4. あの日の男の子
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AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください
先生に島をある程度案内された僕は、風呂に入った後、今日はじめて起きた部屋のベッドに寝転がりながら今日一日の出来事を思い出す。
この島はホントにすごい、衣食住はもちろん娯楽設備までも様々なものが完備され、学園に通う生徒はそれらが無料で使える。
厳密に言うとちょっと違うのだが今はその程度の認識でもいいだろう。
それに学園は1つではないらしい、反対方向にもう1つ学園が存在するのだとか。
もちろん島には学園以外の人間も居住していてその男女比はなんと大体9:1である。
そして当然女性の方が多い、この世界自体が女性の方が多いが1つの地域でここまで差があるのはそうそうないのではないだろうか。
食料自給率も高く仕入れもしているが、本来はこの島だけでもまかなえるくらい充実している。
あと一番気になった事だが、この島には守り神様がいるみたいだ。
案内されて歩き回っている間にも見えたが、この島の中心に大きい山があり、その天辺に御狐様の守り神様がおはすとされる神社があるとか。
島のあちこちにも祈りを捧げるための簡易的な社もあり、美香さんとお祈りもしたんだけど、明日にでも本殿にいってお参りしようかな。
なんせこの島に着いて平穏に過ごすビジョンが見えない。
だって綺麗なお姉さん達がたくさんいて僕はドキドキしっぱなしだ。うへへ
「カァッ!」
「うあ!」
雑音も何もない部屋なのでいきなりでびっくりした。
窓に目をやると夜闇に溶け込むような漆黒のカラスが窓を軽くつついている。
「カラスがガラスつついてるよ、HAHAHA!」
睨まれた。
この子は僕の仲の良いハシボソガラスだ。名前は 小夜。
美香さんによるとどうやら島に来る前に僕が捕まった後、一緒に車に乗ってきたらしい。
そしてそのまま一緒に船で島に来たみたいだ。
その後はどこかに遊びに行ってたんだろうな。
小夜はかしこい、美香さんらが僕に敵意はない事は分かっていたのだろう。
それに父さんも船に乗るまでは一緒にいたみたいだしね。
小夜は僕が小さい頃からの友達だけど普段ずっと一緒にいるわけではない。
しかしこの島にもまだ慣れていないのであろう、今夜は僕のところに来たみたいだ。
「……よし、上がっていいよ」
手を翳し小夜を綺麗にし、部屋に入れる。
「新しい友達はできたかい?」
小夜の頭を撫で、彼女のご飯を準備する。
カラスは基本雑食性でなんでも食べる、美香さんから小夜の話を聞いていた僕は小夜が食べる様な食料も購入しておいたのだ。
それにしてもホントに今日はびっくりしたしドギマギしたし、一言でいって疲れた。
起きたら見知らぬ場所だし、美香さんにドッキリで迫られるし、でも迫られるのは悪くなかったな。
美香さんが座っていた箇所に顔をうずめ残り香がないか確認する。
フガフガフガ、どうやら何も残っていない。
「いててて」
アホな事をしていると小夜が頭をつついてきた。
……。
今学園は長期休み中で、僕が学園に通う事になるのは当然だが休み明けからみたいだ。
とりあえずそれまで美香さんは好きに行動して良いと言っていたけど、明日は山にお参りに行くとして。
これからどうしよう……。ホントにこの島でやっていけるのか。
スタリオンになり女性に劣情を催すようになってから、なんとか誤魔化そうと内心お茶らけているが正直相当辛い。
このままではいつか女性を不幸にしてしまうのではないか。
自分が犯罪を犯してしまうのではないか、そんな不安ばかりが頭について回る。
そんな事を目を瞑りながら考えていたら眠気が襲ってきた。
小夜が皿の上のご飯をつつき、嘴と皿が軽くぶつかる音が住み慣れていない閑静な部屋にこだまする。
「小夜、一緒に来てくれてありがとう……」
僕は眠気に襲われながら朧げな意識で呟いた。
眠りに落ちる直前、漆黒の羽毛が僕の頭を抱いていた、そんな気がした。
――――
春はあけぼののような早朝から数時間後、暖かな午前8時過ぎ、1人の女生徒が、教室で控えめな溜息をついた。
「はぁ……」
「あれ?麗香どうしたのー?元気ないぢゃん」
女生徒は誰にも気付かれぬよう溜息を吐いたつもりだったが、仲の良い女子には気付かれてしまったようだ。
休み明け振りの賑やかしい教室の中だったが、周りの事をよく見ているというべきか甚だ友達思いの子だ。
「ん、ちょっとさー、結局会えなかったなーて」
「あーねw LEENで言ってた男の子かー、麗香は意外にしっかりしてんもんね~」
溜息を付いたその女生徒は結局、以前助けて貰った公園で倒れた男の子と会う事も出来ず家族の実家から帰ってしまっていた。
彼女は義理堅く律儀な性格だが、おかげでこの事を思い出してしまうたびに自身の心を凹ませてしまう。
「男の子でそんななるなんて珍しいぢゃん、その子そんなカッコよかったの~?」
