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90. 怪しい合法カジノ

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください









 香蓮ちゃんの屋敷で着替えを終えて、僕らは任務の目的地へと到着する。

 足を運んだのは港から少し離れた地下に広がる施設。

 そこには、僕らの様に軽くおめかしした客が蔓延り、スロット機器の機械音や盛り上がる会話の喧騒が忙しなく響いている。

 そう、アミューズメント合法カジノだ。


 僕が倒れて眠っている間に島を活性化させる桃源郷計画が始まり、この島は【桃源郷】と正式名称が決定。

 桃源郷が一般市民への開園と同時に、先に準備をしてきた様々な店舗も開店した。

 ちなみに僕らの学園も名もなき国立学園から、桃源学園へと決まった。


 この合法カジノは実態が良く掴めておらず今回はここで、潜入、情報収集。

 生徒会の僕らより階級が上の構成員のサポートが任務だ。 


 紆余曲折あり独断行動で姫を救いドーマ連盟の研究施設の一つを潰した僕らは、怒られたと同時にその功績が認められてしまった。

 その流れで少しグレードが高い任務も任されることになってしまったというワケである。


『集まったようだな、そのまま情報収集を頼むぞ』


 無線を介し、上級構成員を率いる朱鳥先輩のお兄さんの宵一さんが僕らへ指示を飛ばす。

 彼の部隊には渚先生や、美香先生も混ざっている。

 彼等の中で現場での指揮能力は宵一さんが一番高いらしい。


「了解」


 僕らは宵一さんに応答し、3グループに分かれて情報収集を開始する。

 班分けは通販サイトJUNGLEで購入したスティック式のくじ引きで決めた。

 風吹鬼ふぶきと名付けた酒呑童子を宿すまころんと一緒になった僕と威吹鬼いぶきは、一先ず様子見で施設を練り歩く。

 そして彼女へと質問を投げかける。


「風吹鬼の調子はどう?」


「煌河くんの呪力が美味しいって、もっと早く式神になれば良かったって言ってるよ」


「そっか」


 式神にとって呪力を吸うのは娯楽に近い部分もある。

 過去に琥珀は『害のない喫煙じゃの』と言っていた。

 僕の呪力で彼女の気が晴れるなら契約して良かった。

 彼女もいつか姫とも仲良くなれると良いけど……。


 そんな事を思いながら僕らは飲み物を購入しカジノの定番、ルーレットの席へと着く。

 これは……まぁいい、一先ず遊ぶか。

 席に着いた僕とまころんは好きな番号にBETしていく。

 番号が振られたルーレットへ玉を投げ入れ回し、自分の指定した番号に玉が落ちたら勝利となる。

 ディーラーのお姉さんがルーレットを回し玉を入れて、しばらくしてBETを打ち切る。

 玉は8番に落ち9番へチップを全部ブッ込んだ風吹鬼が悔しがる。


「かー! 惜しい!」


「充分だ、行こう」


「大将、掛けた分取り返さないと納得いかないよ!」


 僕は風吹鬼へ声をかけ、席を離れた。

 僕らは怪しまれたのかディーラーのお姉さんは近くにいた従業員へ何か報告している。

 すぐ離席したのはしくじったか? 風吹鬼の言う通り僕のチップの分だけでももう少し遊べばよかったかな。


 それより何故席を離れたかだが、おそらく今のゲームはBET分が多かったのでイカサマをしたんだろう。

 これでハッキリした、このカジノは黒だ。

 ディーラーのお姉さんが呪力を放出し、呪力に反応する特殊な細工のされたルーレットを操っていた。


 ……それにしてもディーラー姿のお姉さんがカッコよくて素敵だったな。

 香蓮ちゃんにもああいう服装は似合いそうだ。

 つい香蓮ちゃんがクールな表情でトランプやチップを扱っている様を想像してしまう。

 良いな……。


 僕はそんな想像をしながらイカサマの件を風吹鬼に伝えた。


「流石大将だね! 気付かなかったよ」


 それは無理もない、薄く繊細に呪力を扱っていた。

 僕の様に術式を扱うタイプでないと見抜くのは難しいだろう。

 やはりドーマ連盟が関わっているのだろうか?


