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52. 煌河視点 Bパート

52話 Aパートの主人公視点となります


ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください








『ははは、香蓮は手加減していたに決まってるだろう』


 ……。

 やっぱり、香蓮ちゃんは手加減していたのかな……。

 なんでそんな事したんだろう……僕は頭も良くないし考えても全く分からないけど、なにか理由があるはずだ。

 如月家でシャワーを浴びながら考えていた僕は、着替えた後に真意を聞くために香蓮ちゃんの部屋へ向かう。


「香蓮ちゃーん! いるー!?」


 僕が声を掛けると、扉が開く。


「香蓮ならいないから、あっち行って」 


 スズちゃんにそう答えられた後、すぐに扉を閉められた。

 ……なんなんだ!出会ってからずっとツンケンしてる!

 僕は何もしてないのに!チョーむかつく!


 あちらこちらと、僕は広い屋敷を探し回る。

 だけどどこにもいないや、まぁご飯の時に聞けばいいか。

 今日は僕は如月家で夜ご飯を食べる。

 考えてみればその時に顔を合わすから、無理に探す必要もないか。


 あれ?凛華姉さん?


「なにしてるの!」


「シッ……何か話してるみたいだ、子供には秘密の面白いことかもしれない」


 僕が姉さんに声を掛けると、口元に人差し指を当て静かにするように促される。

 中庭の近くで凛華姉さんは聞き耳を立てていた。

 なんだろう、なんかふいんき(なぜかへんかんできない)が良くないけど……。


「その絵本を取り上げるのは些かやりすぎでは……」


「変な情をかけるからだ、それは相手にも良くない、こんな本を読んでるからだろう」


「彼女の優しさですよ、それは良い方向へ伸ばして上げないと……」


「将来、姫を守る騎士になってもらわねば困りますからな、甘さは捨てさせないといかん……」


 ……。

 あれは香蓮ちゃんが大事にしてる絵本だ!

 なんで香蓮ちゃんのお父さんが持ってるんだろう。


「全く、こんなのくだらないもの早く卒業してしまえばいいものを」


 ……。


『私の宝物なんだ……恥ずかしいけど……』


『なんで? 女の子だからそういうの好きなんじゃないの?』


『……ふふ……ははは! そうだね!』


『?』


『うん、とにかく大事なんだ!』


 良く分かんないけど……。

 香蓮ちゃんはあれを大事にしてるのに……。


「くだらなくないよ!」


「あいつの倅か……」


「おじさん、その本どうするの?」


「これはな……しばらく取り上げるんだよ」


「なんで? 何か悪い事したの?」


「あぁ、少しな……」


「そうか、なら仕方ないか」


 香蓮ちゃんはどんな悪い事をしたんだろう。


「何、納得してるんだ、手加減の事だろう」


 凛華姉さんも姿を現し混ざってくる。


「香蓮はきっと、大人達にこーちゃんを良く見せるために泥を被ったんだ」


「泥は被ってないよ?」


「ばか! そういう意味ではない!」


 ……香蓮ちゃんは、自分を悪く見られても構わないからと僕に一本取らせてくれたのかな?

 確かに嬉しくない、嬉しくないけど……。

 それはきっと、彼女なりの一生懸命考えた想いやりのはずなのに……!


「それは香蓮ちゃんの宝物だよ」


「……」


「返してよ!」


「こ、こら! やめろ!」


「うわぁ!」


「こーちゃん!」


 香蓮ちゃんのお父さんから吹き飛ばされ僕は地を転がり、膝をすりむき流血する。

 っつぅ……。

 凛華姉さんが駆け寄って心配してくれる、くそぉ……。


「大丈夫か? やりすぎです!」


「そんなつもりでは無かったんだが……弱すぎて……」 


 くそぉ……!いつかぜってー泣かす……!

 鼻の穴にギザギザのポテトチップス突っ込んでやる……。

 きっと鼻血まみれだ、ざまぁみろ……。


「皆、香蓮ちゃん見なかったかしら?」


 璃々奈おばさん、そういえば僕も香蓮ちゃんを探していたんだ。


「使用人の方々にも探して貰ったんだけど、どこにもいないの」


 僕も散々探したし部屋にもいなかった、あの本……。

 最近は周囲に物騒な事件が多いのに……。


「くそぉ!」


「こーちゃん!どこ行くんだ!」


 まだ未完成だけど頼む発動してくれ……! 感覚を研ぎ澄ませろ……。

 香蓮ちゃんのオーラ……広範囲は感知できないけど、感じる事の出来る範囲はどこにも見当たらない……。

 ……悲しみの負のオーラの微かな残りが屋敷から飛び出してる……!


