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第41話 襄陽2


 だけど、どうやって王濬(おうしゅん)を探すか……。

 いきなり、名前を指定して斥候に探して貰い、登用するのは、明らかに不自然だ。

 もう蜀漢国に仕官しているかもしれないし。もしくは、呉国だな。


 まず、各地の元魏国出身者を調査して行く。だけど、名前は見当たらなかった。

 蜀漢国には、いないのかもしんない。もしくは、在野にいるのかな?


「偽名でも使ってんのかね?」


 次に、呉国各地に斥候を放つ。各城の文武官の名前の調査だ。

 そうすると、意外な話が出て来た。予想外かな?


「……陸抗の部下になってんの?」


 話を聞くと、王濬(おうしゅん)は、俺が洛陽を落とした時に、呉国へ亡命したのだとか。

 曹家に忠誠を誓っていたけど、曹叡・曹芳は気に入らなかったので、魏国再興を目指して、呉国へ移動したらしい。

 こうなると、蜀漢国へは来てくれないかもしれない。


 曹家も魏国も、滅ぼしちゃったしね。


「参ったな~。敵に回すと厄介かもしんないな~」


 司馬師君が、俺の独り言に反応した。


「陛下? そんなに買われている人材をどうやって調べたのですか? 功績もありませんよね? そんな若造に陛下が目をかけるなど……、不思議なんですが?」


 転生特典とは言えない。

 なんて答えようかな……。


「洛陽攻防戦の時に、捕虜から聞いたのよ。暴れている雑将軍がいるってさ」


「……陛下の情報網。感服いたします」


 まあ、嘘だけど信じて貰おう。

 王濬(おうしゅん)は、金遣いが荒くて、性格も荒っぽいんだよな~。それと、プライドが高い。足並みを揃えずに、呉国の首都である建業を真っ先に落としたのは、評価の分かれるところだ。孫晧を捕らえられず、逃げられていたら戦犯になっていた可能性すらある。戦争で博打を打つ人材は、避けたいな。

 武将としては、優秀だけど、扱いづらい。命令違反は、この時代だと罪になる。

 最終的には、あんまり出世しなかったと思うし。


「だけど、呉国を攻めるのであれば、欲しい人材なんだよな~。戦況を見て的確に敵の急所を撃ってんだし。逆に敵に回したくないのもある」


 逆に、戦争になったら、俺を撃ちに来るんじゃないか?

 少し考えたあげく、手紙を出すことにした。


『うち(蜀漢国)来ない? 優遇するよ? 劉禅より』


 返事はすぐに帰って来た。


『蜀漢国を討ち滅ぼすたい。みてなせへん。王濬(おうしゅん)より』


 ダメだねこりゃ。恨まれているよ。

 タイミングも相性も悪いみたいだ。登用は無理だね。

 でも、そうなると……。


「陸抗と王濬(おうしゅん)が立てこもる、柴桑の攻略か~。無理がありそうだよね~」


 戦略を一から練り直しだな。

 マジに、面倒くさいことになった。これ、史実よりも攻略が難しいかもしんない。





「うん? 呉国が出兵して来たの? 江夏に?」


 現在の荊州東は、江夏が蜀漢国で、夏口が呉国だ。川で国境が引かれている。

 元劉備軍の拠点でもあるよね。


「いえ……。宣戦布告は、行われていません。ですが、軍隊が近づいているそうです」


 徐州の江夏には、1万の軍隊がいる。落とされることはないと思うけど……。


「なに考えてんのかね?」


「準備だけして、静観するしかありませんな……」


 とりあえず、江夏周辺の城に警戒するように伝えた。


 呉軍は、国境まで近づくと帰って行った。そして、また来る……。


「これあれだ、伍子胥(ごししょ)の真似だね。そんで警戒しない都市は、攻め落とす気だろう」


 狙いを定められた都市は、騒乱となる。そして、防衛態勢になるので物資を無駄に消費するんだ。

 もうちょっと詳しく調べさせると、王濬(おうしゅん)が動いてることが分かった。

 俺も使った作戦だけど、小賢しい作戦だよね。


「う~ん。困ったな。王濬(おうしゅん)倒しちゃうか?」


 だけど、呉国と同盟はまだ維持されてんのよね……。

 どちらが戦端を開いたかで、後々揉めそうだ。


「陛下! 進言したき儀がございます」


 こいつ誰だ? 多分最下級の雑将軍だな。襄陽に来てから見た顔だ。


「名前教えて」


王渾(おうこん)と申します」


 ごふっ!?

 呉国滅亡に一役買った人じゃないですか。王濬(おうしゅん)に命令するんだけど、無視されて孫晧を捉えたことを、何度も弾劾した人だね。それと、晋国の時代に丞相になる人だ。

 司馬炎君の部下として文武官になっていたのか。

 対呉国戦では、敵将を破るんだけど、羊祜、杜預、王濬(おうしゅん)に比べると、若干インパクトが弱い。勲功第一ではあるんだけどね。

 でも、その後も評価されて出世して行くんだ。


「呉国の挑発は許せません! ここは、同盟を無視してでも戦端を開くべきかと」


 この人、王濬(おうしゅん)のライバルなんだよな~。

 相性がとても悪い。

 そんでもって、戦いたいのか。

 考えてしまう。


「う~ん。戦端を開かなければ、行って来てもいいよ~。防衛の意思を示してね~」


「はっ!」



 こうして、王渾(おうこん)は出兵した。

 大丈夫なんかね? 今更だけど。

 司馬炎君を見る。多分、長い付き合いのはずだ。


「……ちょっと短気で、正義感溢れる性格ですが、用兵には才能があります。大丈夫だと思います」


 まあ、任せてみよう。



 一ヶ月が経過した日だった。報告が来た。

 蜀漢軍と呉軍が、衝突したと連絡が来たんだよ?

 どうなってんだよ?

 司馬炎君は、視線を合わせようとしないんだけど?


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