46. 新生活の幕開け
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事件も終えて僕が意識を取り戻した次の日には、学園も再び通常営業に戻り今日は登校日だ。
そして僕らは新生活の朝を迎えていた。
爽やかな蒼空、美味しいマイナスイオンの空気、囁くような小鳥の鳴き声。
なんて気持ちの良い朝だ……。
……。
「うおおお!美味いぜ! こんなうめぇ飯は昨日ぶりだ!」
「美味しい……!」
「これ小夜、好き嫌いはいかんぞ」
「うぅ……琥珀が取った……」
「あぁ小夜、僕のをあげるからね」
「ほんと、美味しいですわね」
「たくさんあるからな、どんどん食べるといい」
「昨日のヤツより美味いぜ!お嬢! これじゃあ板前の面目が立たねぇぜ!」
「ば、ばか!当たり前だろう、こーちゃんという未来の夫がいるんだからな!」
バチン!
「いてぇ!」
「おかわりじゃ!」
……。
朝から元気だなこいつら。
なんてやかましい朝だ、これが毎日続くのは流石に応えるぞ。
ま、まぁ数日様子を見るか……。
僕らは新しい式神と共に、凛華姉さんの家族が住む屋敷の近くの家に仮で住むことになった。
そこそこの広さを持った、昔ながらの和風の武家屋敷だ。
式神も増え、前に住んでいたホテルは手狭になったので新居を構えようという事だ。
とりあえず数日住んでみて、問題なかったらこちらへ移ればいいみたいな話になった。
それにしても、今日の朝食は凛華姉さんが作り、新たな仲間の式神が手伝った訳だがめちゃくちゃ美味い。
昨日のパンチの効いた味に加え、手料理の暖かさが混ざっているというか。
朝食のレベルが上がっているのは、キッチンの設備が前の部屋と比べ充実したからだ。
凛華姉さんが『せっかくなので気合を入れてみた』と言っていた。
それはさておき、何故こんな大所帯になってしまったかは、昨日の話に遡る。――――――
――――――
「なんのことでやんすか?」
「……」
琥珀が神社に帰ってきて解散となった後、疾風との問答を終え、璃々奈さんが茨木童子の処遇について僕に話し始めた。
「彼のやった事は、完全に不問にはできないのよ」
流石に彼はお咎め無しという訳にはいかず、どうやら契約をして縛る必要があるらしい。
今回起こした事件の罪を償うため、契約で縛りこれから組織のために働いてもらうという訳だ。
「だったら俺は、兄貴に身を預かって貰いてぇ……わがままかもしれねぇがどうか頼む!」
そんな話の流れで彼は兄貴とやらの式神になる事になった。
……?
なんで僕を見てるんだ?
「兄貴って誰?」
「煌河の兄貴、頼む!」
僕かよ!
「兄貴がいなけりゃぁ俺は討伐されてたろうよ、そんで姉御にも会えなかったはずだ。俺に恩を返させてくれ!」
何やら彼は、あんな事件を引き起こしたのになんとか手を差し伸べようとした僕を信頼し、恩義を返したいと思っているようだ。
彼はこれから酒呑童子を宿す百鬼 真心さんが属する生徒会の任務にも、同行してもらう事になるだろうし……。
僕はオーケーをし契約の真言を唱えていく。
約千年の時をかけてやっと酒呑童子に会えたんだ、引き離すのはあまりにかわいそうだろう。
「汝の名は 威吹鬼、今ここに、僕の呪力を以て契約を成す」
「恩に着る、茨木童子改め、新生 威吹鬼、全てを持って主の力になる事を誓う」
「気楽にやっていこう」
僕らが契約を終えると、一体のフェネックが物珍しそうにこちらを見ていた。
「やぁ、疾風、どうしたんだい?」
「ふふ、疾風じゃありませんわ」
「?」
「貴方は、あの子を救ってくれた子の1人ね、本当にありがとうございます」
彼女?は僕へと深々と頭を下げる。
僕を助けてくれた、疾風ではないすねこすり……?
……この方が僕を茨木童子、改め威吹鬼のメガトンパンチから救ってくれた方ってことか?
