47. 現人神の噂
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荘厳な神社や武家屋敷が並ぶ敷地の一部屋で、胡散臭いという言葉の似合う中性的な風貌のお偉い人が、髪をかき上げた強面の大柄な男と商談を交わしていた。
「あの島に人を多く呼び活気付けるのは、我々の目的としても一致する、許可しようじゃないか」
「聡明なご判断、感謝致します」
スタイッリッシュかつ筋肉質な自信に満ち溢れた男は、頭を下げながら礼を言い、おじぎをしたままお偉い人へと顔を上げる。
同時に生気満ち溢れるドヤ顔を披露し、輝いた白い歯を見せつける。
頭の中でキラーンという効果音が鳴るのを聞いたお偉い人は、思わず口に含んだカフェインを吹き出した。
「ブフっ、相変わらずだね君は」
「惚れ直しましたか? ヘッ」
キラーン
「はは、直せるわけないじゃないか、君に惚れた事なんて一度も無いんだから」
『これは手厳しい』と澄まし顔をする男に対し、彼女は昔を思い出し目の前の級友へと言葉を掛ける。
「小難しい話はこの辺にしてお茶でもしようか、確か頂き物の芋チップが……美味しいんだよあれ……」
椅子から立った彼女は戸棚へと足を運び、ガソゴソと目当てのお菓子を探す。
その様子を見ていた男は一人で言葉を続ける。
「フっ、お前がそこまで言うなら仕方ない、本来なら別件が控えているが他ならぬお前のためだ」
「これが惚れた弱みというやつよ、一人の女の頼みなど俺は聞く事は無いのだがな」
「俺はお前のためならなんでもしよう、何故なら俺はお前に惚れているのだから」
男はキザな雰囲気を漂わせ、決め台詞を吐きながら級友の女性へと自身の想いをアピールするが、当の相手は彼の話を右から左へと全て聞き流しスルーしていた。
「あれ~、どこいったんだ~?」
棚へと顔を突っ込み、スタイルの綺麗な整ったヒップをぷりぷりさせながらお菓子を探す級友をスケベ面で眺めながらも男は独り言を続ける。
「お前が今手を付けている仕事をサボりたいのなら、俺がこうやっていつでも足を運んでやる」
「あの、おっかない秘書に尻の毛を毟られようともな、フヘヘ……」
彼女は男の話をまるで聞いておらず、目的のものを見つける。
「お、あったあった」
級友の女性は菓子を取り出し、棚から顔を出した。
男は瞬時に顔を澄まし、スケベ面を取り繕う。
お茶を入れながらも、目の前の男の顔を見た女性は『私の尻を見ていたな……』と思いつつも話を振る。
「それにしても、久しぶりに帰ってきたと思ったら、妹のためにここまでするとはね」
「可愛い妹だからな、今でも俺に会えなくて寂しがっているだろう」
男は幼少期の妹を思い浮かべ、自分の膝の上に乗り、食事中に魚の骨を自分の鼻の穴に突っ込んできて笑顔になる妹を思い出す。
そしてとある報告を思い返し、その穏やかな感情が怒りに変わっていく。
「何より許せないのは、妹が男の血を飲んだという事だ!」
男は自分の中の怒りを抑え、コントロールしつつも声を荒げる。
「それは不可抗力じゃないかな、私たちの時みたいにね」
中性的な女性は、男を宥め、自分はホント惚れている訳じゃないぞと再確認の意を込め言葉をかけた。
それを聞いた男はほんの少しショックを受けながらも、男は一人ヒートアップする。
「まぁ、それはそれとして置いておこう、だが妹の場合話は別だ!」
「聞けばお前の弟子だそうだな、俺から恋人を奪い、妹も奪うとは!」
女性は勝手に恋人にされるが無視してお茶をすする。
「うん、これはお茶に合うね(私は君の恋人じゃないんだけどな)」
「きっと弱みに付け込んで誑かしたに違いない!ぬぉぉおおお許さん!!!」
悶えながらも声を上げる男に対して女性は『やれやれ、面倒臭い事を聞いてしまったか』と呟く。
しかし、この男がいれば商談と称し仕事をサボれるのだからこのくらいは勘弁してやるか……。
と思った途端、部屋の扉が開く。
「うるさいですよ! 商談してたんじゃないんですか!」
威勢よく声を張り扉を開いた人物によって場は静まり、男は平静を取り戻しそそくさと退散する。
「そ、そうだな、俺はここら辺で失礼する、尻の毛が無くなる前に」
退散する男を尻目に、部屋に残された女性は資料に手を取る。
「桃源郷計画か……」
資料に再び目を通した女性は、とある島で噂になっている弟子の新しい二つ名を思い付き軽く笑う。
「桃源郷の……現人神……ふふふ……」
「今日の分終わらせないとご飯抜きですよ」
「は、はい……」――――――
――――――
百鬼夜行の事件から数週間後、その日のうちに外出禁止令は取り下げられ島には平穏が戻っていた。
あの事件は民間人の間で噂になり、夜間に入り突然にして動物が現れた事や神社での不思議な光や轟音が物議を醸し、UMAが出現しただの陰謀論が働いているなど、様々な噂が島やネットの海に飛び交っている。