「ぶっちゃけふつーっちゃふつーだけどさ、なんか気になるてゆーか可愛いてゆーか、助けてくれたからかもだけど」
「まー、男なんて他にもいるっしょ! ウチにも出会い欲しいなー」
そう、どこにでもいるような普通の男の子ではあった。
しかしどこか砕けたような会話や、妹のるーちゃんも含めて楽しく話した時間を思い出すと心が温かくなるのだ。
ハデな外見からなのか何故か分からないが、男の子によく避けられていたような彼女にとって僅かなあの時間は……自分が女の子として認められたような、そんな心から安心できた時間だった。
そのせいか彼女は、あの男の子を思い出すと妙に心が温かくなるのを感じていた。
「陽菜はもっと家庭的にならないとねw」
「麗香なんて男だらけのところだったらモテモテだったでしょ~!この~!」
覇気のない女生徒を元気づける為か、もう1人の女生徒は明るく振舞いつつ落ち込んでいた女生徒の
壮麗なお乳をいきなり揉みだした。
もみもみもみもーみもみもみもみもみ。いかん、乳を揉んでいる様を想像しついリズムを刻んでしまった。
落ち込んでいた女生徒は友人の気遣いに感謝しつつ、明るさを取り戻す。
「うりうり~♪でっかいやわらかお乳にお仕置きだ~!」
「ちょww乳揉むなってーwwアタシ男の子から避けられんの知ってるっしょーww」
「違うね~wwその男達は絶対麗香と話すの恥ずかしがってただけだし! この豊満お乳め~!」
友人のこの子は、ホントに明るくて周りを照らしくれる友達思いの女の子だ。
そんな事を思いつつ、一頻り乳を揉まれ落ち着いた後、元気を取り戻した女生徒はそんな友人へと感謝の言葉を呟く。
「陽菜ありがと」
「なになに~?もっと揉んで欲しくなっちゃった系?w」
「チョーシに乗んなw」
「あう><」
乳揉み星人の友人にチョップを繰り出すのを横目にいつも一緒にいる別の女生徒の一人が、おそらく羨ましそうにそれらのやり取りを見ていた。
「……」
「あ、涼音もいっとく?w 朝一番の乳しぼりw」
「コラァー、人を牛みたいに言うなーw 揉み返すぞw」
「わ、私は、そんなの興味ないし……アンタ達ももう少しお淑やかになったら?」
「あー、人を下品みたいに言ってるー、涼音だってアレックス様のお乳揉みたいのにぃ!」
そう、この涼音という女の子はおそらくレズという類の性癖を持ち合わせている。
彼女が幼少のころから親しくしている、アレックス様と呼ばれている学園の王子様に思いを寄せているであろう事は友人達は皆うすうす感付いている。
しかし本人から直接その事を聞いたわけではないので悪魔で憶測である。
「わ、私はそんなの興味ないって言ってるでしょ」
「顔赤くしてるじゃんww 涼音はかーいーなーww」
「それより千冬、そろそろ先生来るよ、アニメ見るのやめたら?」
((ごまかしたな……w))
顔を赤くした涼音が、明るい茶髪の女生徒へ話を振り誤魔化す。
「まじー?いまいいとこなんだよー……」
そんなやり取りの中、朝のチャイムが鳴り十数分後、先生が教室へと入ってくる。
「さあ、ホームルームはじめるわよ、皆席ついてねー」
「あれ?みかちゃんだー!なぎちゃんは?」
「渚先生は合コンで敗北からのやけ酒で体調を壊したわ、次来たら皆労わってあげてね」
包容力も持ち合わせ出来る大人の女の雰囲気漂う美香先生が教室へ入りホームルームを始める。
本来担任はキリッとした感じのサバサバした女教師だが合コンで敗北したみたいだ。
「きゃはははwww」「なぎちゃんウケルwwww」「おもしろーいwww」
悪気のない笑いに包まれる教室だがこの場面に遭遇していたなら、渚先生も泣きっ面にハチだっただろうなと美香は思った。
生徒達の笑い声が賑わうそんな空気の中、麗香は頬杖をつき窓からの景色を眺めていた。
「……」
長期休みで出会った男の子は素敵な男の子ではあるが決して恋をしていたわけではない。
だが言われてみれば、確かに少しは気になっていたかも……。
最低限お礼や謝罪くらいしたかったが、もう会えない以上そんな事を気にしていても仕方ないし。
その事で最近凹んでいたが、友人たちのおかげで元気も出た事だし切り替えて楽しく過ごそう。
進んでゆくホームルームを聞き流し、麗香は窓から見える澄み渡った空へ想いを馳せながらそんな事を考えていた。
「そして今日は皆にサプライズがあるわ」
「え、なになに?」「美香ちゃん結婚とか!?」「あれ?廊下に男の子がいるよ!」
「夜兎君ー!入っていいわー!」
教師が名前を呼び、とある生徒がドアを開ける音が教室に響く。
麗香はあの時出会った男の子もそんなような名前だったかなーと考える。
「夜兎 煌河助月守天道です!ふつゅちゅかものですが、よ、よろしくお願いします!」
何度も頭の中で思い返していた声がいきなり耳に入り、窓を眺めていた女生徒は正面を向き目を見開いた。
「っ!―」
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