2.キンタマ、覚醒
ちゅんちゅんちゅん―――
ん~気持ちの良い朝だ。おかげでスズメの真似もはかどるという物だ。
ちゅんちゅんちゅん。
今僕はパンイチ(パンツ一枚)で武家屋敷な我が家の庭に出てスズメになりきっているちゅん。
先日、滝行をして体調を悪くした僕は、公園でギャルからお礼を言い寄られ倒れてしまったわけだが
意識を取り戻したときには公園には誰もいなかった。
まあ夕暮れ時だったし、こんな陰気な男が倒れても困るだろうからね。
結局軽い発熱に疲労がたまっただけだった、大したことはない。
別に悲しいわけではなく寒くて涙が出ているだけだ、本当だ。
時折庭の外から歩行者が妖怪と遭遇したかの様な形相で見てくるが、僕が見返すと一目散に早歩きで逃げてゆく。
人をじろじろ見るとは失礼ちゅんね。
それはそうと起きてから身体の様子がおかしいちゅん。
頭の様子もおかしいだろって?
うるさい
昨日家に着き、倒れ込むように寝た僕は、疲労は取れたし体力も回復した。
だというのにどうも様子がおかしいのである。
朝起きたら、心身共に劣情を催していたのだ、主に下半身が。
この世界の男性はある時期から徐々に草食化が進み、女性に邪な感情を抱くことはない。
僕も例に漏れずそうだったちゅん。
しかし起きた瞬間にすぐ分かってしまった。
脳と遺伝子に刻まれた本能が覚醒してしまったと。
だって昨日のギャルとの触れ合いを思い出すたびにおにんにんが反応してしまうのだ。
おにんにん 春夏秋冬 おにんにん(春夏秋冬過ぎようともおにんにんはおにんにんである事を現わした詩)
やれやれ、これが本能という物か。
そして庭にいたスズメを目にし、彼らは何も考えてなさそうだったので気を静めるという意味でスズメの真似をしてみる事にした。
これがびっくりするほど効果がない。
当たり前だ。何が悲しくて僕はこんなことをしているのか。
今の僕ならスズメを捕まえるザルの罠に、米の代わりにギャルのパンティを置かれたらすぐ飛び付いてしまうだろう。
そんなこんなで物思いにふけっていたら
「夜兎さーん、ご近所さんからクレームがきたんですけどー!」
けーさつがきた
――――――
「はぁ……」
1人の少女が憂いを含んだため息を吐いた。
「ぁうあ~!だ~!」
「それだめ!ぁたしのだよ!」
チビっ子たちの面倒を見ながら少女は数日前の事を考える。
公園のベンチで倒れ、一向に目を覚まさない少年が心配になり、救急車を呼ぶため交番に電話を借りに行ったはいいが、公園へ戻ると男の子は姿を消していた。
姿がない事に驚きはしたが、おそらく男の子は意識を取り戻し、家に帰ったであろうことに少女の心はホッとしていた。
しかし、彼女の気は晴れず曇天模様のままだ。
妹を助けてもらい、自分のせいで倒れた男の子へろくに謝罪もお礼もできていないからだ。
次の日から何回か公園に顔を出したのだが、あの男の子と会う事は出来ず。
こうしてやるせない気持ちにふけっている。
それに、あんなに楽しく男の子と過ごしたのは久々だった。
クールな風貌ではあるが妹を助けてくれたり、派手な外見のせいか男の子に距離を置かれていた自分と楽しく話してくれた。
その事に心の暖かさの様なものを感じていたからか、余計に後悔を際立たせた。
(連絡先、聞いとけばよかったぁー……)
そう思いつつ少女はこの前の事を思い出しつつも。
今度は嬉しさと後悔が混ざったようなため息を吐いた。――――
――――
誰だ通報したやつは。
僕はあの日こってり厳重注意を受け、家長である父から自宅謹慎をくらってしまった。
スズメになりきり体を冷やして体調を悪化させた事もあり、家で大人しく過ごしていたのだ。
それからというものの、近所であそこの家の長男はおかしくなっただのなんだの言われているらしい。
全く失敬だな、庭で変なことしなかっただけで僕は前からこんなもんだ。
そしてあれから数日経ち、一向に昂る劣情が収まらず。
これは天地開闢の異常事態だと思った僕は、病院へ赴き検査を受けているところだ。
自分の身に起きた事をお医者さんに説明した僕は、別の部屋へと移され、きれーでスタイルの良い大人の色香が漂う女医さんと2人きりにさせられてしまった。
それから検査というのも怪しい様な、様々な検査を受けた。
耳元から吐息の香りを感じるレベルの距離で真横に密着され、太ももをさわさわされながら他愛のない質問をされたり
「あなたは普段何してるの?趣味とかあるのかしら?」
「ふゅ、ふゅだんですか!? 山でたんれんしへます! シュミはアニメとかがす、すきです! あ、あの!検査はいいんでしょーか?!?!」
「いいのよ、これが検査だから♥」
聴診器で心臓の音を聞くために、服を脱がされたり。
ティクビをコスコスされた。
「はい、バンザーイ」
「ば、ばんざ~い」
「うん、いい子ね~、怖がらなくて大丈夫よ♥ ちょっと失礼するわね」
「ハ、ハイ!」
「可愛らしい乳首さんね~、あら?」
ブチッ!
