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63. 決闘の教訓

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください








「貴様ぁ!謀りおって! やはり貴様が夜兎ではないか!」


 ……きちゃったよ。

 どうしよう、僕は今猛烈に動きたくないんだ。

 あ、式神の皆も来ている。


「こーがずるい……!」


「ほら、小夜も抱きしめてやるからな」


 小夜は僕が凛華姉さんのところに居たのに気付いていたけど、夜に行っていいのか分からなかったんだろうな。

 今は人間界の事を少しづつ学んでいるから、そこら辺の塩梅は曖昧だ。

 そんな小夜は僕らに駆け寄り、凛華姉さんに抱きしめられている。


「あ、彼が夜兎 煌河助月守天道です!」


 僕は凛華姉さんに膝枕されながら、皆と一緒にいる威吹鬼を指さして口を開く。


「もう、その手は食わんぞ! 朱鳥という者がありながら別の女子おなごとこんな事を、許さん!」


 そういえば、昨日の夕食はどうしたんだろうか。

 白百合さん1人で皆の分を作ったのかな? いかん、これは申し訳ない事をした。

 流石に誰か手伝っただろうとは思いたいけど。


「白百合さんすみません、昨日の夕食はお一人で?」


「うふふ、大丈夫ですわ、ルイくんと宵一さんが手伝ってくれました」


 宵一とは、おそらく目の前にいる朱鳥先輩のおじ、お兄さんだろう。

 それにしてもルイ、僕の身代わりとして宵一さんのオシオキを喰らっただろうに白百合さんを手伝ってくれるなんて。

 彼は本当に良い子だな。


「あぁ、彼女の料理は心が暖かくなる、それにとてつもなく美味い」


「ま、嬉しいですわ!」


 宵一さんは白百合さんに胃袋を掴まれたようだ。

 良かった穏やかになって。


「っておい! 話を逸らすな! 貴様ぁそうやって俺をコケにできるのもここまでだ!」


「へへっ!おやびんやちゃってください!」


「決闘だ!!!」


 ルイが昨日の鬱憤を晴らすように、目の前の大男を僕にけしかけようとしてくる。

 なんて悪いやつなんだ、ドーマ連盟の居場所が判明次第、彼を差し出そう。


「今、動きたくないんですが」


「かーーーつ!!!問答無用!!!」


 先ほど聞いたセリフと寸分たがわぬ言葉が僕の鼓膜を揺らした。

 あきらめるしかないか……僕は彼に首根っこを掴まれ道場に引きずられていく。

 『弥彦殿ぉ!道場を借りるぞ!』と彼は叫び、僕の重さなどを感じさせないようにギャラリーを引き連れ足を運んでいる。

 道場に着いたが、何故こんな事を。


「あの、朱鳥先輩から古い慣習は重要視されてないと聞いたんですけど」


「初めて異性の血を取り込んだ我々はな、その人間と子を成しやすくなりとても健康に育つんだ」


 ……なるほど、そんな事が。

 それなら慣習にこだわるのも頷ける、たぶん妖怪や妖魔も減って平和になるごとに重要視されなくなったんだろうな。

 危険のない場所なら、普通に育てば問題ない。

 僕が思っているより吸血衝動を抑えて暮らすのは割と大変なんだろう。


「朱鳥の初めてを奪ったお前のその腐った性根、叩き直してくれる!」


「あの……どっちかって言ったら僕は奪われた側なんですけど」


「うるさい!お前に朱鳥が見込んだだけの価値があるか、直々に俺が確かめてやる」


 あの……朱鳥先輩は深い意味はないと言ってたんですけど?

