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43. 約束の証明

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください


【編集、追記】

2024.01.31. 18:50頃 挿絵のイラストを追加しました








「な……!?」


「なんだってんだ……!?」


 この世の負の念を凝縮したような邪気はどんどん周りに溢れ、茨木童子に纏いつき彼を包み込んでいく。

 これは……!

 裏で糸を引いていたのは……やっぱり……。

 茨木童子は、邪気を纏いつつも声を荒げる。


「ク……殺せッ!早く!」


 その台詞を言っていいのは華麗な女騎士と相場は決まってるんだぞ。

 等と突っ込んでいる場合じゃない。

 このままでは彼は邪気に取り込まれ、我を忘れて暴れてしまう。

 己の欲望や憎しみに支配される事になるはずだ。

 そんなことはさせない……。


「ぐっぁああああ!」


 彼の身に黒い影の様な邪気が纏うと共に、失われた手足が邪気により形成されていく。


「皆! 一回離れてくれ……!」


「これ、どうするっての?」


「考えがある……」


 動揺を隠せないように、スズは僕に尋ねる。

 それもそうだ、これは瘴気ではない、邪気だ……。

 瘴気は負の念を中心に溜まる自然現象なようなもので、悪い現象を引き起こすが人から人へ伝承しない。

 思念の残滓の様なものだ、だからこそ火の粉を振り払うように払える。

 しかし邪気は負の念そのもだ、人に害を与え伝染する、人の思いが直接生んだ憎悪や怨嗟。

 思念そのものと言える。

 これは一般的には払えるものではない、人の心に直接宿るものだからだ。


「皆!」「待たせたね!」


 僕らが茨木童子と距離を取り始めた頃、凛華姉さんと香蓮ちゃんが僕らの増援へ来た。


「細かい事は後で説明する、邪気に取り込まれた彼を救いたい! 時間を少し稼いで欲しい」


 僕はその事だけを伝え、彼を救うための儀式の準備を始める。 


「相変わらず甘いな……やってみるが、危ないと感じたら斬り伏せるぞ」


「君の頼みだ、精一杯やってみるよ」


 それで充分だ、当然僕だって皆の命を優先したい。

 とりあえずヤツの邪気を防ぐ。


「憎悪成す心、怨嗟成す心、月光により切り裂かれん」


 僕は茨木童子の周りに呪符を飛ばし、術式を展開する。

 地に格子状の魔よけの印が浮かび上がり、込められた呪力が彼に宿る。

 急ごしらえだが、これが彼の邪気が伝染するのを防ぐ刃の檻となる。


「グォオオオアアアアア!!!」


 術の行使を終えると、彼は苦しみが混ざったような怒りの咆哮を夜天へと響かせる。

 すると、いの一番に僕を狙い突っ込んできた。

 これがおそらく自分の欲望や願いを優先する邪気の影響だ、きっと彼の姉御を生き返らせるために必要な生贄を優先して確保するつもりだ。

 猛進する猪突から僕を守るため、香蓮ちゃんが盾を構え間に入ってくれる。


「くぅっ……!」


 鈍い重低音が空気を介して周囲に響き渡る、ビリビリと体に伝わってくる衝撃音を感じる。

 盾越しとはいえこれは……邪気によって心と体のリミッターが解除されている。

 香蓮ちゃんに怪我は……!?


「香蓮ちゃん!!」


 彼女は僕の心配に『問題ないさ!』と笑顔を作り返答するが明らかに苦しそうだ。

 2人は害を成す妖怪と妖魔の殲滅戦にさっきまで加わっていたはずだ、きっと激しい混戦をこなした後で疲労も溜まっている。

 凛華姉さんも力を解放した鬼に対し攪乱して時間を稼ぐが、相手の攻撃を受け流したり掠る度に動きが鈍っている。

 小夜とスズもなんとか敵の隙を作るために暗器と妖術を相手に打ち込むが、刹那的に一瞬相手の動きを止めているにすぎない。

 そのおかげで、紙一重で凛華姉さんが攻撃を躱している状態だ。

 疾風は相手のものすごい剣幕に怖気づいてしまっている。


 この戦況は時間を稼ぐにはきつすぎる、やっぱりダメなのか……彼を殺すしかないのか……。

 僕のわがままで皆を危険に晒すわけには行かない。

 腹を決め、作戦を変更しようと僕が口を開きかけた時。


「しゃオラぁあああああああ!!!」


 気合の入った声と共に、茨木童子を目掛け天から拳が突き刺さる。

 茨木童子が紙一重で躱し、地へ突き立てた拳が凄まじい土煙を上げそれが晴れると、声の主が姿を現し同時にスズが名前を呼ぶ。


「まころん……!?」


 その視線の先には茨木童子と両手を重ねて、女の子が力比べをしているように組合っていた。

 まころん? 誰だか分からないけど増援か……!


