38. ビデオ鑑賞会で笑われる
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パンツ一枚で原始人の喜びをポーズで表現するという珍行動を麗香達に爆笑された僕は、だだっ広い校舎の外周をジョギングしている途中に呼び出し放送を喰らい、理事長室に向かっていた。
まさか監視カメラに取られていた先程の珍行動が、早速偉い人の耳に届いたのだろうか。
麗香達から爆笑された後に、『秘密にしてくれぇ』とお願いしたが彼女らは堪えきれず僕の珍行動をクラスメイトに話し始めた。
それはもう楽しそうに。
そこから爆笑の第2ウェーブに飲まれたあとだというのに、あんまりではないか?
もちろんクラスメイトの前で喜びのポーズも再現させられた。
情けない事に皆が爆笑する中、引きつって笑う事しかできない僕を麗香は背中をさすって慰めてくれたが、半分君達のせいなんだが。
そこんとこ、分かってるのかね?
と偉そうに思いつつも、クラスメイトに爆笑されて慰められるという奇特なシチュエーションは中々に楽しめた。
少々雑に扱われつつも、心が弱っているような時は優しくして貰う少女漫画の主人公のようなときめきだったね。
そして授業は学園近くの競技場を使用する予定だったが、僕らの担任でもある体育教師の白鳥 渚先生が急遽用事があるみたいで自習になってしまった。
競技場は先生がいないと使用する事が出来ないので、学園の片隅にあるストリート用のバスケットコートを使用するか敷地の外を外周していなさいという言伝があり、僕は逃げ出すように学園の周りを走りに行ったわけだ。
そして走っている途中に、何故か呼び出された。
さて、僕の珍行動がクラスだけではなく全校生徒に知れ渡る覚悟はもうできた。
理事長室の前に立った僕は、静けさの立ち込める廊下で深呼吸する。
すると防音加工の施された理事長室からほんの微かではあるが、大勢の笑い声のようなものが聞こえてくる。
「「「アハハハハw」」」
……ははは、まさかな。
こういうのはまず当事者と生活指導の先生だけで話すと相場は決まっているはずだが。
僕はもう一度深呼吸をして扉をノックしドアノブに手を掛ける
「し、失礼します!」
「……」
理事長室に入ると、先ほどまで笑っていたであろう美しい複数の先生方は不意を衝かれたように黙りこくる。
僕が入った瞬間チラっと目に入ったテレビが消されたような気がしたが……まぁ気のせいだろう……。
「……」
部屋を沈黙が支配する中、理事長兼校長であり凛華姉さんの母親の莉々菜さんが僕の顔をみて笑い出した。
「っぷふふふ! ははは! やっぱだめよ~!」
いやぁ、ダメですいません……これはもう確定事項だろう。
理事長室に集まっていたお綺麗な先生方は、先ほど監視カメラに映った僕の秘密のビデオを見てお笑いあそばされていたのであろう。
璃々奈さんが笑うと周りの先生方も釣られて笑い出し、美しい大人の女性たちに囲まれて笑われるという貴重な体験をしてしまう。
やばい、なんか気持ちいいかも……思わず新しい扉を開きそうになる。
と、同時に悲しみも込み上げてきた、僕はなんてダメなやつなんだろうか。
僕が皆に合わせ、引き笑いしながらも涙を流すと、渚先生が僕の頭をお胸に抱き寄せてよしよししてくる。
「ごめんな! 夜兎、先生達が悪かった、もう大丈夫だからな」
スタイルの綺麗な渚先生の豊満なお胸様に頭を包まれ撫でられるのが心地よく、このまま眠りに落ちてしまいたくなってしまう。
でも、先生、一番笑ってましたよね?
主に扉の外に漏れていたのは渚先生の笑い声ですよ。
まぁ、そんな事はどうでもいい、今は大地を讃頌したくなるようなこの柔らかさに包まれていたい……。
母なる大地よ、アッー!
