48. パーティーのパートナー
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島では完全にいつもの日常が戻り、少し前まで大事件があった事なんて忘れるくらい平穏な日常が続いている。
僕は朝の教室に入り、この前の事件で助けに来てくれた酒呑童子の魂を宿すクラスメイト、百鬼 真心。
通称まころんと挨拶を交わす。
「煌河くんおはよ!」
「おはよう、今日も元気そうだね」
この学園にはクラス替えが存在せず、彼女は元々このクラスに席が有ったようだ。
長期休み中に酒呑童子をその身に宿してしまい、僕と行き違いでこの前まで休学していたんだと。
僕がこの学園に来た時に、麗香の前の座席が空いていたのはそんな事情だったみたいだ。
「彼女が朝から元気だからw」
「そっか、常に一緒なのってどんな感覚なの?」
僕は単純に不思議だったので彼女に尋ねる。
酒呑童子とまころんは、一つの肉体に魂が同時に存在している。
なんだか不思議なものだ、僕らが知らないだけで他にそういう存在はいるんだろうか。
「遊戯王って知ってる?」
「うん」
「遊戯みたいなものかな」
……なるほど、実に分かりやすい。
遊戯王という作品に魂、人格を2つ宿す主人公、遊戯がいる。
彼女達は、遊戯みたいに常に人格が存在し、意識の外側からもう片方の自分を客観的に感じ、意思疎通も出来るって事か。
待てよ、これを使えばテストも合法的にカンニングできるんじゃないか?
まぁ彼女は誠実だ、本田君のリーゼントがブロックに引っかかろうとそんなマネはしないだろう。
ガッチャ、良いリーゼントだったぜ、本田。
「それじゃ、すぐ入れ替わったりできるんだ」
「あ、ちょ!……おう、あたりめーよ、しかしこんなとこに男一人たぁ殿様みたいだねぇ! はっはっは」
あ、入れ替わった。
彼女は時々こんな風に入れ替わる。
学校では出てこない様にしているみたいだが、彼女も羽を伸ばしたいんだろうな。
なんせ長い間封印されてたし。
「……もぉー! 変な事言わないでよ!」
「委員長変なのー!」
「「「ははははは」」」
学級委員長でもあるまころんは、面白キャラとして自然に定着している、というのも彼女は元々そういう位置づけだったみたいだ。
朝から教室に賑やかにな笑い声が響き、また新しい学園の一日が始まる。――――――
――――――
昼の休憩を知らせる鐘の音が学園に鳴り響き、腹を空かせた生徒たちはそれぞれ昼食の準備を始める。
椿 麗香はいつものように隣の席の友人、琴宮 陽菜と机をくっ付け和気藹々とお昼ご飯を準備する。
「千冬、ご飯食べよ」
前の時間が自習だったため、携帯でアニメを見ていた雪平 千冬へと涼音が声をかける。
千冬は『あいよー』と空返事をするが、自分の席から離れる素振りが無かった。
「それ、香蓮の……」
「香蓮ちゃんがどうかしたの?」
煌河は久遠 涼音へと尋ね、涼音は少々得意気な表情で説明する。
千冬が見ていたアニメは、学園で王子様と呼ばれモデルとしても活動している生徒会の副会長、雅 Alexandra 香蓮を主役のイメージとして制作された物語だった。
香蓮は事務所公式のファンクラブが存在し、そのファンクラブに入会しているメンバーが香蓮を主役としてイメージした作品をネット小説として書き上げ、大ヒットしたものであった。
「このアニメにそんなエピソードが……!」
煌河は驚嘆した。
そんな煌河の様子に自分の慕う人間の影響力に鼻を高くする涼音を見て、麗香は『そういえば今日はあれか……』と心の中で予定を再確認する。
すると教室の外で煌河を呼んでいると、百鬼 真心ことまころんが声を上げる。
「煌河くーん、お客さん」
「ちょっと行ってくるよ」
煌河は麗香達へ声を掛け、教室の外へ出ていく。
「どうしたんだろ、今日はアタシの番のはずなのに……」
「アレックス様までライバルになるなんて大変だなー、麗香」
「べ、別にそういうんじゃないけどさw」
麗華は友人から半分茶化されつつ不安になりながらも、先月にライバルが増えてしまった事に落胆していた。
ゴールデンウィークが明ける前、学園の王子様である香蓮までもが、煌河に好意がある様な出来事があったからだ。
それは、凛華から煌河の弁当当番を決める連絡が来た際に察しがついた。
凛華と繋がりがある事は知っていたが、香蓮までもがライバルになるとは想像にもしていなかった。
そんな複雑な想いが胸中を占める中、外で香蓮と話す煌河を見て『今日の弁当当番はアタシのはずだよね……?』と麗香は頭の中で確認する。
「あれ、ホントにアレックス様……?」
「すごい可愛い……」
教室中の生徒が外の2人のやり取りを眺め、王子様の話題に花を咲かせる。
いつもは凛々しくてカッコイイ王子様が、話相手の男子生徒の前では1人の女の子のような愛らしい表情を浮かべているからだ。
いつもとは違う様子の王子様に、女生徒達は更に心を掴まれていく。
「れいか! 何の話か聞きに行こうよ!」
「あ、ちょっと陽菜!」
麗華は陽菜に手を引かれ、涼音と千冬もそれに付いていく。――――――
――――――
僕はまころんを伝い香蓮ちゃんに呼び出され、教室の外へと出る。
どうしたんだろう、今日のお昼は麗香が作ってくれているはずだけど。
「何かあったの?」
「やぁ、ちょっと頼みがあるんだけど……」
頼み……?
