66. 見えない思い
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島に姫がいたかもしれないという話を琥珀から聞いた僕は、鏡が割れた事も気になりすぐに彼女達が調査していた現場へと向かった。
しかし、そこには彼女達の言う通り何も発見する事はできなかった。
ただ気になったのはここの周囲が、野外上映祭が行われる近くの場所という事だ。
ヤツらは何をする気なんだ? 祭りでは多くの人が集まるのを利用する気だろうか?
……ドーマ連盟でも表に出るのは今まで避けていたはずだから、それはないか。
結局考えても何も分からない、何か手掛かりがあればと思ったのに。
つい、いても立ってもいられずに飛び出してきたけど、ただの取り越し苦労に終わったな。
「こーが……」
「ついてきちゃったんだ」
小夜だ。
何故ついてきたのか尋ねると『どこか遠くへ行っちゃいそうだったから……』と答えてくれた。
さっき凛華姉さんにもひどい表情をしていると言われたからな。
正直、居場所が分かれば今すぐにでもあの名も知らぬ神様に会い行きたいくらいだ。
妙な胸騒ぎがして、いても立ってもいられなかった。
……小夜はそれに感付いたんだろうな、彼女はカラスの時からかしこい子だった。
「心配かけてごめんね、帰ってご飯食べよう」
「うん……お腹空いた……」
僕は小夜と共に夜闇へ飛び立ち帰ろうとした時、一人の幼い少女が夜の街中を歩いているのを見かけた。
なんだ、こんな時間に……暗くて良く見えないけど、普通の子だよな?
「こーが、あれ……」
小夜の指さす方向を見た僕は、嫌な予感を感じ狐の面を付け、すぐ数十メートル先のその女の子に駆け寄る。
そして、物陰へ潜んでいる少女の跡を付けていた人影を見つめ続ける……。
黒い人影は闇の奥へと消え、ついには姿を現さなかった。
やつらは相変わらず気配を消すのが巧いな……。
現人神の噂が効いてるのかな、女の子の前で戦闘にならなくて良かった。
早いところあの神様を助けるだけじゃなく、神剣も返してもらって結界を張りなおさないとな……。
ヴァンパイは島を根城にするつもりか?
「おにいちゃんたち、だぁれ?」
小さい女の子に問われ、僕は屈んで女の子に話しかける。
「僕はこの島に住んでるんだ、お父さんとお母さんは?」
「いまはいないよ」
「そっか、どこに住んでるの?」
「わかんない!」
……困ったな。
とりあえず明かりのある近くのベンチに向かい、飲み物を買い座らせる。
明るい場所だとその女の子の顔がよく見えた、あれ?
この子は……。
「あ、おにーちゃん!」
「君は……」
「だれだっけ?」
ズコーーー!
僕は盛大にコケた。
中々面白い子だな、誰に似たんだか。
まぁ、年齢からして僕と会った事は忘れててもおかしくないか。
ていうかまだ面を付けてたわ……外すの忘れてた。
今更外すのはもう遅いから、つけたままでいよう。
「おねえちゃんはだれ?」
「私は……この人の妹……もう大丈夫だよ」
小夜は小さい女の子の頭を撫でてあげている、小夜も段々人に慣れてきたかな。
こうやって色々な人間と言葉を交わしたり遊んだりしているのが、少しづつ成長してる感じがしてなんだか嬉しい。
そんな事を考え、幼子の姉君へと電話をコールすること数回。
もちろん非通知設定だ。
『だ、だれ……?』
「妹を預かってる……」
『!? るーちゃんは無事なの!? お願いだから何もしないで!』
「落ち着け、保護している……君が来るまで必ず守ると約束しよう」
『あ、もしかして……』
「今度の野外上映祭の近くにある広場のベンチへ来るんだ、待っている」
『え、ちょっと待』
彼女の応答を待たずに僕は電話を切った。
やつらが周囲にいるかもしれない、麗香にも護衛を早いとこ付けないと。
「小夜、向こうの方から走ってくる反応がある、たぶん麗香だから陰ながら守ってくれるかい」
「……了解」
いかん、つい名前で呼んでしまった。
小夜は、え?名前で呼んでいいの?みたいな顔をしていた。
ごめんごめん、だめなんだよ小夜は呼ばないでくれ。
「……行ってくる」
あぶねぇ……。
だが、るーちゃんに小夜の名前を憶えられてないだろうか、不安だ……。
「もうすぐお姉ちゃんが来るはずだから、待ってよう」
「わかった!」
るーちゃんが物わかりの良い子で助かった。
初めて会った時もそうだったけど、好奇心が旺盛な子なんだろうな。
そのおかげで今回も探検して道に迷ったんだろう。
小さい頃って色々な所に行ってみたくなるもんね。
るーちゃんが楽しそうに最近の出来事を話すけど、一点の曇りが彼女の顔を覆う。
それは、今は親御さんが忙しくて面倒を見切れないから、るーちゃんは麗香の下へ送られたそうだ。
麗香に会うのは楽しみだったみたいだけど、彼女はその事に寂しさを感じているみたいだった。
「きっと大丈夫、るーちゃんの事を大事に想ってるからこそ麗香の下へ送ったんだよ」
「そーだといいな……」
僕は彼女の頭を撫でる。
彼女は無邪気で悩みなんて無いように見えるけど、心の奥ではたくさんの感情が渦巻いている筈だ。
表面上は子供は無邪気で細かい事なんて何も考えてない様に見えるけど、内心色々な事を思っている。
それは子供に限った話ではない、寡黙な人間、ピエロを演じる道化師、バカなフリをする人。
誰だって内面では色々な事を思っているのに、多くの人間が細かい事は考えていないと高を括り人の心を雑に扱う。
るーちゃんにも身近に自分の想いを分かってくれる人がいるといいけど……。
でも、きっと麗香がいるから大丈夫だろう、あの子は他人の痛みが分かる優しい子だ。
「ほら、これ……頑張って島に来たるーちゃんへプレゼントだよ」
「わぁ、かわいい!」
琥珀がプロデュースしたオシャンティーなお守りを、るーちゃんへプレゼントする。
僕が念のため予備で持ってたものだけど喜んでくれてよかった。
もちろん結界の効果も付与済みだ、抜かりはない。
「危ないときはこれが守ってくれるから、必ず持ってるんだよ」
麗華が近づいてきたな、僕は彼女の目を盗み一瞬で夜闇へと溶ける。
「うん、ありがと! ……あれ?おにーちゃんは?」
大丈夫、お礼の言葉はちゃんと届いたよ。
「はぁはぁ……るーちゃん!」
「おわぁ!」
麗華に抱き着かれるーちゃんは驚きの声を上げる。
麗香はるーちゃんを抱きしめながら厳重に注意した後、2人は手を繋ぎ帰って行った。
「大丈夫だった?」
「きつねのおにーちゃんがたすけれくれたの!」
彼女達が無事に家に辿り着くまで、僕と小夜は身を潜め気配を消しながらも護衛として尾行する。
……完全に不審者だな。
つ、通報はやめてくれよ……それだけが心配だ。――――――
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