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33. 不満の行方

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください







 GWが明けてから何日か経った頃の放課後、僕は香蓮ちゃんと共に馬術部に赴き馬の世話のレクチャーを受けていた。

 今は馬房の掃除をしている。

 馬との暮らしって憧れるけどやっぱりけっこー大変だな……。

 香蓮ちゃんからの教えの通りに排出物で汚れたわらを運び、新しいものに取り替えていく。

 ふと、馬房から見える外の景色を見ると、外にいる馬たちは気持ちよさそーに日差しの下でノンビリ歩いたり寝転がったりしている。

 平和だ……。

 わらの交換が済んだ後は馬にブラッシングをかけていくみたいだ。

 馬に声を掛け、ブラッシングを始めていく。

 やっぱり馬も人みたくコミュニケーションを取りながら接していくのが良いらしい。

 一通りお手本を見せて貰い僕がブラッシングをかけようとすると、香蓮ちゃんが背後から僕に組み付いて上から手を重ねて教えてくれる。


「ほら、加減はこんな感じだよ、もう片方の手で馬を宥めるように撫でながら、うん、上手い上手い」


 こうやって教えてくれるのは分かりやすいけど、彼女の爽やか王子様パワーに当てられて僕は胸の鼓動が高鳴りドキドキしてしまう。

 力強くも柔らかくて包容力のある手に握られ乙女心が浮き彫りになりそうだ。

 その上後ろから抱き着かれているので、良い香りや柔らかさに頭がクラクラし彼女に身を委ねてしまいそうになる。

 いかんいかん、ちゃんと真心を込めて世話しないとな。

 僕は漆黒の馬に優しく声を掛けながら、ブラッシングを続ける。


「いいね、とても気持ちよさそうにしているよ」


 良かった、どうやら上々の反応みたいだ。

 ある程度世話を終えた後、香蓮ちゃんは乗馬を教えてくれると言い僕らはブラッシングをかけた馬と共に広場へと向かう。

 この子は香蓮ちゃんの愛馬で、幼い頃から香蓮ちゃんがお世話をしているらしい。

 そしてなんと、真偽は定かではないがスレイプニルの血を引いているとされる天馬だそうだ。

 スレイプニルというと北欧神話に登場するオーディンが騎乗していた軍馬である。

 艶のある漆黒の毛並みが神秘的な立派な馬だ。

 名前は深淵を意味するAbyss(アビス)、漆黒の馬でアビス……なんとも中二心をくすぐるネーミングだ、ちなみに女の子らしい。

 広場に着き香蓮ちゃんはアビスに屈むよう指示を出すが。


「さぁ乗ってごらん」


 僕が乗ろうとするとアビスは立ち上がる。

 あ、あれ?