「アフゥン!」
ついでに乳首の毛も引っこ抜かれた。
と、このように。
正直今の僕にはキツイ、キツすぎてパンツがテントを突き破る勢いだ。
検査を終え、書面と真剣な眼差しで向き合う先生の横顔を見つめながら、僕は沈黙を破った。
「あ、あの 僕に何か問題でもあったんでしょうか?」
「そうね……あなた、スタリオンね」
「は、はい。……????」
スタリオン?なんだそれは。
乳首の毛を引っこ抜かれたことで何かに覚醒してしまったのだろうか。
「この世界である時を境に男性が草食化し、女性に性的な興味を無くしていった事を
あなたも知ってるかしら」
「は、はい、学校で習う範囲であれば……」
そう、さきにも少し触れたと思うけど、この現代社会の男性は基本的に性的関心がない。
諸説あるが、性的に秩序が乱れた時代、致死率の高い性病が蔓延し性行為と縁のなかった草食系男子が、生き残った結果だとか。
若者の恋愛離れが世代ごとに強まった結果だ、とか言われている。
女性への影響はあまりないが、男性はより強くその影響が出ているのが一般的だ。
これは保険の授業で習う。
「それでスタリオンて一体……」
「この現代の男性が性的な関心がないとして、スタリオンはその逆よ」
「……」
説明を受けたが、先生が言うにはこうだ。
少子化が進むにつれ、絶滅の危機を察知した人類の本能が働いたのか。
ある時から、女性に性的関心を強く抱く男性が現れたのだという。
その数は極少数ではあるが、少子化の事態を重く見ていた政府は、人口減少の打開策としてスタリオンと名付け手厚く保護しているらしい。
要は管理下に置かれたスタリオンは、種馬になれという事だ。
なのでスタリオンは特権として一夫多妻が許されている。
そしてスタリオンが生まれたのは、人類の生存戦略の一つとも言われてるらしい。
更には女性を魅了してしまうフェロモンが出るようになるとか。
「いわば、先祖返りみたいなものね。
ちなみにスタリオンの意味は種牡馬、種馬よ」
「そ、そんな! 僕はどうなってしまうんですか!」
た、種馬だなんてそんな!悲痛な声を上げつつ、これからの生活を妄想してしまいニヤけそうになるが、理性を働かせて心を律する。
人間の尊厳はどうなる人間の尊厳はぁ!テュフw
「あら、心配しなくても平気よ?研究に協力させられはするけど、非人道的な事はないはずだから
これから政府から連絡が来ると思うわ」
頭がいっぱいいっぱいに、いや、おっぱいおっぱいになってしまったが
なんとか気を持ち直し、女医さんの豊満なお胸様をガン見しつつこれからの事を考える。
このままいくと、下手したら人体実験等モルモット扱いされるのではないだろうか。おっぱい。
女医さんは非人道的な事はないはずとは言うが、断言も確証もない以上、その言葉は信用できない。おっぱい。
すると2人きりの雰囲気でスタリオンの特殊なフェロモンに当てられたのか、女医さんが僕の頬に手を当て妖艶に迫ってくる。
「それと、あなた……見た時から思ってたけれど、結構可愛いわ♥ 上に黙って味見しちゃおうかしら♥」
僕は固唾をがぶ飲みし……
「あぅぁ……しつれいしますうぅぅぅぅう!」
病院を飛び出し逃げ出した。――――
セクシー女医さん イメージイラスト
本来は上に白衣を羽織っている設定です
セクシーな女医さんに弄ばれるシーン、お好きな方で妄想してください
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