるから一緒にやるって感じだったわね」


俺と凪沙の会話を聞いて、渉が真剣な表情で目を細める。


「和也、何かわかったのか?」


「ただの妄想なんだがな、今回の安奈の事故死、 咲良の飛び降り自殺を心霊現象と仮定すると、中学の頃から仲が良かった、愛菜を含めた三人組が関わっているかもしれない。さっき咲良の屍を見たけど、一般的な黒髪女子の印象だった。でも中学の頃のあいつ等は違う。周囲の大人しい女子達をイジメていたのを俺も見ている。その被害者の中に葵もいたんだ」


「そこから導き出される推測は、三人に恨みをもつ、昔にイジメられていた女子の誰かが、心霊現象を起して、安奈、咲良を死に追いやった。学校を休んでいる愛菜も何らかの霊障に遭う可能性があるということだな」


「ああ、ただの妄想でしかないけどな」


俺達二人が話していると、雄二が睨んできた。


「同級生の女子が二人も死んでるんだぞ。何でも心霊現象に結びつけるな。それぞれに、何か言えない理由があって、思いつめていたかもしれないじゃないか」


「私も同じ意見よ。莉子のことは心霊だったかもしれないけど。二人のことは別件でしょ。少しでも共通するところを見つけて、何でも心霊のせいにするのはよくないわ。それに三人にイジメられていた女の子達を犯人扱いするような言い方、そんなのおかしいと思う」


凪沙も同調し、腰に片手を当てて、不機嫌な表情をする。


そんな雄二達を見て、お似合いな二人だよと思ってしまった。


すると渉がスマホを取り出し、どこかへ連絡をする。

すると数秒後に相手が応答したようで、話始めた。


「恭子おばさん、こんにちは。渉ですが莉子と今話せますか?」


渉は俺達三人を見ながら話を続ける。


「ちょっと聞きたいんだが、莉子と葵が『こっくりさん』をした時、十円玉が机から落ちる前、どんな質問をしていたんだ? これは重要なことだから、隠さないで教えてほしい。学校にいる皆が、莉子と同じように危険に晒されるかもしれないんだ。だからお願いだよ」


そして莉子から何かを聞いた渉は厳しい表情をして通話を切った。

今の対話から、渉の意図を読み取ることができず、俺は思わる声をあげる。


「通話していたのは莉子だろ。何を聞き出したんだ」


雄二と凪沙も興味が湧いたように、ジッと黙っていた。

渉は少し悲しそうな表情をして、俺達に告げる。


「雄二達には悪いが、僕は 安奈と咲良が死について霊障が絡んでいると考えている。そして和也から聞いた話をヒントにして莉子に連絡を取ってみたんだ。僕の推論を伝えるべきかどうか悩んでいる。結果だけいうと、葵と和也の二人が一連の怪異の中心に巻き込まれている可能性が高い」


突然に自分の名を告げられ、俺は焦りの声をあげる。


「どうして葵と俺なんだ……」


「まだ確証は持っていない。ただ僕の推測が正しければ、天音ちゃんが一番危険なことになる」


「どうして天音が危ないのよ。そんなの信じない……もう友達を失いたくない……もうイヤよ……」


床に泣き崩れた凪沙の肩を抱きしめ、雄二がスゴイ形相で渉を睨む。


「これ以上、凪沙を泣かせるのはやめろ。そうでないとお前達でも容赦はしないぞ」


「ああ、僕も天音ちゃんに何もなければいいと思う。もし今後、何もなければ、気の済むまで殴ってくれていい。そのほうが僕も気が楽だからな」


そう渉は静かに告げ、俯き加減に目を細める。

すると雄二は凪沙を支え、二人歩いて、自分達の席へ戻っていった。


その後ろ姿を見ながら、俺はゆっくりと腕をあげて髪をかく。


さっき俺が渉に話したことが手がかりに、渉は一つの推測を立てた。

その上で莉子に連絡をして確証を得たに違いない。


しかし、一体、莉子は『こっくりさん』で遊んでいた時、葵と二人で何を占っていたんだ?


思考が頭の中をグルグルと巡るが答えがでない。


「天音ちゃんを大事に守ってあげなさいよ」という楓姉の言葉が脳裏を過る。


わかっていることは、早く彼女と合流したほうがいいということだ。


警察が来れば現場検証と事情聴取が行われる。


すぐにでも行動に移りたいのに、拘束されている自分が歯痒く、俺は唇を噛むしかできなかった。

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