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32. 愛の疑惑

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください









 暖かな陽気の日差しが降り注ぎ、爽やかな風を感じるGWゴールデンウィークの1日。

 僕は麗香との約束で待ち合わせ場所の、映画館に近いオサレなカフェのテラス席に小夜と座っていた。

 麗華は僕にお礼をさせる機会をくれたが、今日は小夜も一緒だ。

 小夜は順応性も高く人間の社会に大分慣れてきてはいるものの、やはりときどきおかしな行動をまだしてしまう。

 麗華に面倒を掛けないか心配ではあるが、今日は3人で楽しもうと気持ちを切り替える。

 きっと小夜にも良い思い出になるよね、もちろん僕や麗香にも。

 そんなささやかな願いを持ちつつも僕達は約束の相手を待つ。


「小夜、ホイップがつている」


「お待たせ! ごめんねー、洋服選んでたら少し遅れちゃったw」


 鮮やかにフルーツを盛り合わせたコーラフロートを飲む小夜の口元を拭いていると、麗香がやってくる。

 私服の麗華は全体的にさっぱりした大人っぽい服でゆったりめの薄手のジャケットを袖を通さずに羽織り、その下にノースリーブのタンクトップニット。

 スレンダーな足に目を惹かれる様な七分丈のパンツに加え、ところどころアクセサリーを身に着けている。

 大人っぽい麗香に良く似合っている。

 それにポニーテールが可愛らしさも出しつつ、さっぱりした雰囲気を強調させている。

 この前のカラオケの時はラフながらもお洒落さを感じさせるような服装であったが、今回は気合が入ってるような雰囲気で思わず心を奪われそうになってしまった。


「あぁ、めっちゃ似合ってるよ、クレオパトラかと思った」


「意味分かんないw どういう事?w」


「せ、世界三大美女かと思ったってことだよ」


 僕は麗香を照れながら褒める。

 こういう台詞回しで意図が伝わらない時って微妙に恥ずかしいんだよな。

 それにドストレートにこういう大胆な褒め方をするのに慣れてなくてなんだか照れくさくなってしまった。

 だが冗談抜きに良く似合っていてる、言葉の意味としては大げさではないはずだ。


「そー? ありがとw 言い過ぎだけど!」


 気のせいだろうか、麗香も少し照れているように感じたけどまぁホントに気のせいだろう。

 たぶん僕だけが照れているのが恥ずかしいから深層心理が働き、麗香も照れているように見えたのかもしれない。

 麗華は丸いテーブルの僕から見て斜め前、小夜の正面に座って挨拶する。


「ちょっとー!妹ちゃんめっちゃ可愛いじゃん! アタシ椿 麗華、ヨロシクね!」


「小夜です……よろしくね……」


 小夜は人懐っこいが人見知りでもある。

 いつもより声が小さくなるが、頑張って麗香へちゃんと挨拶する姿が愛らしい。

 麗華が『可愛いー』と言いながら小夜を撫でて褒め、小夜もまんざらでもない表情をしている。

 やっぱり彼女は兄弟が多いだけあって面倒見が良いな。

 小夜との挨拶を交わした麗華はメニューを見て飲み物を注文する。

 映画の時間までは余裕があるので、このカフェでゆっくりお喋りでもする事になった。

 麗華と小夜は身に着けてるアクセサリーの話に移り、互いのアクセサリーを褒め合っている。

 小夜は最近アクセサリーに興味が出て来たみたいで、麗香が身に着けているアクセサリーが気になるようだ。

 やっぱり小夜も女の子なんだな。


「小夜ちゃんのそのかんざし可愛いー!」


「昨日こーがに買って貰ったの……麗香ちゃんのもあるよ……!」


「あいたたたたた!!!! あー痛い痛い!」


 僕は小夜の言葉を麗香に突っ込まれないように、この前任務で擦りむいた頬を大げさに痛がる。

 だいぶ良くなっているが少し傷跡が残っているので、軽く絆創膏を張っているのだ。

 僕の反応に小夜は、しまった! と言わんばかりの表情で両手で口を抑える、何それ可愛い。


