62. 幼きときも変わらない
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結界も張り終えた日の夜、僕が家で呪具や道具の手入れをしていると来訪者が来たようだ。
インターホンを鳴らし扉の前で待っているようだけど、凛華姉さんは普通に家に入ってくるから
違うとして……誰だ? とにかく出てみるか。
僕は玄関の横開きのドアを開け、絶句する。
「お前か、また会ったな」
そこには生徒会室であった体格の良いおじさん、いやお兄さんがいた。
朱鳥先輩が言っていたけどこれでも28歳らしい。
ストレスか何かで老けて見えるんだろうか、おいたわしや。
「そ、そうですね……」
まずい、ここへ来たという事は僕が彼のお目当ての夜兎なんだとバレている可能性がある。
「ここに夜兎 煌河助月守天道がいると聞いてきたが、貴様……」
「あぁ、彼ですか、案内しますよ」
「む? そうか、助かる」
僕は玄関を出て、彼と屋敷の離れに向かう。
庭に行くと良く知る友人が井戸で水浴びをしていた。
まぁ今夜は割と暑いからな、フルチンなのも納得だ、ご立派ぁ!
僕はフルチンの彼を指さす。
「やつが、夜兎 煌河助月守天道です」
「案内、礼を言うぞ」
大男はズカズカと大地を踏み鳴らし、肩で風を切る様にやつへと歩を進める。
その姿はさながら、アマテラス神へご挨拶に行くスサノオ神のようだ。
フルチンや 八雲立つ神 ご立腹 フルチンフルフル 最後の晩餐。
生まれたままの姿で水浴びをし、自ら天へと飛び立つ禊をするとは、なんて立派な心意気なんだ。
今までありがとう、敬礼!
「ん? だれ……?」
「貴様、よくも妹をたぶらかしてくれたな?」
おじさ、お兄さんは仁王立ちで水浴びしていたルイへと詰め寄る。
僕は神社へ昇ってお参りでもするか、ついでに凛華姉さんに匿って貰おう。
「え? ちょ!? ぎゃああああああ!」
背後からルイの断末魔が聞こえてくる。
やれやれ、一体何をされているのやら。
そんな彼らはさておき、僕は神社へお参りする。
手を洗い『賽銭はまた今度入れに行きます』と言い二拝二拍手一拝を以てお参りを終えた。
神社に奉っているのは琥珀のはずだ、彼女が僕の式神になって仲良くなってからはあまり
こういった事をする機会もなくなったしな。
日頃の感謝を表すいい機会だ。
参拝も終えたし、凛華姉さんのとこへ行くか。
「な……!? と、とうとうこの日がきたか、夜這いだろう?」
「いや、違うけど」
「そうか、まぁとにかく入るといい」
僕はご両親と挨拶をし『朱鳥ちゃんのお兄さんとは会えた?』と璃々奈さんから問われる。
会えましたとも『とっても元気なお兄さんでした』ぶっちゃけもう会いたくない。
ルイは無事だろうか、そそのかしてしまったのは自分だけどなんか心配になってきたな。
僕は凛華姉さんの部屋に通されて、出されたお茶を飲み一服する。
相変わらず良いお茶だ、良い家には良い茶がある、これは古来より決まっているからな。
知らんけど。
「さぁ、いいぞ?」
凛華姉さんは腕を開いて、おいでーと言うように僕へ話しかける。
僕は彼女のお胸に飛び込み、いっぱい甘えて頭を撫でて貰う……という妄想はさておき。
……正直飛び込みたいが、我慢だ。
「寂しくなって私の元へ来たんだろう、いっぱい甘やかしてあげるからな」
「それは魅力的な提案だけど、匿って欲しいんだよ」
大変魅力的な展開だがここは耐えなければ、部屋着でスタイルが強調されているような服装に、良い香りの漂った部屋。
僕は理性の糸を必死に引っ張り、劣情をなんとか偽神力へと変換していく。
凛華姉さんは僕の答えに納得と不満が混ざったような表情になるが、切り替えて話を続ける。
「そうか、大方、朱鳥の兄君から逃げて来たんだろう」
「凛華姉さんは何でも知ってるな」
「なんでもじゃない、知ってる事だけだ」
このネタを知らないはずなのに、正解が返ってくるあたり流石だ。
という事で今夜は2人で映画を見たり、お菓子を食べたりして、ゲームをしたり不健康な学生の様な過ごし方をした。
まぁ、たまにはこんな過ごし方も良いね。
なんだか凛華姉さんと2人きりなのも久しぶりだ、周りにはなんだかんだ式神達や生徒会のメンバーもいるし。
この日は子供の時の様に戻った気分で夜を過ごした。――――――
――――――
僕の目が覚めたと気付いたら、凛華姉さんは僕を抱きしめわんわん泣きわめいていた。
涙声でなんて言ってるかも分かりやしない、でも。
僕の事を大事に想ってくれていたっていうのは、この時初めて、心の底から感じたんだっけ。
だけど僕は、彼女を泣かせるのではなく守りたかった、笑顔になって欲しかった。
彼女の心をこんな風に縛り付けたかったわけじゃない。
いつかこの罪悪感が無くなった時、また素直な関係に戻れるって僕は信じてる。
「僕も凛華姉さんの事、大事に想ってるからね」――――――
「ん……りんかねえさん……だいじにおもってるよ……」
「こーちゃん、なんて可愛いんだ……♥」
んん……まだねむい、なんかやぁらかくて良い匂いがする……。
抱きしめるときもちい……。
ぎゅー。
「はぁん……! よしよし、いい子だな……♥」
……ん?
