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40. 狐の守り神

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください








 学園が臨時休校になり島に絶対外出禁止令が出され、数々の島民が自分の家や避難所へ引きこもる中で一人の女生徒は再び学園へ向かい走っていた。

 自分のクラスメイトの男子生徒が体育の時間から教室に戻っておらず、安否が分からないのが心配で彼女は自分の住む学生寮の部屋を飛び出し、彼の行方を探しているのだ。


 先生は家に帰ったと言っていたが、その生徒とは連絡も一切取れずにいた事が不安で仕方なく思わず寮を飛び出したのである。

 彼の捜索には友達の千冬も協力してくれる。

 もう何人かの友人に声を掛けたが、一人は一緒に住んでいるお姉さんに捕まり外に出られない事。

 もう一人の友人は男子生徒と同じく体育の時間から戻ってきてはいないが、メールのやり取りをした。

 そして、取り込み中との連絡を最後にやり取りは終わったが、無事なのを確認していた。


「千冬ー!」


「麗香ー、さっき振りだね」


 女生徒達は学園近くの公園で待ち合わせ、顔を合わせる。

 これから学園の周辺を、探すつもりで待ち合わせたのだ。

 何故そんな事になったのかは現在行方の知れない男子生徒が、体育の時間に学校の外周をジョギングしていたからだ。

 学校の周辺を少し探して見つからなければ、避難所でもある学校に入ろうというプランである。

 彼女達は学園へと歩を進め、周囲の捜索を始める。


「いないねー」


「無事だと良いけど……」


「それもだけどさ、野生動物が全然いなくない?」


 言われてみれば確かにそうだ。

 女生徒は友人に同意すると同時に思った。

 島で絶対外出禁止令が出された理由は、山から多くの野生動物が降りてきて危険だからである。

 しかし周囲は愚か、SNS等の情報源からしても野生動物の出現を報告する様な話題は一切ない。

 訝しげな感情を振り払うように2人の女生徒は数十分ほど周囲を歩き回り、見つからないので彼が無事な事を信じ捜索を終える事にした。


「何かあっても危ないし、そろそろ戻ろっかー……」


「そうだね……」


 2人が学園へ入るため再び歩き出そうとした時、突然沈みかける太陽が隠れ、空の色が夕暮れの色から深い暗闇が支配する真夜中の景色に変わった。

 あまりに突然の出来事に対し、2人は固唾を飲み一瞬愕然とした。


「不思議、こんな事ってあるんだね……」


「ホント……とにかく早く学園に戻ろ!」


 唖然とした女生徒は我を取り戻し、2人は小走りで学園の校門へと向かう。

 学園の校門が面する道路に出たところ、近くの雑木林から小さい子供の鳴き声が聞こえてくる。


「何か泣き声が……」


「大変、子供がはぐれちゃったのかも!」


「あ、まってー!」


 兄妹も多く長女で面倒見の良い麗香は、小さい子供のために迷いなく鳴き声の方へと駆けだす。

 友人の千冬はその後を追い、雑木林の中へと入っていく。

 周囲を見回しながら歩を進めると、麗香がその子供を見つけた。

 少し開けた場所で、後姿の小さい子供が突っ立って泣き声を上げている。

 『大丈夫だよ』と声を掛けながら駆け寄っていく麗香に対し(何かおかしい)と千冬は思った。

 何でこんなところに子供が? 近くに避難所の学園もあるのに。

 それにいきなり変化した空の色……。

 あらゆる考えが頭を巡り、危険な予感を察知した千冬は麗香に静止の声をかける。


「麗香! 待って!」


「え……?」


 背を向け泣き続ける小さい子供の方へ駆け寄る麗華が足を止め、千冬の方へ顔を向けたその瞬間、小さい子供がこちらへ向き麗香へ歩み始める。


(麗華は自分の方を向いてしまい後ろの化け物に気付いていない! 自分が止めるしかない!)


