44. 千年の覚悟の末に ~一章:終幕~
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夜の深淵に染まる山奥の草木を掻き分け、一人の白狐が風を切り、駆けていた。
琥珀は追っている敵の邪気を辿りながらも、ここで敵を仕留める事を胸に決意する。
如月 弥彦と共に捜索を続けるも、なかなか尻尾を掴めずにいたが、ようやく掴んだ好機をここで逃すわけにはいかないと己の身を引き締め、宿敵の前へとたどり着く。
「しつこいのはモテへんで」
「貴様、よくも吾の縄張りを荒らしてくれたの、何が目的じゃ」
琥珀は警戒しつつも、いつでも戦闘に入れるよう臨戦態勢を整えヤツの目的を尋ねる。
「答えると思う?」
「何、聞いてみただけじゃ!」
琥珀は尻尾から鬼火を連続で飛ばし、着弾した周囲に土や火の煙が上がる。
敵の視界を奪ったところで瞬時に背後へ回り背中を前足で捕え、地へ伏せさせる。
「これからゆっくり吐かせるとするかの」
しかし、捉えたのは目下の相手ではなく呪符の張られた人形だった。
「なに……」
「敵の力、見誤るなんてドジやね」
消えゆく愉快な笑い声と共にその相手は、存在と気配を完璧に消した。
「分身か……ここまで大物だったとはの……」
それは只の分身ではない。
気配も生命も本物と同じようなレベルの御霊の分身。
それは一つの完璧な生命体を作り出すのと同義である。
ここまでの技を行使できるのは、少なくとも自分と同列の存在である事の証明であった。
「神か……」
琥珀は呟くと、月を背に向け怪我をした弥彦の下へと戻るのであった。――――――
――――――
夜闇が徐々に引いていき、朝霧の浮かぶ冷たい早朝の空気を吸い、僕は意識を取り戻し目を開く。
確か目が覚める前は……茨木童子の魂を邪気から切り離したはずだ。
あれからどうなったんだろう……。
視界からすると、ここは凛華姉さんの家族が住む、神社から少し離れた屋敷の一部屋だ。
僕は外に出ようと上体を起こし、目を下に向ける。
「うわっ……」
僕はびっくりし反射的に小声で喉を鳴らしてしまった。
目の先の周囲には生徒会の皆と、茨木童子と力比べをして時間稼ぎをしてくれた女の子が畳の上で雑魚寝を広げていた。
皆、心配してくれたのか……。
「ありがとう……」
小さく呟き、疲労で足取りがおぼつかない中、僕は障子の扉を開け縁側へと出る。
すると昨日の百鬼夜行を引き起こした一人の大男が、庭の真ん中に立ち、空を眺めて立っていた。
僕は彼の背中を見つめながら、縁側の淵へ腰を下ろす。
彼は背を向けたまま、口を開いた。
「起きたか……」
「あぁ、無事だったみたいだね」
「おかげでな」
軽い挨拶の様な問答の後、しばらくの間お互いの心を戒める様な沈黙が続く。
きっと彼は反省していて、何て言葉を続けたものか分からないのだろう。
それは僕も同じだ、彼は僕がこなかったから魔を解放し、百鬼夜行を引き起こしたと言っていた。
会議で結界を張る事が優先されたとはいえ、僕が彼に話を聞きに行けばまた違ったかもしれない。
そのせいで何人かは被害に合い、麗香をはじめ学園の生徒に生徒会の皆、組織に所属する学校の先生、事情も知らない民間人。
たくさんの人が怖い想いや辛い思いをしたはずだ……。
身体が冷える様な沈黙を裂き、彼は切り出す。
「姉御は、生きてた」
「じゃあ、あの子が……」
聞けば酒呑童子はあの力比べをしていた少女を依り代として、魂も健在らしい。
あの少女の身体には、少女自身の魂、そして酒呑童子の魂、2つの魂が宿っている状態みたいだ。
シャーマンキングの憑依合体みたいだな。
人格が勝手に時々入れ替わってしまうが、お互いコントロールできるように訓練中なんだそうだ。
容姿も酒呑童子と瓜2つで、まるで生き写しと言ってもいいくらいに似ているんだと。
彼から事情を聞いた後、話す事も見つからず再び、僅かな沈黙が空気を支配する。
「俺は、間違ってたんだ……」
朝露に冷えた唇を微かに震わせるよう沈黙を破り、背を向けたまま彼は心の内を曝け出した。
「お前さんが俺を救って倒れた後、侍の嬢ちゃんがすごい勢いで泣き始めてな」
「それから、騎士や天狗の嬢ちゃん、疾風の坊主まで泣き始めて、他のやつらも悲しい顔でよ……」
「俺がやった事はこういう事だったんだって、その時分かったんだ……」
凛華姉さんや香蓮ちゃんを始め、本当に皆心配してくれていたんだ……。
申し訳ない事をしたな……僕にはもったいないくらいの仲間だ……。
僕が心の内で反省すると、彼は自分の行いの意味を懺悔するように語る。
「俺の人生は理不尽な事ばかりだったけどよ、絶望の中で誰かがいつも救ってくれた。今回だって……」
「それなのに俺は、俺にとっての姉御みたいな、お前の大事な人達を……」
「姉御のためだなんだと言って結局、姉御が教えてくれた優しさってやつを俺は分かってなかったんだ……」
彼は一晩中ここで考えたのだろうか、自分のやった行いや、自分の人生から学ぶべきはずだったものを。
僕も、そうかもしれない……。
今まで……今回の件だって誰かを巻き込まぬよう、最初は小夜と2人だけで彼の待つ神社へ乗り込んだ。
彼を滅したくない、という思いもあったから増援を待たなかったけど、結局皆が協力してくれたから今の時間がある。
それに僕が彼の立場だったとしたら……同じ行動を取ったかもしれない。
「自分の馬鹿さ加減に嫌になるぜ……」
彼は呟くと、突然背を向けたまま土下座をする。
そして。
「お前の言う通りだった、姉御はもちろんお前にも顔向けできやしねぇ……」
土下座のままジャンプし回転した。
こ、これは……ジャンピングターン土下座!
