53. 学生ノリは侮れない
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とある休日を控えた金曜日。
学園の教員でもある乙木 苺は、忘れ物をし真っ暗闇に包まれる学園の中を、電灯の明かりを頼りに職員室へと歩を進めていた。
次の国語の授業で使うプリントのデータが入ったUSBを学園に忘れてしまったため、こうしてこんな夜遅くに学園に来る羽目になてしまったのである。
自分の間抜けさに後悔しながらも、暗闇に怯える苺は足早に廊下を歩く。
「ひっ……もう……なんでこんな……」
強風により音を立てた窓に対し、微かな悲鳴を上げながらも。
暗闇を進み、職員室の扉の前に立つ。
扉を開けた瞬間、変な魔物や妖怪でも出てくるのではないかと勘繰ってしまう苺は『学園には結界も張られているし……』変な物が侵入する事はまずない、と自分を鼓舞する。
心を落ち着かせ意を決し、扉を開けようとした時、微かな声が職員室から聞こえてくるのを感じた。
「ん……ぉ……」
「え……誰かいるんですか!」
声をかけるが、沈黙がしばらく続き中から返事は返ってこない。
『気のせいか……』と苺は胸を撫でおろし
忘れ物を取って早く帰ろうと、扉を開くと、開けたかけた扉の隙間から白くぼやけた何かが扉の前に存在するのが見えた。
「ひっ……!」
苺は先程の反射的に出た悲鳴とは違い、心からの恐怖が声になり背筋に悪寒が走る。
刹那、白い何かが自分の腕を掴み、声を上げる。
「ぅ……んこ……ぉ」
「きゃああああああああああああ!!!!」
嫌あああああ!今うんこって言った!?!?
化物だか変質者だかなんだか分からない物体の手を振りほどき、苺は全力で廊下を走る。
全速力で廊下を走り抜ける風により、剥がれかかっていた漫画研究会の描いた壁面のポスターが地に落ち、それにはこう書かれていた。
廊下を走ってはいけません。
――――――
生徒たちが賑わい、歓談の声が響く学園の教室。
僕らは和気藹々といつものように、麗香達と弁当を突く。
相変わらず彼女は料理上手だ、思わずエプロン姿の麗香を想像してしまう。
うーん、良いですねぇ。
ショートカットも麗香に似合いそうだな……。
「それでさー、あの船でまた現人神が出たんだって!」
陽菜が面白そうに、この前の船上パーティーの事を話す。
どうやら僕と香蓮ちゃんが帰りの船に忍び込み、2人きりのダンス会をした事が現人神の噂になってしまったようだ。
船員に狐の面を見られたからな……。
もちろん僕は神でも何でもないただのハンサムな青年だが、百鬼夜行の事件で麗香と千冬が襲われているところを助けてから、狐の面をした現人神が島にいると噂になってしまっている。
半裸で寒い、略してハンサム。
「気のせいじゃない? 狐の面なら神社に売ってるよ」
僕は陽菜へと言葉を返す、僕の事が噂になってしまってからカモフラージュの意味も込め神社で観光グッズとして面を売り出した。
相変わらず人はこないから、経費の無駄な気がするが……割とそこそこの量を取り扱っている。
まぁ、何か考えがあるんだろう、知らんけど。
「なんでこーががそのこと知ってるの?」
純粋に千冬が尋ねてくるが、僕はなんとか必死に誤魔化す。
「いや、良くお参りに行くんだよね、麗香のお守りもそこで買ったし!」
そうだ、お守りだ。
渡すタイミングを伺っていたが、今なら丁度いい!
我ながらナイスな機転だ。
「あ! お守りと言えば!!!」
僕は咄嗟に話題を変えようと自分のペースに持っていこうとするが。
わざとらしすぎたのかスズが僕を、何やってんの、と言わんばかりに睨んでくる。
……クールギャルの冷たい眼差し、ンギモヂイイイイ!
「これ、皆に……ちょっと前まで物騒だったし、遅いかもしれないけど……」
僕は皆にお守りを渡す、表向きは健康祈願のお守りだけど、これは敵意を持った魔の者が近づくと発動する結界となっている。
麗香に弁当のお礼として渡し、百鬼夜行の事件で役に立ったものと同じやつだ。
あんな事件が起こるとは思わなかったし、身近な民間人があんな風に襲われるのは初めてで僕も大分動揺した。
だから、皆の分を休日の間に作った……こうやって近しい友達には日頃のお礼だとか言って渡せるけど……。
できればクラスや学園の皆にも持ってほしい、しかしいい方法が思いつかない……。
麗華は僕がプレゼントしたネックレスを付けているが、あれはお守りと連動し僕へ呪力の信号を飛ばしてくれるようにしたものだ。
今回渡したお守りは小さい小粒の宝石が、埋め込まれている。
それで信号を送ってくれる。
「え、でもこれって……あれ……?」
麗華は以前僕から渡されたお守りを厚みのある携帯カバーの裏から取り出し、ボロボロになっているのに気付く。
彼女へ渡したお守りは効力切れだ、あの妖魔、地味に強かったからな……結界も破壊される寸前だったし。
「麗香は新しいの持っておいてよ」
「これ、可愛い―!」
「ありがとー」
「まぁ、ありがと……」
「……」
陽菜がお守りを可愛いと言っているが、このデザインは島の守護神である夢幻天様、もとい琥珀の直々のプロデュースだ。
『お守りも最先端にせんとな!』とか言って若い人向けへこれから発売するらしい。
……?
麗華は、黙って僕の顔を不思議そうに見つめているが……パスタのソースでもついてるのかな。
……反射的に袖で口を拭いてしまった! 付いてなかったから良かったけど、あれ付くと洗うの大変だよね。
「は、鼻毛でも出てる?」
「いっぱいでてるw」
「嘘!?」
「うそだよw お守りありがと!」
……バレてないよな?
まぁ、大丈夫だろう、狐の面には認識阻害もかけてある。
付けた人物の様相を分かりにくくする効果だ。
僕が気を取り直し微かに安心していると、千冬がおどろおどろしい声で告げる。
「お守りで思い出したけどさー、この学校出るんだってー……」
「何が……?」
「お化け……」
……。
「それ知ってる! 苺ちゃんも見たんだって! 後3年生たちも!」
陽菜が嬉しそうに報告してくるが、彼女を含め麗香と千冬は、現人神の噂を聞いてからオカルトに興味を持ちはじめてしまった。
学校の生徒や苺ちゃんが実際に妖怪だか化物だかを見たらしく、最近こういう話題にも敏感だ。
まぁ、彼女らを影から守るのも僕らの仕事だ。
今夜はその件で任務もあるし、それが終われば大丈夫だろう。
「まぁ、迷信だろうね、心配しないで大丈夫だよ」
「そうだ! 肝試しで確かめよーよ!」
「ぶふっ!」
……やばい。
僕が余計な事を言ったせいで、今夜の任務に支障が出そうだ。
『余計な事を……』という風にクールギャルが本日2度目の冷たい視線を僕に浴びせてくる。
トホホギス、トホホトホホ、トホホギス。――――――
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気持ち良いので




