42. 鬼の流儀
ご閲覧ありがとうございます!
AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください
やーばい……後ろ壁だった……。
一瞬で間合いを詰めてくる相手に対して威力を殺そうと、僕は壁が合ったにも関わらず後ろに飛んでしまう。
本来こういう直線的な相手には横に飛ばなければならない。
しかし一瞬迷ってしまった、躱すか先程と同じ力が反転する盾結界を使うか。
そして反射的に後ろに飛んでしまった。
「まず……!」
茨木童子が拳を突き出しながら僕に襲い掛かる。
なんて力強い豪気だ、さっき僕が喰らった一撃はおそらく様子見か手加減でもしていたのだろう。
今まで対面した鬼の類の妖怪や妖魔と比較にならない程の力を纏いながら全霊を叩きこんでくる。
僕は少しでも相手の拳を反らすよう、斜めに即席の盾結界を展開する。
けれどこんなものは相手からしたら児戯にも等しい紙切れだ、今度こそ死ぬかも……。
「俺と死ねやぁ!」
大丈夫だ、今僕が死んでも……彼は目的を果たして、これ以上被害が広がる事は無いだろう。
それに……幼い頃の約束を果たせる方法は遺書に書いてある。
きっと僕の師匠がなんとかしてくれる……。
「こうが……!」
横に回避していた小夜は僕へと声を荒げながら先程と同じように一瞬でも相手の動きを止める為、影に鴉羽を飛ばすが
豪気によって全て弾かれる。
そんな泣きそうな顔しないで……。
今までありがとう、小夜、そしてごめん、鴉の雛鳥の頃、君のご飯のペットフードつまみ食いしたことがある。
正直あんまり美味しくなかったよ……。
「!?」
僕が軽い走馬灯と共に心の中で小夜に謝っていると、ほんの一瞬だけ相手が僅かによろめき、本来反らす事すら出来ないはずだった相手の拳が、斜めに展開された盾結界をものともせず破壊しながらも横へと反れ、ぶつかった壁面をぶち破る。
僕は衝撃波によって吹っ飛ばされ、少しの間宙を舞いつつもなんとか着地し態勢を整える。
「疾風……!?」
すねこすりの疾風が助けてくれた?
茨木童子が僕へ飛び掛かる瞬間に、高速の見えない何かが彼の足元を動き回り、平衡感覚を狂わせていた。
あの動きは疾風のものだ。
「小夜……」
僕は心配して飛び付いてくる小夜の頭を撫でつつ辺りを見回すが、疾風の姿はどこにもない……。
「え……」
しかし、辺りを見回しているとある事に気付く。
茨木童子が壁を吹っ飛ばして、半壊した社務所から疾風が見えた。
よく目を凝らすと疾風は縄で封じられ、気を失い倒れている。
そしてその近くに……砂埃が止み、視界の先が明瞭になる。
「スズ!!!」
スズが横たわっている。
彼女は疾風と同じく床に伏し、気を失っている状態だ。
なんで彼女が……斥候任務の途中で捕らえられたのか?
僕が体を起こすと、スズ達の側にいる茨木童子が笑い声を上げる……。
「カッカッカッ!心配すんな!」
「良かった……」
良かった……気の良い彼の事だ、きっと捕らえただけだろう……。
今は気を失っているがさっきまで疾風も動いていたはずだ。
茨木童子は笑い声を上げながら、スズへと近寄り彼女を掴んで畳の部屋へと放り投げた。
こらぁ!何てことするんだ!まぁ戦いに邪魔になるのは分かるけど女の子には優しくしなさい!
僕は心の中で突っ込みを入れる。
「カッカッカッ……ほら、動かねぇだろ?」
「……は?」 ――――――
――――――
「もう死んでる、心配する必要はねぇって言ってんだ」
……。
「そこの狐も嬢ちゃんも動かないだろ?当然だ、死んでるんだからな」
……。
「おい、泣いてんのか……」
……。
「なんだ……その呪力……まぁいい、もう終わりにしようぜぇ!」
……。
「ぐぁ!……腕が……!?」
……。
「ぐッ……右足も一瞬か……やっぱ手ェ抜いてやがったか……」
「なんで……!?」
「嬢ちゃんが俺の行く手を阻んだだけだ……」
……。
「うあぁぁぁああああああああああああああ!!!」
「へッ……」
「煌河! ダメ!」
「!?」
スズ……!?
