60. 人じゃなくても支え合う
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会議を終えた次の日の早朝。
「じゃあ、とりあえずこんな感じになったからよろしく」
これからは寺子屋にいる妖怪や、僕の式神達も島のパトロールや防衛に参加する。
もちろん戦闘は無理強いしない、多くの妖怪が島を見張り怪しい事を報告してくれるだけでもありがたい。
僕は会議で決まった事を、同じ屋根の下で暮らす仲間達に報告する。
琥珀は会議に参加していたけど、他の子達は皆寺子屋にいたからね。
「私、不安ですわ……」
白百合さんは不安そうにしてるけど生前多くの人を救ってきた実績もある。
それに茨木童子であり今は僕の式神の威吹鬼を転ばせて地に伏せさせたし、かなりの力を持っていると言っていい。
「白百合の女将なら大丈夫だろ、なんせ俺をこけさせたしな!」
「うん、心配ないよ、それに戦闘は無理強いしない、命大事にね」
「拙者も白百合さんにならこかされても文句ないでござるww」
……。
ちなみにネットのノリをリアルに持ってくるこの男は船上パーティーの一件から、この屋敷の離れに住んでいる。
小屋が余ってるのをこれ見よがしに乗り込んできたわけだ。
まぁ、気持ちはわかる。
「ドーマ連盟はルイを狙ってきたんじゃないの?」
「違うって! あいつら最近人ならざる者に容赦ないんだよ、なんでも安倍晴明の生まれ変わりを探してるって話でよぉ」
ドーマ連盟は蘆屋道満の別称である道摩法師の名を元にした野良の術師集団だ。
元々は蘆屋道満を筆頭にしていた【播摩法師】と呼ばれていた善行を行う集まりが、時が経つにつれて行動理念も変わり【道摩連盟会】、通称【ドーマ連盟】と名を変えて存在している。
最近はそのドーマ連盟が活発になり、妖怪や魔物を襲っているらしい、朱鳥先輩が肝試しの日屋上で教えてくれた。
そして、ヴァンパイアと手を組み、当然人にも被害が及んでいる。
今までヴァンパイアが人と手を組むなんて聞いたことないけど、ヴァンパイアは夜霧との運命に終止符を打つつもりだろうか。
「それで晴明の再来とか言われた神の利き腕と関わりのある俺を狙ってたんだよ、偉い目に合ったぜ」
当然、夢魔であるルイも危ない思いをしたみたいだ。
そしてルイは、知り合いである程度コネもある僕に会えばなんとか匿ってくれるからと思ったらしい。
彼が学校の遠足に行っている間に、身内がドーマ連盟から狙われ第2の故郷の北欧の方に逃げ帰ったんだと。
ルイは『次会ったら絶縁してやる』とか言ってたけど縁を切りたがってたのはルイの家族側なんだよな、なんかかわいそうになってきた。
残されたルイは、命からがらなんとかこの島まで逃げ延びたという訳だ。
僕がスタリオンになったのは地元で有名な話になってるみたいで、その話を聞いてここへ来たんだと。
ていうかスタリオンである僕を島に売ったハゲ親父に教えて貰って、そのコネで島へ来れたみたいだ。
「いや、全然違くないじゃん、もうバレちゃったじゃん? 僕がここにいるの」
「ま、まぁどうでもいいけどよ、ヴァンパイアと遭遇した時はあの時の経験が役に立ったぜ」
いや、どうでもよくないが、露骨に話をそらしたな。
しかし僕は阿倍清明の生まれ変わりなどではないし、狙われるのは普通に勘弁だ。
「それはそうと、お主らどういう関係なんじゃ、そこの夢魔はいつの間にかうちに居座っとるが妾は何も知らんぞ」
「私も聞いてないぞ!」
僕は朝食を作ってくれる凛華姉さんと白百合さんの横で米を研ぎながら、思った。
確か過去、凛華姉さんにメールで話だけはした事が合ったはずだ。
まぁ茶をすすってる琥珀の暇潰しがてら、皆に説明するついでに話すか。
「あぁ、彼とは」――――――
彼とは義務的な教育も後半に差し掛かる中学の入学式の日に出会った。
今まで裏の世界に生きる人間達と一緒に過ごしてきたが、これからは表の世界も学んで行くため普通の公立学校に入る。
能力や組織の事は絶対に明かしてはならない。
僕が胸に決意をしていると、隣の席の生徒が話しかけてくる。
「よぉ、お前なんかおもしろい雰囲気してんな! よろしく!」
お前に言われたくないわい。
彼はなんと、学ランの前ボタンを全開にし下にアロハシャツを着ていた。
アロハシャツにはでっかいサングラスをかけた虎の顔がプリントされている。
僕は彼のファッションセンスに興味がわき挨拶を交わす。
「よろしく、そのシャツカッコイイね」
「俺、ルイ・バトラー、ルイって呼んでな!」
「僕は夜兎 煌河助月守天道」
「は?」
「……や、夜兎 煌河助月守天道」
「はははwなんだそれ! お前面白いなww」
彼は笑いながら『分かってんなー!』と陽気に言ってきた。
シャツを褒められたのが嬉しかったらしい。
そんな朗らかに話す容姿端麗、眉目秀麗の彼を、クラスの女子生徒は夢中になって眺めていた。
