81. 永遠の約束 Bパート ~二章:終幕~
ご閲覧ありがとうございます!
AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください
追記:次回の予定を後書きに掲載しました
肉体から魂が離れた僕は、気を失い命が朽ちていく彼女の心の中に入り込む。
そして降り立った場所は、以前に訪れた時と同じように邪気が蔓延り彼女を苦しめていた。
時間がない……急いで彼女の魂を見つけないと!
「どこだ……!?」
凛華姉さんが昔くれた手ぬぐいが、周囲の邪気を遠ざける。
幼きあの日、どうしようもできなかった邪気を横目に暗闇を突き進む。
今の僕なら全て葬れる……。
しかし彼女の魂を見つけずに全て一層したら、その魂まで傷つける恐れがある。
だから一早く見つけないと……。
約束したんだ……。
僕が幼き日の約束を想いながら進んでいると、僕の見知らぬ記憶が脳裏を駆け巡っていく。
『はははは! そんなん無駄に決まってるやろ!』
『やってみなきゃ分からないだろ?……この術で、それを僕の身体に取り込もう……だからもう少し待っててくれ』
なんだ……?
『あなた……愛してる……』
『私も、永遠に君を愛すると誓う……』
『うおおおおん!……おめでとおおお!』
幸せそうな彼女を助けたい……本来あんな笑顔ができるんだ!
どこだ……!?
『私はもうだめです……来てくれて、助けようとしくれて、ありがとう……』
『すまない……私が未熟なばかりに……』
『いいえ……本当に嬉しかった……誰も助けてくれず、苦しかったけど……あなたが……—―――――』
『……約束だ、魂に刻まれたこの苦しみから、永遠をかけて君を救う……』
彼女の心に刻まれた記憶が、僕に伝わってくる。
脳裏を流れるその記憶を感じながら、僕は必死に暗闇を駆ける。
……どこにいるんだ!? 今度こそ、彼女を救う!!!
人々に憎まれ蔑まれ、もう充分だろう!
何故、彼女一人がこんな仕打ちを受けねばならない!
今度こそ、彼女を……!
あれだ……!
「……いた! 待って!!!」
まずい、彼女の生命力が……消えていく……。
待ってくれ……! ここまできたのに!
まだだ、絶対に諦めないぞ……。
あの時とは違う、今度は彼女の苦しみのみを切り裂く……。
「邪魔だ!」
僕は彼女の心に蔓延る邪気を偽神力のほぼ全てを使い一掃した。
そして彼女の魂へと駆け寄る。
「助けに来た! もう邪気は祓ったんだ!」
「だから……起きてくれ、頼む……」
いくら呼び掛けても彼女は応えてくれない……。
邪気に包まれても輝きを損なわなかった綺麗な魂が、闇に沈むように小さくなっていく……。
『……約束だ、魂に刻まれたこの苦しみから、永遠をかけて君を救う……』
!?
僕が自分の不甲斐なさに心を砕かれそうになった瞬間、先程見た彼女の記憶が脳裏をよぎる。
そうだ……彼女の記憶の中のあの人が使おうとしていた術。
今なら分かる、あの人は生死を司る存在だ……そして……。
僅かに残った力を練って、脳が焼かれそうな熱さを感じながらも僕は己の生命力を媒介に術を発動する。
今の僕の魂と彼女の魂は親和性が高い、これなら……。
これはきっと安部清明が行使した、死の淵にいる存在を救う術『泰山府君祭』の元になった術だ。
あの時果たせなかった約束を、今ここで果たす!
