79. 怨念
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神力を封じる封殺結界を破るため、術が展開されている場所へと僕らは向かう。
洞窟の中を進むと横道に病院を想起させるような手すりの壁や部屋があったりと、段々と景色に現代的なものが増えていく。
そんな中歩みを進め、曲がり角を曲がろうとした途端……。
「な……!?」
遭遇した研究員らしき人物へ正面からいきなり呪符を飛ばし、先程の門番と同じ手順で無力化させた。
施設の中はほとんど研究員で構成されているのか、こうして遭遇する度に瞬時に無力化できている。
順調だけど……そろそろ僕らが侵入したのもバレてるかもしれないな……。
そろそろ結界の中心へ近づいてきたと思う……もう少しだ……。
「……ここは?」
「血の臭いでやんす……」
道を進むとかなり広い部屋へと出て、凛華姉さんは剣を構え疾風が呟く。
なんだ? 確かに妙な血の臭いがする。
それと獣臭さも……。
「ヒョォー……」
……。
僕らは神経を研ぎ澄ませる……。
「ヒョォー……」
綺麗な、それでいてどことなく不気味な鳥の鳴き声だ……。
しばらく沈黙が続く……。
すると、部屋の中の出入り口が突然閉まると共に、新たに目の前の巨大な扉が開く。
「グルルォォ!!!」
異様な重圧を放つでかい獣が姿を現し、目の前の白百合さんを目掛けて飛び掛かる。
「キャっ!」
「母上ぇ!」
「くっ……!」
疾風の叫び声を背に僕は獣の目の前へ結界の呪符を飛ばす。
結界は明滅し彼女を守るが秒で破壊される。
僕と凛華姉さんがその間に白百合さんの前へと立った瞬間。
「ふん!」
「ギャァオン!」
横から琥珀が獣の脇腹をローリングソバット(回し蹴りの様なもの)で蹴り飛ばし、獣は勢いよく吹き飛び壁面へ叩きつけられた。
ひえぇぇ……やはり彼女は怒らせないようにしよう、神力を使わないであれだもんな。
獣が僕だったらあの蹴りで腹を貫かれているだろう。
「ごめんなさい、びっくりしてしまって……」
「大丈夫ですよ、次から気を付けましょう」
僕は謝る白百合さんに声をかける。
そして壁面へと叩きつけられた獣を良く見てみると、それは……。
猿の顔を歪ませ、熊のような胴体を持ち、足には虎の模様、尻からは尾のように生えた蛇がこちらへ睨みを効かす。
まるで様々な動物を掛け合わせたかのような様相をしていた。
なんで……こんな……。
「哀れな……」
琥珀が呟くと部屋のスピーカーからか、こちらを嘲る声が聞こえてくる。
「ははははは! まさか餌が自ら飛び込んでくるとはな! 神の効き腕ぇ! 安部清明であろう貴様をこの鵺に食わせてやる!」
鵺……古くから伝わる日本の妖怪。
正体は公に野鳥のトラツグミ、古代の巨大レッサーパンダ等とされたが、それは僕らの界隈でも同じだ……。
出てきたとしても、人の思念によって影響を受けた妖魔が姿を模したものに過ぎないはずなのに……。
目の前の獣から伝わってくる……人を憎む動物達の怨念が……。
「命を弄ぶとは……ここまでするやつらじゃったとはの……」
鵺は凄まじい蹴りを喰らったというのに、意に介さない様子で立ち上がり唸り声を上げる。
「煌河……ここは妾に任せてくれんかの……時間もないじゃろう、先に行け……」
「私も戦いますわ……!」
「せ、拙者も!」
「分かった、二人共、琥珀のサポートを頼む」
僕はそう言葉を放ち白百合さんと琥珀に呪力を供給する、疾風はスズの従魔だから無理だけど琥珀と白百合さんはこれで能力が上がる。
凛華姉さんが閉まった扉を切り裂き、僕らは走って先へ進む。
「すぐ楽にしてやるからのう……」
琥珀の悲しげな声が後ろから聞こえてきた。
きっと彼女達は、自然界で過ごしていた妖怪や動物として思うところがあったのだろう。
人間の僕らでさえこんなに嫌な気持ちになるんだ……彼らの苦渋は想像を絶するほどなのかもしれない。
その場を後にし通路を走り抜ける間、複数人の術師が攻めてくる。
ある時は僕が隠形で姿を消し、隙を見て捕縛。
またある時は姉さんが力業で強引に突破。
僕が囮になっている隙に小夜が敵を無力化する。
ルイは蝙蝠の姿になって飛び回っている。
「がんばれー! 皆ぁ!」
後で股間につけたままの葉っぱひん剥いてやる。
なんとか連携を取りながら先へと進むが……。
まずいな……思ったより時間が掛かっている。
また広い部屋に出た……あの奥の部屋に結界の核があるのを感じる!