「まぁいいけどw その傷どうしたの?」


 麗華に少し訝しまれたが、まぁ結果オーライだ。

 気を反らす事に成功した。


「ちょとこの前……擦りむいちゃってさ」


「大きい鬼から守ってくれたの……」


「え?w」


「鬼のような犬! 大きい鬼のような犬ね!」


 小夜はまたしても自分の口を両手で抑える、何それ可愛い。

 僕は小夜を撫でながら真実の混ざった嘘の出来事を麗香に説明する。


「大きい犬がすごい険相で小夜に向かってきたからさ、間に入ろうとしたらこけちゃったんだよ、それでこのザマさ」


「ははははw こーちゃんらしーねw」


 麗華は眩しい笑顔で笑いながら僕の絆創膏の上を優しく撫でる。

 やはり距離が近くてドキドキする……。

 この世界の男性が性に感心を無くしてから女性は積極的になっていったみたいだが、他のクラスメイトと比べて麗香と陽菜は人一倍積極性が高いし距離も近い。

 慣れる事もなく、こうやってスキンシップされる度にドギマギしてしまう。 


「そ、そろそろ時間じゃないかな?」


 麗華に頬を撫でられて照れくさくなった僕は、恥ずかしがりながらも映画の上映時間に間に合うか確認する。

 すると丁度いい時間になっていた。

 僕は会計を済ませ、3人で映画館へと向かう。――――――



――――――




 待ち合わせ場所に集合した煌河達は大型ショッピングモールの中にある映画館へと向かい、飲み物やポップコーンを購入する。

 麗華がネットで予約した、スクリーンが見やすくトイレにも行きやすい座席に座り、小夜は感嘆の声を上げる。


「すごい……!」


 愛らしい小夜の反応に、煌河と麗香は微笑み、映画中は基本的には静かにする事などの軽いマナーをおさらいする。

 小夜は煌河の話を半分流して聞く中で期待に胸を膨らましていた。

 ここの映画館は、上映中の臨場感を肌で感じるための4DXという技術が館内に組み込まれている。

 映画の場面に合わせて座席が巧みに動き、環境効果としてミストや風を肌で感じる事が出来るアトラクションの様な設備だ。

 もちろん昔馴染みの普通の劇場も完備されている。

 煌河は小夜の胸の中のワクワクが隠せないような輝く表情を見て、改めて麗香にお礼を言う。


「麗香、ありがとう、映画の予約もだけど、僕はこんな設備あるなんて知らなかったし。 小夜も楽しみみたい」


「お互いさまだって! アタシこれ好きなんだよねーw」


 麗華はこの映画館の限定ポップコーンとスナック感覚で食べられるミニチュロスを頬張りながら、先ほど、カフェやお菓子やジュースの会計を煌河に出して貰った事を口にし、煌河へ言葉を返す。


「アタシのお菓子ここ置いとくから、好きに食べていいからねwっぷははww」


 煌河の手元を見て先ほどの出来事を思い出し笑いながら、麗華は席と席の間にあるテーブルにお菓子を置きながら言った。

 その出来事とは小夜が『美味しくなれ……!』と言いながらポップコーンにジュースをぶちまけたのだ。

 『これ美味しくない……』と言う小夜に対して煌河は自分のポップコーンとジュースを交換したのである。

 麗香はたまに訳の分からない行動をする煌河を思い出しやっぱり兄妹なんだと思いながら、子供に甘い煌河に対して改めて好印象を抱く。


「やっぱアンタと似てんねー小夜ちゃん! はははw」


「普段の僕をそんな目で見ていたのか……」


 煌河はそう言葉を吐きつつも、自分がカラオケのドリンクバーのコーラをポテトに付けたり、つけ麺をラーメンにする暴挙を思い出し、そりゃぁそんな目で見るよなと自分の行動を改める。

 3人は和気藹々と和やかな会話をしてる内に映画が始まり、場内は静まり返る。

 劇場内は暗くなり、コメディ色の強いボーイミーツガールの物語が幕を開ける。

 ジェットコースターのシーンでは座席が動き回り、コメディシーンでは笑い声が溢れる。

 視聴者がまるで物語の中に自分が入ったかのような没入感を感じる中、やがて2人の俳優と女優が間にテーブルを挟み、夜景の見えるテラスでワインを嗜みつつ穏やかな甘い時間を過ごす。