私の命を、生命を彼女に捧げる。
今度こそ、笑って生きてくれ……。――――――
――――――
「はぁはぁ……こりゃぁ流石にキツくなってきたぜ……」
「諦めちゃだめ……!」
「確かに、そうだなっ……らぁっ!」
威吹鬼が小夜へ同意すると同時に妖魔へと拳を繰り出し、妖魔は霧散する。
しかしそれは、無数に存在する妖魔の一体に過ぎなかった。
この施設を取り仕切るような幹部の人間を威吹鬼と小夜の二人は打ち倒した。
その後、施設内に溢れ出した瘴気から生まれる妖魔を相手取り、倒れ伏して気を失う二人を、自分たちの主とその隣で眠る女神を守っていた。
襲い来る妖魔を小夜が妖術で一掃し再度力を溜める、威吹鬼が迫りくる妖魔から皆を守る様に立ち回る。
それを繰り返していたが、あまりの数の多さから2人にも体力と精神の限界が近づいていた。
口では強がりつつも、二人が膝を付きそうになった時。
「ハァッ!」
香蓮が聖槍から極大の魔力とオーラを駆使したビームを放ち、周囲の妖魔ほぼ全てを消し去った。
「セアッ!」
そして凛華が持ち前の敏捷性を活かし、香蓮が打ち漏らした妖魔を刈り取る。
「大丈夫かい!?」
香蓮と凛華が2人の元へ駆け寄り、合流する。
小夜と威吹鬼は、安心から息を漏らして地へとへたり込んだ。
「助かった……」
「安心するのはまだ早いぞ」
妖魔を一掃したとはいえ、周囲にはまだ邪気が漂っている。
新しくまた妖魔が生まれるのも時間との勝負であった。
凛華は次の問題に備え、皆へと指示を飛ばす。
「とにかくここを離れるぞ! 動けるか……?」
「大丈夫だ、煌河の兄貴は俺が! その人と小夜のお嬢を頼む」
「ごめんなさい……」
小夜は妖力を使い過ぎて、限界が訪れていた。
使い慣れていない大きい妖術を連発し、エネルギーを使い果たし意識はあるが身体をろくに動かせない状態だ。
「アビス、小夜ちゃんとこの方を頼む、お願いだ」
威吹鬼が煌河を脇腹へ抱え、アビスは唇をブルブルと震わせ返事をし香蓮の期待に応える。
意識を失っている女神と小夜を乗せたアビスと共に、一同は部屋から脱出する。
「よし、行くぞ!」
息を切らしながら走り抜け、広い部屋に出る。
すると、周囲の邪気からまた妖魔が生まれかけていた。
「くっ……先程片づけたばかりの場所だぞ……」
凛華と香蓮が再び武器を構えると、漂う瘴気は勢いを無くし消えていく。
そして施設内を覆うように結界が張られていくのを二人は感じた。
皆が安心していると、無線から連絡が入る。
『瘴気の元は断ったが、伏兵には気を付けるんじゃ』
琥珀が状況を好転させてくれた事に、各々吐息を漏らして安堵した。
あとはドーマ連盟の残党や伏兵に気を付けつつ施設を脱出するだけだ。
「一先ずは助かったみたいだね」
「あぁ、行こう」
先程まで騒がしい音を立てていた戦闘の跡地から一同が脱出すると、そこには既に脱出していた仲間達と夜空へ瞬く満点の星空が出迎える。
そして皆が所属する組織、八咫烏から凛華へと連絡が来る。
もうすぐ応援もこちらへ付き、事後処理もしてくれるそうだ。
凛華はその事に安堵しながら皆へと伝えた。
「一先ず任務完了だ、皆ご苦労」
滅多にない大仕事を終えて、皆は肩の力が抜けたのか笑い合う。
しかし、琥珀は伏兵を警戒し結界を張りつつも、中々起きない煌河の身を案じていた。
「……煌河」
皆が喜びを分かち合い笑い合う中、七夕の夜空へ輝く河が目覚めを導くように光を放ち、眠っていた一人の女性が意識を取り戻す。
星々を眺めながら上体を起こし、何が起こったのか訳が分からないまま彼女は綺麗な瞳をゆっくりと、何度も瞬かせていた。
「目覚めたか、こーちゃんが貴方を救ったんだ」
凛華が起きた女性へと声をかけると、彼女は隣で眠っている少年に気付く。
そして、眠っている彼を眺め様々な想いが溢れ出し、彼女の心を、胸の中を締め付ける。
永きに渡り彼女を苦しめていた負の念はその少年によって取り払われ、身も心も生まれ変わったように軽くなっていた。
その女性は眠る少年を抱き上げながら、嗚咽を漏らす。
夜空の星々が流れていくように、彼女の瞳から雫が流れ落ちていく。
悠久の時を経て果たされた約束を祝福するように、天の河は二人の再開を静かに照らしていた。
――――――
第二章 天河導ク天女ノ編:終幕
――――――
ご愛読ありがとうございます!
面白かったら乳首をダブルクリックするようにブックマーク、評価をお願いします
気持ち良いので
三章は一週間くらい日を置いてから投稿開始しようと思います
これから物語が進むにつれて徐々に更新していく年表も以前の話をすぐに確認できるように投稿予定です




