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第23話 LINE通話の怪

悠乃と美結が渉達と一緒に元霧原村へ行った日から二日が経った。


この二日間、ずっと空は薄暗く、どんよりとした雨雲が広がり、集中豪雨のような雨を降らせ、学校に登校するのも一苦労だった。


その間も葵は体調不良ということで、学校を休み続けていた。

その一方で、渉のLINEには、莉子の母親から、彼女が順調に回復しているとコメントがきている。


土砂降りの雨の中を歩いて自宅に帰り、玄関のドアを開けて家に入ると、リビングから顔を覗かせた楓姉がバスタオルを放り投げてきた。


「和也、びしょ濡れじゃない。お風呂を沸かしておくから、すぐに入りなさいよね」


「ああ」


「これだけ雨に降られると、大学に行くのもイヤになるのよね」


なるほど、雨を言い訳に、大学をサボったということか。

大学生は単位が取れるなら、休んでもいいから楽だよな。


そんなことを考えながら、バスタオルで髪を拭きながら階段を上る。

そして私室に入って床に鞄を投げ捨てた。


それから私服に着替えて、ベッドに横になっていると、パンツのポケットに入っている、スマホのバイブがブルブルと震える。


手に取りだしてスマホを操作してみると、天音からLINEが届いていた。


《もう家に帰ってるかな?》


画面を見ながら、コメントの返事を考えていると、スマホのバイブが震え、今度は天音からのLINE通話だった。


俺は深呼吸をして、応答のボタンをタップする。


『可愛い女の子がコメントしてるんだから、すぐに返事をちょうだいよ』


「悪い、悪い、それで何か用か」


『悠乃と美結から聞いたんだけど、渉君から元霧原村へ行った話を聞いてる?』


天音の言い方に少し引っかかる。

二人から聞いたということは彼女は皆と一緒に遊ばなかったのか?


「天音は元霧原村に行かなかったのか?」


『和也が行かないのに、私が行っても意味ないでしょ。悠乃と美結は渉君狙いだし、凪沙も雄二と一緒にいられればいいけど、私一人だけ浮いちゃうでじゃん』


「そこまで考えてなかったな。それで、あの地区で何かあったのか?」


『それがね、皆も見たらしいんだけど、路地のお地蔵様が、あっちこっちで壊されていたんだって、そのほとんどは首がなくなってたって。悠乃と美結も凄く怖がってたわ』


俺も葵を家まで送っていった時、路地に立っている地蔵様を多く見た。


古い町並みで、祀られている地蔵が壊れていれば、誰でも気持ちいいものではないよな。


でもそれだけで天音が通話してきたのではないだろう。


すると一旦間を置いて、天音が話を続ける。


『それで壊れているお地蔵様を一つ一つを渉君が丁寧に調べてたんだって、渉君って元霧原村の情報を集めたり、いったい何者なの? 神社とかお寺が好きなタイプなのかな? それともパワースポットや、心霊スポットが好きなタイプかもね』


「渉の趣味は知らない。それで奴は何て言ってたんだ?」


『それで悠乃が、何かわかったの?って質問したんだって。すると渉君がね、このお地蔵様は、最近に壊されてるって、土木用のハンマーか、金属バットで壊したのかもしれないって、言ってたんだって。お地蔵様なんて壊して何が楽しいのかな? 変な趣味の人もいるよね。そんなことをして気持ち悪いだけなのに』


そういえば喫茶店で元霧原村のことを聞いていた時、聖華女学院の先輩の彼氏が地蔵像を壊したと言っていたな。しかし渉が最近と言ったすれば、破壊されていお地蔵様が増えているということなのか。


それに、あの地蔵様像は元霧原村の水害を抑えるための結界みたいに張り巡らせていると天音の両親が言っていたんだよな。


ということは、まさま、その結界が緩んだことにならないか?


そこまで考えて、俺はスマホを持ったまま、片手で髪をかく。

元霧原村のことを調べているのは渉であって、俺ではない。


もし心霊現象絡みであれば、渉のほうが詳しいし、また学校の休憩時間にでも、どういう分析をしているのか聞いてみたらいい。


俺は話題を切り替えて、天音とLINE通話を続けた。


そして三十分ほど会話を続けていると、スマホに異変が起こった。


天音と話しをしている時、「ザザザ……ザザザ……」とノイズ音が入りだし、それが徐々に大きくなって彼女の声がプツリと聞こえなくなった。


今までスマホで通話していて、プツプツと音が聞こえないことはあったが、ノイズ音が入ってきたことはない。


LINEを利用して通話なので、妙な電波でも拾った可能性も考えたが、今まで起こったことがなかった。


何度か通話をかけ直し、最初はお互いに会話できるのだが、すぐにノイズ音が入ってきて、その音に邪魔されて彼女の声が聞こえなくなり、突然に通話切れる。


それで天音にもノイズ音の現象が起きているか聞いてみると、彼女も同じくノイズ音が聞こえていた。


このままでは会話ができないので、時間を置いてみることにして、ゴロリとベッドに寝転がる。


すると、またスマホのバイブが震え、天音からと思ってスマホを取り出してみると、画面にはモバイル通信の画面が表示されている。


しかし、番号表示もなく、非通知の表示もなかった。


そのことに違和感を感じながら、応答のボタンをタップして、耳にスマホを当てると、「ザザザザザ……ザザザ……ザザザ」とノイズ音が聞こえてくる。


これでは誰から通話がきたのかわからない。


天音は俺のLINEは知っているが、携帯番号を教えてはいない。

なのでモバイル通信から連絡してくることは不可能だ。


そのことに気づいて、気持ち悪くなって急いで通話を切った。

すると、またスマホのバイブが震え、画面がモバイル通信を表示する。


そのことに不気味な恐怖を感じながらも、俺は応答ボタンをタップし通話を受けることにした。


「もしもし」


『ザザ……ザザ……ザザザザ……ザザ……ザザザザザザザザザザザ……』


そのままジッと耳を済ませて、通話のノイズ音を聞いていると、雑音に混じって、何かの声が聞こえているように感じる。


『ザザザ……ザザザザザ ……ザザ……ザザザザザザ……あああぁぁぁああああぁぁぁあああああああああああああああーーーーーーーーザザ…………ザザザ……ザザ……ザザザザザ ……ザザ……ザザ……ザザザ……』


それは紛れもなく人がもがく、うめき、苦しみ、嘆き、うなり声だった。


「ヒィっ!」


その声を聞いた瞬間、思わず口から悲鳴が漏れ、スマホの電源を落して、なるべく遠ざけるように投げ捨てた。


一体、何が起こっているのか理解できない。

その恐怖がジワリと心を染め、俺は身動きできずに固まったまま、背筋に不気味な悪寒を感じるしかできなかった。

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