と思っていると、璃々奈さんが渚先生の罪悪感を掻き立て、とどめを刺しに来る。
「ごめんなさいね、監視カメラ当番の渚がこーちゃんが面白い事をしていたって言うから皆で見ていたのよ」
「……は、ハハハ」
僕を抱きしめよしよししくれていた渚先生は、誤魔化すように乾いた笑いを浮かべつつも僕から離れる。
すいません先生、正直もっと抱きしめられたかったです。
もう逃げ場がどこにもないので、僕は意を決し先生方に謝罪する事にした。
「えぇ、この度は先生方にご迷惑をおかけしてしまった事、学園の名に恥じるような行為をしてしまいました事を誠に申し訳なく思ってます」
「責任を以て今日限りでこの学園を退学させていただきます」
さようなら僕の学園生活、短い間だったけど楽しかったよ、皆。
「違うのよ、夜兎君、その事で呼び出されたわけじゃないの」
心の中で学園に別れを告げていると、僕の面倒を良く見てくれている美人保険医の八乙女 美香先生が僕の謝罪を訂正する。
実は美香先生にはスタリオンの日常的な検査、学園や島での生活に関してよく気にかけてくれているのだ。
まぁ、それが仕事の内なのかもしれないけどよくお世話になっている。
色々な人にスイーツを配ったりしてお礼する時には、美香先生にもよく差し入れしている。
「あなたに果たし状が来ていたのよ」
「え……?」
心当たりの全くない僕は何が何だか分からず呆然とするが、美香さんから果たし状を受け取り説明を受ける。
体育の時間が始まる頃、学園に人型を模した呪符がやってきたそうだ。
学園の結界をすり抜けようとした呪符を感知し、不審に思った渚先生が捕まえたところ、そこには果たし状が書かれていて僕の名前が指名してあったそうだ。
果たし状にはこう書かれている
はたしじょー むげんじんじゃはせんきょした、おうまがときよりまをかいほうしえんかいをひらく、とめたいならこうがこい
果たし状 夢幻神社は占拠した、逢魔が時より魔を開放し宴会を開く、止めたいナラコウガコイ
全部平仮名だったが訳すとこんな感じだろう、最後の方は紙に書ききれなくなってきて字が小さくなっていた。
この人型の呪符は僕がこの送り主に渡したものだ。
でも何故彼がそんな事を?僕らに協力してくれていたのに。
僕が考えていると珍妙な空気を破る様に、先ほどとは打って変わって真剣な眼差しで璃々奈さんが話し始める。
「状況を詳しく調べるために、神社に斥候を送ってあるのだけどまだ連絡がきていないの」
「魔を開放するっていうのも気になるわ、これは島で多発的に発生している瘴気を開放するという意味だと踏んでいるの」
「そして今、その対策会議を開くところだったのだけれど、渚がこーちゃんのビデオを持ってきたのよ」
なるほど……。
僕が渚先生を横目で見ると罪悪感が募っているのかバツが悪そうに眼を泳がしていた。
目泳いじゃってんじゃん、北島康介さんみてーによぉ。
まぁ正直この程度なんてことない、僕を見て笑顔でいてくれるなら床に転がったオレオのかけらだっていくらでも舐めようじゃない。
問題は魔を開放するという点だ。
正直、島中の瘴気を開放させるのは普通にやばい。
大分減ったとはいえ、見つけて浄化できているのは人目に付いているものだけだ、もちろん民間人にも被害が及ぶ。
これが果たし状の送り主の悪戯じゃない場合、早急に手を打たなければならない。
それで、凛華姉さん達は学園周りのパトロールをしていて、結界術の使える僕は作戦会議に呼び出されたって訳だ。
涼音はいつの間に授業を抜け、神社周辺を斥候しているエージェントに混ざっているらしい。
そうだ……! 小夜は!?