「んグゥ……! よぉ、外道丸! 見ない間に……随分生きた心地のない顔してんねぇ……!」



挿絵(By みてみん)



「ア……姉御!? チガウ……アネゴじゃ、ナい!?」


 酒呑童子なのか……!?

 茨木童子に動揺が見え一瞬だけ力が弱まるが、彼の方が優勢だ。

 しかし彼女はなんとか押し返そうと踏ん張っている。

 あれと張り合うなんて、華奢な体躯になんて力だ……。

 しかし今がチャンスだ……!


「そのまま! 時間稼ぎを頼みます!」


「おぉう!……まかせなぁ……!」


 僕は声を大にし『香蓮ちゃん、お願い』と近くにいる香蓮ちゃんに僕の身体を頼み、僕は地に伏せるように倒れる。

 香蓮ちゃんは何が何だか分からず、倒れた僕に驚き駆け寄ってくれる。

 皆のおかげでなんとか準備はできた。


 元の身体が意識を失い霊体となった僕は、同じく霊剣となった乖離剣:倶羅無を手にし、皆が組み付いて足止めをしている茨木童子の心の中へと入る。

 これは武器と契約した時の効果だ、契約者が霊体となった時、魂が宿る道具もまた霊体となる事が出来る。


 久方振りの怨念に満ちた積年の邪気が立ち込める空間に降り立ち、過去を思い返し自分を振るい立たせながらも僕は茨木童子の魂を探す。


「どこだ……!?」


 僕が闇を切り裂くように突き進むと、微かな声が聞こえる。


「煌河……」


 見つけた……!


「俺はもうダメだ……俺を殺せ……」


「うるさい!」


 黒い邪気を纏った鬼火の様に燃える魂へと駆け寄り、周囲の邪気を全て消し斬る。

 後は、魂に溶けた邪気を切り離すだけだ。

 僕は幼い頃の約束を思い出す。


『その約束に免じて、今回は見逃そか、待ってんで……』


 ここまできたんだ、僕は絶対に彼を救いたい。

 そして彼が救えれば、幼い頃に深淵の中で交わした約束も果たす事ができる証明になる。

 怨嗟も憎悪も、全て断ち切る……。


「消え去れ」――――――




――――――




 月明かりが照らす神社の広場で2人の鬼が力を比べるように手を重ね組み合う。


「そろそろ、やばいかもなぁ……!」


 鬼の少女が声を上げたその時、暴走していた相手の鬼が瞬時に我に返り、同時に邪気で形成された手足は無くなり少女に地へ倒される。

 そして鬼へと組み付いていた面々も、皆でやかましい音を鳴らすように倒れる。


「うぉおあ、おい! いきなり力緩めんな!……ないで、ください……」


「へっへ、やってくれやがったな、あいつ……まるで……」


 茨木童子は古い顔見知りであった術師を思い出し、力なく笑う。


「うぅ……重い……」


「わ、私が一番重いぞ……!」


 茨木童子は下敷きにした面々から降りるよう身を転がすと同時に、自分に死期が近づいていることを悟る。

 煌河は自分を救ってくれたが、体力的にもう無理だと。

 闘いの後に手足を片方ずつ無くし、邪気によって無理矢理に動いた自分にはもう後がない。


「悪い、俺は、もう無理だ……煌河……」


 彼が力無く呟くと同時に、月影を背にした人物が降り立ってくる。

 着地するやいなやその人物は自身の腕を噛み、血を流血させて茨木童子に飲ませた。


「飲んで」


「んぐ……ん、おい! なんだこれ!」


 有栖川 朱鳥が茨木童子に血を飲ませた途端、彼の生気の消えかけていた顔色が良くなる。

 彼は失いかけていた生気が見る見るうちに回復していくことに驚嘆し、上体を起こす。

 彼が息を吹き返したことは、その声色からしても明らかだった。


「吸血鬼の血は死の淵にいる人間を蘇らせるのよ」


「得体の知れない嬢ちゃんだと思ったが、まさか夜霧か……?」


「それで……何があったのかしら……」


 誘致結界でおびき寄せた妖魔と混戦していた凛華と香蓮の代わりに、場を受け持っていた朱鳥は状況を尋ねる。

 『あそこで煌河くんが倒れているけれど』その言葉を聞いた凛華は、眠る煌河を片腕に抱く香蓮の元へと駆け寄る。


「そんな……! これじゃあ……」


 凛華は声を掠れさせ、煌河を揺さぶる。

 彼女の心には、過去に起こした事件でのトラウマが蘇っていた。

 また自分が不甲斐ないばかりに、今度は本当に彼が死んでしまう……。

 そんな想いに心を支配された凛華は、最悪の展開に頭の中を支配され、泣き声を上げる事しかできなかった。

 一難去り夜闇に包まれた神社には、女生徒の掠れた泣き声が響き渡っていた。――――――



――――――








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