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85. 隔世の印

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください








「よくきたな! 小僧共!」


 ……。


「よくきたな! 小僧共!」


「……キェェェェェェアァァ「それはもうよい!!!!!」


 僕が三度目のあの決まり文句を言おうとしたら、威厳溢るる声の主に止められる。

 しかし……なんて雄々しく威圧感のある存在なんだ。

 彼を瞳に映すと自分の魂が委縮してしまうのを感じる。

 琥珀という神様に出会って耐性をつけていなかったらチビっていたかもしれない。


『神の御前で粗相を犯すとは何事じゃ! おっしこ漏らしたから打ち首じゃい!』


 ……おそらくこうなっていた事だろう。

 危ない危ない、琥珀ありがとう。

 彼女は僕の心を読んだのか、そんな訳ないじゃろみたいな目で僕を見てくる。


「そんな訳ないじゃろ」


 頭をチョップされた、ツッコミありがとうございます。


「それじゃあ私は戻るとしようかね、そこな子供、あの子によろしくね」


「へ? あ、え?」


 物陰からこれまた威厳のある神々しさを纏った優雅な女神様?が出現し、僕へと声をかけてきた。

 全く気付かなかった、最初からそこにおはしていたんだろうか。

 それに、あの子とは一体……。

 僕が言葉に詰まっていると、彼女は言葉を続ける。


「太陽の子だよ、ハーフの」


「それに、今回はあの子……天女の子を救ってくれたのを感謝するよ」


「私も……悪かったね……」


 ……そう言い残し、女神様?は部屋を去っていった。

 おそらく前者は香蓮ちゃんで後者は、あのお伽噺の天女様の事だろう。

 僕が助けたのは、一応その生まれ変わりみたいだけど……。

 しかし二人とはどんな関係なんだ?


「おう、姉貴ぃ、助かったぞい! またな!」


 キョトンとした僕の顔を琥珀が見ていたのか、彼女が僕へ教えてくれる。


「今のはアマテラス様じゃな」


「は?」


 僕を思わず腑抜けた声を漏らしてしまった。

 アマテラス様ってあのアマテラス様か?

 いや、そうだ……ここは高天原……。

 それにアマテラス様を姉貴と呼ぶ、この自室の主は……。


「いかにも、儂がスサノオノミコトじゃい!」


 彼は『ガーッハッハ』と笑いながら僕を見ている。

 僕は大変な場所に呼び出された事を自覚し、ただ呆然と立ち尽くす事しかできなかった。

 高天原に来たと言われた時に気付くべきだったんだ。

 イザナギ様から生まれた三貴神の神様がいて当然だ。


 や、やばい……僕は自分の愚行を思い返し冷や汗を吹き出す。

 この間の僕はびっくりしたとはいえ、倶羅無やお守りに宿ったスサノオ様を投げてしまっていたという事になる。

 これは不敬罪に当たり、本当に打ち首に……。


「そんな訳ないじゃろ」


 またもや琥珀に軽くチョップされる。

 た、確かに。 スサノオ様は僕を助けようとしてくれていた。

 自分が救おうとした存在をわざわざ殺すのは、無い……はずだ。

 ないよね……?

 それに大胆不敵で粗暴ではあるが、慈悲深くお優しい神様とされる。

 しかし……一体僕に何の御用なんだろう……。


「さて、何故ここに呼んだか知りたそうじゃな、小僧」


「は、はい……」


「それはな……」


「はい……」


「儂にも分からん!!!」


 !?

 そ、そうですか……分かんないんですか。


「まぁ、理由はいくつかあるがそんなもん些細な事じゃい」


「例えば、封印を見てやろうとか」


「安全に向こうに帰れるとかな」


 ……。


「めっちゃ大事じゃないですか、僕にとっては死活問題ですよ」


 それより封印って何だ……?


「封印が何か知りたそうじゃな、まぁ聞け」


「はい……」


「小僧は赤子の時、有り余る力や記憶が封印されたんじゃ」


「はい」


「以上じゃい!」


 何か長話になるかと思ったら随分さっぱりと終わったな。

 でも……何故そんな封印を……。

 まさか……僕は本当に安部清明の生まれ変わりなのか……!?

 いや、それよりも。


「わざわざ封印されたなら話しちゃって良かったんですか? 当事者の僕が知ったら不味いんじゃ……」


「いや、儂人間じゃないし、そんなの知らんもん」


 知らんもんて……。

 まぁ……た、確かに。

 神様にとっては人間のどうでもいい事情なんかがいくつもあるのかもしれないな。

 封印を施したのは人間側だろうし。


「まぁ妾が詳細を説明してやる、煌河」


 琥珀がそう言い、何かの術の準備をしながら僕へ説明を続ける。


「お主は多大な前世を以て生まれて来たんじゃ」


「それを一気に背負ってしまうと、赤子の容量じゃ耐えられんからの」


「ギャル語で言うとキャパかったんじゃ」


 なるほど、簡素な上に分かりやすい説明だ。


「そして異常な力も持っておった」


「妾もお主と契約した後、弥彦から聞いたんじゃがのう」


「お主が生まれた時、各所で霊障が起こったそうなんじゃ」


 弥彦おじさんは全て知っていたのか……?


