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71. 涙星に願う

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください







 夜風がそよぎ、ビーチの暗闇が明るく照らされる上映祭の広場では人々が平和なお祭りを楽しんでいた。

 その裏では、人通りの少ない雑木林の中、学園に通う髪の長い女生徒が機械刀を構え1人の身元不明の女性術師と対峙していた。

 微かに届く喧騒を聞き流し、お互い向かい合った敵に神経を集中させる。


「むざむざ出てくるとは油断もいいところだ、1人でいいのか?」


「うるさい、小娘 時期に応援は来るが貴様如き私だけで充分さ!」


 術師は戦闘開始を告げるように女生徒へ言葉を投げかけるやいなや呪符を飛ばし、それが火炎の玉へと変化する。

 そして勢いよく女生徒を目掛け火炎の玉が飛んでいく。


「効かんッ」


 女生徒は火炎の玉を切り裂き、敵へと駆け足で詰め寄る。

 術師は真言を唱え敵の足元へ沼地を発生させ、女生徒はそれを回避するために飛翔した。


「かかったね! かんねんしな小娘!」


 術師は後退しながらも、火炎の玉と違い切り伏せる事が出来ない大量の水を生み出し女生徒へと吹っ掛け、彼女はそれをモロに被ってしまう。

 女生徒が着地する瞬間、術師は女生徒を目掛け感電を狙い電流を地へと流す。


「これも効かん」


「なっ!?」


 女生徒は服の下に着こんだアンダースーツと、着用している小手によって電気を介した技が効かなかった。

 術師は驚きその一瞬の油断が思考を停止させる、その隙を見逃さず目に見えぬほどの速度で後ろに回り込んだ女生徒はリアネイキッドチョークで相手を絞め落とす。

 

「なかなかの手合いだったが、攻撃用の術が使えないこーちゃんの方がいやらしくて厄介だ」


「凛華、待たせたわね」


「すまない、やはり時間稼ぎは私には性に合わないようだ」


 敵対した術師を如月 凛華が絞め落とし数十秒後、仲間である有栖川 朱鳥が駆け寄る。

 彼女もまた術師の増援であるヴァンパイアを退け生け捕りにしていた。

 今夜の任務は怪しい人物を可能な限り捕らえる事が優先され、凛華は囮に。

 そして朱鳥は周囲を警戒していた。

 捕獲が苦手な凛華は、朱鳥が来るまで時間稼ぎをするという手筈であったが

 それは彼女の性分に合わず、こうして絞め落としてしまった。


「ちょっと! 死んでないでしょうね」


「大丈夫だ、絞め落としただけだからな」


 倒れている術師へ朱鳥は駆け寄り、術師の生死を確認する。


「首の骨が折れてるかもしれないじゃない」


「な、私を何だと思っているんだ! ちゃんと手加減したぞ!」


 術師が生きている事に安堵すると、朱鳥はある事に気付く。

 気を失っている術師の首にかかっている呪具、百鬼夜行の戦いで茨木童子に感じた邪気と同じものが微かに籠っている水晶の首輪を発見した。

 百鬼夜行の日に朱鳥は茨木童子と戦闘はしていないが、あまりにも強い信念と願いの籠った邪気だったため遠くからでも僅かにその気配を感じていた。


「なにはともあれ、早く引き渡しましょう」


 2人は回収班に連絡し、術師とヴァンパイアを引き渡す。

 そしてその後は、何事もなく上映祭警備の任務を終えた。



――――――


 

