73. 喋った Aパート
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如月家を後にした僕は、自分の部屋で寝転がりながら考えこんでいた。
まだ何か方法はあるかもしれない。
彼女は生きていて、助けを待ってるかもしれない。
ヤツラの居場所を突き止める方法は?
そもそも本当にドーマ連盟なのか?
雑多な考えが頭の中へ浮かんでは消える。
反芻する振り子のようにそれを繰り返す。
考えても考えても答えは出ない。
忙しい師匠にも無理くり電話したが、彼女の行方もドーマ連盟の本拠地もまだ判明していない。
くそ……僕はなんて無力なんだ。
ほんの少し前に彼女を助けられる術が完成したと思ったら、彼女はもう……いや、きっと生きているはずだ。
今はそう信じるしかない……。
僕は庭へ出て乖離剣:倶羅無を呪符から顕現させ太陽に翳す……。
「うぉ……」
いっそ、このまま雑にワープし続けるか……?
しかし、ダメだ、彼女が敵に捕らえられている場合、膨大な呪力や偽神力を次元斬を連発して消費したら戦闘できず結局助けられない。
「おい……そこの」
それに適当に次元を繋げたところで同じとこを行ったり来たり、知らないものや見えないもの、場所を斬る可能性も十分にあり被害が出る。
「まぶし……」
……やつらは?
島で捕らえられているやつらに……無理矢理聞き出すか……?
「くぉるぁ!!!」
!?!?
なんだ!? 敵か!?
「ワシを無視するとはいい度胸じゃのぉ! 堪忍袋の緒がキレキレじゃわい!」
……。
僕は倶羅無を構え、辺りを見回す……。
なんだ、偏屈なじーさんの妖怪か……?
どこにいる……。
「……ここじゃい!!! 貴様のて・も・と!」
「は?」
……僕は手元の剣を見る。
「やっと気付いたか、アシ「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」
僕は思わず発狂し倶羅無を放り投げてしまった。
数メートル先でイメージトレーニングをしながらゆっくり体を動かしていた威吹鬼の足元へ、キレ味抜群の倶羅無が突き刺さる。
「ぉおおう!? 兄貴!危ないぜ!!!」
「ご、ごめん……」
「くらぁ!!! 放り投げるとは何事じゃ!礼儀知らずの小僧めが!」
「お、おい 兄貴……」
「あぁ……」
((剣が喋ってる……))
――――
僕らは居間へ移動し、お茶をすすっている。
喋る剣の話を聞こうというわけだ。
「おい!! ワシの茶は!?」
「え……飲めるんですか……?」
「気分の問題じゃわい!」
つい彼の勢いと圧に気圧されて敬語で喋ってしまう。
なんだろう、なんか只者じゃない感じがするんだけど、剣が喋ってるだけなんだよな……。
僕は白百合さんへお礼を言い湯呑を受け取り、彼へと茶を注ぐ。
「なんじゃお前かい、そこの別嬪さんのお姉ちゃんに入れて貰いたかったんじゃが、アチ!何しちょんじゃい!」
「あ!すみません! 手が滑っちゃった!」
白百合さんを変な目で見たから罰が当たったんだろうな、きっと、うん。
「小僧共!!」
「……」
「小僧共!!」
「は、はい」
この人あれだ、ちゃんと節々に相槌入れないと喋らないタイプの人だ。
「時間もあまりない、単刀直入に言うぞ!」
「は、はい」
「お前の探しているあの子はな」
「は、はい」
「ばっかもぉおおおおおおん!!! 人が話している時は黙って聞かんかい!!!」
おこられた。
この人……話づらっ。
いや剣じゃねぇか、というツッコミは心の奥底に閉まっておこう、たぶんまた怒られる。
そんな事を思いながら喋る剣の次の言葉を、固唾を柔らかくほぐしながら待つ。
「お前の探しているあの子はな、生きておる」
「!?」
生きているのか……! 良かった……。
だけど安心はできない、彼女はもう持たないと言っていた。
生命活動の限界が近いんだ……。
「おい、ワシを握りあの子の邪気を感じろ」
「はい……」
……かすかに感じる……!
線は極端に細いけど、だけどはっきりそこに残っている!
でも……枝分かれして僕の部屋に続いている……なぜ?
「時間もないと言ったな、そうじゃな……午の刻が終わる頃にはここを発つぞ!戦闘準備じゃ!」
午の刻……は確か……。
「11時から1時じゃい!」
そうだった、午前11時から午後1時までを指す時間か。
大体1時間と少しで準備をしないといけない。
まずは、どうしよう……。
「俺ぁもちろん行くぜ! 恩返しのチャンスだからな!」
「助かるよ」
「ワタクシは……」
「大丈夫です、白百合さんはここをお願いします」
「いいえ……ワタクシも行きます、こういう時くらい皆と戦いたいもの」
「恩に着ます」
僕は寺子屋に足を運び授業中の琥珀と小夜を尋ねる。
正直なところ皆に危ない事はして欲しくない、でも彼女を絶対に助けたいという想いが僕を突き動かす。
彼女達は快く同行してくれる事となった。
いざという時は必ず、僕が守る事を胸に誓う。
部屋に戻り、懐に呪符に予備の得物、腰巾着に兵糧、巻物、あらゆる道具を準備していく。
結局僕の部屋には彼女の痕跡は何もない……あの邪気の跡はなんだったんだろう……。
よし……あとは師匠に連絡をする。
忙しいからいつもは1回じゃ出ないけど、大丈夫、今回は留守電を残すだけだ。
「師匠? 僕……戦ってきます、あの時の約束を果たしに」
「敵の居場所はおそらく、島の港から10時の方角です、正確な場所は行ってみないと分かりません」
「もし、もしも僕が死んだら……式神や寺子屋の事どうかお願いします、時間も無いのでこれで……」
……。
僕が電話を切って数十秒後、珍しく師匠から電話が何度もかかってくる。
ありがとうございます……心配してくれて……。
港へ着くと僕が準備している間、先へ着いていた式神の皆が待ってくれていた。
「皆、本当にありがとう、行こう」
港からは船で本土まで移動する、降りてからは琥珀に乗ってフルスピードで飛んでいって貰うから体力も温存して貰う。
この島ともこれで……いや、絶対に生きて帰る。
まだ僕は何も返せてない、島の人に、皆に……。
潮風が目の水分を乾かし反射的に目を瞑り唇を噛みしめ、決意を新たにする。
港へ到着した船へ乗ろうと、僕たちは足を踏み出した。
「待て」
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