31. 初デートの誘い
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「いてて……」
小夜を守ろうとした結果ヘッドスライディングし顔面を軽く擦りむいた僕は、応急処置のセットを朱鳥先輩が持ってくれていたのでそれを使用し凛華姉さんから軽く治療を受ける。
そして、小夜、ついでに僕も助けてくれた人物にお礼を良い皆へと紹介していた。
そう怒髪天を衝く様な気合の入った大声で妖魔をワンパンした人物。
彼はこの前、チンピラに絡まれた僕を助けてくれたワイルド兄さんだった。
「それよりまた助けられましたね、ありがとうございます」
「気にすんな、前回のはノーカンだ」
ノーカン……?
本来あの時は助ける必要がなかったから、という事だろうか?
まぁいいや、何にせよ助かったのは事実だ。
その事はあまり詮索しなくてもいいだろう。
僕が疑問に思っていると小夜がトボトボした表情をし謝ってくる。
「ごめんなさい……」
「無事でよかったよ、頑張ったね」
僕は落ち込んだ小夜の頭を撫でる。
僕も油断していたしな、反省しないと……最近緩い任務ばかりでどうにも気が抜けていた。
おかげで香蓮ちゃんに守られてしまった。
盾で防いだとはいえ怪我をしていないか心配だったが、どうやらピンピンしているらしい。
幼い頃から香蓮ちゃんはオーラを駆使した身体強化の練度が高いが、今はあの時の比ではないだろう。
小夜も初の実戦で怖かったろうによくやってくれた。
僕が気にしてない事にホっとしたのか少し元気のでてきた小夜は、助けてくれたワイルド兄さんに頭を下げお礼を言う。
良い子に育っていて僕は嬉しい。
「お兄さんもありがとう……」
「おう、いいって事よ、それにしても天狗なんて久々に見たぜ、カッカッカ!」
彼を初めて見た時に随分力のある妖怪だと思ったが、大分長く生きているみたいだ。
天狗どころか妖怪自体も時代が進むにつれて減少傾向にある。
その妖怪が天狗を久々に見たというのだから長寿に違いない。
流石に琥珀ほどじゃないと思うが……。
「それより……よくピンチが分かりましたね」
僕はワイルド兄さんへ思ってた疑問をぶつけ、話を聞き今夜は解散した。
聞いた話によると兄さんはここの瘴気に注意するよう、ある人に管理を任されていたらしい。
兄さんが言っていた僕に正体を伏せてる人間から任されたのだろう。
そして今回の瘴気に反応があった事を知って、まさかと思い僕が渡した人型の札を使ったんだと。
瘴気の方向へ飛んで行った札の方角から妖魔と交戦している事を察し、ここへ全力ダッシュで訪れたみたいだ。
その話を聞き終えた頃に、その札は僕の所へ到着した。
札を追い越してたのか、兄さん足速すぎるよ。
その身体能力のおかげで小夜が襲われそうになったところで間一髪駆け付けたという訳だ。
『なんでそんな事してんだ?ここらの瘴気はそう害はねぇぞ?』
僕らが瘴気を払って回っていると知ったら兄さんは疑問をぶつけてきた。
瘴気を放っておくと今回みたく妖魔が出現したり、民間人に被害が出る事。
島が瘴気に溢れて悪影響が出てしまう事を説明した。
すると兄さんは『良く分かんねぇが、良くねぇ事が起こるのは分かった!』とだけ言いこれから僕らに協力してくれることになった。
最後にボソっと『変な事したら姉御に顔向けできねぇからな』と呟いていた。
――――――
家庭的な暖かさを感じつつ、大人っぽい落ち着きも持ち合わせたカントリーなインテリアの女子寮の一室。
椿 麗華は楽しさと不安が織り交ざったようなドキドキを奏でる胸に手を当て、深呼吸し昂る気持ちを落ち着かせる。
今はGWの最中で世間は休日で賑わっているがその連休に入る前に、煌河と自然に2人きりになれるような理由を取り付けた彼女は、人生で初めて自分から男の子を2人きりで遊びへ誘おうとしていた。
昔から異性に少し距離を置かれてはいたが、接する時は持ち前のフレンドリーさを活かしてコミュニケーションを取っていた。
それは今でもそうだ。
しかし相手を1人の異性として意識し、2人きりでの遊びに誘うのは初めての事で彼女は胸の鼓動を高鳴らせ緊張してしまっていた。
「大丈夫だよね……この前のカラオケでもいつも通りだったし……!」
異性の事でこんなに悩むのは初めてだ、やはり自分は彼の事が好きなのだろうか……?