「……ん? うぇあぁえ!?」
「お、起きたな この甘えん坊さんめ♥」
「ちょっと! なんでいるの!?」
「なんでって私の家だからだろう ほら、まだ眠ってていいぞ」
「え、ちょ」
ち、ちからつよっ!抜け出せない!
これ肉体活性使ってる?使ってないでこれなの?
あっ……でもなんだか気持ち良いかも……。
強く抱きしめられて、僕も抱きしめ返したくなってしまう。
「あら~!今夜はお赤飯ね!」
「どぅぇえ!? 違うんです!」
「どうした? 騒がし……なんて事だ」
やばい、一番見られてはいけない人に見られてしまった。
「私は娘の想いを認めていないわけじゃないがね、それはまだ早いだろう」
あかん、大層ご立腹だ。
「きなさい、煌河くん、今日の朝稽古は特別メニューだ」
う……バチバチに殺気を放って威圧してくる。
なんて事だ、やつの目を見ただけで死をイメージさせられた……!
大蛇丸並みの殺気だよ、おじさん。
「こんなに震えて……私が守ってやるからな♥」
凛華姉さんは僕を抱きしめてくれるけど。
ね、姉さんそれはたぶん逆効果だよ。
「凛華、早く離れなさい」
「父上、こーちゃんはまだ昨日の疲れが残っているみたいだ」
Oh……これは、誤解を解くのに苦労しそうだ。
そんな言い回しをしたら嘘のような誤解が事実だと思われてしまうでしょうが。
と思っていると、おじさんは僕に込めた以上の闘気を凛華姉さんに向ける。
「かーーーつ!!!問答無用!!!」
「ほら!行ってこい!」
おじさんの覇気にビビった姉さんは冷や汗を垂らしながらも僕の背中を叩き、おじさんの喝を僕におすそ分けしてくる。
変わり身はやすぎだろ! ま、まぁいいけどさ。
顔を洗ったあと道場に移動し朝稽古の準備をしながら、僕はおじさんへの誤解を解く。
昨日は寝る前に客間に案内されて眠ったはずだ。
起きた時にその客間だったから、おそらく僕が寝ている間に姉さんは布団へ潜り込んだんだろう。
まぁ琥珀曰く、僕が寝ている間に家に入って寝顔を眺めている日もあるらしいから、たぶん感覚が麻痺しているんだろうな。
「分かってるよ、凛華が布団に潜り込んでいただけだろう」
よ、良かった……誤解するまでもなく分かってくれていたみたいだ。
「しかしドーマ連盟の動きが最近活発だからね、君も狙われている事だし何より」
な、なにより?
「異性が娘と同じ布団で寝ていたというだけで大変遺憾だ!」
2時間後。
僕はソロできっちりみっちりしごかれて精根尽き果てていた。
おじさんとは僕が赤ん坊の頃からの顔見知りらしいけど、2人きりだけでこんなに稽古を付けて貰ったのは生まれて初めてかもしれない。
稽古も終わってシャワーをゆったり浴びた後は、凛華姉さんと璃々奈さんが作ってくれた朝食を頂いた。
そして今は縁側で寝転がっていた僕の頭を、凛華姉さんが持ち上げ膝枕をされている。
もううごきたくないからされるがままだ。
おひざきもちいい。
ちなみに今日は学校は休みだ、まぁ学校行くより疲れたんだけど。
「すまない、もう少し節度を保つべきだったな」
「もういいよ、昨日は匿ってくれてありがとう」
「ふふ、こんなにされるがままなんて珍しい♥ これからは毎日父上に朝稽古を頼むとしよう」
「それはかんべんしてぇ」
こんな風にだらけていると、何やら庭の砂を蹴る足音が聞こえてくる。
かるーい砂埃を巻き上げ、視界の端から大男が僕の目の前に立ち。
「貴様ぁ!謀りおって! やはり貴様が夜兎ではないか!」――――――
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