3話 プライドってあった方がいいのか?
不法侵入を繰り返す後輩、アスナシオに指摘された相馬。彼は事務所を通さずに案件をしようとしていた。彼は無事にプレイできるのか?!
少し前の話だ。
「どうもー。ソバナイトの相馬と、」
「内藤です。早速だけど相馬くん。じゃんけんぽん。負けたか。チョキだからチョコレイト。6マスですね。」
「このままいったら俺落ちるだろ!」
「そんなんじゃないですよ。でもあなた次36歳でしょ?健康にも気をつけなきゃいけませんよ。」
「俺次31だから!30歳から6マス進むって、勝手に人の年齢ですごろくしないでくださいよ。」
「ネタはもう作らないの。」
楽屋で話すことは珍しいことではない。友達ではないが別に会話も交わすし、ご飯も食べる時はある。ただもうその間には漫才という橋は架けられていない。
「もういいと思ってる。今回披露したやつも準決のネタと同じやつだし。別にウケてたし、ウケることが1番大事だと思うし。」
準優勝の時、ある番組でこのネタをしていれば優勝したと言われたことがあった。ただ自分の中の面白いと一致しなかった。だからやらなかった。その旨を発言したところ内藤は、
「お前の面白いは分かる、お前と7年やってきた。学生の頃合わせれば15年以上一緒だ。ただ相談してくれよ!このネタやるからって、俺に意見も言わさず前日に言ってきて。何が優勝だ、俺の面白さが出てないだ、ちょっとは相談してくれよ!」
それ以来漫才の話はすることがなかった。だからネタを作らないの、と言われた時、俺とこいつではもう熱量が違うのだと確信した。
「このガキ何言ってんだよ!相馬、流石に怒ったほうがいいぞこれは!」
「孔明くん、これ現代でウケるやつですからね!時代が古すぎて分からないんだろ!」
ネタ番組ではあまりトークをしないが今回は半分がトーク形式の特殊なネタ番組だった。どうしてこんな形式なんだ、とプロデューサーに聞いたところ、
「朝日くんが芸人さんと話したい、そう言ってるんですよ。」
そんな朝日昇が
「面白くない」
と素直に言うはずないと思っていた。
しかし口頭では怒っているが内心頷いていた。この少年にも興味を持った。もしかしたら、俺の面白いを分かってるかもしれない、なんて。
そして現在、
「すいませんでした!!!いつもの感じで案件受けるところでした!!今後気をつけます!」
地面に頭をつけ、最悪なキャラクリのことなどすっかり忘れ謝罪のことに頭がいっぱいだ。
「とりあえず、今回は気付いたのでよかったですけど。もしどっちも気づかないなんてことがあれば大問題になってたかもしれません。ちゃんと事務所通してもらわないと。案件出すにしても言うこと全部飲んでもらいますよ!」
そして時は少し経ち。
「怒られてました。ってなんですか、これ勝手にSNSに投稿しないでくださいよ!まじで凹んでるんですよ...」
「君の落ち込んだ顔を見たくないの、私は。相馬くんは笑っていてくれないとね!」
彼女は漫才コンビ三年チャリ達のほがらさん。年は同じだが彼女は芸歴が1年先輩だ。いつもこんなことを言っているが面倒見も良く本当にお世話になっている。
「姉ちゃんまた相馬さんのこと投稿したの?!懲りないねーほんとに。すいませんうちの姉が。」
彼は後輩のおおらくん。三年チャラ達のツッコミでファッションが好きな好青年だ。
「本当だよ!ちゃんと見ててよこの人、出来の悪い姉ちゃんだねーほんとに。この前も酔って愚痴りだすし〜〜〜〜」
「分かりましたから!先輩もしっかりしてくださいよ!ほんと辞めたらシャレになんないっすからね。」
「行ったよ、先輩。姉ちゃん、最近先輩と飲んでないでしょ?何かあった、、、って何照れてんだよ!」
少し日にちが経ったある日のことだ。
「分かりました、正式に案件が決まったんですね!ありがとうございます!ゲームが届いたら先にチュートリアルは済ませていいんですね、分かりました。でもちょっと変な案件体系になると、大丈夫です。」
電話を切ったと同時にチャイムは鳴った。ディスクを読み込むと同時にキャラクリを再開した。
「流石にりんごは消えてんな。良かった、飯田さんちゃんと俺の発言伝えてくれたんだ。」
なんて言いながらキャラクリをしていると飯田さんから連絡が来ていた。
「相馬さん、あのキャラクリのことですが流石に社員が出来心でやってしまったみたいです!申し訳です...でも相馬さんの発言から帽子を追加したみたいです!歴史にあったような帽子達ですよ!!」
「これ、菅笠か。あれ、ざる帽子ってなんだ?菅笠だろこれ。ミスしてんじゃねーかよ。」
でも俺は何かを感じていた。もしかしたら、ざるそばから名前をとったんじゃないか、もしかしたら俺のことを考えてくれたんじゃないか?って。
「決めた!菅笠に大剣使いのキャラ。俺の名前は、
"ソバキシ"だ!!」
「先輩、ダサいっす!」
「不法侵入がそれ言うか?」