しかし事件の内容は当然、公にはされていない。
妖魔に襲われていた人々も眠らせて、夢の様に感じるよう術を施したし話しても誰も信じないだろう。
あの日起こった事は一過性のものだから、そう日常を過ごす事にも支障をきたす事は無いはずだ。
それでも不安な人達のケアはというと、神社や寺に自ら赴いてお払いを受けるとかするしかない。
現代では昔と比べ、大分お払い料金も庶民的になった。
お払いの際はついでに肉体をケアする術も施す、そのおかげで体の痛みが消えるからと言って、利用する様なお年寄りも増えた。
ケンコーランドも商売あがったりだ。
今では多くの神社は参拝客も増え、活気を取り戻す事で神々の力も強まっている。
さて、事件の事はさておき、瘴気からは妖魔と妖怪が生まれる。
妖魔はすべからく人に害を及ぼすが、妖怪はそうではない。
ただいるだけの者、人と共生する者もいれば、人を喰らうものまで様々だ。
今回の百鬼夜行でもたくさんの妖怪と妖魔が生まれた訳だけど、妖魔はほぼ全て討伐され、害の及ばない妖怪はそのまま島に身を置いている。
ただ、自我がある以上何をしでかすか分からない。
そのため妖怪たちを管理する組織、妖怪の寺子屋を立ち上げる事になった。
今日はその開校日。
「ここが……学校……!」
新しく建設された学校、もとい寺子屋に到着し、小夜は目を輝かせキラキラした表情を見せてくれる。
う~ん可愛い。
「楽しみ……!」
「良かったね」
僕は小夜の頭を撫でる。
この寺子屋は神社から少し離れた、関係者以外立ち入り禁止の場所にある。
これから小夜や疾風はここで多くの妖怪と共に、様々な事を学び修行する。
妖怪はその日暮らしで、宿に困る事も多い。
寒さと暑さをある程度凌げる場所を用意し、生きるのに補充が必要な呪力や霊力を提供する。
その代わり人間に協力してくれるという仕組みだ。
上手く行くかは分からないけど、これは歴史上初めての試みでこれが僕の夢の第一歩だ。
この世界、もとい僕らの属する界隈では妖怪や魔物というだけで敵視する人も多い。
僕はそういう世界を小さい頃から変えたかった。
いつか、陰と陽の隔たりを無くして手を取り合って生きていけるようにしたいんだ。
それで最近、琥珀もいなくて寂しそうにしていた小夜。
島で新たに生まれた妖怪達の行き場を考え、様々な人の協力の元で作られた。
「皆、集まったようじゃな!」
ささやかだが、祭りの会場のような広場に移動し琥珀が挨拶を勤め上げる。
先生は主に琥珀や、弥彦おじさん、臨時講師として僕に同意してくれた生徒会の面々や、組織の人間達が協力してくれる。
「今日は皆で嫌な事を忘れ、踊り騒ぎ、親睦を深めるのじゃ! 以上!」
大雑把な挨拶を終え、中央の太鼓の音が周囲に響き、僕らはささやかなお祭りを楽しんだ。
――――――
学園の情報室の一部屋で、とある女生徒の3人がPCを見つめ、ある情報を探していた。
この部屋はPCが並べられ、情報の授業や調べ物をする際に使われる部屋だ。
何故、普段は一切利用しない部屋を3人の女生徒達が利用しているかというと。
今朝、椿 麗華は雪平 千冬からある事を聞かれたからである。
「外出禁止令が出た日の事、覚えてる?」
その言葉を聞いた麗香は『不思議だったよね』とあの日見た夢が2人共同じだったことに対し無難な返答をするが千冬から聞かされた話は、自分の腑に落ちない心を納得させるのに充分だった。
彼女にはどうしてもあの日の事は夢だと思えなかったからだ。
「この島って守り神様がいるらしいよ」
「あぁ、神社のっしょ?」
今朝の会話を思い返しながらも麗香は2人の友人、陽菜と千冬と共に、島の情報を探す。
すると千冬がオカルト掲示板のとある文言を発見し、リンク先をクリックしたら動画サイトの映像が流れ始める。
「狐の現人神……2人共! これ、見つけた!」
千冬は昨日見た動画サイトで、削除されていた動画と同じものを見つけ友人へと声を掛ける。
麗華と陽菜は千冬に駆け寄り、PCの画面を食い入るように見入る。
その映像は、繁華街へ続く路地裏のような通りの窓から撮影されているものだった。
動画には謎の黒い影が蠢き、通行人が影にジリジリと詰め寄られ襲われかけている。
「なにこれ……」
「すごーい、超リアル!」
しばらくの沈黙の後、影が飛び上がり通行人へと遅いかかる刹那。
闇夜から狐の面をした男性が降り立ち、影へと刀を横薙ぎする瞬間で動画は終わった。
「これ、映画の宣伝なんだって、ほら!」
動画を見終わり、陽菜は動画のタイトルを指さして声を上げる。
しかし、千冬は違和感を感じていた。
「……たしか、昨日はバッテリー切れって書いてあったのに」
「……」
あの日、夢の中で助けてくれた人物を見た麗華は、千冬の言葉に対し沈黙するしかなかった。
――――――
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