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1話 1位を逃しゲームに逃げた男、サ終

「本日は孔明の生まれ変わりと言われる天才高校生朝日昇さんにお越しいただいています。」

会場は大盛り上がり、中には失神している人もいる。天才高校生朝日昇。この八文字だけで視聴率は5%上がると言われるほどの有名人である彼にとっては失神なんて日常茶飯事だ。

「朝日くん、僕ね、ほんまにこの子と会いたかったんですよ。こんなことないわ。今からでも養子にならへん?」

彼の名前は漫才コンビ「臨時校長」のボケ、高知宗介。まぁ知らない人はいないだろうけど。

「天才だなんて。僕はまだ1位になったことはないんです。1位にならなきゃ意味がない。」


「1位以外見えてねーのかよ!」

 昔の俺ならそう突っ込んだだろう。だが今は違う。自らの才能の平凡さに気づいてしまったから。誰かからのパスが来ないと動こうとしない。相方のボケだけ自分で受け取ることができる。だがそんな相方とも今はもう友達ですらない。ある時からは。


 『優勝は、臨時校長!』

その瞬間、俺は背景になった。マンザイプレミア優勝者、臨時校長の背景。

 

 俺は負けた。だから1位を目指した。それだけの話だ。どれだけテレビに呼ばれようが所詮は2位。

俺は2位の男、ソバナイトの相馬透なのだから。それを変えるための努力はもちろんした。毎日ネタを書いて、毎日劇場に出て、毎日面白くなっていった。やりたいことなのか分からなくなる時だってあった。ネタ時間に収めなければいけない、そんなので俺のやりたい漫才、俺の面白さが出せるのかって。悩んで負けてを繰り返して気づいた。


「俺、漫才向いてないや。」

相方の内藤に泣きながら連絡した。あいつは俺を励ましてくれた。

 「ちょっと変わってもいい?」

誰かが俺を励ましてくれるのか?それはそれでいいな。

「お前は天才や。正直に言えば俺らは負けとった。お前らの方がネタの完成度は高いのは間違いない。戦略だけや、俺らが優れとったんわ。」

少ししゃがれた声が自分の中の怒りを引き出した。面白さという感覚からは離れた、"戦略"が大事だという彼の言葉に努力を否定された気がした。そんな言葉を出した彼も、彼を1位にした奴らにも、そしてそれを絶対だといい1位以外を背景にした群衆も、俺の面白いを理解してくれたはずだった内藤にも。



 テレビも消し静かになった部屋にチャイムの音は響いた。すぐにドアを開けたと同時に慌てた様子のサラリーマンは入ってきた。困惑する暇もなく彼は言葉を吐き出した。

「サービス終了が決まりました。」

その一言が俺の命綱を一瞬で切断した。

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