「あの、小夜! 小夜が神社にいるんです!」
僕が神社へ行くために呪符を取り出し虚空へ構えると。
「こーが……!」
あぁ、良かった無事だったか、扉を開け小夜が入ってきた。
よく考えれば式神と繋がれた呪力を辿れば学園にいる事は分かったはずなんだけど、一瞬焦って我を忘れてしまった。
聞けば疾風は涼音と共に行動し、小夜はお昼ごはんを璃々奈さんの驕りで学食で食べていたんだと。
無事でよかったよ……『璃々奈さん、ありがとうございます』。
そして果たし状の内容は本当だったみたいだ。
小夜と疾風が神社で遊んでいると、果たし状の送り主が結界をぶち破って侵入してきたそうだ。
『危害は加えない、代わりに煌河に伝えてくれ、念のため果たし状も書いとくけどよ』
と言われたみたい。
小夜は直ぐに学園へきて理事長と会い、それから果たし状がきたみたいだ。
「こーちゃんには結界術を駆使してなんとかして欲しいのだけど、何か意見はあるかしら?」
璃々奈さんは僕へと意見を促し、『結界の事は良く分からないのよ』と付け加える。
何か有効な意見は出なかったんだろうか、一応学園の先生たちは全員この界隈の事情を知っている人が赴任している。
まぁ、意見を求められたのでここは自分の考えうる最前手を述べる他ないか。
年齢やキャリア関係なく何かあれば意見を出し合うよう、組織に所属する人間は教えられている。
「島全域に神社で破られた結界と似たような瘴気を弱める退魔結界、複数個所に妖魔を誘導する誘致結界、全ての建物に作用する防御結界を張るのが良いと思います」
「安全に結界を張れるように結界術士には護衛を配し、結界の展開が終わり次第後続の作戦に参加させるのが良いかと」
このくらいはなんとかやってみせよう、こういう状況なら僕もきっと役に立てる。
「そこまでの結界……あなた1人でそれができるの?」
美香先生が僕に尋ねる。
「1人ではさすがに時間が心もとないですが……」
「手伝おう」
「わ、私も手伝います!」
僕の提案に渚先生と、もう一人先生が乗っかってくれる。
何度かお顔を拝見した事はあるが、まだ名前を覚えきれていないので名前は分からない。
「そうですね、それなら約4時間でなんとかできると思います」
「問題がなさそうならそれに決定ね、神の利き腕がいて助かちゃったわぁ~!」
……その呼び名はやめて欲しいんですが。
「それじゃ、準備に取り掛かるわよ」――――――
――――――
白昼の晴天の下、気配を消し茂みに隠れている久遠 涼音は囚われた仲間を救出すべく、従魔の疾風と共に神社の境内の様子を伺う。
広い敷地の中央にはこの神社の結界を破るほどの鬼が座しており、仲間が囚われた敷地の片隅にある社務所の裏の扉には、妖魔が2体ほど
配置され、周囲を警戒するように見張っている。
「ありえない……」
本来妖魔は動物全てを敵と認識し、規律的な行動を取るのはあり得ない。
涼音は今の状況を司令塔の理事長へと電波を傍受されない携帯を用い、メールを打つ。
彼女はこの状況なら仲間は助けられることを判断し、救出作戦を決行する。
隠密行動の才に秀でている涼音は気配を消しながらも、陰から手裏剣を投擲し小鬼型を模した妖魔が倒れる瞬間、疾風がすねこすりの力を用いてもう一体の妖魔の足元を崩す。
その間に一気に近づき2体目の魔物を小太刀で薙ぎ払い、続けざまに妖魔を黒い霧へと霧散させる。
静かに裏の扉を開き社務所に潜入した涼音は捉えられた仲間を発見し、呪力が用いられている縄抜け不能な特殊な縄を、霊力を込めた小太刀で切り裂く。
「助かりました、涼音殿。 あの鬼、かなりの力をもっています」
「いえ……脱出可能な結界の薄い箇所があります、急ぎましょう」
涼音は救出した仲間を誘導し結界の薄い場所へと、先導する。
そこには、呪力を遮断する道具を用いて抜け道が作られている。
先行した仲間が囚われた後に、鬼の一味が結界を張ったため、涼音が侵入と脱出ができるよう作った抜け道だ。
「さ、速く」
「かたじけない」
約4人の仲間を優先し、人一人が通れるフェンスに開けたような抜け道を、潜る様にして通らせていく。
最後に涼音が潜ろうとした瞬間、上から剛腕の鬼の拳が降りかかり、結界を遮断している道具を破壊する。
涼音は衝撃波に吹き飛ばされるが、地を転がり受け身を取る。
「お嬢!」「涼音殿!」
疾風と外に出た仲間4人が涼音を心配する声を上げ、続けて不敵に笑う鬼が挨拶とばかりに言葉を投げかける。
「よぉ、嬢ちゃん、中々の腕前だな」
「くっ……」――――――
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