 そして劇中の2人が、テーブルに置かれた酒の肴のフライドポテトへと同時に手を伸ばす。

 その瞬間、没入感の高まっていた麗香と煌河は無意識的に、自分たちの間のテーブルへと置かれたポップコーンへと同時に手を伸ばす。


「あっ」「ぁっ」


 不意に2人の手が触れ、微かに漏れる声が耳に響き、2人はほんの数秒見つめ合う。

 見つめ合ううちに次第に我に返った2人は、なんだかおかしくなってお互いに微笑み合い、胸にささやかな慈しみを感じつつ映画へと視線を戻した。

 その時間は2人にとって長いような短い様な、自分たち以外の世界を置き去りにした時間に感じられた。




――――――




 僕らは世界が引っ繰り返っても経験する事の無いような群像劇の視聴を終えた。

 その後ある程度遊びまわり腹も空かせたところ、空と海の暗闇が織り成すグラデーションの見えるオサレな庶民派レストランで夕食を終え、ライトアップされた空中庭園の様なビルの屋上のベンチで夜景を眺めていた。

 側にあるカフェスペースで購入した紅茶を飲みつつも、僕は今日の事を振り返る。


 今日はホントに楽しかった。

 最近任務が多くカラオケの時もトラブルがあったし、久々に平穏な日常を満喫できた気がする。

 映画を見終わってからは、ショッピングモールにある雑貨や服を物色したり、昔ながらの街並みを模した的屋や駄菓子等が楽しめる、通称【思い出通り】で遊んだりしていた。


 小夜はすっかり元気になり、もう心配ないだろう。

 それも麗香のおかげだ、疲れて家に出る予定などなかった日だがこうして誘ってくれたおかげで忙しさを忘れて過ごす事が出来た。

 何より小夜も元気になったしね。

 小夜はブランコやハンモックが置かれた広い屋上の庭園を散策し、時々こちらの方を見て手を振ってくる。う~ん可愛い。


「麗香、今日はありがとう、映画誘ってくれて。 小夜の面倒も見てくれてさ」


 僕は麗香にお礼を言う。


「それとごめん、僕がお礼するつもりで誘ってくれたんでしょ? 結局世話をかけちゃってさ」


 そして謝った、前にした約束は僕が麗香へお礼をしたりする為に交わした言葉だったはずだ。

 それが今日は小夜の事ばかりになってしまった、決して麗香の事を蔑ろにしていたわけではないが、どうしても小夜を気にかけてしまったのだ。

 麗華はたぶん兄妹での立ち回りに慣れているから文句一つ言わず一緒に面倒を見てくれたけど、心のどこかでほんの少し不満が残っているかもしれない。

 だから謝った、そんな事気にするような子じゃないのは分かってるけど謝らなきゃいけないような気がして。

 これは卑怯だろうか……。


「今日さー、ほんとは2人きりで行くつもりだったんだよね」


 やっぱそうか……。

 たぶん僕が何回か真剣に麗香へと感謝だったり何かお礼ができないかと思っていることを伝えたから。

 おそらくそれで気を利かせて誘ってくれたんだと思う。

 僕は相槌を打ち、麗香の言葉の続きを待つ。


「最初は2人で行けないんだってちょっとショックだったけどさ」


「でも、楽しかったしどーでも良くなっちゃった! 小夜ちゃんめっちゃ良い子だしw」


「思ったんだよね、家庭持ったらこんな感じかなーって、なんかさ未来の自分が見えたっていうかw」


「だから、私もありがと!」


 僕は意を決し、前開きの甚兵衛の懐からプレゼントを取り出す。


「麗香! あ、あの、これ。 良かったら貰ってくれないかな」


 少し高級感のある装飾がなされた小さい袋を麗香へと差し出す。

 こういう類のプレゼントは慣れておらず柄にもなく緊張してしまう。


「普段のお礼の1つというか、いつものお礼として買ったんだけど、ほんの気持ちって感じで……」


 最初は喜んでくれるかなって気持ちもあったけど、なんだかいざ渡すと不安になってきた。

 というか不安しかない。

 麗華はキョトンとし、こちらを見つめている。


「あぁ、あの、気に入らなかったら他人にも渡して良いし……捨てちゃっても……」


 こんなのいきなり渡すのは、気持ち悪かっただろうか。


「っぷはははw何言ってんの!w 捨てないし! 開けていーい!?」


「あ、あぁ!」


 う、受け取ってくれた。

 麗華はいつものように爽やかに大きく笑い嬉しそうな表情をしているように見える。