僕も彼女と同じように頭を下げる。
「あ……こちらこそ、貴方のおかげで彼にミンチにされずに済みました」
「め、面目ねぇ……」
「ふふ、不思議な方ね」
僕が冗談を言うと、いや冗談じゃないが、ホントにミンチにされそうだったし。
まぁともかく場を和ませようと軽口を言うと、琥珀がやれやれといった表情で口を開く。
「もうそんな時期とはの……」
「生前に徳の高かったキツネは、位の高いキツネの元へ修行にくるんじゃ」
「妾の元には数百年毎くらいに来ておったかのう、細かい事はいちいち覚えとらんが」
琥珀の説明を受けると、修行にきた彼女は自分の境遇を説明してくれた。
寿命を全うした後、本来この島に使わされる予定だったが、予定日に肝心の琥珀がおらず魂の状態から顕現できなかった事。
そして自分の息子である疾風を救ってくれた僕が、危ない目に合っているところを見て、どうしても助けたいと願いが届き瞬間的に顕現できたらしい。
いやぁホント助かりました。
……。
「疾風のお母さん!?」
「あら? 言わなかったかしら」
「いやぁ、息子さんにはお世話になってます」
「お役に立ててるなら嬉しいですわ」
なんだ、この会話は。
僕は小夜が鴉天狗と進化し人型になってからというものの、父親みたいな振る舞いをしてしまう。
そんな年じゃないというのに、トホホ。
「そうじゃのう、妾の元で修行するのなら煌河の式神になってもらおうかの」
「あら、いいんですか?」
「もちろんじゃ!」
「こんな可愛い子に契約して貰えるなんて嬉しいわ、お願いします」
もちろんじゃ!じゃないんじゃ。
いや、別に契約が嫌という訳じゃないが。
事件を解決して身体中痛いのに、今も呪力使って大妖怪と契約したばっかなんじゃが?
「つべこべ言うな、これも修行じゃ」
主面するつもりはないが、便宜上は僕が主のはずなんだが。
日常的に琥珀が主みたいになっているんだよな。
まぁ今回は事件の黒幕に手の平の上で踊らされていたことにご立腹なんでしょうね。
可愛いから許す。
「よ、余計な事考えるでないわ! 全く……♥」
「あらまぁ、ごめんなさいね……」
「お母様のせいじゃありませんよ、それで名前は?」
「固有名は持っていないの、あなたの思う名前を付けて下さるかしら」
僕は了承し、準備を進め、真言を唱えていく。
「汝の名は 白百合、今ここに、僕の呪力を以て契約を成す」
「素敵なお名前、感謝致しますわ、どうか末永くよろしくお願いします」
白百合さんは僕との契約によって、涼しげでもあり優しさを感じさせる瞳が印象的の、美しい淑女を連想させるような人型の姿へ変貌した。
僕は彼女と握手を交わし挨拶をする。
「それじゃぁ、これからよろしくお願いします」
「ご厄介になります、言葉ももっと砕けてお話しましょ? 主様ですもの」
「貴方がそう望むなら、ぜ、善処します……」
友達のお母さんみたいな存在だからな、難しい注文ではあるが彼女がそう望むなら頑張ろう。
それより……疾風に会わせてあげたいな。
先程言葉を交わした疾風の反応からして、まだ会っていないはずだ。
「疾風に会いに行きましょう!」
「ま、まだ心の準備ができていませんわ……突然の別れだったから……」
「いいから、行きましょう!」
「あ……!」
僕は彼女の手を引き、ごまをヤスリで擦る勢いで琥珀にお願いする。
「帰ってきてそうそう申し訳ないですが、どうかお願いできませんかねぇ、今度多めのスイーツに狐の姿でのブラッシングとマッサージも頑張りますので……」
「……仕方ない奴じゃの、乗れ」
琥珀は白狐に変化し、僕らを背に乗せてくれる。
まぁスズと疾風が住む香蓮ちゃんの屋敷はそこまで遠い訳じゃない。
ただせっかく戻ってきたんだから、一早く疾風に会わせ上げたいと思った。
僕は2人の式神と璃々奈さんへ『ちょっと行ってくる』と言って琥珀の背に乗り、香蓮ちゃんの屋敷へ飛び立つ。
空を駆けてる最中に、白百合さんは僕の背中に抱き着いてくる。
「意外に積極的でびっくりしましたわ」
「疾風に会ってほしくて、すみません……」
「いいえ……本当にありがとう……」
……お上品でエレガントな人妻に抱き着かれるのも悪くないな。
「何を考えておる、全く」
「ごめんごめん」
相変わらず心を読んでくる琥珀へと謝ると、白百合さんはお礼を言い。
疾風の出自を話し始めた。
「あの子……実は孤児なの、私が人里のパトロールから住処に帰るといつの間にか……」
「それからあの子を育ててきたのだけど、ある時、住処が台風の土砂崩れで……」
「それでいきなりあの子を一人にしてしまったの」
そんな……あんまりだ……人妻じゃなかったのか。
ではなく、この人は人の為に……そして身寄りのない子供のために頑張ってきたのに。
「だからまた会えるのがすごく嬉しい、本当にありがとう、お二人共……」
「これからは仲間ですから、何でも言ってよ」
「久々の親子の再開じゃ、これくらいは問題ない」
壮麗な白狐の背から滴り落ちる雫のかけらは、まるで喜びを表す希望の光のような輝きで空を舞っていた。――――――
――――――
まぁ、こんな一幕があり、無事屋敷に着いた。
想像通り疾風と白百合さんは泣きながら再開の喜びを分かち合っていたが、僕もなんだか感動して泣いてしまった。
スズは『ほんと泣き虫なんだから』と僕の背中を香蓮ちゃんと共に擦ってくれたが、2人もどこか涙声を震わせていた。
ともあれ今日から学校も再開するし、とある計画も始まる。
僕はなんだか新しい生活に胸を躍らせ、家を出るのであった。――――――
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