4話 アンチ関西弁芸人と関西弁の知らない偉人
「くんじゃねぇーよぉーー!!!こんな怪物歴史上にいるわけねぇだろうが!」
少し時を戻そう。レキシアム・スリップ。偉人達と協力できるVRゲーム。チュートリアルだけ先にやってくれ、と企業側から連絡が来て正式に案件としてやることになった。ただ、ちゃんと他プレイヤーと関われるのは発売日になってからなので外に出ても何もないらしい。
「レキシアムの世界へようこそ!案内人のエジソンと言います。」
「あんた、ここで出てくんのかよ!」
超超有名人のエジソンがここで出てくるなんて思いもしなかった。変な帽子といい製作陣は何を考えているんだ。
「そういうと思ってました!でも僕には明確な役割があるんですよ。それがこちらです!仮想の敵を用意しました!僕の技術で作った感じにしたらなんか筋が通ってる感じしませんか?」
「あんた実在する人間だからってメタい所ついてんな... でも確かにあんたが作った感じだと手応えがありそうだな。よし、やるか!!」
「まずは、武士ですよー。ソバキシさんはまだステータスを振ってないみたいですが、チュートリアルの後なので待っていてくださいね。」
「とりあえず大剣振ってみるか。よいしょっと!」
軽そうな刀が宙を舞いエジソンの頬をかすめた。
「いたいっっ!僕はまだ戦わないんですから、ちょっと辞めてくださいよ。」
平謝りで済ませて次に進もうとした瞬間、
「ヴァアァァァ!!!」
鉄の鎧をつけた龍が俺を睨みつけた。全くエジソンも粋なことする
「逃げてください!!ソバキシさん!」
そして今に至る。
「どこにいたんだこんな怪物はよお!」
菅笠を離さないように走り続ける。エジソンの顔は今にも崩れそうだが俺が止まらないと走り続けるようになっているので、正直可哀想だ。
「とりあえず、あの子を呼びましょう!キュデンさん!」
「エジソンちゃーーん!来たのよー!」
なんだこいつは?!俺が昔バラエティ番組に出ていた時のマスコットそっくりだ。ヒラメキクラスという番組をしていた時の電球の頭にカエルの胴体をくっつけたようなキャラ、ピケロ〜んくん。それをちっちゃくしたように見える。
「何すんのよこの子はーー!?」
レギュラー放送時には良くドロップキックしていたなー、なんて思っていたら体が動いていた。
「ソバキシさん危ない!!!」
自分は咄嗟に体が動きキュデンとやらを覆うようにして、龍に背を向けた。それなりに覚悟していた。また始めればいいや、どうせゲームだし。でも、
「エジソンさん、さっきの刀利用させてもらうぜ!」
"バキッ"
想像もできない鈍い音と同時に片腕が消えていた。
「・・・うわぁぁぁ!!誰か、誰かぁぁ!」
こんなことになるなんて。エジソンは誰もいない野原で必死に叫んでいた。俺が止まればその場にとどまり続けるはずなのに必死に歩き回っている。これでいいんだ。もう一度始めよう。そう思い咄嗟に俺はつぶやいた。
「もういいよ。」
「言い慣れてんな!かなりの猛者か?まぁええ。ただ希望があるんなら諦めんのはあかんやろうがぁ!」
流暢な関西弁と共に龍を切り刻む男の姿が目に入った。
「一本折れたっ!?」
「あんた、俺を助けて、」
「そんなんやない。その大剣使わんのやったら俺に貸さんかい!」
エジソンが大剣を渡し、そのまま戦闘は終了した。
筋骨隆々、長髪、隻眼、二刀流。かっこいい武将の詰め合わせのような男。
「あんた、誰だ?」
教科書に載っていたのか、こんな奴?伊達政宗を思い浮かべたが、二刀流なのか?そんなことを考えているある仮説を思い浮かべた。そして、彼は口を開いた、
「尼崎薩人。"さつと"ええ名前やろ!」
俺の仮説。それは、
「龍やユニコーンとかいないやつを倒す。それ専用のオリジナルキャラ。辻褄合わせのためのキャラ。あんた、実在しないだろ。」