5話 変な男達、人生の恩人なり
「先輩、大丈夫ですか!!」
ナシオが渇いた声で機械のように俺を呼んでいる。それに気づいたが目は限界を悟ったように瞼を閉じた。
何かに呼ばれた気がして目が覚めた。
「ドクサカ!?なんでここにいるんだ?」
大阪の劇場に行ったはずのドクター酒井が俺の部屋にいる。それ自体が不思議なのに、彼の本業を芸人仲間の俺が見ていることも不思議な感覚だ。だがそれを受けているのが自分というだけで、彼に対する尊敬が生まれる。
「相馬。あんま無理すんなよ?お前ただでさえテレビで忙しいのに、漫才も、、、って作るのは辞めたんだっけ?」
ソバナイトが解散しないのはこいつがいたからだ。俺と内藤の喧嘩の時、こいつが仲裁してくれた。その時にこいつが突然、
「お前らは面白いんだよ!!作らなくてもいい、とにかく漫才を続けるだけ続けてくれ!!同期としてお前ら二人が誇りなんだよ、、、だから辞めんじゃねえよ!!」
栄光を掴めなかった俺にとってその言葉は本当に救われた。"準優勝"。俺にとってはただの三文字の言葉だ。誰にも認めてもらいたくない。でもこいつらに認められれば素直に受け入れられる。そんな仲間がいることに気づかされたから。
「お前なんでここにいんだ?大阪行ったはずじゃ、」
「こっちでテレビ番組の収録があったんだよ。それでナシオくんから連絡が来てここに来たってわけ。」
なんとなく納得したが不法侵入に助けられたのはなんか癪だよな。まあいいかと済ませようと心の中で穏やかな気持ちでいた。そんな中酒井が紙を持ち出して俺の目の前で絵を描き出した。
「そうだ、お前に話さなきゃいけない。お前の腕のことなんだけど、変な方向に曲がってたぞ。しかも傷もついてる。正直信じられないと思うがこれを見てくれ。」
「なんだよ、、これ、、、」
戸惑いと恐怖が同時に俺を蝕んでいる。右腕だけ引っ掻き傷があり、関節が逆方向に曲がっている。
「何があったんだよ!!正直に話せしてくれ!!」
俺はレキシアムのことを詳しく話した。その時に出会った不思議な男についても話し、すぐに酒井の友達に調べてもらったが何も情報は見つからなかったらしい。ただ酒井は俺の話はすんなり受け入れてくれ、ナシオにもこの話を聞かせたら俺が言い終わる前に、わかりました、と言ってくれた。
その後病院での検査も済ませたが特に異常はなく、酒井からも、
「多分衝撃的な出来事が起こったことによる感覚の麻痺だろう。引っ掻き傷も腕がないことを確認する時に現実のお前がつけたんだろう。」
と言わ、それで納得した。
飯田さんにこのことを話すと、
「なんですかそのキャラは!?聞いてません!そんなキャラがいるなんて。本当にすいません、、、」
丁寧に謝罪してもらい、案件は発売から少し時間が経ってからすることになった。
そして発売日。飯田さんに連絡して自分のデータが残っていることを確認してもらい、異変がないことも確認した上で案件を受けることになった。
、、、のだが。
「相馬さん!あの話本当なんですか!!^_^」
"孔明“朝日昇は困惑する俺を尊敬する眼差しで見つめている。
そう。俺はこいつと動画を撮影することになったのだ。