「気を付けないとね、あんな風にならないように」


 僕は数メートル先のスロットコーナーの一角を指さし風吹鬼に言葉を返した。


「くそぉ! どーなってるんだ!」


「なぎ姉、何度やってもそれは無駄だ」


「まだ分からないだろう! エラーを起こすかもしれん!」


 ワインに酔った渚先生がムキになりスロットを打ち続けている姿があった。

 凛華姉さんの忠告も空しく、エラーがでて当たる事まで期待している。

 隣では凛華姉さんと共に行動している朱鳥先輩が僕らに気付き、笑顔で手を振ってくれた。

 か、かわいい……僕は心穏やかになり手を振り返す。


「大将、何ニヤついてんだい?」


「に、ニヤついてないやい」


 僕は風吹鬼へ言葉を返し彼女達の元へと赴く。

 そして凛華姉さんが僕らへと話しはじめた。


「スロットは無駄だと言っているのになぎ姉が聞いてくれないんだ」


「細工がされていて大きい当たりはほぼ出ないようになっているというのに……」


 なるほど、たぶん渚先生も負けっぱなしが嫌で、手持ちの分がある限り取り返すまで続けるタイプだ。

 誰かが面倒を見ていないといつか破滅するだろう。


 やはりこのカジノは怪しい。

 煌びやかな雰囲気に綺麗な空気が漂っている。

 通常カジノは欲望に目をギラつかせたような人間が集まり、人が放つ霊力やオーラはお世辞にも綺麗な物じゃないはずだ。

 僕も数あるカジノを見てきたわけじゃないから断定はできないけど、基本的にはそのはずだ。

 合法カジノだからなのか? 大人だけではなく僕らのような学生も混ざっている。

 観察してみるとイカサマも明らかに頻繁に行われる訳ではなく、ここぞという時に行われている。

 資金調達が目的じゃないのか?

 

 物思いに耽ていたらトイレに行きたくなってしまった。

 冷房もそこそこ効いていてドリンクも飲んだからかな。

 僕はトイレへ行く事を伝え皆の元を離れる。

 威吹鬼と連れションだ。


「ふぅ~」


 一息つくと宵一さんから連絡が入る。


『先のイカサマの件だが、ドーマ連盟が関わっているとしたら我々が調査してるのが知られるのも時間の問題だ』


『貴様はヤツらに顔が割れているだろう、どこかで身を潜め待機してろ』


「ブ、ラジャー」


 僕がクレヨンしんくんバリの返事を返すと宵一さんは声を荒げる。


『ば、バカ! 貴様! 何故それを!』


「え?」


『……なんでもない、切るぞ』


 ……宵一さんてブラジャーをつけているのだろうか。――――――




――――――



『ブ、ラジャー』


「ば、バカ! 貴様! 何故それを!」


 有栖川 宵一は将来もしかしたら何故かたまたま偶然に義理の弟になるかもしれない相手に対し、動揺し言葉を返した。

 その相手の発言から自分が過去に隙を見て、想い人のブラジャーの香りを嗅いだのがバレたのかと思ったが、当の相手は何の事か全くわかっておらずその勘は恐らく外れていた。


(全く陽景め、自分の弟子にバラしたのではあるまいな……)


 宵一は呟きトランプを捌く目の前のディーラーの動きをそれとなく注視する。

 BETの多いこのゲーム、確かに目の前のディーラーは微かながらも呪力を操っている様な素振りを感じさせる事に宵一は気付く。


(あいつは良く気付いたな……侮れん奴だ……)


 そう想いながらも宵一は片手に持ったワインを一気に傾ける。


「お兄さん良い飲みっぷりですね」


「あぁ、中々の味だ」


 話しかけてきたディーラーへ返答し、魅力的な女性だと見惚れてしまう。

 このカジノのディーラーの女性達はクールでスタイリッシュな人が多く、それは宵一の好みのストライクであった。


「お嬢さんは、仕事終わりはお暇ですかな? あなたのような綺麗な花と夜を楽しみたいものだ」


「お言葉は嬉しいですが、身も心も偉大なお方に捧げているんです」


「フっ、その男性が羨ましい」


 そのままアウトになってしまえばいいのになぁ、この変態男は。

 しかしこのご時世、品がある誘い方をすれば男性はこのくらい積極的な方が喜ばれる。

 それほど少子化の影響は強くなり積極的な男性は減っていた。

 だが夜霧の一族はその影響を受けておらず、宵一は良く女性を口説いていた。


「カジノのルールです、ご一読を。 ここでは女性を口説くのもホントはいけないんですよ」


「そうだったのか、これは失礼した」


 宵一は紙切れを渡され、それに目を通す。


(む、これは……)


「さぁ、BETを締め切りますね」


 ディーラーの女性がそう言って、テーブルについている客たちが応答する。

 宵一がカードを配っている女性を眺めていると、同じ部隊で同期の八乙女 美香から無線で連絡が入る。


『ここのカジノのオーナーさん、怪しいわね。 資金の回収が目的でカジノを運営してる訳じゃないみたい』


『資金源には別ルートがあると言っていたわ、それは企業秘密らしいけど……』


 美香は政府の人間としてカジノのオーナーから話を聞いていた。

 宵一は彼女からオーナーの反応や口ぶりからして何か裏がありそうだという報告を受ける。

 配られたカードを眺めながら、宵一は美香へと応答する。


「うむ……」


 するとまた連絡が入ってきた。

 今度は想い人の弟子からだ。


『隠し扉を発見、他に動ける人もいないみたいなので先行します。場所は男子トイレの用具入れです』


「おぉい待て!」

 

 宵一は思わず大きく声を上げ、周りの人間から訝しげな視線を受ける。


「ははは、失礼した……」――――――







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