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25. ラムネの記憶

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください








 凛華姉さんと香蓮ちゃんが僕のご飯を作ってくれる権利を奪い合おうと騒がしくなってから数分後。

 2人は落ち着きを取り戻し、朱鳥先輩のお叱りを受けていた。

 口論が続く中で少し落ち着いてきたところを狙い朱鳥先輩が『いい加減にしないとこれから2人はおやつ抜きにするわよ』と言い放ち場を収めたのだ。


「任務がどれだけ長くなるか分からないんだから、こういうのはもうこれっきりにして頂戴」


「だって香蓮が」「だって凛華が」


 口答えする2人に対し朱鳥先輩は軽い微笑みの奥に隠された怒りを視線に込める。


「……いいわね?」


「「は、はい」」


 なんだか彼女達の関係が分かってきたな。

 凛華姉さんと香蓮ちゃんは仲良しだけど良く張り合う事も多い、これは昔から変わってないみたいだ。

 そして朱鳥先輩はそんな2人の暴走を諌めたり物事を観察して立ち回るタイプだろう。

 朱鳥先輩は苦労人なタイプかもしれない。


 森の中心辺りの開けた場所に着いた僕らはそこから手分けして件の未確認生物、まぁ恐らく妖怪なんだけど。

 その妖怪を探す事になり、2人と3人に班分けする事になった。


「妖怪を探知する術は使えないのかい?」


 香蓮ちゃんが僕に問いかけるが今回は瘴気と違っておそらく意識のある生物が対象だ。

 瘴気を探知するのと同じ要領で妖怪や人間等の探知はできる。

 しかし警戒心が強かったり、感覚の鋭い生き物や妖怪が相手の場合は探知した呪力を察知され見つけづらい場所に身を隠したり、或いは逃げ惑う可能性が高い。

 だから探知を使わずに探した方が良いのではないか。

 最終的な決定権は小隊の頭領である凛華姉さんにあるだろうから、僕はその事を伝えしばし姉さんの返答を待つ。


「そうだな……報告からすると素早い妖怪だろうから逃げられると厄介だ、探知は使わない方向で行こう」


「それじゃ班分けしましょう、いつものようにグーパージャンケンでいいかしら」


 普段はグーパーのジャンケンで決めていて、いつもと同じように朱鳥先輩が切り出す。


「ちょっと待って、それだと凛華が有利過ぎるよ」


 香蓮ちゃんだ。そもそもチーム分けで有利てなんだ。


「何を言いだすんだ、ジャンケンなんだから公平だろう」


「この前気付いたんだけど、凛華だけ煌河くんと一緒の班になる確率が高いんだ」


「そ、それが何だと言うんだ? 偶然にすぎまい」


「いいや、この前皆でパーティーゲームをしている時に気付いたけど、凛華はやっぱりこのメンバーで動体視力が頭抜けているよ。 煌河くんが手を出す直前に見極めて同じものを出してるんだ」


 実はこの前の休みで皆でオリマーパーティーというテレビゲーム大会をした、その時か。

 動体視力がものをいうミニゲームは悉く姉さんが勝ってたんだよな。


「くっ……バレたか……」


 流石香蓮ちゃんだ、そんな些細な事で気付くとは。

 それより凛華姉さんはそんな事をしていたのか、ズルは良くないよズルは。

 そして香蓮ちゃんが代案を出す。


「グーパーの代わりに1と2をせーので言うのはどうだろう、これなら唇の動きも変わらないし凛華に有利な事もない」


「なるほど、じゃあそうしよっか」


 僕は香蓮ちゃんに同意し、皆も同意する。


「よしじゃあ、行くぞ、せーの!」


「「「2」」」「「1」」 


 無事決まったか。


「「……2」」


「え?」


「やっぱり2にする!」「私もほんとは2と言おうと思っていたんだ!」


「往生際が悪いわね……」


 先程みたく朱鳥先輩が2人を諌め班分けは無事終えることとなった。

 メンバーは1が凛華姉さんと香蓮ちゃん、2は朱鳥先輩と涼音と僕だ。

 僕らは二手に分かれ森の奥へと進む。――――



 ――――――




 ……。

 静かだ……。

 歩を進めつつも異変がないか森の中で周囲を眺め、散策しながら僕は思った。

 凛華姉さんと香蓮ちゃんがいないと静かなんだよな。

 さっき生徒会室にいた時もそうだけど、2人の沈黙に耐え切れず部屋を掃除しゴミ出しに行ったのだ。

 涼音は本を読み朱鳥先輩はPCで何らかの作業をしていたが、やることがあったから静かになっているものだと思ったのだ。

 まぁ涼音はいつも通りだけど、朱鳥先輩は楽しそうにお喋りしてる所もよく見るから本来は周りに合わせるタイプで基本的に静かなのかもしれない。


 そういえば2人は部活に入っているのだろうか。

 ふとした疑問が思い浮かび僕はまず、話しやすい涼音に問いかける。


「涼音は何か部活に入ってるの?」


「入ってない……」


 そ、そうですか。


「朱鳥先輩は入ってるんですか?」


「手芸部と映画鑑賞同好会に入ってるわよ」


「へー、手先も器用そうですもんね」


 僕は朱鳥先輩のスカートを見て思った。

 裾の方にフリルが付いているのはこれも自分で施したんだろうか?