 香蓮ちゃんは再びアビスを屈ませる。


「こ、今度こそ」


 アビスはまた立ち上がる。

 どーやらアビスは僕を乗せたくないみたいだ。

 アビスは誰でもお世話はさせて貰えるけど香蓮ちゃん意外は背に乗せたがらないらしい。

 僕が世話をするアビスの反応からして『いけると思ったんだけど、ダメかぁ……ごめんね』と謝られた。

 香蓮ちゃんに哀しそうな表情をさせるとは、この馬ニンニクの効いた息吹きかけたろか。

 と冗談は置いといて、いつかアビスとも仲良くなれたらいいな。

 ちなみになんで僕の息がニンニクが効いているかというと、香蓮ちゃんが作ってくれた弁当にニンニクを効かせたポトフがあったからだ。

 めちゃくちゃ美味しかった。

 何故香蓮ちゃんが僕の昼食を作ってくれたかというと、僕の弁当を作る当番がGW中に決められたらしく、麗香にも連絡を取って決定したそうだ。

 そして今日は香蓮ちゃんが当番だったというわけだ。

 ちなみに本日のお昼の一幕はこんな感じだ。――――――




 ~生徒会室~


「ふふ、やっと私の番だね、それじゃあ食べようか」


「すごい! 美味しそう!」


 香蓮ちゃんは弁当を開き、僕の反応に対して嬉しそうに笑ってくれる。


「ふふっ、実際に味も美味しいはずだよ」


 僕が箸を手に取ろうとすると、香蓮ちゃんがその箸を取り当然のように僕に食べさせてくる。


「はい、あーん♥」


「あ、あーん」


「いい子だね♥ いっぱい食べてね♥」


 うーん、幸福と安らぎを感じる……。

 僕はただ食べてるだけのなのに、彼女は何故かこんなにも嬉しそうにしてくれる。

 たぶん、僕は香蓮ちゃんの言う事なら何でも聞いてしまう、このように食べろと促さられれば食べるし、回ってワンと鳴けと言われれば八卦掌回天をしながら鳴いてしまうだろう。

 でも、それでこんなにも嬉しそうに笑ってくれるなら、僕も嬉しい。


「めちゃくちゃ美味しいけど、これじゃあ香蓮ちゃんの箸が進まないよ?」


 僕ばかり食べているのが申し訳ないので、僕が香蓮ちゃんも食べなよと言うと嬉しそうにしていた香蓮ちゃんはシュンとしてしまう。


「やっぱり嫌だったかな……」


「いや、嫌じゃないよ! 香蓮ちゃんが食べさせてくれて幸せだよ!」


 悲しませたくない一心で焦るあまり思わず恥ずかしくなるようなセリフを口走るが、何を言ってんだぼかぁ。


「っふふ、君の口からそういう言葉が聞きたくてね、つい意地悪してしまったよ」


 香蓮ちゃんはいたずらっ子の様な表情をしながら言う、心なしかいつもよりテンションが高い気がする。

 それはそうと、このままじゃ香蓮ちゃんが一向に食べられないぞ……。

 そうだ!


「そうだ、僕も食べさせてあげるよ。はい」


「ぇ……♥ ぁ、ぅん……♥」


 急にしおらしくなった……か、可愛い……!

 香蓮ちゃんはエスコートするのは慣れているがされるのは慣れていない、幼い頃のままの彼女がなんだか微笑ましく胸が暖かくなってしまう。

 ともかく、これで香蓮ちゃんも一緒に食べられる。


「ほら、お口開けて、あーん」


「ぁ、あーん……♥」


 口をもぐもぐさせている……。


「はは、愛らしいリスみたいだね」


「ぇへ♥……は、はぅぅ……」――――――




 とまぁ、こんな感じで香蓮ちゃんと2人きりの昼休みを過ごしたわけだ。

 僕が昼休みの出来事を回想しているとアビスを除き馬術部に属する3頭のお馬の内、赤茶色の毛並みを持つ人懐っこい性格の馬を香蓮ちゃんが連れてきた。

 その子は僕の前にくるやいなや、撫でて欲しいというばかりに額をくっつけてきた。

 名前は、ナツメ。

 おーよしよし、可愛い子だなぁ。

 ナツメに軽くおやつをあげてスキンシップを取り、香蓮ちゃんが馬装を施していく。

 僕が声を掛けながらナツメに跨ると、隣で香蓮ちゃんがアビスに跨りながら僕にレクチャーしてくれる。


 ……なんだろう、馬に乗ってると彼らと一対になったような一体感を感じる。

 馬装により乗り心地が上がっているからというのもあるかもしれないが、なんだか馬の動きに対して反射的に動いてしまう。

 自分の身体が馬に寄り添って動いているような、そんな気分になる。

 ただのエゴかもしれないが、馬もそう思ってくれていたら面白いな。

 そして馬の上から見る視線は高さが変わっただけなのに、いつもと違う景色を見てるような気持ちになる。


「ナツメ、すごい」


 僕が撫でながら言うと、彼は軽くいななきを響かせ僕に返事をしているように感じた。――――――



――――――



 数人程度の他の部員達が、香蓮ちゃんの乗馬レッスンに対し黄色い声援を響かせながら見守る中で、生徒会室への集合時間がきた。

 ナツメとアビスにお礼を言い、僕たちは生徒会室へと向かっている。


「また一緒に乗ろう、乗馬デートみたいで楽しかったよ」


 女生徒達がキャーキャー言ってたのはそれが理由か。

 たぶん学園の王子様がデートのように僕をエスコートしてる様が物珍しくも素敵だったからだろう。

 王子様の相手が僕で申し訳ないね。


「楽しかったね」


 僕は可憐な王子様へと返事を返しつつも、生徒会室の扉を開ける。


「随分とお楽しみだったみたいだな!」


 と、特盛っ!

