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88. ケーキに漢泣き

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください








 体調も回復し、僕は学園へと復帰する。

 最後に行った日はクラスの皆から憎まれ口を叩かれたせいか足取りも重く、校門の前で一瞬止まってしまう。


「大丈夫か……?」


 一緒にいた凛華姉さんに声を掛けられ心配される。

 全く、こんな僕を心配してくれるなんてできた人だ。


「あぁ、大丈夫」


 僕が学園に入るとすれ違う女生徒達から声を掛けられる。

 通学途中もそうだったけど今日は学園の子達から挨拶されることが多い。

 何故だ?


 そんな事を思いながら、凛華姉さんと別れ僕が教室に入ろうとすると……。

 またもや足が竦んでしまった。

 教室、入りたくない……。

 自分が思っている以上にこの前の事が効いているようだ。

 やっぱ帰ろうかな……。

 いや……逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ。


 正直逃げてもいいと思う。

 けど今日だけは……麗香達にも学園へ行くって約束しちゃったから頑張ろう。

 僕は微かな気力を振り絞り、ドアを開き教室へ一歩踏み出す。


 ……み、見られてる、よな?

 クラス中の視線を受けながらなんとか席に着く。

 麗香達は……いないみたいだ。

 なんと情けない事か、この学園生活では彼女達にすぐ助けを求めてしまう。

 僕は自分を戒めるように、頬を両手で思い切り叩き気を取り直す。

 バチンという音が快活に教室へと響き、それを見ていた女生徒達が少しざわめきだす。

 まずい、僕の珍行動のせいかクラスが静まり返ってしまった。

 多少気まずい空気が流れ数秒後、前の件で僕へ悪口を言っていた子達が周りにきて声を掛けてくる。


「あの……私達、この前言いすぎちゃって、ごめんなさい……」


「あぁ、全然気にしてないよ。 僕も……普段、変な事ばっかしちゃってごめん……」


 気にしてないってのは嘘だ。

 さっきもあの事が頭を過り帰ろうとしてしまった。

 でも、あれは彼女達のせいじゃない……邪気の影響だったって事が分かったから、もういいんだ。

 僕への気持ちは本心だったかもしれないけど、あんな事になったのは彼女達の本意じゃないはずだ。


「もっと変な事していいからねw」「おもしろいし!」「そーそー!」


 僕の言葉に彼女達は返答する。

 い、いいのか? もっと変な事して。


「ほ、ほんとにいい「いや、やっぱいいやw」


「はははははww」


「うそうそ、普段通りでいいよ!」


 笑いながら彼女達と世間話を続け、なんとか仲直り出来た。

 あの日、彼女達は放課後にルイの元へ遊びに行き


『あんな事しといて良く俺のとこに来れたな、あいつは俺の親友だぞ』


 と怒られたみたいだ。

 それから反省して自分達のやった事を自覚し、僕へちゃんと謝ろうと思ってくれていたらしい。

 ルイお前ってやつは、なんて変態で良い友人で変態なんだ。


 ていうか、僕が惨めに泣いてしまったのって学園中に知れ渡ってるのか?