「なんでもお主の強大な呪力や魂、この前助けた天女の生まれ変わりが共鳴したみたいでの」


「記憶と共に力も封印されたわけじゃ」


 ……そんな事があったなんて。

 色々考えだすとキリがないけど……。

 とりあえず今回は……その封印を解くっていう事なんだろうか?


 ……多大な前世の記憶が……また流れ込んでくるのか?

 僕は息を飲み、不安が頭を支配する。

 並行世界での出来事で、僕じゃない僕だけでもあんなパニックになってしまった。

 それ以上の事を、受け止められるんだろうか。


 僕が不安に駆られていると、琥珀は話を続ける。


「まぁ心配するな、ここまでの出来事は帰ったら忘れるからの」


「そうなの!?」


 こんなすごい体験を忘れるなんて、なんだかもったいない気がするけど仕方ないか……。


 どうやら琥珀が言うには並行世界でご飯を食べた代償として、天女様を助けて気を失ってからこれまでの記憶がさっぱりなくなるらしい。

 そうしないと元の世界に帰れないんだと。

 

「それに、今回は封印のほんの一部を解除するだけじゃ」


「少しだけ前世を思い出しやすくするきっかけを作る」


「それで段々思い出す様になるからの」


 なるほど、一気に全ての記憶が流れ込んでくるわけじゃないて事か。

 まぁ、こういうのは正直慣れだろう。

 今思えば並行世界の自分を体感した事である程度耐性はついたと思う。


「よし準備完了じゃ、そこの陣の上に立て」


 僕は琥珀の指示通りに動く。

 そしてスサノオ様が僕の前に立つ……で、でか!

 世界に神話や伝承として伝わる巨人伝説って本当にあったのかもしれない。

 こういう存在が巨人と言われてきたんだろうか。


「魂に刻まれし隔世の印、陣を介し紋様を現わせ」


 琥珀が真言を唱え、スサノオ様が剣を構え紋様の一つを斬る。


「まぁこれじゃろうな、ふん!」


 いや、待て。

 まぁこれじゃろうなは大丈夫じゃないだろう。

 琥珀の真言で目の前に現れた紋様の一つを、スサノオ様が切り裂き解除する。

 ほ、本当にこれでいいのか?

 てきとーな感じだったが……。


「これで何かをきっかけに、少しは前世が思い出せるかもしれんの」


 琥珀がそう言い、儀式は終わった。

 色々あったけど神様方がアッサリしているせいか、僕も比較的落ち着いている。

 そういうのも考慮してくれたのかもしれない。


「そろそろ、ここから帰った方がええのぉ。 ほれ、またしばらく会えなくなるぞ」


 スサノオ様はそう言い、僕らを案内してくれた侍女らしき女性の背中を押す。

 そして彼女は、僕の手を握ってくれる。

 ……なんだ、この気持ち。


「向こうでも、元気でね」


「は、はい」


「琥珀様の言う事、ちゃんと聞くのよ」


「わ、わかった……」


 何故だろうか……彼女の温もりを感じると……涙が……。


「貴方の幸せを、いつまでも願っているからね……」


「うん……母さん……」


 ……え?


「すみません! あれ、なんでだろう」


 僕は涙が溢れて止まらなくなってしまう。

 母さんは僕が生まれたと同時に亡くなった、そう聞かされた。

 だからいないはずなのに……。


「いいのよ、大丈夫だから……あなたならどんな苦難も乗り越えられる……そう信じてる」


「悪いが時間がない、戻れなくなる前に行くぞ、これを飲め」


 琥珀から霊薬を渡される。

 なんだか名残惜しいけど、戻れなくなる前に行かなきゃ。

 きっと皆心配してくれている、悲しませることはできない。


「ありがとうございました。 じゃぁ、また!」


「またね!」


 僕は最後にお礼を言い、琥珀から渡された霊薬を飲む。

 笑顔の女性に見送られて、僕は意識を閉ざした。――――――



――――――



 煌河が消え去ったスサノオ神の自室で、一人の女性がすすり泣く。


「どうじゃった? 赤子以来の息子の姿は」


 彼は彼女にそう問い掛け、女性は朗らかに笑いながら返答する。


「本当に、夢のようでした。 本当に、ありがとうございます」


 涙を流しながらも、哀しそうに、そして幸せそうに笑う女性の背中を撫でるスサノオ神も遠い目をしていた。

 それは、昔を懐かしみ久方振りにまみえた友人や家族を思うような瞳だった。


「願おう、やつが苦難を乗り越える事を」


「これからあの子には、もう一人のお母さんがいますものね」


 ……スサノオ神は肉親である存在を思い浮かべ、軽く笑う。


「あぁ、あの子はできる子じゃからのぉ……」――――――









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