僕らが先に進もうとすると、奥の部屋の手前にある横の部屋からある人影が姿を現す……。
その人影はこちらへと歩いてくる、顔を隠していた影が明るみになり僕はその顔を見て驚愕した。
「き、君は……」
「ここまできちゃったんだ、安部清明なら当然か」
「む、知り合いなのか?」
彼女は……クラスメイトの……ついこの間、僕がクラス中から蔑まれた時にいの一番に声を発した女の子だ。
彼女の顔を見て僕はあの言葉を思い返す。
『……こんなんじゃなくてルイくんだったら良かったのになー』
こんなところで何をしているんだ……?
いや、もしかして彼女も囚われて……?
僕が困惑していると、彼女は楽しそうに語り出す。
「ははは、すごい、島で見た人たちがたくさんだ!」
「それにその妖刀、やっぱりキミが【桃源郷の現人神】なんでしょ?」
「【神の利き腕】と【桃源郷の現人神】は同一人物だったんだ!」
「さぁ、勝負しよう!」
そんな……。
「溢れる瘴気よ、恨みの形を成せ、骸の集団となりて敵を討て! 急急如律令!」
彼女は瘴気の溢れる小瓶を割り、広がっていく瘴気の中心へ呪符を置き手を重ね真言を唱える。
瘴気から骸骨の兵が次々に溢れ出し、その内の一体が唖然としている僕へ斬り掛かる。
「何している! 約束を果たすんだろう!」
凛華姉さんが間に入って骸骨を切り崩す。
そうだ……僕はあの約束を何としても果たさないといけない。
誰が、何が立ちふさがろうとも、絶対に。
目の前のクラスメイトに何か理由があったのだとしても、今だけは……。
「ありがとう、麗しい姫君……」
あれ……?
「じょ、冗談言ってる場合か! そういう事は普段から言ってくれ」
「あぁ、もう大丈夫、本当にありがとう」
凛華姉さんのおかげで目が覚めた。
僕は目の前の骸骨を退ける。
くっ、結界の中心は目と鼻の先だというのに……。
これを全部倒すのは時間がかかる……。
「私が道を切り開く、小夜 いけるか?」
術師の元へ道を作り、術を稼働させてる彼女を直接無力化する作戦か。
「当然……」
「僕が時間を稼ぐ! 清き結界、生者を包み、破邪を断て! ソーデン!」
凛華姉さんが数秒力を貯める間、僕は結界を発動し迫りくる骸骨の群れを塞き止める。
凄まじい密度の霊力が、姉さんの機械刀へと集約していく。
彼女に合わせて結界を解く。
今だ!
「解!」
「ハァッ!」
雷の様な鋭く重い音が響き、数十体の骸骨を一掃した上に彼女の元まで斬撃が飛ぶ。
「うそっ!?」
骸骨の壁で威力の弱まった斬撃を、彼女はなんとか結界と土の障壁を展開し防ぐ。
しかしその間に小夜が近づき、術を展開していた呪符を取り、拘束の呪符で無力化する。
「小夜、ナイス!」
「えへへ……」
小夜がやってくれた!
これで消えるはずだ。
「それはオトリだよ! さぁ、がしゃ髑髏! 安部清明の生まれ変わりを討て!」
なに……!?—―――――
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