 パニックになりつつもそう思った千冬は、頭では間に合わない事は分かりつつも、麗香を助ける為に震える足を前に出し駆け出すが。


「きぃやぁはははは!!!」


 不気味な笑い声を上げながら化け物は麗香へと飛び掛かる。

 麗華は振り向き、自分の置かれた状況に気付いた。

 喉の奥から反射的に、不安と驚きの混じった掠れた声が漏れる。


「なに……」


 自分の発した声と同時に、麗香が振り向いた瞬間、自分に飛び掛かってきた子供の様な化け物は、音を立てて明滅する光と共に弾き返され地を転がった。

 子供だと思っていた化け物は、人間ではなく、地へ手足をつけ子供のような体にシワクチャの年寄りの顔が付いていた。

 驚き尻もちをつきながらも、得体の知れないものと遭遇したという事実を自覚した麗香は、心と体の奥から冷や汗が噴き出る。


「れ、れいか……!」


 なんとか千冬は、震える足で麗香の下へと駆け寄り2人はあまりの状況に身震いする。

 これは現実なのか夢なのか、パニックになっているとまたもや子供の様な体躯の化け物は、自分たちへと飛び掛かってくる。

 しかしまた明滅する光と共に弾き返された、よく見ると目の前に薄い膜の様なものが張られ自分達を守ってくれている。

 ほんの僅かな安心感を得た2人は、少しばかりの正常な判断力を取り戻し、千冬は麗香の手を取り立ち上がらせ震える足を動かし雑木林の外へ向かう。


「はぁ、はぁ……」


 先をいく千冬と共に息を切らしながら震える足を懸命に走らせる間も、不思議な膜は自分達を保護してくれている。

 時折振り返り状況を確認すると、化け物がぶつかる度に明滅する膜は、ひびが入り割れかけていた。

 お願い、あと少しだけもって……!

 そんな願いを持ちつつも2人はなんとか、雑木林から道路へと躍り出る。

 その瞬間自分達を執拗に追い回す化け物は、渾身の力を振り搾るような声を上げ飛び掛かってくる。


「ギャアアアアア!!!」


「麗香ッ!」


 膜もおそらくもう持たないだろう。

 極度の恐怖と緊張により疲労で足が動かなくなった麗香は、諦めるように地へと座り込み死を覚悟した。


「消えろ」


 その刹那、冷たく怒りに満ちた声と共に、切り裂かれたような虚空の裂け目から、狐の面をした男性が現れ化け物を一刀両断にした。

 一刀両断された化け物は真っ二つに分かれ、黒い霧となり霧散していく。


「……」


(なに……? 私、どうなったの?)


 目の前に急に現れた狐の面をした少女と男性を眺め、麗香は頭が働かず呆然としていた。

 そして男性は、へたり込む麗香に目線を合わせるように屈んで麗香の頭へと手を掲げる。

 手を掲げられた麗香は怖くなり目を瞑るが、優しく頭を撫でられ声を掛けられる。


「がんばったね」


 どこか聞き覚えのあるような優しい声色に対し、おそるおそる目を開けると男性の側にいる小さい少女も自分の手を握ってくれていた。

 少女の頭に付いている見覚えのあるような簪を見つめ突如の出来事に唖然としていると、数メートルほど後ろにいた友人の千冬が声を上げ、麗香の隣へと駆け寄ってくる。


「れ、れいか……!」


 友人の2人は抱き合い、震える声でお礼を言おうとするが男性に遮られる。


「あ、あの……!」


「まどろみの 朧月夜の 夢の跡――――」


 狐の面を被る男性が子守歌のように詩を詠むと、2人の女生徒は眠りに落ちる。

 男性は2人を学園を護衛する任に付いている教員達へと引き渡し、闇夜に溶けて消えていった。――――――




――――――




 避難所に指定された学園の保健室で、1人の女生徒が意識を失い眠っている2人の生徒の側で携帯を弄っていた。

 SNSを見ていると、昼間は全然いなかった動物たちが現れ始め、変な行動をしたり人を襲うものもいるみたいだ。

 絶対外出禁止令が出されたとはいえ、少数だが外に出ている人がいる現実は避けられない。


「世知辛い世の中だぁ……」


 女生徒が呟くと、一人のクラスメイトが意識を取り戻し、小さい呻き声を上げながらゆっくり目を開ける。


「んん……」


「あ、麗香、大丈夫?」


 起き上がった麗香は、状況がよく呑み込めず辺りを見回す。

 良かった、横のベッドには千冬が眠っている。

 彼女は安堵しつつも、なぜ自分はここにいるんだろうと思い口を開く。


「アタシ、寝てたの?」


「先生がベッドに案内したら体調が悪いのかすぐ寝ちゃったんだって、覚えてないの?」


「……」


 自分は確か煌河を探していたら、空がいきなり暗くなって……。

 子供の泣き声がすると思って雑木林の中へ入ったらそれは化け物の声で……


「それで、心配だから先生に見ててって言われたんだよね」


 化け物に襲われたけど何故か見えないバリアみたいなのが守ってくれて……。

 千冬と一緒に逃げてバリアも割れそうで、もうダメだと思って……。


「それより、外すごいみたい、これは絶対外出ない方が良いね」


 よく思い出せないけど急に男の人が現れて、化け物を、倒したの……?

 そして……なんだかすごく彼らの手が暖かかった。

 あれは、夢だったの……?


