50. 初めて感じる感情
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AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください
香蓮ちゃんからモデル撮影の仕事を頼まれた僕は待っていた琥珀、小夜と合流し、船に乗り込み撮影開始の時間を待っていた。
軽く撮影を終えてからパーティーが始まり、パーティーの様子もちょくちょく撮られるというスタイルが今日の工程らしい。
そして撮影が始まる前にマネージャーさんや社長に挨拶を終えたが、どうやら僕はお眼鏡に叶わなかったらしい。
『Youが香蓮ちゃんが言ってた子ね』
『素敵な男の子でしょう? 昔馴染みなんです』
『せっかく準備して貰って本当に悪いけど、彼との撮影は無しでいいかしら?』
『な、なんでですか!』
『ご主人様役のキャラクターと大分イメージが違うのよね~、根強いファンが多いから反感を買いそうだわ』
『私、明日から辞めます!』
『勘弁してよー、パーティーはもちろん好きなだけ飲んで食べて、楽しんでいっていいから』
なんて一幕があり、どうやら僕はお役御免の様だ。
ほんの少しショックだったけど、仕方ない。
ご主人様のキャラはキリッとした釣り目でクールな印象だが、僕はどちらかというタレ目よりなタイプだから似つかわしくない。
そもそも僕が香蓮ちゃんと釣り合ってもないからな、素敵な彼女が変な反感を買うよりは良いだろう。
「もぉー、あんまりだよ……ホントにごめんね」
爽やかな潮風がそよぐ甲板で海を眺めながら、香蓮ちゃんは僕に謝ってくれる。
少しショックだったのもそうだが、内心ホッとしている自分がいるのも事実だ。
なんせ撮影何て良く分からないからな、たぶん撮られる側として気を付けないといけない事もあるだろうし僕はそういう知識がない。
「そんな気を落とす事ないよ、僕なら平気だし」
「でも君と踊りたかったな、ダンスの撮影があるんだけど君がその相方でもあったんだ」
「そっか……」
先程までのキラキラしていた表情は曇ってしまい、香蓮ちゃんはうなだれている。
なんとか元気付けてあげたいけど……。
そういえば琥珀と小夜、エレナさんはどこに行ったんだ?
後ろを振り返り周囲を見回し、彼女らの姿を探すが見当たらない……けど良いものを見つけた。
「あ、ジュース配ってるよ、ちょっと待ってて」
僕は場を後にし、ワインみたいな色合いの葡萄ジュースを貰いに行く。
乗船客なら誰でも無料で飲めるみたいだ。
赤髪のお洒落なバーテンダー風のイカしたお兄さんが配っている。
並んでいるコスプレイヤーの方やモデルの子達は、目をキラキラさせながら彼を見つめ小声で彼の事を話している。
確かにカッコイイが……こいつぁ……。
「2人分お願いします」
「かしこまりまし……お? キンタマか?」
突然何を言ってるんだ、いきなり人の事キンタマ呼ばわりするとは失敬だな。
「うるさい、この変態が」
「ちょ、おまww誰が変態だwwデュクシwデュクシw」
先程までスカした振舞でジュースを配っていた彼は、手をチョップにして嬉しそうにツッコミを入れてくる。
女性から熱い眼差しを浴び、ネットに毒され拗らせたような喋り方をするこの男は、僕の中学の同級生だ。
卒業アルバムで僕の変顔の黒歴史を作った張本人。
名前はLouie・Butler、本来は赤髪ではなく茶髪だ。
イベントだしウィッグでも被ってるんだろう。
西洋の生まれで幼い頃に日本に来たらしい彼は、ネットの文化に毒され今ではこのありさまだ。
ちなみに初めて会った時は普通に喋ってた、というか僕がネットを教えたせいでこうなった。
やれやれ、とんだ困ったちゃんだ。
「なんでいるの?」
「モデルの仕事始めてこの島でイベントあるっていうからお前に会えると思って来ちゃった件w~ハンサムな俺、感動の再開叶えちゃいましたw~」
「そっか」
「ちょwwまてよww」
僕は軽く受け流しジュースを持って香蓮ちゃんの元へ戻る、後ろの人も並んでるしあまり長話しちゃまずいからな。
