18.二度目の初夜(2)
「さて。お前は、俺との子を望むと言ったな?」
「は、はい」
オレリアの手の中にあったグラスは、アーネストの手によって奪われる。彼が残りを飲んでしまうと、オレリアをやさしく抱き上げた。
「柄にもなく緊張している。酒を飲んだのは、緊張をほぐすためだ」
「ですが、別に初めてではないですよね?」
「オレリアをオレリアとして抱くのは初めてだからな」
寝台にぽすんと仰向けでおろされた。サイドテーブルの灯りが弱められる。
「アーネスト、さま?」
「これから、お前を抱く……が、本当にいいのか?」
「は、はい……それとも、やはり、わたしのような貧相な女では、その気になりませんか?」
すっと彼の目が細くなる。
「いや? 俺は年甲斐もなく、お前に欲情している」
アーネストが、オレリアの身体をまたぐようにして膝をつくと、乱暴にガウンを脱ぎ捨てた。寝台の下にパサリと落ちる。
オレリアの手を掴んだアーネストは、自分の胸へと押しつけた。
手のひらから、ドクンドクンと激しい鼓動を感じる。
そのままアーネストが顔を近づけてきた。
重なった唇からも、彼の熱を感じた。触れるだけの口づけであるのに、そこから熱が広がっていく。
アーネストの手はオレリアの胸のリボンを解いていた。リボンが解けると、ドレスの前を大きく開かれる。
「ん? この下着は……?」
アーネストも見覚えがあったのだろう。オレリアの髪と同じような色合いの下着。
「これも、アーネストさまの贈りものです」
実は、オレリアも下着をつけるべきか否か、悩んだのだ。だけど、マルガレットの手紙には「ドレスも下着も脱がせたいのよ」と書いてあったので、ここぞとばかりにつけてみた。胸と腰の脇をリボンで結ぶタイプの下着は、それを解いてしまえば隠すべきところが見えてしまう。
「そうか……」
そう言っている間に、彼は器用に下着のリボンも解いてしまった。
「いやではないか?」
「は、はい……」
お酒のせいもあってか、ドクドクと全身に熱い血が流れている感じがした。
彼に触れられるところはどこもかしこも気持ちがよい。
好きな人とこうやって触れ合うことが、これほど心地よいものだとは知らなかった。
「オレリア……」
熱に浮かされたアーネストが、オレリアの名を呼ぶ。
「アーネストさま……」
彼の名を口にできる喜び。十二年もの間、ずっと手紙に書き続けたその名前。
やはり紙に書くのと、言葉にするのでは、伝わり方が違うような気がする。
「アーネストさま。これからもあなたの妻でいてもいいですか?」
それだけがずっと不安だった。アーネストの中では、いつまでも八歳の女の子なのではないだろうかと。
「ああ。これからも、俺の妻でいてほしい。たとえ俺が、六十になっても七十になっても」
「はい。アーネストさまと一緒に、年を重ねていきたいです」
互いの熱に包まれながら、一夜を過ごした。