 自分を見てくれていた女生徒が喋る中、麗香は自分にあったはずの出来事を順番に思い出していく。


「まだ、体調悪そう? なんか飲み物買ってくるよ」


「あ、ごめん……ありがとね! 見ててくれて!」


 女生徒は学園の校舎にある自販機へと向かい、我を取り戻した麗香は彼女にお礼を言う。


「あの、簪、どこかで……あの声も……」


 自分は寝ている間に夢でも見ていたんだろうか、そんな疑問を持つにしてはアホ過ぎる程に現実では有りえない状況だった。

 だというのにその夢はやけにリアルで、化け物に追われる恐怖も、自分の側にいてくれた千冬も、助けてくれた男性と少女の声と手がとても暖かく安心してしまったのを心が覚えている。

 あれがもし現実ならば、どうしてもまた会ってお礼を言いたい。

 彼女はそう思うが、あれはあまりにも現実的じゃない。

 現実だと信じたい気持ちもあったが、その出来事を思い出すと現実とは違う夢特有の朧気でまどろみの中にいたような感覚が思い起こされるのだ。


「やっぱ夢か……」



挿絵(By みてみん)



 一人呟いた彼女は、隣の女生徒を見て呑気な寝顔に心を癒されるのであった。――――――




――――――







「乖離剣:倶羅無 (カイリケン グラム)」


またの名を妖魔刀:倶羅無 (ヨウマトウ グラム)。

あまりにも力が強いため、普段は呪符に封印されている。


欲望の化身であるファフニールを打ち滅ぼしたドラゴンキラーの魔剣グラムが発するオーラと破片を元にし、更に魔剣グラムと同じ素材であるヒヒイロカネを素材の一つとして作られた魔剣であり妖刀。


(魔剣グラムの元々の持ち主は北欧神話のオーディンとされるが、日本神話のスサノオと同一神だという説もある。魔剣グラムの成分が解析された際、日本の秘宝、ヒヒイロカネが使用されていることが判明し、それがグラムが日本刀のような切れ味を持つ理由とされ、その説の確証が強まった。)


無反りで黒い刀身にヒヒイロカネの力が宿り、紅い文様が浮かんでいる。

煌河が約束を果たすため、???の流れを組む腕利きの刀鍛冶に頼んで共に作成した。

倶(共にするもの)、羅(繋げるもの)、善悪関係なく全てを断裂する。

異常な切れ味に関する逸話をもつ魔剣グラムを参考に、日本刀の技術も取り入れたためその切れ味は計り知れない。

魔剣の力強さを持ち、妖刀の切れ味を併せ持つその刃に切れないものはない。

国宝級の業物である。


・使用者の力(呪力等)を膨大なコストに次元を断裂する

 欲望や邪気、瘴気を断裂する

 繋がったあらゆる物を別つ(呪い、欲望、瘴気、同化、魂)


・ドラゴンに対し能力が上がる。


・魔龍に対しさらに効果が上がる。


・斬りたい物を斬る事が出来る








「魔技亜シェーダー 上・下 (マギア シェーダー)」


ラテン語のマギア(魔法)の名を冠する藍色のマジックコート(魔法の外套)。

大口真神オオクチノマカミの血を引く若いアビスフェンリルの抜け毛を媒介に作成された。

魔狼であり夜の象徴のアビスフェンリルは成長し魔力が洗練されるほど、毛並みが漆黒に染まっていく。

そのため若い個体は藍色の様な毛並みである事が多い。

元は和服の甚兵衛の形を模しているが、コンピューターCGの陰影処理を行うシェーダーの名を模倣するように表面を偽装し、凹凸を加えスーツや袴など洋服から和服まで、様々な服に見せる事が出来る。

実用的な能力として陰影を利用し夜闇に紛れる事が出来る。

西洋で作られた特注品、煌河が師匠に実力を認められ譲り受けた。


・僅かな魔狼の加護を纏い見えない力(魔力や呪力)を少し増幅させる。


・僅かな魔狼の加護を纏い外部の瘴気や邪気から僅かに使用者を守る。


・変装能力、魔力や呪力を対価に様々な服に変化できる。


・アビスフェンリルが闇に紛れ身を潜めるように、夜闇に紛れるように身を隠す事が出来る。






「魔狼のお守り」


生え変わって抜けた魔狼の牙を、ネックレス状にし首から提げお守りにした魔道具。

煌河が成長したアビスフェンリルに認められ譲り受けた。

成長途中だった若いアビスフェンリルの様に、希望に満ちた煌びやかな浅黒い色合いをしている。

大口真神オオクチノマカミと同じように、厄除け、魔除けが発動する。

野性味の強い魔物に効果抜群。

魔狼の意思が宿り、使用者の野生の勘、敏捷性が上がる。


・魔除け、自然に生きる妖怪や魔物に効果が強まる


・敏捷性が僅かに上がる、幸運が僅かに上がる


・僅かに五感と六感が鋭くなる。





「翡翠のお守り」


???




「狐のお面」


狐のお面。

装着した者の認識を多少おぼつかせる。

正体を隠すための道具。





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