 中身をみてその微笑ましいお顔が豹変しないのを願うばかりだ。

 彼女はリボンを解き中身を見る。


「あ……これ……」


「あぁ、麗香に似合うなって思って買ったんだ、ネットで映画の情報を見てそう思って……」


 麗華はプレゼントの中身を見ていつもとは違うような、優しさを感じられる様な微笑みをする。

 中身はシルバーの装飾が施された小振りのルビーのネックレス。

 事前に見たネットの写真で、主人公もといヒロインの女の子が似たようなルビーのネックレスを身に着けていて、お礼にもなるし良いかなと思って買いに行ったものだ。

 そして映画を見終わってからの方がサプライズとして面白いんじゃないかと思い、渡すタイミングを伺っていた。

 ちなみに一緒に購入した小夜のかんざしにもささやかなルビーがついている。


「めちゃ可愛いじゃん! これ、けっこーしたんじゃない?」


「そうでもないよ、あまり気を使わせても悪いからさ」


 ルビーのネックレスの値段は調べてみたらピンからキリまであり、その中でも低いものだ。

 それでも一般的な学生からしたら結構高いかもしれない。

 でも僕はこー見えて少しは稼いでいる。

 任務でも報酬は出るし、印税も貰っている。

 僕は怪異の対応にあたって補助の術式が得意だが、僕が開発した結界術に使う呪符の製作費の分や術式簡単学習キットみたいなものを、僕や凛華姉さんみたいな怪異に対応する同士達へ販売している、ていうか販売させられた。

 そしてスタリオンとして島での生活費は完全に政府任せだ、だから割と自由に使えるお金は持っている。

 まぁ、麗香からしてもそこまでの額じゃないと思う。

 彼女はモデルもしていて割と報酬も良いらしい。

 陽菜と香蓮ちゃんも同じ事務所でモデルをしていて、たまに凛華姉さんやスズも助っ人に行くのだとか。

 ここら辺の繋がりで彼女らは認識があったみたいだ。

 なんて僕が考えていると、麗香は大胆なお願いをしてくる。


「ね、これ付けてよ!」


「え? 僕が?」


「そ! 僕が!w」


 おいおい嘘だろ。

 それはもう恋人じゃないか?

 と言っても麗香は誰にでも距離が近いからな……他意はないだろう。

 これも経験だ……。

 僕は、自分の首へとネックレスを付けるフリをする。


「アンタにじゃないって! ぷっはははwww」


 麗華は楽しそうに僕の肩をはたきツッコミを入れる。

 僕はワンクッション置くことで多少心を落ち着かせ、覚悟を決める。


「イキの良いツッコミありがとうございます、では……失礼仕る……!」


「何それw」


 ……ドキドキする。

 僕はさっき見た映画のワンシーンさながら、髪をかき上げる麗香の綺麗な首に腕を回しネックレスを付ける。

 彼女の香りが頭の中に広がり、特殊な状況も相まって余計に緊張する……。

 う、上手く付けられない……!


「ふふw 早く付けてよw」


「ご、ごめん……」


 あくせくしながらも、なんとか麗香の綺麗な首へとネックレスを取り付ける。

 彼女は僕が焦っている間、楽しそうに笑っていた。

 は、恥ずかしかった……。


「どお? 可愛い?w」




挿絵(By みてみん)




 麗華は僕をからかうように微笑みながら聞いてくる。

 正直……。


「めちゃくちゃ似合ってて可愛いよ」


「マジで嬉しい、ありがと!」


「あ……あぁ……あ、小夜が呼んでるよ!」


 心の底から喜びを表す大輪の華のような麗香の満面の笑顔の可愛さに、恥ずかしさを堪えきれなくて。

 こちらへ手を振る様にラケットを振る小夜がいるバトミントンのコートへと、僕は走っていった。


――――――


 麗華はドギマギした顔の煌河が照れて走っていくのを眺めつつも、先の映画のセリフを思い出す。


『ルビーに隠された石言葉は【愛の疑惑】。でも正確には【愛の疑惑を消し去る】って言われてる。この石に誓って君の心を聞かせて欲しい』


「私……やっぱり、好きなんだ……」


 はにかむような優しい微笑みをしながら呟き、彼女は一歩、踏み出した。


――――――







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