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14. 愛妻弁当?は泣くほど美味しい

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください


【編集、追記】

2024.01.01 19:00ごろ お弁当のイラストを追加しました





 渚は職員室で今朝の出来事が頭の中を反芻し、苦悩に苛まれていた。

 今朝の自分は禁止されていた実家の秘伝で鳥に変化し、大空を舞う中私怨で関係のない男の子の顔面にうんこを落としてしまった。

 その時のその男の子が、まさか自分のクラスの転校生だなんてことは知る由もなかった渚は罪悪感でいっぱいになり授業も普段通りにできなかった。


「渚、大丈夫?」


「あぁ大丈夫だ」


 下へ俯く具合の悪そうな渚を見かねて友人の八乙女 美香が言葉を掛ける。

 美香は渚の友人で共にこの学園の教師だ。


「まだ具合悪いのなら無理しちゃダメよ」


「なに、問題ないさ、体調は万全だ」


「そうは見えないけど……」


 渚はプライベートはともかく仕事中はキッチリした人間として通っている。

 通勤中に生徒の顔面に糞をぶちまけた等と言えるはずもなく、絶対にバレてはならないと渚は心に誓う。


「さて、転校生に挨拶にでも行くかな、今朝は顔もろくに合わせられなかったのでな」


 職員室を出た渚を見た美香に、何か隠しているなと女の直感が学園のチャイムと同時に告げるのであった。



 そして午前中の授業を終えた生徒達は昼休みに入り、学園のチャイムが響き渡る中で昼食を取るため動き出す。

 そして煌河達はカラオケBOXからクラスへ戻り教室へ入ってしばらくすると、担任の白鳥 渚から煌河は呼び出された。


「夜兎、ちょっといいかな」


「あ、はい」


 煌河が教室のドアの入り口付近で立つ渚の元へ向かう。

 渚は自分の前に立つ煌河を見て思った。


(うわ~、やっぱりこの子だよ……)


 そして渚は申し訳なさそうな雰囲気で煌河へと切り出す。


「学園にはもう慣れたか?」


「まだあまり慣れてはいませんが、皆良くしてくれて感謝してます」


「そうか、辛い事などあれば遠慮なく言うんだぞ?」


「ありがとうございます」


「もし何か困り事があれば私に相談するんだぞ?」


「? は、はい、分かりました」


「絶対に絶対だぞ」


「あの、何かあったんですか?」


「な、無い事は無いが、そうだな、あったかもしれない!」


 合コンの鬱憤を生徒の顔面に糞を巻き散らす事で発散させてしまったが、渚は本来は真面目な性格が故に嘘を付くことが憚られ、必死に誤魔化す。


「そ、そうだ!今朝は初顔合わせだというのに挨拶出来てなかったからな、この通り! す、すまなかった!」


 何という事か渚は突然、生徒たちがいる中で深々と頭を下げ始めた。

 煌河は何故謝られているのか分からず、一瞬思考が停止するがすぐに我に返る。


「や、やめてくださいよ! 皆見てますよ!」


 煌河は焦りながら、渚に頭を上げるよう促す。

 渚の罪悪感は晴れないが、とりあえず謝れたことでほんのちょっぴりだが心のモヤが取れる。

 渚の行動に教室がざわめく中、我ながら不自然すぎたなと思い渚は頭を上げ言葉を続ける。


「それだけだ、困り事があれば先生に必ず言うんだぞ、力になるからな」


「は、はい、ありがとうございます、先生もご無理しないでくださいね」


 煌河はどこか人として様子のおかしい病み上がりの教師への気遣いのつもりで放った一言だったが、それは罪悪感の積もる目の前の教師の心を瓦解させてしまったようだ。

 渚は素朴な年下の少年が自分の事を心配していることに涙が溢れ、心中、誠心誠意謝る。

 本当にすまない心の広い少年、自分はその顔面に糞をぶちまけてしまったというのに。

 