生きていたのか!?
「スズ!」
茨木童子へと剣を振り下ろそうとした時、涼しげな声色の主が声を響かせ僕を止める。
声の方を見るとスズが生きていた。
隣には疾風もいる、彼も起きたんだろう。
僕は即座に駆け寄り、両手で彼女の両肩を掴み怪我はないか確認する。
乙女の身体をベタベタ触るのはマナー違反だが緊急時だ。
「怪我は……!?」
「ちょ、ちょっと!大丈夫だから……!」
肩から腕、腰回りから太もも、ふくらはぎと上から順にスズの身体に触れて怪我がないか確認していく。
本当に怪我してないのか?
なんで気を失っていたんだ……!?
「良かった……!」
僕は思わず彼女を抱きしめてしまう。
「ぁぅ……ホントに……! 平気だから!」
「ご、ごめん」
「それより、彼……」
彼女は、僕を引き剥がすと茨木童子の方へ顔を向ける。
ひどい重傷を負わせてしまった、何故こんな嘘を……。
彼に駆け寄り応急処置を施し血を止め、生命維持のための術式をかけていく。
腕と足は繋げられるが即座には無理だ、時間がかかる。
半端な回復を施すと繋げられなくなるから、今は命を維持させるしかない。
「なんであんな嘘を……」
「あぁ……」
僕が聞くと彼は懺悔を始めた。
本来は被害を出すつもりではなかったらしい。
とある存在に誑かされた彼は、『妖怪や妖魔は神社に向かうから被害はない』と言われたみたいだ。
しかし彼でも多少の被害が出る事は分かっていた。
そんな中で、後悔してもしきれない様な思いがあったと。
それに自分が生贄にしようとした僕は、自分を殺さずに事を収めようとしてきた。
僕を生贄にすると腹を括った時、彼は本気でぶつかり合う事しか考えてなかった。
何より姉御に会いたいという気持ちが1番だったけど、手加減したまま死を受け入れようとした僕を見て納得いかなかったらしい。
それで本気を出させるため、僕が大事に想ってる人を殺したと嘘を付いた。
本気でぶつかった上の結果なら、それが全て、これが鬼の流儀なんだそうだ。
「結局は俺のわがままだけどよ……」
こうは言っているが、彼にも良心が残っていたんだろう。
そして続けてスズが口を開く。
「彼は、私を助けてくれたし、誰も殺してない」
スズは仲間を救出するため結界が張られた神社に潜入したそうだが、仲間は捉えられただけで被害はなかったみたいだ。
交戦になり僕をおびき出す人質のために捕らえられたが、知らない人に治療の呪符で怪我を治して貰い、その後、また呪符を使われ眠らせられたと。
おそらくこれは、戦いを邪魔されないためだろう。
一通り説明を終えた後、茨木童子は言葉を続ける。
「煌河……俺ぁもうダメだ……最後の頼みだ、俺を殺してくれ」
「そんな……」
「さっきお前言ったろ、姉御はもういねぇってよ、それなら俺にももう生きる意味もねぇ……」
彼はそう言い、『頼む』と僕に告げる。
そう、その姉御だ。
ホントにもう復活しないのか? 凛華姉さんの言う通り消えてしまったのか。
何が真実かまだ判明していない……。
僕が考え事をしていると……彼の首から提げている水晶がドス黒い邪気を放ち彼を包み始める。
「な……!?」
「なんだってんだ……!?」――――――
――――――
ご愛読ありがとうございます!
面白かったら乳首をダブルクリックするようにブックマーク、評価をお願いします
気持ち良いので