 なんてこった相手の気迫に押され、かみぢゆ~すけのアルバムみたいな喋り方になってしまった。

 決闘をすると言った以上、遊言実行が彼の生き様なのか、まるでAre 遊 ready?とでも言いたそうな顔だ。

 僕へ天国への片道切符をプレゼント For 遊 する気なんだろう。

 あの・・旅の途中なんですケド。


「まぁお前は学生だからな、どんな手を使っても良い、まともな一撃を俺に入れてみろ」


 困った、彼はまるで隙が無い。

 おじさん並みの体裁きのスキルを持っているかもしれない。

 そうなると僕に勝ち目は一切ないけど……。

 でも、ここはやらねばならないだろう。

 もし仮に、僕の血を入れてしまった朱鳥先輩が他の人と子供を成せないなんて事等があったら。

 その責任は果たさないといけない。


「どうした、こい」


 僕は彼に向って走り出し、迎撃しようと目をかっ開いた彼の目の前に魔力で眩い閃光を放つ。

 ただの目眩ましの魔法だ。


「なるほど、だが俺には効かんぞ」


 彼が目を瞑った瞬間、僕は横に反れ一撃を入れようとするが。


「横だな、ふんっ!」


「っがはぁっ」


 いてぇ……思い切り横っ腹に貰った、相手の動きを読む見聞色の覇気でも持っているのか?

 いや、吸血鬼は気配に敏感だ、だけどこれが効かないとは……。

 僕が相対してきた吸血鬼と違う、夜霧の特性?彼が特別なのか?


「こーちゃん!」


「まて、凛華、良い修行になる」


 凛華姉さんが僕に駆け寄ろうとするけど、琥珀が静止する。

 良いさ、これはケジメ、朱鳥先輩に血を飲ませてしまった以上これは避けられない。


「立つか……今のは朱鳥に血を飲ませた分だ」


 大丈夫だ、夜霧はフィジカルはヴァンパイアより低いはず。

 彼が特別なのか並の吸血鬼以上の力はあるが、威吹鬼に貰った拳の方が痛い。


「次はこちらから、行くぞ」


 彼の突進に合わせ僕は反射結界を展開する、しかし。


「これも俺には効かん」


 な?威吹鬼を吹き飛ばした結界が、力ではなく技術で破壊される。

 術に干渉して無効化するのか?彼は術師でもないのに……!


「ぐぁっ!」


「今のは朱鳥をたぶらかした分だ」


 あの・・たぶらかして……ないんですケド……。

 僕は何とか立ち上がるが頭がクラクラする、攻撃の流れを結界でずらしガードもしたがこの威力。

 彼はたぶん夜霧の中でも随一の存在だ。

 なら、これは……僕は極小の疑似太陽を生成し宙に浮かべる。

 夜霧の一族は海外のヴァンパイアより太陽に対する耐性は高いが、完全に無効化できるわけじゃない。

 灰になりはしないが、日中は太陽の影響で身体能力がかなり落ちる。

 これなら光の当たらない屋内でも関係ない。


「こんな事までできるのか、手札が多いな……」


「うおおおお!」


「煌河、お前いつの間に……」


 僕は貯めた偽神力を鬼特有の気、豪気に変換する。

 豪気は身体能力を何倍、何十倍にも増幅させ、もちろん耐久力も上がる。

 威吹鬼の足元には及ばないけど、僕の使う単純な肉体活性より遥かに強いはずだ。

 今まで邪気を払うために様々な研究や実験をしてきた。

 その過程で呪力や気を様々な物に変換させる技術を得た。

 これのおかげで琥珀の修行もスムーズに進んだし、ルイを助ける事も出来た。


 宵一さんはおそらく小細工が通用しないタイプだ。

 攻撃系統の術式が一切使えない僕には最悪の相性。

 なら太陽でデバフをかけて、これで殴り合うしかない。


「ふはははは!面白い奴だ!これが噂の現人神か!」


「っどりゃあ!」


「こーが頑張って……!」


 僕の突き出した拳に宵一さんが拳を合わせてくれる。

 拳と拳が激しく激突し、骨と骨がぶつかる鈍い重低音と肌と肌が弾かれるような音が道場に響き渡る。

 気と気がぶつかり、見えない力が渦を巻き空間を満たしていくのを感じる。

 いってぇ……!!!彼の拳と力比べだ、気を抜いた方が吹っ飛ばされる……!

 小夜が応援してくれてる、カッコ悪いとこは見せられない!

 んぐぐぐぐ!


