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27. もちろん抵抗するで

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください








 僅かばかりの蝋燭の明かりが灯り暗闇の蔓延る洞穴の中。

 雄大に振舞うサイやゾウの様な雄々しい風貌で、気風の良くはつらつな雰囲気の青年のような男が、声を響かせ電話越しの相手に向かい喉を鳴らしていた。


「言われた通り準備は進んでるぜ、本当にこの島に姉御がいるんだよな?」


「今はまだ眠ってる状態やけどなぁ、それ起こすために準備が必要やねん」


「分かってらぁ、ややこしいこたぁアンタに任せる、俺ぁ指示に従うだけだ」


「楽しい宴会にしようやないの」


「あぁ、楽しみだぜ」


 青年は電話を切り、目を閉じながら過去に義兄弟の杯を交わした宴会好きの相手を思い浮かべる。

 過去に彼女に拾われ、自分を見失わずに生きていけた借りがある。

 それから過ちを犯しはしたが、これからは独りではなく彼女と共に清算していこう。

 彼女と最後に会った日に刻まれた心の苦痛を蘇らせつつ、彼は新たな決意を心に宿す。


「もうすぐだぜ、姉御……」


 巨大な岩の上に座した彼は天を眺め夜風を浴びながら、希望の美酒を三日月と交わすのであった。




――――――




 GWが始まったある日の昼下がり。

 僕は太陽の照らす青天の下を歩きながら約束の集合場所へと向かっていた。

 今日は麗香達とカラオケに行く予定だ。

 この前あったキャンプ場の一件は、無事解決。

 ちょっとした話題になったUMAの目撃情報は形式上は単なるウワサという形で片が付いた。

 まぁネッシーみたいなもんで一度そういう噂が流れると根強いファンがつくようだ、それがキャンプ場の良い宣伝になっているらしい。

 しばらくは客足が多くなるだろうとオーナーが笑いながら話していた。

 そんな事を思い返しながら、割と強くなってきた春の日差しと共に物陰から何者かの視線を受けつつ歩を進めていると集合場所が見えてくる。


「ほんとにごめんなさい!」


「ごめんで済むわけねぇだるぉぉ!?」


 集合地点へと歩いていると、何か揉めているなと声のする方へ顔を向ける。

 そしたら、なんと陽菜が2人のチンピラに絡まれていた。

 なんだあのいかにもな筋もんは。

 過去と比べ現代では道徳観の教育が重視されて、ああいうやからは過去に比べ減ったうえ犯罪件数もかなり減少している。

 この島も今は一般開放はされてなく入場できる人間は厳選されているはずだが、最近瘴気が多くなっている影響を受けているのかもしれないな。

 類を友を呼ぶと言うが、悪い気が集まるところには悪い事が起こったり悪い人間も集まる。

 そんな事を思いながらもあぁいうコッテコッテなチンピラってほんとに存在するんだなと幾ばくかの興味を覚え、陽菜の元へと駆け寄る。


「すみません、僕の友人が何かご迷惑を?」


「この女がいきなりぶつかってきてなぁ、慰謝料とクリーニング代を貰わねえとなぁ!」


「そ、そっちもぶつかってきたじゃん、ひな避けようとしたのに!」


 ん~なるほど~、昔ながらの漫画でよくあるような展開に対して僕は笑いがこみ上げそうになるが相手を刺激して陽菜に危害が及ばないように堪える。

 こういう時は誠心誠意謝ってやり過ごすのが一番だろう。


「失礼を働いていしまい弁解の余地もありません、あなた方の大きな器に免じて何卒ご勘弁願えませんでしょうか? よろしくお願いいたします」


「なんだぁその言葉遣い、なめてんのかぁ?」


 こいつめんどくさいな。


「このジャケットについたシワぁ! どうしてくれんだぁ!?」


「そうだそうだ!兄貴のパチモンのブランド品だぞ!」


「うるせぇ!」


 子分が頭を叩かれ、兄貴が僕らに凄んでくる。

 そして兄貴は陽菜に視線を移し強行手段に出る。


「こんなんじゃ埒が開かねえ、ちょっとこっちにこい!」


 兄貴が陽菜の手を掴もうとし僕は間に割って入る。


「彼女に手を出すのだけはどうか許してもらえませんか、お金ならいくらでも出しますのであそこで話しましょう」


「こーが、ダメ!」


「女の前でカッコつけやがってよぉ、それじゃぁたんまり稼がせてもらうとするかなぁ!」


 僕は陽菜に『大丈夫、待ってて』と声をかけ肩を軽く叩き、路地裏の方に立っている建設中の工事現場のような建物を指定しチンピラ達を誘導する。

 全くしょうもないやつらだ、少々お灸を据えてやる必要があるな。

 僕は震える足を動かしながら兄貴達と共に無人の建築物の敷地へと入る。

 僕は妖怪や達人と戦ったり組手をするがこういうチンピラを相手にするのは初めてなので、武者震いしてしまう。

 ビビビってなんかねぇよ!それと便座カバー。


「さぁて、ぶっ飛ばした後に有り金全部頂くとするかぁ!」


「兄貴に楯突いてただで帰れると思うなよクソガキぃ!」


 スーパーチンピラブラザーズが拳の骨をパキパキと鳴らしながら僕を威圧してくる。

 ほーん、なら僕はこうだ。

 僕は自分の拳と拳を弾き合わせ、バチンバチンと奴らの数倍以上の威嚇音を響かせる。


「もちろん抵抗するで? 拳で」


「う……」


 チンピラたちが一瞬だけ僕に怯むが、すぐに逆上して威勢よく僕を怒鳴りつける。