「これを辿れば……!」


 たぶんあの本の事だ、本がないから悲しんで探していたんだ。

 それで、屋敷から出ていったんだ。

 もうすぐ逢魔が時……香蓮ちゃんは魔物や妖怪とまだ遭遇した事は無いと言っていた。

 彼女は強いから弱い奴なら倒せるだろうけど、初めてじゃ危ない……!


「微かなオーラが全部消えちゃった……」


 どうしよう……。

 最近あの公園で子供が行方不明になってるって……。

 『おそらく、隠し神の類だ、警戒心が強くてなかなか姿を見せないが……危ないから近づくなよ』って父さんが言ってた……。

 隠し神は子供を狙う妖怪の総称だ、大人がいればほとんどは平気だけど。

 ……僕も死ぬかもしれない……。

 ぐ……くそぉ!


「はぁはぁはぁ……」


 さっき擦りむいた膝が痛い……。

 稽古の後だから疲れた……。

 香蓮ちゃんは大丈夫だろうか……。

 公園は少し見て回ればいいだけだ、隠し神と絶対に遭遇するとは限らない。

 香蓮ちゃんがいなければ帰ればいい。


 ついた、公園の敷地に入る前に……!


「変化!」


 僕は香蓮ちゃんのお父さんの姿へ変わり、再び走り出す。

 大人の姿になれば、隠し神への牽制になるはず……。


「はぁはぁ……」


 なんでこんな大きい公園作ったんだ……。

 辺りには誰もいない……。

 もう、疲れた……。

 暗い夜道から何かが飛び出てきそうで怖い……。

 もう帰ろうかな……あれは……?


「暗くて良く見えないけど、子供が襲われる……!」


 僕と同じくらいの子供が……!

 おそらく低級の妖魔だ……!

 あれなら確実に勝てる!

 ミスをしたら僕も子供も死ぬ……集中しろ……!


「払い給へ、悪しきケガレ、清め給へ、悲しきケガレ!」


 僕は呪力を込めた呪符を飛ばし、地へ格子状の結界を展開する。

 この上に乗った妖魔を浄化、または払う事が出来る。


「一人じゃ……ないんかい……」


 子供を襲おうと近付いていた妖魔は黒い霧となり霧散していく。

 ……おそらく今のが噂の妖怪だ。

 正体は、低級の妖魔だったのか。


「父様!」


 香蓮ちゃんだ! 良かった……間一髪助かったんだ……。


「あ、ごめん……」


 っとそうだった、僕は今彼女のお父さんに変化してるんだ。

 結界術も解除と……。


「解……!」


「わぁ!」


 香蓮ちゃんは驚いて尻もちをついてしまうが。

 とにかく無事でほんとに良かった!


「へへ……やっと見つけた!」


「すごいよ……!」


 褒めてくれる彼女に僕は手を差し出す。

 暗がりで見づらいがおそらく香蓮ちゃんは泣き腫らして目の周りが赤く、膝を怪我している。

 かわいそうに、こんな状態で襲われて、逃げる事も出来ないで動けずにいた。

 きっと怖かったんだと思う。


「傷洗ってあげる、水道のベンチいこう」


 香蓮ちゃんの怪我を洗った後にベンチへ座らせる。

 そして彼女の怪我をした膝へ手を翳す。


「魂魄の源よ、呪力を糧に五体を癒し給へ」


「どうして……」


 そりゃあ助けるよ。

 香蓮ちゃんは、女の子だし……。

 それに、初めて会った時の、あの……。


『雅 Alexandra 香蓮です、よろしくね』


 笑顔が可愛かった……だから……。

 こんな恥ずかしい事、言えるわけない!


「だって、香蓮ちゃん女の子だし……」


 ……よし、治療もある程度済んだ。

 とにかく早く家に帰ろう、さっきのやつが噂の妖怪だと決まったわけじゃないし。

 まだ危ないのがいるかも……。


「これで少しは痛くなくなったでしょ?」


「うん……」


「行こう」


 僕が立ち上がると、香蓮ちゃんが僕の横へ並び、手を握ってくる。

 一瞬ドキっとし、頭の中がなんだかドギマギというかおどおどというか戸惑ってしまう。

 ……しなやかで、力強くて、柔らかくて、暖かい……素敵な手だ。

 そんな彼女の手を握りながら、仄かに月明りが照らす街灯の下を歩く。

 チラリと横を見ると、暗がりで良く分からないけど、彼女の顔が紅くなっているような気がする。

 気のせいかもしれないけど……。

 下へと向けたその横顔は、少し瞼が下がった笑顔の様な、そんな穏やかな表情をしてくれていた。

 僕は生まれて初めて胸の奥底から暖かい気持ちが湧き上がるような、不思議な感覚に陥る……。

 何だろう……この気持ち……。

 それに、香蓮ちゃん……可愛い……。


「ありがとう……煌河くん……」




挿絵(By みてみん)





