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70. 想ってくれる人

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください








 僕は琥珀が飛び立っていくのを目の端で見送り、麗香達と話した。

 彼女達が上映祭のために広場へ着いたところ、少し目を離した隙にるーちゃんが離脱。

 怪しい黒子の覆面にそそのかされ付いていってしまったそうだ。


 ……おそらく、ドーマ連盟はるーちゃんが狐の面を付けた僕と関りがあると踏んだのか?

 昨日の夜ヴァンパイアを警戒した時にそう思われたのかもしれない……うかつだった。

 ただの憶測に過ぎないけど、もしそうだったら僕のせいだ……。

 こういう時、真実を伝え素直に謝れないのがすごく歯がゆい、僕はこの島にいらないんじゃないか?

 僕のせいで……また彼女達を危険な目に……。

 僕の正体は割れてないはずだけど、変な疑いを駆けられる前に去った方が良い……。


「……待ってよ」


 麗華だ。

 彼女は僕の手首を掴み、引き留めてくれる。


「また、いなくなっちゃうと思って……あの時みたいに……」


 それは、初めて会った時の事だろうか。

 麗香の顔を見ると、なんだか涙目になっていたような気がする。

 空も紅暗くなってきて見えにくいから、気のせいかもしれないけど……。

 微かな沈黙の間、近くのビーチのさざ波の音色が夕暮れの風に運ばれ、僕らの耳元をくすぐる。

 そして、彼女は口を開き話はじめた。


「私……いつも助けて貰ってる、あの神様にも、こーちゃんにも」


「今だって、走ってきてくれたし……」


「お願い、いなくならないで……」


「おねがい!」


 麗華が言うと、るーちゃんも抱き着いてくる。

 僕が麗香の真剣な眼差しに吸い込まれそうになっていると……。


「ウチも! 良く分かんないけど、いなくなっちゃダメ!」


 陽菜も麗香と一緒に手を握ってくれる。

 ……凛華姉さんや香蓮ちゃんだけじゃない。

 彼女達はこうやって1人の人間として僕の事を大事に想ってくれている。 

 それを裏切るのは……あまりにも……。


「あ、あぁ……分かったよ……」


「分かったって事は、やっぱいなくなろうとしてたんだ!」


「え、いや……」


 彼女達にそう言われ、たじろいでしまう。

 確かに言われてみればその通りだ。

 こ、これからは受け答えに気を付けないとな、下手したら変な妄想も勘繰られてしまうかもしれない。


 それからは広場へと戻り、彼女達と屋台のテーブル席を囲み空腹を満たす事にした。

 賑やかな人並みの喧騒が、僕らの沈んでいた心を明るく迎えてくれた。

 焼きそばやたこ焼きの凍ばしい香りが漂い、空腹を刺激する。

 るーちゃんは食べ盛りなようでがっついている。


「アタシさー、こーちゃんがあの現人神様だと思ってたw」


「うそ!?そうなの?」


「はっは、そんなわけないでしょ」


 麗華の言葉に驚く陽菜を尻目にたこ焼きを口へ運びながら僕は答えた。

 やっぱり麗香は、僕が噂の現人神だと思っていたようだ。

 さっき琥珀が僕の艶尻を大衆に野晒しにした後、連絡した。

 そして事情を話し、もしも麗香と遭遇した際には僕に変化してもらうよう頼んだ。

 まぁ琥珀は本気で対処しようとしていたから麗香達へ危害の心配はないと思ったけど、心配だった僕は早々にトイレを切り上げ麗香達に合流したわけだ。

 もちろん手はちゃんと洗った。

 呪力の反応からして琥珀がいなきゃ間に合わなかった、今夜はうんと彼女が好きなマッサージやブラッシングをしてあげようかな。

 彼女の緩みきった表情が目に浮かぶ。


「だよねーw」


「きつねのおにいちゃんだもん!」


 ……るーちゃんには、もしかしバレてるのか?