 こんな見るからにしょっぱいチンピラ共に普段修行している僕が負ける様な事があれば僕はこの世界を呪うだろう。

 まぁいざとなれば術を使って肉体活性でもするか。

 僕は軽く考えながらも向かってくるチンピラを迎撃しようと構える。


「おっとぉ、ここまでだぁ!」


 すると、背が高く体格の良いワイルドな雰囲気の兄さんが一瞬で間に入りチンピラを軽くいなし床に叩き伏せる。

 この人か……。

 チンピラと戦う機会なんて無いので少し残念だがまぁいいか。

 僕はその人に感謝の言葉を掛ける。


「助かりました」


「ハっ、良く言うぜ」


 ワイルド兄さんは気絶したチンピラから目を離し口元を笑わせながら、僕の方へ顔を向ける。

 僕が集合場所に向かう途中に視線を感じていたが、正体はおそらくこの人だ。

 元々この建物を指定したのは視線の主をおびき寄せる為である、そこにたまたま陽菜がチンピラに絡まれていたのを見つけたのだ。

 今みたく単純に助けれくれれば大方問題無し、そうじゃない場合何か別の思惑があるだろうし慎重に行動しようと思ってたが大丈夫そうだ。




挿絵(By みてみん)




「その様子だとバレてたみてぇだな、すまねぇなあんちゃん」


 大らかな性格のようなワイルド兄さんは僕に謝り、知人からの頼みで僕を張っていたと説明してくれた。

 知人て誰の事だろうか、僕が尋ねると兄さんは『あの人はアンタと知り合いだと言っていたが今は伏せさせといてくれ』とのことだ。

 大した用はないらしい。

 それにしても自分の力を上手く隠しているがこの人はおそらく妖怪だ、それもかなり力の強い……。

 ただ悪い妖怪ではなさそうだ、纏っている気が濁っていない。


「カッカッカ! それにしても、スマートにおなごを守るじゃねえか!」


 兄さんは喉を鳴らし笑い声を上げながら肩を組んでくる。

 ちょ、力つよ!


「せーめーのヤローみたく食えねぇやつだと思ったが、あんちゃん気に入ったぜ!」


 僕を見て誰かと重ねているみたいだが、やはり人違いではないだろうか。


「あの、やっぱ人違いじゃ」


「俺ぁあの人に言われただけだからなぁ、良く分かんねぇ! ッカッカッカ!」


 あの人とやらが僕を知っているみたいだが、こんな妖怪を使わせる人間は……。

 心当たりがないわけではないが、その人達が僕に正体を隠す必要はないはずだけど。

 まぁ何か都合があるのだろうな、僕は楽観的に考えながらもワイルド兄さんにお礼を言い場を離れる事にした。


「ほんじゃ、後の事は俺に任せな」


「じゃあ約束があるんで僕はもう行きますね。 礼と言っては何ですが何か困り事や用事があるときはこれで連絡を。 できればもう後を付けないでください」


 僕は一般人には見えない人型の札を彼に渡す。

 これは指示を出すだけで僕の元に飛んでくる札だ、連絡にも使えるし、直接追えば僕がいる場所に着く。

 この術は古い時代に良く使用されていたらしい。

 悪い奴に渡したら場所がバレるので危ないがまぁだいじょーぶだいじょーぶ。

 この島で生活するにあたっておじさんみたいな偉い人から様子を見るように言われたんだろう。


「おう、安心しな!もう付けねぇからよ」


 彼の懐かしいものを見る様な声を背に僕は、心配しているであろう陽菜の待つ元へと戻った。――――――



――――――




 チンピラの様な男2人が横たわる無人の空き地で携帯の振動が響き、大らかな性格の厳つい青年が携帯を手に取り応答する。


「あぁ、俺だ、あいつで良かったんだろ?」


「男前に成長しとったけど心根は変わらんなぁ、早う会いたいわぁ」


「意外だな、アンタああいうのが好みなのか」


「まぁねぇ、ウチもあぁやって守られてみたいわ」


「どの口が言いやがる、アンタ程強けりゃそんな必要ないだろ」


 青年が軽口を放った途端、電話の奥から身の毛もよだつような悪寒を本能的に感じ取り謝罪をする。

 思っていた以上の得体の知れない強大な力を感じたため冷や汗が彼の頬を伝う。


「おぉっと、これは失言だったか、すまねぇな」


「ええよぉ、うちも大人げなかったな」


 過去に人々から虐げられた歴史を持つ彼女は、自分の憎しみを胸に抑え青年と謝罪を交わす。

 そして青年の首から下げた小粒の水晶玉を通して、彼の足元に倒れるチンピラを眺めつつ言葉を放つ。


「うちのお気に入りに手ぇ上げようとした報い、しっかり受けさしてな」


「許してやれって、アンタの暗示で起こった事だろうよ」


「さぁ? そうやったっけ?」


「人がわりぃぜ、ったく……」


 水晶玉から暗示を掛けた張本人へ、やれやれという振舞をしつつ青年は無法者をふん縛る。

 元々このチンピラ達は島へ入ってはいけない類の人間であり、彼女の瘴気の影響で人間がミスをしヒューマンエラーによって島に入れた人間だ。

 このまま放ってはおけず島への入場権を取り消す必要がある。


「今日の事は全て忘れてな」


 謎の女性は青年が身に着けている水晶玉を通し意識が朦朧としているチンピラ達へ暗示を掛け、青年は島の役所へと彼等を担いでいった。――――――



ご愛読ありがとうございます!

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気持ち良いので


(かなりの美形になっていますがワイルド兄さんは設定ではもっとワイルドな顔付です)


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