 凛華姉さんが腕を組み仁王立ちしていた。

 組んだ腕の上に夢の詰まった大きいボールが乗っていて不意打ちで目に飛び込んできたそれに刺激されるがなんとか自分の中のアツいものを抑える、ぼんのー……たいさん……。


「お前たち、昼休みだけでなく放課後もイチャイチャしていただろう、私の目を盗んで。全くずる……いや羨ま、けしからん!」


「別に凛華の目を盗んでいたわけじゃないさ、ただ煌河くんと楽しく過ごしていただけだよ」


 姉さんの口から事情を知るが、昼休みでは生徒会室からキャッキャッウフフするような声が漏れていて廊下にいた生徒がそれを聞き、学園の王子様をスタリオンが手籠めにしていると上級生の間で話題になり、放課後では馬術部で王子様がそのスタリオンをエスコートしていたと。

 そんなある事ない事が話題に昇り一大ニュースになっていたみたいだ。

 いつか香蓮ちゃんのファンクラブに刺されないだろうな……。


「そんな大げさだよ、私はいつものように煌河くんにご飯を食べさせてあげただけなのに、やましいことなんて何もしていないさ」


「それが問題なんだ、ここは学園なのだから変な噂が立つ行動は控えるべきだ」


 姉さんは身内のみ、または2人きりの時などは積極的だが、ここは場所が場所だ。

 プライベートでは砕けているがしっかり者でもあり、体裁や品位に真摯に向き合い行動する人間性だ。

 対して香蓮ちゃんはどんな時も、自分を貫くような真っ直ぐな所があり表裏がないというか純粋でフランクなタイプだ。

 どっちも素敵だけどこうしてぶつかる事も多い。


「む、凛華だって人のこと言えないじゃないか」


 僕が学園にきてから数日後、遠征を終えた凛華姉さんが帰ってから初めて学園へ来た時の事を指摘する。

 あの時は凛華姉さんが僕の教室まで来て隣に座り、朝のHRホームルームを受けようとしたんだよな。

 渚先生に諌められ自分の教室に帰って行って事を終えたけれど。


「あ、あれは舞い上がっていただけだ、その後はあのような行動はしていない!」


 姉さんはあれっきりああいう行動どころか、噂が立つような行動はしてきていない。

 健全な方向に向かっている姉さんに、僕は心中とても穏やかだ。

 GWが明けてから姉さんがお弁当を作ってきてくれた時も、朝ご飯の時のように2人で食し世間話をしたり、サンドエッチマンのコント動画等を2人で眺め、とても穏やかな時間を過ごした。

 今日の香蓮ちゃんの時みたいな甘いような時間はなかった。


「ともかく今後は気を付けろと言う事だ、いいな?」


「……っ!」


 香蓮ちゃんが反論を返そうというタイミングで、間の悪い事に朱鳥先輩が2人を諌め香蓮ちゃんは言葉の行き所を無くしてしまう。

 何とか場は収まり僕らはいつものように任務へ向かう準備をするが……。

 ただちょっと、いつものような収まり方ではなかったので香蓮ちゃんが心配だ……。


「ずるいよ……」


 僕は彼女のあまりにも小さい呟きに対し声を掛けるが、心なしか少し涙目になっているような気がした。


「大丈夫?」


「あ、あぁ、なんでもないさ!」



挿絵(By みてみん)


――――――







【使い魔:Abyssアビス


香蓮の使い魔

スレイプニルの血を引くとされる漆黒の天馬。


翼は無いが空を駆ける事が出来る。

スレイプニルの血を引いているため力強い。

硬派で頑固だが心根は優しい。

UMAのフライングホースと呼ばれているのはアビスの同族や同胞。


・天を飛翔するように駆ける

・とてつもない馬力(体当たりで低級の怪異を粉砕、肉弾戦で中級も倒せる)

・恐慌状態や瘴気を喰らう(解除する)


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