「うん……」


 香蓮ちゃんと無事屋敷へ帰った僕は、こっぴどく怒られつつも、香蓮ちゃんと共に璃々奈さんに抱きしめられる。

 香蓮ちゃんもどうやらお父さんと和解し絵本を返してもらっていた。

 良かったね、宝物が戻ってきて。


 そして夕飯を食べながら、どうしてわざと負けたのかを聞くと。

 僕はいつも皆に負けてばかりだから、得意な技とか、良い所を大人の人に見て貰いたかったんだって。


『ただの組手だよ、良い所を見せ合ってお互い磨いて行けば良い』


『同情や気遣いで負けたって訳じゃないよ』


『嫌な気持ちにさせたなら、本当にごめんね』


 僕は、真剣勝負のつもりだったんだけど……彼女からしたらそんな取るに足らない相手だったって事はちょっとショックだ。

 けど言われてみればそうだ、あの組手は死ぬ気でやれとか、妖怪と戦うつもりでやれとか、そんな指示は一切なかった。

 それは、きっと彼女の想いやりなんだ。

 きっと自分だけ賞賛されて、人の良い所を踏み潰すようなことはしたくなかったのかもしれない。

 僕は、そんな香蓮ちゃんの優しさを心から尊敬し、素敵だなって思った。

 僕の目指すような、護衛の真髄というものを見た気がする、自分が強いだけじゃダメなんだね。


「それじゃ、帰るね」


 夕飯を終え、如月家の玄関へ立ち、凛華姉さんと香蓮ちゃんへ別れを告げる。

 今日は本当に色々あった。


「あぁ、朝練もちゃんとくるんだぞ」


「……」


「返事は?」


「は、はい……」


 僕が凛華姉さんへ返事をすると、香蓮ちゃんも靴を履く。


「敷地の外まで送るよ」


「あ、ありがとう……」


 僕はさっき2人きりで手を繋いでいたことを思い出し、ドギマギしてしまう。


「? 分かった、またな」


 凛華姉さんに見送られ、僕は香蓮ちゃんと敷き詰められた石畳の上を歩く。

 お互いがお互いの様子を見ながらゆっくりと歩き、庭の草むらから鈴虫の声が微かに鳴り響きしばらく沈黙が続く。

 何メートルか進んだ後、香蓮ちゃんは口を開き話始める。


「今日は、ホントに嬉しかった……」


「あれに襲われた時、もう、ダメかと思ったけど、君が来てくれた」


「それに、私の事……」


 ……香蓮ちゃんは何か言いたそうだったけど、口を噤いでしまう。

 きっと怖かったろうな、あんな暗い公園で一人ぼっちで。


 夕飯の時に彼女が屋敷を飛び出した理由も璃々奈おばさんが聞いたんだけど、彼女は僕らにも話してくれた。

 男の子のように育てられて、絵本を取り上げられて、女の子の様な夢を持つというささやかな想いすら潰された気がしてしまったと。

 これから彼女はどうなるんだろう、今は良いかもしれないけど、後何か月かでこの屋敷を去った時……。

 香蓮ちゃんは、自分の想いが上手く伝えられない世界で生きて来たんだ。

 またそんな風に押し付けられて、心を潰されながら生きるのかな……。

 飛び出して、一人で泣いて……どれだけ辛かったんだろう……。

 あんなにも、人の事を想いやる事の出来る、優しい女の子なのに。

 僕は、凛華姉さんだけではなく、心から彼女の事も守りたいと思った。


「今は香蓮ちゃんの方が強いけど、僕が守るから」


「……」


「だから、大丈夫だよ」


 さっき彼女が僕の手を握ってくれた様に、彼女の手を握り握手する。


「ぁ……うん、ありがとう!」


 僕も香蓮ちゃんみたいに、一歩一歩人の気持ちに寄り添えるような、そんな優しくて強い人間になりたい。

 そしていつかそうなれたら、絶対に彼女を守る。


「とにかく、今日はありがとう……また明日!」


「うん、また明日!」 ――――――



――――――







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