そう思いながらもこのままクヨクヨしても仕方ないと、彼女は自分の頬を叩く音を室内へと響かせ気合を入れる。
「よし!」
煌河の連絡先が移る画面で通話を押す。
いささか緊張しているが一度落ち着かせたのでさっきよりは大分マシだ。
『大丈夫!大丈夫!』と心の中で唱え自分に暗示を掛ける。
「麗香、どうしたの?」
「おいすー! 明後日さー、暇?」
大丈夫だよね? テンションおかしかったかな? 声、震えてないよね。
「うーん……家でゴロゴロする予定」
アタシからの誘いは嫌かな……?
「そ、そっか、良かったら映画行こうよ!1人で行くのも寂しいんだよね」
「陽菜達は?」
「皆用事あるんだって。だからあの時言ってたさ、日頃のお礼ってのして貰おうかなって思って……」
「あ、あぁ! あれか! そういう事ね、喜んで同伴致しますとも」
「じゃあ約束ね!」
やった! なんとか約束できた。
けど女の子の声が電話越しに聞こえる……。
誰かと一緒にいるのかな?
「あぁ、ごめん、妹がいるんだけど、その子も一緒でいいかな?」
あ……2人で行けないんだ……。
「え? あぁ! 全然いいよw」
「悪いね」
電話中に色々な思いが渦巻きつつも麗香は煌河と時間や集合場所を決め、電話を切った。
気になる異性を初めて遊びに誘い、自分の中で一仕事終えた気になりリラックスして息を吐く。
「ふーっ……」
なんとか誘えはしたが自分の喋り方は変じゃなかったか、いつも通りだっただろうか。
きっと大丈夫なはずだ。ドキドキを隠し冷静に話せていた。
それに妹も一緒にって聞いたときは少し残念だったけど、これはチャンスかもしれない。
最近は陽菜も煌河に助けられてからというものの普段より距離が近いし、涼音は良く分からないが相変わらずよく煌河を見つめている。
それに文武両道で眉目秀麗な大和撫子が板に付いたような生徒会長までいる。
ライバルも多い状態だが煌河の家族に自分を認めてもらえれば、他の子より一歩リードできるかもしれいない。
先の電話を思い返しつつも麗香は様々な想いを巡らせていた。
「好きかもまだ分からないのに……アタシ何考えてんだろw」
でも、今は何よりまた煌河に会える事が嬉しい。
そう思わせる様な朗らかな笑顔でご機嫌な蝶のように微笑みつつも、彼女は布団の上で枕を抱きしめていた。
「楽しみだな……」
――――――
「あぁ、オッケー、じゃぁまた、カフェで」
静けさの心地いい、涼しさを感じる休日の夜。
麗華から連絡がきて映画へ行く約束をした僕は電話を切る。
僕はネットを使い麗香が言っていた映画の情報を見つつも膝の上に乗る小夜の相手をする。
麗香はなんだかいつもより少し元気がなかったような気がするが気のせいかな? 人間誰でもそんな時はある。
そしてその麗華に小夜を妹と言ったが、普段の生活で民間人に僕らの関係や存在を知られる訳には行かないので対外的に小夜は妹という事になっている。
まぁ、本当に妹みたいに思ってはいるからあまり変わらないんだけど。
「映画……楽しみ!」
「そうだね」
麗華との電話中、小夜は僕が出掛ける事を察したみたいで、自分も行きたいと言ってきた。
小夜は好奇心旺盛で人間社会の生活が楽しいみたいだ。
もちろん映画にも興味を示していて、今度のおでかけは小夜にとって人生というか妖怪生というか、とにかく生まれてからの初映画になる。
大きいスクリーンで見る映画は小夜にとって衝撃だろう、反応が楽しみだ。
昨日の妖魔退治の一件で少し元気がなかったが、これで少しは元気になってくれるといいけど。
「何見てるの……?」
「今度行く映画の情報だよ」
なになに……へー。
麗華が言ってた映画はボーイミーツガールものの映画みたいだ。
コメディ要素も強く小夜も楽しめるかもな。
「これなぁに……?」
小夜が映画の登場人物の女の子が身に着けている、トップが赤いネックレスに興味を示す。
綺麗で印象的だな、情熱的な鮮やかな赤が女優さんをより引き立てている……麗香に似合いそうだ。
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