珍しいな、香蓮ちゃんが改まって頼みなんて。
いつの日にか思った事だが、僕はたぶん香蓮ちゃんの頼みなら何でも聞いてしまう。
彼女がカラスを白いというなら、僕はこの世界のカラスを白く染め上げよう。
保坂先輩の様に。
……ともかく、それくらい香蓮ちゃんの笑顔は素敵だという事だ。
「香蓮ちゃんの頼みなら、なんでも聞くよ」
「な、なんでも……!? ほんとかい!?」
思った事をそのまま口走ると、香蓮ちゃんが身を乗り出し興奮気味に食いついてくる。
ついびっくりして目を丸くし、言葉を失ってしまった。
僕が唖然としていると、香蓮ちゃんは落ち着きを取り戻す。
「あぁ、ごめんよ……」
彼女は一呼吸置き、頼み事を切り出す。
「今日の夜にモデルの撮影を一緒にして欲しいんだけど」
「無理ですね」
「どうして!?」
いやぁ、なんでも頼みを聞くと言ったが僕にモデルは無理だろう。
無理過ぎて敬語になってしまった。
僕は写真を撮られるのが苦手だ、数年前修学旅行の班分けで写真を撮った時イケメンと持て囃されている男子と一緒になった。
その時に対抗するようにキメ顔をしたら変顔扱いされて、学校中の笑いものになった。
しかも半目で卒業アルバムに乗ってる、ふざけんなよマジでぇ。
僕が断ると、香蓮ちゃんは眉を吊り下げていた。
……そんな悲しそうな顔しないでよ。
「だって……逆に聞くけど僕にモデルなんてできると思う?」
「当たり前じゃないか、キミの写真を枕元に置いて毎晩寝たいくらいだよ」
あ、相変わらず恥ずかしいセリフを澄まし顔で吐くんだからこの人は。
でも今のは流石に言った後少し恥ずかしくなっちゃったのか少し照れている。
可愛い人だ、相変わらず。
「とにかく、だめ……?」
「そもそもどういう撮影なの?」
「あぁ、それはね」
香蓮ちゃんは、忘れてたと言わんばかりに説明してくれる。
「あるアニメのイベントで船上パーティーがあるんだけど、そこで撮影の仕事もあるんだ」
「執事役の私と男の子で、パーティーを楽しむような写真を撮ると思うんだけど」
「写真を撮る相手役の男の子が体調を崩しちゃって、来れなくなっちゃったんだ」
なるほど、それで突然こんな話になってるわけか。
「無理にとは言わないよ、ただキミと一緒に……」
彼女は僕の返事を待つ間、望み薄だと思ったのか少し悲しそうな表情をしている。
まぁ、香蓮ちゃんには世話になってるし、あまり悲しい想いもさせたくない。
だって、あんなにも笑顔が似合う素敵な女の子なんだから。
「香蓮ちゃんの頼みなら、僕の望みだよ」
「ホント!?」
「ほんと」
「やったぁ!」
彼女は僕の手を握り、嬉しそうに笑ってくれる。
向日葵が咲いたような彼女の笑顔を見ると、なんだかこっちまで心が暖かくなって嬉しくなる。
これが、学園の王子様と呼ばれている所以だろうな。
「キャァァァ!」
「!?」
僕が香蓮ちゃんの笑顔に癒されていると、すぐ側の教室から黄色い歓声が上がる。
きっと香蓮ちゃんが異性の手を取って笑顔で喜ぶ姿が素敵だったからかな、相手が僕で申し訳ない。
と、思っているとドアが開き陽菜達が混ざってくる。
「アレックス様ー! なんの話してるの?」
「やぁ、お昼時に悪いね」
香蓮ちゃんは軽く挨拶し、僕に撮影の件を頼みにきた事を話した。
陽菜と麗香は香蓮ちゃんと同じ事務所なんだよな。
そんで、スズと凛華姉さんはたまに助っ人に行く事もあるらしい。
「それ、あのアニメですか? 私も行きたいです!」
「……一応、私もついてくから」
「そうだね、2人くらいなんとかなると思うよ、聞いてみるね」
「ありがとうございます!」
「はは、喜んでくれて嬉しいよ」
この船上パーティーには、麗香と陽菜もモデルとして参加し、新たにスズと千冬も行くみたいだ。
香蓮ちゃんと話を終え、彼女はスキップして自分の教室に戻って行った。――――――
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