 僕らの通う学園は基本的な制服のパターンが用意され、その中から選んで着用できる。

 造形がそこまで崩れなければ、自分で改造しても良いし自由に着こなして良い緩い校風だ。

 エレガントな雰囲気の朱鳥先輩によく似合っている。

 そんな朱鳥先輩のスカートに視線を落としていると、先輩がそれに気づいた。


「ふふ、案外エッチね♥」



挿絵(By みてみん)




「へ!? いや、違うんです!」


 朱鳥先輩が悪戯っ子っぽく微笑みながら僕をからかう。

 何が違うのか、事実だけを見れば僕は朱鳥先輩の綺麗なおみ足を凝視していた変態にすぎないだろう。

 正直、すいません。


「冗談よ、スカートよね、これも自分でやったの」


「すごい、プロじゃないですか!」


「大したことないわよ」


 僕が褒めると朱鳥先輩はまんざらでもなさそうに謙遜する。

 慎ましく笑っている姿がなんだか可愛らしい。

 映画の方は同好会か、何をするんだろう。


「映画の同好会は何をするんですか?」


「映画鑑賞同好会は名前の通り映画を見て楽しむだけよ、皆で見た映画の感想を共有したり話し合うの」


「いいですね、1人で見た後誰かに話したくなる時もあるから」


「そうね、スズちゃんも良く遊びに来るのよ」


「朱鳥先輩がいる時だけね……」


 どうやら映画鑑賞同好会には涼音もよく遊びに行くみたいだ。

 涼音は小説やら映画やらのエンタメが好きだからな。

 もちろんアニメなんかも。

 それに学園は併設されてる講堂をムービーシアターとしても利用できるみたいだ。

 皆で映画を見るのも面白そうだな……。


「へー、涼音は入らないんだ」


「私、何かに縛られたりするのってあまり好きじゃないから」


 なるほど、確かに言われてみればそういうタイプに見えるな。

 でも生徒会はどうなんだろ。


「生徒会はいいの?」


「香蓮がいたからね」


 そっか、色々あって忘れがちだけど僕の家が代々凛華姉さんの家に仕えてきたように涼音と香蓮ちゃんは凛華姉さんと僕みたいな関係なんだよな。

 そういう家の事情で縛られたりするのはどうなんだろうか?

 考えるとキリがないな、涼音は普段は上手く隠そうとしてるが小さい頃から香蓮ちゃんが大好きだから香蓮ちゃんの側に仕えるのはおそらく涼音にとって心地良いのだろう。

 そんな事を思っていると涼音が僕へと疑問を投げかける。


「それとさ……その、なんで涼音なの?」


「?」


「ま、まぁいいけど、別に……」


 いきなり何を言ってるんだこの子は。

 宇宙から奇々怪々な電波を受信してしまい自分の事が誰だか分からなくなってしまったのか?

 どこか様子のおかしな涼音を心配した目で見つめていると、朱鳥先輩からフォローが入る。


「スズちゃんの呼び方の事じゃないかしら?」


 なるほど、涼音は涼音と呼ばれたくないのか?


「ごめん、涼音って呼ばない方が良かったかな」


「そ、そうじゃないけど!小さい頃にはスズって呼んでたのに……」


 あ!スズって呼んだ方が良いのか。


「あ!」


「……」


「スズメがいる!」


 バチン!!!


「いってぇーーー!!!!」


 いつもより勢いよく涼音に肩を叩かれた。

 ちょうど開けた場所に出てスズメが目に入ったから口走っただけなのに。

 スズメは僕の声に驚き逃げていった。

 これ手形残ってないかな、帰ったら確かめよう。

 朱鳥先輩はやれやれという感じで額に手を当てている。


「煌河くん、今のはひどいわよ……」


「は、はい……」


 僕は涼音と駄菓子屋でラムネを一緒に良く飲んでいたことを思い出しながら涼音に謝る。


「ご、ごめん、スズ。今度ラムネ奢るからさ、スイーツ付きで」


「……ん、許す」



挿絵(By みてみん)



 いつものクールで冷たい雰囲気の表情とは違い、どこか朗らかな印象を受ける微笑みで僕はスズの許しを得た。

 雪化粧 スパークリングに 弾け散る キンタマ心の俳句。――――――







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