87. 夏夜の宴会
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新たに僕と契約した二柱の鬼。
酒呑童子に【風吹鬼】、茨木童子に再度【威吹鬼】と名を授け、護法童子の契約で彼らと僕を呪力で繋ぐ。
そして彼らの記憶の断片が少しだけ僕に流れてくる。
『はははは! そんなん無駄に決まってるやろ!』
『やってみなきゃ分からないだろ?……この術で、それを僕の身体に取り込もう……だからもう少し待っててくれ』
……!?
今のは……あの、姫の中で見たのと同じ記憶……?
僕はあの時、酒呑童子……風吹鬼に気付かなかったのか?
おそらく風吹鬼の視点から、呪符を持った見知らぬ男に、姫、が移っていた……。
……彼女達はやはり面識があったって事か。
ちなみに【姫】とは七夕の日に救出した女神様の暫定的な呼び名だ。
『昔は姫って呼ばれた事もあったし、とりあえず姫でええよぉ』
と言っていた。
久々にお姫様みたいな気分が味わえて本人も嬉しいらしい。
「さ、契約は完了だ」
「やるねぇ大将! 若いのにあの男みたいな腕前だね!」
「あぁ、しかもどことなく似てるしな!」
二人は笑い合って僕の事を見る。
あの男ってさっきの記憶に映っていた男かな。
あれは誰なんだろうか、彼らも褒めていて、彼らの時代に生きた凄腕の呪術師……。
やはり安部清明か?
「あの男って……」
「皆~、準備できたみたいよー」
僕が彼等に問いかけようとしたら姫が部屋に入り、ある知らせに来る。
「あぁ……へ? また戻っちゃったみたいw」
……そう、酒呑童子改め風吹鬼は姫と遭遇すると身を隠してしまう。
彼女の妖力や魂が安定しなかったのは、これが理由だ。
さっきの記憶からして、きっと過去になにかあったんだろうな。
姫と再会する事で影響を受けてしまったのかもしれない。
「彼女にはまだ心の準備が必要みたいだから、姫はあまり近づかないように頼むよ」
「んもぉ、いけずやなぁ。 まぁ仕方ないね」
今日はせっかくのBBQパーティーだ。
僕の体調が良くなったら皆で任務達成のお祝いをしようと話していたみたい。
「せっかくだから風吹鬼も楽しんでね」
「分かった。だってさ」
僕らは部屋を後にし、庭へと出る。
そして生徒会の皆、式神の皆が暖かく出迎えてくれる。
ドーマ連盟や暗躍していたヴァンパイア、そこから新たな問題も出てくるだろうけど……。
ともかく、一つの大きな戦いを終えた事を皆で祝おう。
「よし! 皆グラスは持ったな! こーちゃん頼むぞ!」
凛華姉さん、また僕に振るなんて。
僕が変なギャグをかまして滑り倒すのをまた見たいのだろうか。
しかし今回はそうはいかないぞ。
「柄じゃないけど、今回は真面目に言わせてもらうよ」
「皆、ホントにありがとう。 皆がいなかったら僕は彼女との約束を、姫を助けられなかった」
「命懸けの戦いだったけど、今日は全員が無事で帰れた喜びを分かち合おう」
……そのまま乾杯をしようとしたら視界の端にパイナップルが移り、それを手に取る。
だめだ、この衝動は……抑えられない。
「う~ん、完璧なパイナップルだ。 略して乾杯! なんちゃってw」
「……まず野菜から行くか」
「そうね、お肉はメインディッシュにしましょう」
「こっちの台は俺が焼くぜ」
「ジュースおかわり……」
……僕を無視して皆BBQを始めてしまった。
どうやら笑うのも忘れてしまったようだ、面白過ぎて。
夕焼け空に飛ぶカラスが鳴いている、僕を慰めているようだ。
ありがとう。
「アーーホーーー」
あの鳥いつかぶっ飛ばす。
とまぁ、冗談は置いておいて何か足りないなと思ったら風鈴だ。
最近バタバタしていたけど近々風鈴祭りも開催される。
皆で作った風鈴を飾るのもいいかもしれない、やっぱり縁側には風鈴が無いとね。
それとドーマ連盟の研究施設にあったあの神剣は姫が持ち出した島のものだったみたいで、それを起点とし琥珀が結界も張り直した。
桃源郷計画も本格的に始まり、この島に様々な人が来訪するだろう。
もちろん悪事を働く人も出てくるだろうけど、そのために僕らがいる。
色々な人が楽しく暮らせる島になったら良いな……。
「煌河くん!」「坊」
僕が縁側でのんびり冷たい茶を飲んでいると、香蓮ちゃんと姫が隣に座り僕にアチアチお野菜を食べさせてくる。
「はい、あーん♥」
まず香蓮ちゃんの野菜からいただく。
「あ、あちち ごめん、熱いし自分で食べるよ」
「あぁごめんね、私としたことが……フー、フー」
……これは、良い。
僕の為に熱いのを冷ますよう、香蓮ちゃんがお野菜をフーフーしている。
なんだか可愛いらしいな……。
香蓮ちゃんの良い香りの優しい吐息が沁み込んだお野菜……ゴクリ。
思わず生唾を飲み込む。
「はい、どうぞ あーん♥」
「あ、あーん」
「こ、こら! ずるいぞ!」
「凛華ちゃん……それこげちゃう……」
「あぁ、そ、そうだな! くっ、迂闊……!」
僕らの様子を見た野菜を焼いている凛華姉さんがこちらに来ようとしたが、小夜に止められてしまう。
「美味しいよ、ありがとう」
「坊、次はこっちや。 たんとお食べ」
「もぐもぐ」
嬉しいし美味しい、けど皆がいる中でこれは恥ずかしいな。
「ありがとう二人共、けど体調も良くなったしもう平気だよ」
僕は逃げるように凛華姉さんの元へ行き、焼師を代わる。
「代わるよ、凛華姉さんも食べて楽しんでよ」
「こ、こーちゃん♥ なんて出来た夫なんだ♥」
そういうつもりで変わったんじゃないんだけどな……。
でも、嬉しそうだし……こんな日くらいいっか。
そして、僕が皆の具材を焼き凛華姉さんが食べさせてくれるのがしばらく続いた。
威吹鬼の方は具材を焼きながら風吹鬼に食べさせて貰っている。
僕が笑顔でその光景を見ていると、威吹鬼は恥ずかしがっていた。
「姉御、やめてくれよ!」
「ふふ、くるしゅうない!」
「今度は真心の嬢ちゃんかよぉ」
時々あんな風に入れ替わっている。
「もぐもぐ」
「ふふふ……まるで本当の夫婦みたいだな!」
「凛華、ずるいよ そろそろ変わってよ!」
夕景の紅から夜闇の黒に移り変わる空の景色を楽しみつつも、思い思いに飲んで喋って歌い騒ぐ。
途中からおじさんご夫妻に、渚先生や美香先生、苺ちゃんも合流し、僕らは任務達成の宴会を楽しんだ。――――――
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