そして、これから体育館へ入学式へ向かう直前。
「こら、それは脱いでいけ!」
ルイは先生からアロハシャツを取られ、その背中側にはサングラスを外した笑顔のしまじろうの顔がでかでかとプリントされていた。
教室は笑いで包まれ、そんな彼のおかげで入学式特有の教室の緊張感は消し飛び、打ち解けやすい空気が作られた。
『彼はきっと、人間じゃない』そう思って警戒はしていたけど、どうやらルイは悪いやつじゃないみたいだ。
そして、僕はルイと仲良くなりあれから1年以上経った。
ルイは、すごいカッコ良くて女子の人気が高い生徒がいると学校ではもっぱらの注目の的だ。
だがある日、事件が起こる。
ルイはその日クラスメイトの女子と世間話をしていた。
「何よ! あたしの事!好きなんじゃないの!?」
突然別のクラスの女子が通りかかり、ルイが別の女生徒といる事に泣き出してしまった。
彼女が言うにはルイは自分を空き教室に連れ込み愛を囁いたが、そのまま場を離れてしまったと。
そして学園には奇妙な噂が広がっている。
ルイが女生徒の夢の中に出てくるという噂だ。
ある女生徒の夢では、グランドキャニオンで全裸に包帯を巻いた状態で棺桶から出てきて『剥けよぉ♥』と迫って来たり。
そしてある女生徒は、ウィンブルドンのテニスコートで脇の臭いを嗅がれ『樹液みーっけ♥』と言われたと。
そんな人には言えない様な変態行為を繰り返し、そのまま消えていくと……。
しかし、女生徒は彼への興味が絶えずそんな夢を見たがっている。
男子生徒はその噂からルイを【変態】と命名し、彼をからかっていた。
「変態の噂最近聞かないよなー、俺の服も剥けよー!」
「女生徒を剥くならやぶさかではないがw ちょwこっちくんなw」
「ルイちゃん剥いて~ん♥」
そう言って男子生徒の一人が上半身裸になり、ルイに抱き着くのを僕らは笑って見ていた。
女子生徒が泣きだしてから数週間経つが、彼が夢に出なくなってからは噂は所詮噂であると言われ。
勉強に部活に忙しい生徒達からは鳴りを潜めて消えていた。
当人であるルイも笑ってはいたけど、どこか生気のない様な作り笑いに見えた。
ある日の放課後、近くの公園で僕はルイを見かけた。
他校の女子生徒と物陰に消えていくが……嫌な気を感じた僕は跡を付ける。
「いいか、今から俺の言う事を何でも聞け」
「……はい」
暗示か……?
ダメだ……彼はきっと女生徒へ危害を加えるつもりだ……。
「ルイ!」
「あ……煌河……」
僕が邪魔をし意識を取り戻した女生徒へ『早く帰るんだ』と声を掛けると彼女はそそくさと
その場から走って消えていった。
ルイの目は軽く変色し、怪しい光を微かに放っているように見えた。
彼は唇を震わせながら、僕へと言葉を並べてある事を告げる。
「俺、自分じゃどうにもできなくて……もうウンザリだ!」
「お前、普通の人間じゃないだろ? 初めて見た時から分かった、それで近づいたんだ」
「俺を殺してくれ……」
彼は夢魔という特性上、女性の精気を取り込まないと生きていけない。
だから夢で精気を吸引していた。
でも最近は夢に出るのを控えていたんだろう、それが噂も消えて、彼が今現在蛮行に及んでしまった理由だ。
精気を取り込むために本能が働いたんだ。
「僕が何とかするよ、だからもう少し我慢して変態でいてくれ」――――――
――――――
僕は彼にそう告げ、彼が変態行為をしないで済むよう取り計らった。
要約すると様々な気力を夢魔に必要な精気に変換する方法や、それを補助する道具。
精気への衝動を抑える道具なんかを作った訳だ。
これは僕が幼い頃に交わした約束を果たすため、研究をしていた副産物だ。
それがなかったら僕も彼を救う事が出来なかった。
「まぁこんな事があってね」
朝食を取りながら僕は話を終えた。
「なるほど、例の夢魔か……まぁそれなら大丈夫か」
何が?
「流石主様ですわ」
白百合さんに褒められるとなんだかこそばゆいな……。
「まぁ見てくれはいいしの、夢だけなら妾の娯楽として出てきても良いぞ」
「もうそんな事しませんよ、ったくとんだ神様だな、やれやれ」
お、やれやれ系主人公か?
それにしても僕もスタリオンになってようやくルイの気持ちが分かった、変態行為を自制するのがこんなにも辛いとは……。
変態道摩法師の夢魔へ敬礼。
まぁなんだかんだ彼とは持ちつ持たれつだ。
こうして彼の人生の悩みを取り除いたのも僕だし、乖離剣:倶羅無を作るため北欧に行った時は彼に助けて貰った。
船上パーティーの時も彼の言葉が無かったら、香蓮ちゃんと2人きりの舞踏会も決心できなかったかもしれない。
今回もお互い様だろう。
「なにはともあれ、皆もこれからドーマ連盟に気を付けてね」――――――
――――――
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