 教室につくまでやけに声をかけられると思ったら、それが理由だったのか……。


「そうだ、ルイくんの体調どう?」


「あぁ、まだちょっと悪いみたいで。慣れない環境で疲労がたまってるのかもね」


 そう、ルイは僕が目覚めてから起きていない。

 僕を呼び覚ますために彼は眠ったらしく、入れ替わりで今度は彼が寝たきりになってしまった。

 琥珀は『気にするな、ルイは何も心配いらん』と言っていたから大丈夫なはずだけど。

 詳細を聞いてもはぐらかされるんだよな。

 ちなみに学園では僕らは、国が用意した一軒家で共に暮らしているという事になっている。


 それと、ドーマ連盟の実験施設にいたクラスメイトの女の子だけど……。

 彼女はやはりスパイだったみたいで、まころんが麗香達のグループから外れていたのは怪しい動きをしている彼女を近くで監視するためだったみたいだ。

 スズには知らされていたのに、僕には一切知らされていなかった。

 なんでだろうとスズに聞くと『アンタ嘘つけないでしょ』と言われてしまった。

 まぁ……確かに、僕の嘘は凛華姉さんによく看破されてしまう。

 それのせいで知らされなかったんだろうな。

 そんな事を思っていると。


「あー! 煌河くんきちゃってるよ!」


「二人とも早く!」


 まころんが教室に入るやいなや声を上げ、陽菜が後ろの2人に呼び掛けていた。

 後から大きいケーキをトレーに乗せて運んでくる麗香と千冬の姿が見える。

 そして2人はそのケーキを僕の机に置いた。


「じゃーん! 復帰祝いのケーキ!」


「麗香の手作りだよー」


 ……。


「麗香がはりきって早朝から作ってたんだよね~」


「バラすなよー!」


 ……。


「ひな達も手伝ったんだよ!」


「そーそー、皆も手伝ってくれてさ! はい、食べてよ!」


 ……。


「こーがまた泣いてる!」


「あーあー、麗香泣かしたー!」


 僕は、あの時本気で学園を、島を離れようと思った。

 けど……こうやって麗香達は思ってくれている。

 その事がなんだか嬉しくて、僕は情けなくもまた涙を流してしまった。

 切り分けてくれたケーキを、いつかの弁当みたく泣きながら口へ運ぶ。


「うぅ……なんて美味いケーキだ……!」


「泣き虫……」


 スズ、いつの間に隣の席にいたんだ……気付かなかった……うぐぅ、美味い。


「良かったぁ、じゃ皆で食べよーよ!」


 麗華がそういい、教室でケーキパーティーが始まる。

 学園の鐘が鳴ってもお構いなくケーキを食べる中で渚先生が入ってくる。


「こらー席に付けー」


「なぎちゃんも食べてよ、はい」


「そ、そうだな。せっかくだから頂こう」


 ケーキを食べながらホームルームを終え、一日の始まりを実感する。

 ともかく、無事戻ってきたんだな。

 僕の島での日常に。




――――――




 僕達が朝のケーキパーティーを終えた日の放課後。

 いつかの歓迎会みたいに皆でアミューズメント施設を訪れた。

 軽く体を動かし腹を空かせた後、今はおやつを食べながらカラオケを楽しんでいる最中で、僕は麗香と共に皆の分のドリンクバーを

注いでいる。


「アタシさ、アンタもう出ていっちゃったのかと思ってたw」


「あ、あぁ……それは……」


 僕は麗香の言葉にお茶を濁すように口をどもらせる。

 教室で悪口を言われ上映祭が終わった次の日、姫の居場所が判明しそのまま救出に向かったんだよな。

 それで僕は約一週間眠り、起きた後も体調を整えるため3日程学園を休んだ。

 心配させてしまったかもしれないな……。


「でもさ、こうして帰ってきて元気でホント良かった! また何か事件だったん?」


「悪いけどそれは……」


「そーだったw」


 ……上映祭のあの日、麗香に妙な勘繰りをされてしまい、彼女の中で僕は現人神の知り合いという事になっている。

 僕のせいで彼女達を巻き込まないか心配だ。


「もし何かあったらさ、アタシも手伝うからね」


「……麗香、一つ約束してほしい」


「どうしたの、改まってw」


 僕はいつになく真剣に彼女に伝える。

 似合わないかもしれないけど、でも何かあって手遅れになったら嫌だから。


「もし些細な事でも、麗香に、皆に何かあったら……僕に相談して欲しい……あと噂の現人神と知り合いって言うのもくれぐれも秘密に……」


「わかった、頼りにしてっからね!」


 麗華は素敵な笑顔で笑いながら僕の背中を叩き言葉を返した。


「おおわぁ!」


「あ、ごめんw」


 背中を叩かれた振動で、巨大なお盆に乗せたドリンクが少し零れる。

 僕らが部屋に戻り皆にドリンクを配ると、クラスメイトの女の子が僕へマイクを渡してくる。

 彼女は【日下部くさかべ みどり】愛称はみどりん。

 前髪パッツンがチャーミングな金髪の女の子だ。


「こーがくんあの曲歌ってよ!」





挿絵(By みてみん)





 みどりんは今日の朝から割と距離が近い、今まではそんな事なかったのにな。

 いきなりどうしちゃったのか尋ねてみると、彼女は僕の泣き顔を見る度にゾクゾクする感覚に襲われ、今では泣き顔フェチになってしまったとの事だ。

 僕は教室で何度か泣いていたからな……なんだか責任を感じる……。


「何の曲?」


 僕が言葉を返すと、彼女も千冬達が好きなバンドアニメの曲が好きらしい。

 

「よーし、じゃあ歌っちゃおうかなー」


「やったぁ!」


「みどりんずるーい! ひなもリクエストしたいのに!」


 何はともあれ今はこの時を楽しもう。

 僕はみどりんの期待に応えるように楽しく歌う。


「やっぱかっこいいかも……」「良いじゃん!」「なんだか素敵……」


 みどりんやクラスメイトが何か言っている。

 きっと盛り上げてくれているんだ、僕も楽しんで歌おう。

 とにかく皆が楽しくなれるよう気持ちを込め、僕は一心不乱に歌い続けた。


「スケコマシ……」


「こーがのいいとこバレちゃって悔しいんだね」


「そんなんじゃないって!」――――――





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