「うあぁ! かっはぁ……」


 しかし、吹っ飛ばされてしまったのは僕の方だ。

 数秒の膠着状態の末吹っ飛ばされた僕は道場の壁に思い切り背中がぶつかり、空気を腹の底まで吐き出してしまった。

 い、息が出来ない……。


「今のは朱鳥と一緒にいたお前への嫉妬だ」


 僕は壊れた片腕を抱えながらなんとか立ち上がろうとするが、足が崩れ落ちる。

 ダメだ……力が入らないし、あちこち痛い。

 コヒュー、コヒュー。


「ふっはっは、これでも立ち上がろうとするとはな」


「こーちゃん!」「煌河くん!」 


 彼がどこか嬉しそうに笑うと、僕を見ていた凛華姉さんと道場の扉から朱鳥先輩が出てきて2人同時に駆け寄ってくる。


「もう充分でしょう!」


「ごめんね、私のせいで……」


 あ、いいかも……。

 2人に抱きしめられて、やぁらかい素敵な感触と心地よい香りに包まれる。

 と、僕が気を抜いてリラックスすると。


「こーが……!」


「おぼぉっ!」


 2人に遅れて小夜が僕へ飛び込んできて、身体の痛みが一層軋む。

 後でちゃんと……怪我人に飛び込んだらだめって、教えないと……な。


「ガクッ」――――――



――――――



「こーちゃん!」


「美香さんを呼びましょう」


「案ずるな、このくらいならば妾がすぐ完治させてやる」


 煌河が気を失い凛華と朱鳥が頭に浮かんだ対処をしようとするが、すぐさま琥珀が駆け寄り神の力を

用いた術で煌河の腕を直し、身体中の怪我を取り除く。

 そして琥珀は、もう一人の男へと治療を施す。


「ほれ、お前もこっちへ来い」


「流石ですね、見抜かれていましたか」


 男は煌河の拳とぶつかった自分の拳を琥珀へと差し出し、治療を受ける。

 その拳は見た目こそなんの傷もないように見えたが、使い物にならなくなるくらいひどい骨折と内出血を負っていた。

 そんな兄へと、朱鳥は抗議の声を上げる。


「やりすぎよ! 何もここまでする必要ないじゃない」


「お前の為に確かめただけだ、その男に最愛の妹が血を飲むだけの価値があるのかをな」


「して、どうだったんじゃ?」


 男はさきの戦闘を振り返り、軽く笑う。

 宵一は思っていた男とまるで違う戦いぶりと根性を見せてくれた相手に対し、どこか胸を躍らせていた。

 朱鳥が勝手に血を飲んだことは分かってはいたが、目の前の男はそれでも妹の為に立ち上がってきた。

 ボロボロになり怪我を負いながら何度も。

 そんな考えを胸に、男は問いの答えを返す。


「思ったより見込みはあるようですな、妹の結婚相手として認めたわけではありませんが」


「そうか、まぁ今の戦闘くらい厳しい稽古をこなした後にしては頑張った方じゃの」


「なに?……ふはは、認めましょう、神の利き腕は末恐ろしい男だという事はね」


「最近はあの妖刀に頼りっきりだったからの、良い教訓じゃ」


 大男が一人の青年を強い人間として認め、笑う中。

 朱鳥は気絶した青年を抱きしめ、さきの戦闘を思い返す。

 彼女は兄の暴挙を聞き、急遽神社の道場へやってきたが、そこには兄に打ちのめされボロボロになっても懸命に立ち上がっていた青年の姿があった。

 本来は、止めるべきであったが、そんな彼の姿に心を動かされた朱鳥は自分の心の底に湧いた想いに

動揺し、つい見入ってしまっていた。

 そして朱鳥は、すぐに止めに入らなかった謝罪と自分の為に懸命に戦ってくれたお礼を青年を抱きしめながら呟く。


「ごめんね、ありがとう……」



挿絵(By みてみん)



「朱鳥、ずるいぞ!」


「私も……!」


 気絶したまま3人に抱きしめられ、決闘を終えた青年の表情はどこか清々しい顔つきだった。――――――







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