 小さい子って妙に勘が良いからな……。


「るーちゃん、お姉ちゃんからもう離れちゃだめだよ」


 僕はるーちゃんに注意しとく、さっきの僕の予想が正しければ狙われてしまっている可能性がある。

 たまたまだといいけど……。

 それを抜きにしても最近は物騒だし……。


「そうだよー、昨日あれだけ言ったのにさ、この子すぐどっか行っちゃうんだから」


「だって……」


 るーちゃんは悲しそうに小さい口を開き話始めた。


「おねーちゃんかえったらげんきなかったから……」


「きつねのおにーちゃんのことはたのしそーだったから」


「きつねのおにーちゃんにあわせてあげたかったんだもん……」


 おそらく要約するとこうだ。

 麗華は今日、学校から帰ってきて元気がなかった。

 現人神様の話をする時は楽しそうにしていた。

 だからその現人神様に会わせてあげたかった。


 なるほど、るーちゃんはるーちゃんなりに一生懸命考えたんだ。

 なんていい子なんだ……ウチの子にしてしまいたい。


「もー! るーちゃん!マジで天使!」


「ホントー!」


 麗華と陽菜がるーちゃんを抱きしめる。

 あの、僕も混ざりたいんですけど、美しい景色が台無しになるから却下。

 なんだか和やかな光景だ、彼女達にはいつまでも仲の良い姉妹と親友でいてほしい。 


「あえてよかったね!」


 るーちゃんはそう言って、何故か僕の方を見てる……。

 これは……バレてますね……。

 僕は彼女に『シーっ!』と人差し指を唇に当てたポーズをする。

 するとなんてことか、彼女はオッケーといわんばかりに、GOODのジェスチャーを返して来た。

 この子……メチャクチャかしこいぞ……。

 それに勘の良さは、麗香譲りか……末恐ろしい子!


 空きっ腹をガツンと屋台飯で満たした後は、僕らは並んで映画鑑賞に更ける。

 バックに見える煌く星空、聞こえるさざ波の音が臨場感を刺激する。

 物語も大詰めを迎え、主人公の下へ次元を超えた仲間が集う。

 多元宇宙論か……。

 それとも並行世界か……。

 本当にそんな世界があったら、僕とは違う僕、麗香とは違う麗香も存在するんだろうか。

 そんな事を考えつつも、最愛の人を助け宿敵も倒し、物語は幕を閉じた。

 大いなる力には……大いなる責任が伴う……。

 そう、僕らには責任がある。

 大事な人や助けを求める人、平穏に暮らす人々、僕は皆を守りたい。

 今は無理だけど、いつかそんな人間になれたらいいな……。 


 映画を見終え、もう一本行こうか?という話になったけど、るーちゃんがおねむだったのでその日は解散、僕らは帰路に付いていた。

 僕はるーちゃんを背負い、夜闇を照らすささやかな街灯や眩いネオンの元で足音を立てる中、麗香達は口を開いた。


「今日さ、ウチら何もできなくてごめんね」


「ウチ悔しい、こーがいいとこいっぱいあるのに」


「いや、充分だよ……2人が庇ってくれて嬉しかった、本当に救われたよ」


 友人か仲間か分からないけど、2人はこうやって僕の事を想ってくれている。

 あの時庇ってくれたおかげで僕は、本当に心が救われた。

 あぁやって多くの声が僕を責める中、あんな風に抵抗の声を上げるなんて中々できやしない。

 きっと心の根っこから優しい子達なんだ。


「こーちゃんさぁ、現人神様と知り合いなんでしょ?」


「え、そうなの!?」


「……」


 僕はなんて返せばいいか分からず口を噤み、夜の静けさと街の喧騒が融和する空気が沈黙を引き立てる。

 そんな空気を裂くように麗華は自分の想いを口から綴っていく。


「空がいきなり暗くなった日の事、あの日以外であの神様が助けてくれた時、いつもこーちゃんが近くにいた」


「今日だって、るーちゃんも助けてくれて……走ってきてくれて……」


「お守りだって私達を守ってくれてる、そうでしょ?」


 ……。


「今日の朝言ってたお守りの整理で夜も寝れてないんでしょ?」


「だから授業中も寝てて……それって島の人達の為?」


「それなのにあんな事言われて……私も、ホント悔しい……」


 麗華は語る途中、微かに涙声になりながらも、懸命に想いを伝えてくれた。

 僕は、幸せ者だ……。

 どれくらいが本気で冗談か分からないけど、クラスの半分程度に責められ弄られた時、こんな島くるはずじゃなかったのに。

 来なきゃ良かったって本気で思ってしまった。

 だけど、ここへ来ることが出来なければ、こうやって麗香達と会う事も出来ずに。

 いつもと変わらず、ずっと1人で過ごしていたかもしれない。

 他の皆とだって……。


 この出会いや再開は、全部るーちゃん、そして……麗香がもたらしてくれたんだ。

 彼女と会わなければきっと僕は、スタリオンになっていない。

 それはこの島にも来ていないって事だ。

 僕は心の奥を端麗に語る事が出来る詩人でもないし、不器用だしスマートに振舞えるような紳士でもないけど……。

 皆に、彼女に本当に感謝してる……。


「麗香の言葉に僕は答えを返す事はできないんだ、絶対に……」


「でも本当に、心の底から感謝してる」


「もちろん陽菜にも、周りの皆にもさ」


「だから今日は哀しかったけど、ホントに嬉しかった」


「ありがとう」


 なんだか沈んだ空気になったけど、なんとか僕の本音は伝える事が出来た。

 そんな空気をひっくり返すように麗香と陽菜は口を開き、僕の二の腕を手の平で叩く。


「ま、そんな事だと思ったけどさw 私達にできることがあったらなんでも言いなよ!」


「ひなびっくりなんだけど!? どーゆうこと~!」



挿絵(By みてみん)



 近くで琥珀と小夜が護衛し見守ってくれる中、僕らは残り僅かな帰路を一歩一歩噛みしめるように歩いて行った。










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