 麗華、陽菜と別れた僕は陰から小夜と一緒に麗香を護衛し、琥珀は陽菜を護衛し皆無事に帰宅した事

をLEENで連絡を取って確認した。

 家に帰るとルイはまだ上映祭だろうか、琥珀も威吹鬼もいない。

 何か用事があるのかな。

 白百合さんは夕飯の支度をしてくれていた……なんだか申し訳ないな……。

 こういうのはほとんど白百合さんが率先してやってくれるし、任せきりになってしまっている。


「白百合さん、遅くなってすみません」


「あら~、ゆっくりしてくれていいのよ」


「あの……毎日負担じゃないですか? 何か辛かったら言ってくださいね」


「煌河さんはいい子ね~ でもいいの、ワタクシ今の生活が楽しいんですわ」


 彼女は僕の頭を撫で笑顔で話してくれる。

 きっと白百合さんは嘘ついていない。

 彼女の綺麗な瞳の様に澄んだ妖力が僕に伝わってくる。


「ワタクシの作ったご飯で皆さんが笑顔になってくれるのも」


「ときどき皆さんと修行するのも」


「疾風に会わせてくれた煌河さんに仕えるのも、全てかけがえのない思い出ですわ」


 良かった……。

 あまり彼女とこうやって話す機会は無いし、どう思ってるか今まで不安だった。

 けど今の生活を楽しんでくれているんだ……僕の事は主というより子供と思っているかもだけど。

 彼女が嬉しいなら、それでも構わない。

 僕が白百合さんと仲良く話していると小夜も混ざってくる。


「私も……!」



挿絵(By みてみん)



「小夜ちゃんもいい子ね~」


 白百合さんに撫でられ嬉しそうな小夜も混ざり、僕らは夕飯の支度を手伝う。

 その後は夕食も完成し、今日は帰りもバラバラなので別々に食べる事になった。

 僕は屋台で食べたから夜食で頂くと言い、お守りに防御結界を込める作業へ。

 小夜はまたお腹が減ったらしく白百合さんとご飯タイムだ。

 しばらくしてから凛華姉さんと香蓮ちゃんが様子を見に来てくれた。

 二人共僕の家に泊まろうとしていたけど明日も学園はあるから『ありがとう』と伝え帰って貰った。


 そして、皆も帰宅し各々夕食も終え今は深夜。

 夜闇に染まった庭からは、虫の歌声が初夏の始まりを告げる様に響き渡っている。

 縁側で夜風を浴びながら白狐になった琥珀の綺麗な毛並みを整えていると、白百合さんももの欲しそうにしていたので、フェネックの姿となった彼女にもブラッシングをかける。


「気持ち良いですわ~、煌河さんさえ良ければまたお願いしてもいいかしら」


「むぅ、妾の特権だと思っていたのにのう」


「まぁ良いじゃない、美味しいご飯食べさせて貰ってるし」


「それもそうじゃな」


 沈黙が流れたり、軽い会話を挟んだりしながら、ゆっくり時を過ごす。

 なんだかこんな時間は随分久しぶりに感じる。

 島に来て色々あったけど、僕はいつも皆に助けて貰ってばかりだ。

 今日だって生徒会も、僕の式神達もホントは任務があったみたいだ。

 でも僕が情けないせいでまた皆に迷惑をかけてしまった。


「コレ、そんな風に思うな」


 琥珀が尻尾で僕を抱き寄せる。


「妾がどれだけ其方を大事に想っているか、忘れたとは言わせんぞ」


 式神契約の時、彼女の想いが溢れて僕へ伝わってきたのは今でも覚えている。

 そして彼女は僕へ幾千年もの積もる想いを伝えてくれた。

 それは同じ魂を持った過去の僕に向けたもので、今の僕に向けたものじゃないかもしれないと

思っていたけど、違うんだ。

 彼女は今の僕もこうやって大事に想ってくれているし、それは僕も同じだ。


「私もですわ……」


 眠そうな声をなんとか絞り出し、僕の膝の上で白百合さんも応えてくれる。

 もちろん白百合さんも、大事に想っている。

 こうやって大事に想い会える人がいるっていうのは、何よりも恵まれている。

 一方通行の想いは絶対に哀しい……。


「二人共、皆、ありがとう」


 僕は琥珀と白百合さんへ、近くの部屋で晩酌をする威吹鬼、屋根に寝転がって星を見ているルイに。

 寝ているから聞こえないだろうけど小夜へお礼の言葉をかける。

 いつか一人ぼっちの彼女にもこんな時間を与えてあげたい、早く助けてあげたい。

 七夕の近づく空へ想いを馳せ、彼女の行方がいち早く見つかって欲しい、そんな思いが胸に積もっていく。

 頬を伝う涙のように夜空から落ちた一筋の星へ、僕はそう願いを込めた。












ご愛読ありがとうございます!

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