琥珀達もいつの間にか戻ってきていて、僕は彼女らが座っているテーブルに座る。
琥珀と小夜は小皿に盛られたステーキを食べている。
「ほう、煌河、気が利くのう」
「ご、ごめん、戻ってきてるの気付かなくて……」
僕は香蓮ちゃんと小夜にジュースを渡すと『妾の分もとってくるのじゃー』と琥珀はブーを垂れる。
「はいはい、エレナさんのも取ってくるね」
「いいえ、このワタクシに! 行かせてくださいまし!」
「あ、ありがとう」
彼女は僕の肩、ではなく胴体を掴んでボディラインをさすりながら座らせてくる。
これが大和男児の肉体への執着心か……変態メイドお嬢様という属性も悪くないな。
どうやら小夜達は船内を探検してる所、先ほど僕が会った社長にスカウトされていたみたいだ。
スカウトは受けないが今日の撮影は協力するらしい、その代わり美味い物食べ放題なんだって。
「社長ったらひどいんだ、煌河くんじゃなくて琥珀様と踊れって話になったみたいで」
「まぁ妾の美貌からして当然じゃの」
「あんまりだよ……」
「そんなに煌河といたいなら、いつでもウチに来てよいぞ」
「いいんですか!? あ、あと心は勝手に読まないでください!」
「おっとすまんの、クセで」
クセでじゃないが、僕もできればやめて欲しいんだよな。
スタリオンの思考がおかげで駄々洩れだ。
まぁ今更だから別に良いんだけど。
どうやらダンスの話はエレナさんと小夜にも来ていたみたいで、僕だけ仲間外れの様だ。
まぁ、いいけどね、別に悲しくなんかない美味しいもの食べられるみたいだし……。
こんな風に僕らが甲板のテラス席で喋っていると、香蓮ちゃんはアニメ原作者のファンの方へ挨拶へ行き。
入れ替わりに麗香達がやってくる、スズは彼女達といたみたいだ。
「めっちゃ綺麗なお姉さんいるじゃん!」
「アレックス様やば! カッコよかった!」
「可愛いー、この子! 妹なの?」
……各々挨拶を交わしガールズラッシュトークが始まる。
女3人集まれば姦しいと言うが、こりゃあ姦しいどころじゃないぞ。
「琥珀さんって煌河達とどんな関係なの?」
「煌河とは遠い親戚でな、島に来てから面倒をみてやっている」
「こんな綺麗なお姉さんいるなんて幸せ者だなー!」
「ははは! 全くじゃ!」
……。
どっちかって言うと僕なんだよな面倒見てるのは。
バチン!
「いてっ……HAHAHAHA!」
余計な事は言うなと言わんばかりに琥珀に背中を叩かれる。
ま、まぁ、持ちつ持たれつって感じだよな、うん。
……背中に跡残ってないだろうな。
そんなこんなで自己紹介やらガールズトークの真っ最中だったが、船は出港し撮影の時間が始まる。
僕らの様なキャストの知り合いは邪魔にならない様に履けて、甲板でモデルさんやコスプレイヤーの方の写真が撮られていく。
皆イキイキした表情をしている、やっぱり写真撮られるのが好きなのかな。
香蓮ちゃんは相変わらずカッコイイし、麗香も陽菜も綺麗だ……。
そしてソロの写真からペアの写真まで一通り撮った後、一人の男が香蓮ちゃんとペアになり写真撮影が始まった。
そう、先ほどの痛いイカしたバーテンダー、ルイだ。
な、なんでルイが香蓮ちゃんと!?
「君の輝く瞳にwktkが止まらない……」
……。
「ふつくしいあなたの愛情をクレメンス」
「今日は少し肌寒い、君との熱い夜をキボンヌ」
「キミの一番目指してヨーソロー」
ルイは香蓮ちゃんと様々なポーズを取ったり、彼女を抱きかかえながら意味不明な口説き文句を連発している。
バカァ、変な口説き文句で夜床へ香蓮ちゃんを誘うな!
変な光景を眺めながらも、僕は初めて感じる何とも言えない感情が胸の中をうずまいていた。
なんだこの気持ち……嫉妬、してるのか?
実際彼はカッコイイし、先程も久しぶりに見たが女性からの人気は高い。
なんだか、悲しくなってきた。
僕は戦力外通告を受け、アホな台詞を言っている彼に対し、香蓮ちゃんは笑顔を向けている。
この状況で僕は片隅で縮こまる事しかできない……。――――――
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