僕の方へ頭を向け、謝罪の言葉を並べる。
「許して欲しい分けじゃない、ただケジメとして誠心誠意謝らせてくれ……」
「兄貴にも、後ろで聞いてる姉御達にも、この島の全員に……!」
「え?」
僕が振り返り、障子の扉を開けるとバランスを崩した凛華姉さん達が倒れ込んでくる。
「こーちゃん!心配したんだぞ!」「ホントに無事で良かったよ!」「むぅ、心配した……!」
「止めたんだけど、我慢の限界みたいね」
僕が彼と会話してる中、朱鳥先輩が凛華姉さん達を止めてくれたみたいだ。
小夜、凛華姉さんと香蓮ちゃんが涙声になりながらも、僕に抱き着いてきて、いつもの日常が戻ってきたことに僕は安堵する……。
とにかく、全てこれで終わったんだ……。
皆こうして元気で生きてる……。
やかましい声を上げ皆で一仕事終えた喜びを分かち合う中、大男は僕らに背を向け1人姿を消そうとするが……。
「待って!」
彼女の声に対し大男は動きを止めた。
「あ……生徒会、入らない?」
大男はその場で立ち尽くししばらく沈黙が続いた後、微かにすすり泣くような声が響く。
その隣で弟を慰める姉の様な優しさの満ちた明朗な声が空気へと溶ける中、朝焼けの雲間から眩い太陽が顔を出し、2人を照らす。
それは彼らの千年越しの再開を祝福している様な光だった。――――――
第一章 百鬼夜行ノ編:終幕
――――――
【百鬼 真心】
愛称:まころん、まこ
黒髪、ウェーブがかかっている
委員長タイプ 真面目だが寛容でユーモアがある。
社交性が高い。顔が広い。困っている人を放っておけない。
情に熱く涙脆い。
クラスの皆と仲が良いが、特に涼音、千冬とも気が合う。
酒呑童子に気に入られる、酒呑童子に憑りつかれ友達になる
見えないものが見えてしまう体質で、生徒会に助けて貰う。
それから元々は生徒会を補佐するような立場だったが魂の性質が非常に近い酒呑童子に憑りつかれ、学園を休学する。
元々の戦闘経験は皆無。
後に煌河達の属する組織や生徒会の正式メンバーとなる。
組織の一員としての日が浅いので可愛い後輩みたいなポジションである。
166㎝ 56㎏
【酒呑童子】
女性
鬼の頭領、愉快な事が好き。
元々優しく面倒見の良い性格だったが、茨木童子と共に邪気にあてられ平安京を荒らしまわる。
百鬼 真心を依り代とする。
百鬼 真心は酒呑童子の力を借りて怪異と戦えるようになる。
元々は、茨木童子と人から呼ばれていたが、行き倒れている外道丸を助け慕われる。
指名手配されていた外道丸を代わりに名乗る事で、外道丸を救った後に酒呑童子と呼ばれる。
生前の肉体 171㎝ 現在 百鬼 真心と同じ
【茨木童子】
男性
酒呑童子の舎弟、酒呑童子を姉御と呼び慕っている
元々おおらかな性格だったが、酒呑童子と共に瘴気にあてられ平安京を荒らしまわる
元々は 外道丸(伝承で酒呑童子の幼名とされている)と呼ばれていた。
外道丸として生きている頃に指名手配され、酒呑童子に窮地を救われる。
酒呑童子が代わりに外道丸を名乗り、事なきを得る。
196㎝
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