8話 キャラクリって自由すぎると逆に良くないよね
動画撮影は終わり、いつもの癖で喫煙所に向かう途中だった。「タバコやめたんだった。迎え来るまで待つか...」
廊下から拍手笑いより大きい足音が近づいてくる。「相馬さん、これってチャンスじゃないですか!相馬さんが漫才で笑わせればいいんですよ!余裕ですよ!」
急に近づいてきてこんなことを言ってくるとは。朝日昇、天才はそう言うだろう。もちろんソバナイトの漫才はどんな地域でもウケていた。営業では特産品も絡めたりしてた。ただ今回は違う。
「朝日くん、相手のいた時代分かる?さっき君は戦国時代だろう、そう言ってたよね。」
「はい。そうですけど。でもソバナイトが準優勝だった時のあのネタなら!」
露骨に困惑した表情で朝日を見つめる。早く結論を聞きたいからに対して俺の喉元では言葉が詰まっている。
「単刀直入に言おう。俺があの時やったネタはカウボーイだぞ!」
俺の懸念点は一つしかない。笑わせることは難しくない。実際あの大男はゲラな気がするし。ただ、漫才の題材が分かるかどうかとなれば話は別だ。
「カウボーイをあいつが知ってるわけないだろ!しかも俺が持ってるネタの中であいつに分かりそうなネタがないんだよ!ビールの売り子とかドラゴンの捕まえ方とか、そんなのばっかなんだよ!」
何かを思いつた様子の朝日が俺に話しかけてきた。
「すごろく。僕がつまらないって言ったあれならいけますよ!すごろくなら戦国時代にはあったはずです。あの人の具体的な年代は分かりませんが...」
あのネタは自分では納得していない。だが、あのネタしかないのなら、
「でも無理!あのネタするにしてももっとブラッシュアップさせてくれ!そもそも君とするんだったらセリフも変えないといけないし。」
「僕がやるんですか?!内藤さん連れてきたらいいじゃないですか!僕も暇じゃないんですよ。」
ごもっともな意見だ。内藤との漫才は今でもするしあいつとじゃないとできないとも思う。だがレキシアムの中で漫才をするなら話は別だ。相馬透としての漫才とソバキシとしての漫才は違う。そして自分でも不思議だが、
「あいつを危険な目に合わせたくないからだ!」
「相馬さんってそう言うこと言うキャラじゃないですよね!しかも僕だって危険だし...」
そう言われるのは分かっていた。でも行ける信じていた。だってこの少年は
「でもあの男のこと1番近くで知れるってことですよね!ならやります!即答しちゃいますよ!次いつ会います?ネタ合わせしないと!でも色々あるし、劇場もありますよね.....」
「分かったから!!とりあえずあっちに戻ろう。ちゃんとした話はその後。」
その後話をして、翌日キャラクリを行うことにした。
「朝日くん、一応事前に決めてもらったんだけど、、、
こんなんで許されるわけないでしょ!?内藤もたまにテレビのロケで髪型変えてたけど、ここまでじゃ....」
俺の目にはUFOキャッチャーのアームのような髪で、弓を口に咥えた猫にしか見えない。
「あのさあ、もっと歴史関係あるものにしてよ!何その髪型?」
「2時間かけて作りました!」
「本当にふざけるなよ!俺みたいに真面目にしろよ!この菅笠、かっこいいだろ!しかもこの騎士の服も、」
「相馬さん、菅笠って何ですか?僕の目には一寸法師の船しか頭に乗ってないんですけど。」