65. 抉られる良心
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洞窟の中に立てられた、研究施設を想起させる様な場所を灯が照らし、1人の年齢不詳の美女が
ガラス張りの部屋へ閉じ込められていた。
腕に枷を嵌められた彼女は、己の中に眠る汚れた邪気を特殊な機械によって抽出されている。
辺りにはその邪気によって研究された試験管が並び、複数の研究者が邪気を薬にするための実験を
進めていた。
「なんと美しい邪気だ……世界を救う革命の日も近い……」
一人の男が基地の様子を眺め、自分の属する一団が世界の覇権を握る日を思い浮かべ怪しく笑い、その
声が洞窟の中へと響き、実験の音によってかき消されていく。
その様は人々の笑いが闇に溶けるような不安を感じさせた。
ガラス張りの部屋に捕らえられた女性は、その様子を見て生きる希望を失っていた。
自分はなんのために生きて来たんだろう、ただ人々の笑顔が見たかった。
皆に幸せになって欲しかった。
それなのに、人々から恨まれ自分にかけられた呪いや怨念も解けず、最後の希望であった神剣さえも効果が無かった。
もう、とっとと消えて無くなりたいのに、このままずっと苦しめられるのだろうか。
彼女の胸に残っていた穏やかな心が頭の中を反芻し、邪気が抽出される度に身体が軋み、心の奥の魂が抉られていくような感覚に彼女は只一人、涙を堪え耐えていた。
「あなた……くるしい……助けて……父上……」――――――
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宵一さん達とヴァンパイアの潜んでいた一軒家の調査を終えて、僕らはそのまま家へと帰った。
ヴァンパイは何をするつもりなんだろう、やつらの背後にはドーマ連盟がいる。
実験はヴァンパイアではなくドーマ連盟が行っていたのか?
ただ呪術の痕跡はなかった、証拠隠滅のためにそれだけ消したのか?
……今は考えるのはやめよう。
あまりにも情報が少なくて考え出すとキリがない。
そんな事を思い気持ちを切り替えると、琥珀が帰ってきた。
今夜は皆へのお土産も買った、喜んでくれるかな。
「おかえり、今夜のデザートはケーキだよ」
「話がある」
琥珀は開口一番そう口を開き、僕は威吹鬼を含め席へと付く。
白百合さんは夕食の準備を始め、ルイと小夜に手伝って貰っている。
「白百合さん、手伝えなくてごめんなさい」
「いいえ、ゆっくりお話しなさってね」
天使だ……小夜たんも天使だけど、白百合さんも随分天使だ。
まるで地上に咲く白い百合の様だ。
当たり前か……名前からして。
「では、単刀直入に言うがの、今回は瘴気の痕跡があったのみで奴らの尻尾を掴むことはできなかったんじゃ」
そっか、まぁ軽い瘴気ならたまに発生するし、今回もそれだったのかな。
「けどな、あの人の邪気の残り香を感じたんだ」
!?
威吹鬼は自分の身が直接、彼女の邪気に包まれてしまった、彼が言うならその感覚は正しいだろう。
「そしておそらく、瘴気の痕跡はドーマ連盟が残したものじゃ、それにこの島を荒らしたあやつの邪気が含まれていてな」
……ドーマ連盟に彼女が付いているという事か?
でも、彼女は……。
「しかし、どうにも様子がおかしい、なんていうか不自然なんじゃ」
琥珀が言うには、彼女の邪気は感じたが島に来ていた訳ではないらしい。
木はそこにないけど、香水から木の香りがするみたいな。
そういう元の存在を感じさせるような要因があっただけだという。
「何か掴めそうだったが結局得られたのはそれくらいじゃ、すまんの」
「そんな……充分だよ、ありがとう……」
……。
僕らが沈黙していると、玄関の扉を開く音がして凛華姉さんがやってくる。
「? どうした? 表情が暗いな」
「いや、なんでもないよ」
「そうか、白百合さん、遅れてすまない私も手伝おう」
「あらぁ、助かりますわ!」
凛華姉さんは彼女の事を聞いたらどう思うだろうか。
一度聞いたときは、彼女の事を許せないと言っていた。
それは幼い頃の言葉だから今は分からないけど……。
もし、もしも、凛華姉さんの答えが変わっていなかったら、僕は……。
彼女を助けられる状況でもしもの事があったらと拳を握りしめ心の底で決意し、僕は顔を上げる。
何でか分からないけど、僕の心、魂が、彼女を絶対に助けなければならないと。
そう言っている気がした。
「僕も、手伝うよ」
「流石に台所が狭いだろう、それより顔を洗ってこい、なんだか面やつれしているぞ?」
僕は凛華姉さんにそう言われ、洗面所へ向かう。
鏡を見ると、確かにこれはひどい表情だ。
皆に心配をかけられない。
僕はシャワーヘッドを取り、顔を洗い水を頭からかぶり気を引き締めなおす。
ふぅー、スッキリした!
……!?
突然、微かな軋みの音が耳に入り鏡の中の景色を見回す。
すると、鏡の端に僅かばかりの小さなヒビが入っていた。
家の鏡が割れる予兆は、家族の誰かに不幸が起こると言われている……。
僕はまさかなと思いつつも、心の健康を保つまじない、帝釈天様のマントラを家族、そして彼女に向けて唱える。
「オン・キヨバミリキヤ・キヨバカミリキヤ・ナラアラジンジヤウ・アラウバカ・アキヤシユラウキヤ・バカテイ・ジナハラソク・ソワカ……」
今はどこいるか全く分からないけど、どうか彼女が健やかな心で過ごせる日が来ますように……。――――――
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短いのでおまけ
――――幼き日のカラオケ大会――――
子供時代の凛華、煌河、香蓮、涼音
「皆、宴会用のカラオケセットが届いたぞ!」
「これでまたスズの綺麗な歌声が聞けるね」
「へー、今日の宴会で歌ってよ!」
「あんたが歌った後なら歌ってあげる(どーせ弱虫だから、大人たちの前じゃ歌えないでしょ……)」
~夜~
「それでは歌います!~~♪~~♪」
「まぁまぁだな!」
「煌河くん、とってもステキだったよ!」
「へへ、ありがと」
(ホントに歌った……知らない人も多いのに、信じられない……)
「はい、スズの番だよ」
「しょうがないか……♪~~♪(緊張で上手く歌えない……!)」
「お嬢ちゃんいいぞー!」「かわいいー!」「綺麗な声ねー」
「……」ダッ……(走り去る音)
~庭の縁側~
「どうしたの?うぅ……」
「……なんでもない、なんであんたが泣いてんの……」
「だって……一生懸命綺麗な声で歌ってたから、感動したんだもん……うぐぅ……」
(きっと大人たちはお情けで褒めてくれてたけど……コイツは嘘つけるタイプじゃないし……)
「ホント馬鹿なんだから……ほら、涙拭いて」(袖で涙を拭ってあげる)
「ありがと……」
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