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29. 聞いて極楽見て地獄

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください








 現代社会の喧騒がギリギリ届かないくらいの静謐な雰囲気の森の中、風のざわめきが草木をかき鳴らす音に変わりゆく自然の伴奏を嗜みながらも、一人の青年のような漢が朦朧とする意識を保ちつつ森の中を歩く。

 その青年は人の心に活力を宿すような活気の良い力のある微笑みをする人に拾われ、その人に恩を帰そうと真っ直ぐに生きてきたつもりだったが

自分でも分けが分らぬうちに罪を犯し、とある男に生かされ、何も達成できないままここまできてしまった。

 来る日も来る日も恩人を探し、ある男に聞かされた使命の日も覚悟していたが、結局自分は何もなしえなかった。

 そんな思いが走馬灯のように頭の中を反芻しながらも、漢は自分の最後を受け入れる覚悟をする。


「俺みたいな男の最後が、こんな穏やかでいいのかねぇ」


 覇気の消え失せかけているようなしゃがれた声で呟きながら、男は自然の奏でる声に耳を傾け安らかに目を閉じる。

 もう充分生きただろう、結局恩を返す事も、使命とやらも、何も全うできなかったがそれなりに楽しかった。

 自分の罪を償えなかった事が心残りだが、ここらが限界だ。


「死ぬには良い日だ……」


 最後に呟き、漢は呼吸を浅くしていく。


「あんた、死んでまうの?」


「……」


「死ぬ前に頼みごと聞いてくれへん?」


「……」


(姉御、もうすぐ俺もそっちへ行く、俺が手にかけて死んじまった人間も妖怪も、また謝らせてくれ、悪かったな……)


 漢は胸中で最後の思いをゆっくり綴っていく中で、幻聴のような物が自分に語り掛けてくる。

 それは暗い雰囲気ではあるがどこか優しさも含んでいるような、穏やかなる闇に抱かれる心地よさを感じた。


「酒呑童子の居場所、知ってんで?」


「!?」


 安らかな永久の眠りにつく寸前、漢は謎の声が探し求めていた自分の恩人の名前を出したことに覇気を取り戻す。

 どういう事だ?姉御が生きている?何百年も見つからなかったのに? 漢の頭の中は全てを放棄する寸前であったためか軽くパニック

を起こす。

 しかしすぐに平静を取り戻し、幻聴へと返答の言葉を発する。


「今のどういう事だ? なんで俺が姉御を探してるのを知ってる?」


「知りたいなら頼み事ぉ聞いてくれへん?」


 漢は謎の声に了承し、ゆっくりと身体を立ち上がらせる。

 指示に従いつつ歩を進め、とある巨大な祠へと続く石畳の上を一歩一歩踏みしめる。

 頑丈なしめ縄と呪符で封じられている祠の扉の前に立ち、祠の中にある謎の声の主を感じ取る。

 これは漢の勘だが、封印の施されているそれには悪い気は感じなかった。

 ただ黒いだけ、漆黒の感情とオーラが渦巻いている、しかし彼にはそれが悪い物には感じられなかった。

 決して外に放出せず自分の内側に内在させているのだ。

 自分の肌で妖力や気を感じられる漢は、その感覚を信じるほかなかった。

 恩人である相手にまた、会いたいという思いはそれ程に強かった。

 死にかけの漢は恩人への想いを力に変え自慢の剛腕で封印を強引に引きちぎると、中から少女のような美女のような年齢不詳の女人の姿をした謎の声の主が姿を現す。


「おおきに、あんたの願い叶えたる」


 死にかけの男は美女に力を与えられ、息を吹き返す。――――――



――――――




 穏やかなる波が広がる海原の上空をかけ、弥彦を背に乗せた琥珀は本州へと到達する。

 裏で糸を引いて島を荒らしまわっている無法者を追いここまできたが、大分近づいてきたものの夜ももう遅い。

 明日でも追跡は可能と判断し、夜に力を発揮する妖怪は多いため今夜は休息を取り、弥彦と琥珀は食事をとるために見つけたファミレスに入る。


「たまには洋食もいいな! 弥彦よ」


「そ、そうですね……」


 弥彦は国が秘密裏に設立している怪異対策課での重鎮で相当な稼ぎがあるが、如月家は自分を律し健全な心を養うためお小遣い制である。

 普段は和食を好む琥珀だがたまの洋食も悪くないと機嫌を良くし、弥彦のお財布事情など考えもせず好きな物を好きなだけ注文し食していた。


「大丈夫じゃ、けーひで落とせ」


 格安ペペロンチーノを食し暗い面持ちの弥彦に対し、経費の事など微塵も分かっていない琥珀が言うが、今回のはプライベートで任務に当たっているので経費は落ちない。

 弥彦は琥珀に乾いた笑いで返すしかなかった。

 2人は食事をしながら今後についての動向を確認し、今夜はどうするか相談したところ、最寄りのネットカフェに行きたいと琥珀が言い出す。

 漫画やネットに浸って任務に支障が出る事を容易に想像した弥彦は、なんとか琥珀を諌めたところ実家から電話がかかってきた。


「もしもし、私だ」


「祠の封印が破られています!」


 弥彦は今追っている相手が、自分の子供や弟子に仇を成した相手であることをほぼ確信し気を引き締めるのであった。――――――



――――――




短いのでおまけ:デザートは別腹



「小夜、おかえり」


「琥珀、島の外に行っちゃった……」


「あぁ、電話来たよ、今日のデザートに高級アイス買ってきたのに」


「私が2つ食べてあげる……!」


「ダメだよ、食べ過ぎは身体に悪いからね」


「むぅ……分かった」


~夕食後~


「アイス美味しかった……!」


「そうだね、フルーツの風味がとても良かった」


「私、お散歩行く……」


「行ってらっしゃい、ちゃんとお守り持っていきなよ」


「うん……」


~15分後~


「ただいまなのじゃ」


「あれ? 琥珀、帰ってきたんだ」


「帰ってきたのじゃ、アイスを食べるのじゃ」


「(琥珀が小夜のお守りをもっているぞ……)……てい」(軽くチョップ)


ボン(変化が溶ける音)


「……アイス……食べるのじゃ……」(泣きそうな顔)


「そんなに食べたかったの?」


「うん……」


「まぁ、今日くらいいっか」


「やった……!」


挿絵(By みてみん)



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