「それではな!」


 渚は一言そういうとざわめく教室から出ていく。 


「あぁ、今日は花粉がすごいなぁ!」


 花粉症になど微塵もなったことのない渚は声を張り涙を流しながら職員室へと帰って行った。


「何だったんだ……いったい……」



――――――




「何だったんだ……いったい……」


 未成年とチョメチョメしてしまった芸能人の謝罪会見の如く真剣に渚先生から謝られた僕は

ヒソヒソと話し声が飛び交う教室の中、自分の席へと戻っていく。


「こーが、先生に何かされたの?w」


「特にそんな覚えはないんだけどな……」


 麗香が面白がって訪ねてくるが僕はありのままを答えた。

 先生に何かされるならジャンルはもちろん応援系ですかね。

 と、それより学食に行くのに僕が呼ばれたせいで待たせてしまったか。


「それより待たせちゃってごめんよ、学食の案内よろしく」


「それで、その事なんだけどさぁ……」


 麗香が何かいいかけ僕は言葉の続きを待ってる間、自分の席の椅子に座らず立っていたが、千冬が椅子を引き陽菜が僕を座らせてくる。


「はいはい! こーがはいつものように座ってもろてー」


「うぇぇ??」


 僕が何かあるのかなと疑問符を浮かべ問いかけると麗香が鞄から包みを2つ取り出し、片方を僕に差し出した。


「ほら、これ! アンタの弁当!」


「え? ぼ、僕に??」


 僕はまさかのサプライズに固まってしまう、それを陽菜と千冬がニヨニヨ眺めている、涼音はいつも通りだ。


「そ! この前るーちゃん助けてくれたお礼っちゃなんだけど、もしかして……い、嫌だった……?」


 僕が固まっていることを嫌がっていると思ったのか、麗香が不安そうに僕に問いかける。

 ご、ごめん、不安がらせるつもりじゃなかったんだけど。


「い、いや!めっちゃ嬉しいよ!ありがと!」


「へへw人に弁当作んの初めてだったからさ、ガラにもなく不安になっちゃったw」



挿絵(By みてみん)



 麗香は僕の反応に安心したのかホっとしたような笑顔を見せてくれた。

 か、かわいい……ドキっっとした僕は、自分の振舞を取り繕い誤魔化す。


「そ、それより学食はこれのカモフラージュって事か」 


「そそ! こーがの事驚かせたくってさ」


 どうやら僕の為のサプライズだったみたいだ。

 ありがとう……。


「それじゃあ早く食べよー! ひなおなかすいちった!」


「ほら、こーがも早くそれ開けてよw」


「う、うん」


 各々弁当を開く中、麗香に促された僕は頂いた弁当を開ける。


「おお!」


 僕が弁当を開くとそこには、色彩豊かな見栄えの良い米やおかずが美味しそうに詰まっていた。

 主食・主菜・副菜とバランス良く料理が入っていて栄養面も良さそうだ。

 メニューは生姜焼きに野菜のソテー、米に梅干しだ。



挿絵(By みてみん)



「めっちゃ美味しそう! いただきます!」


 一流シェフが作ったかのような弁当を手に付け、僕は生姜焼きと米を口へと運ぶ。

水は800円じゃないよな?


「ど、どうかな?」


「……」


 僕は麗香の弁当を口へと運んだ瞬間、最高の旨味を感じると共に様々な想いが溢れ出した。

 いきなり島へ連れられて不安だった事、女生徒達の中で男が僕1人でやっていけるのか不安だった事。

 そんな不安が稀有なほど島の方々が優しくて、麗香はこうやって弁当まで作ってくれる。

 人の優しさを心から感じた僕は思わず涙を流した。


「……う……うまい……ぅぅ」


「ちょ、ちょっと!アンタ大丈夫!?」


 いきなり泣き出した僕に周りが驚き、先ほどカラオケで涼音にかけられたような言葉を麗香が僕に掛ける。

 めちゃくちゃ美味い……ホントに……。


「うぅくぅ……美味い!……ぐぅぅ……」


「こーが泣きながらべんとー食べてるwwきゃはははww」


「さっきも言ったでしょ、こんな風に突然泣くんだって」


「ごめんてw冗談かと思ってさwwはははwww」


「こーがは泣き虫さんだなー」


 僕は泣きながらとてつもなく美味い弁当を口へと運び続ける。

 そんな姿を見て澄まし顔の涼音以外の3人は笑いながら弁当を食べ、僕らはにぎやかな昼食を過ごした。



――――



 麗香たちが昼食を食べ終えた昼休み、煌河は麗香の机に横向きで突っ伏して眠っていた。


「やっぱ、寝顔かわいいかも……♥」


 麗香は初めて煌河と会った時を思い出す、あの時は熱も出ていてどこか苦しそうな表情の寝顔だったが

今は安心した顔付で眠っている。麗香はそんな横顔を愛おしく感じ、自分でも気付かぬうちに自然と彼の頭を撫でる。


 煌河を撫でながら麗香はさきほどの煌河との会話を思い返す。


『泣くほど美味しかった??w』


『うん、めちゃ美味しかったよ、冗談抜きに』


『それだけじゃないっしょ、なんで泣いてたん?』


『辛気臭い話になるし……』


『いいからw おねーさんに話してごらんw』


『う、うん……』


 そして煌河のこの島に来た経緯や不安を聞いた麗香達。

 胸中を吐露した煌河の話を聞いた麗香は、自分までも心が痛くなった。

 知らない内に島へ拉致され、不安ながらも気丈に振舞い今日まで過ごしてきたのだ。

 それで自分の作った弁当を食べたら、今まで溜まっていたものが溢れて涙が出てしまったと。

 そして島の人や自分達にもすごい感謝してると言っていた。

 煌河は自身の身の上を話終え呟いた。


『なんだか、眠い』


『寝ていいよ』


『弁当ホントにありがとう』


 煌河は最後にそう言い残し、麗香の机に突っ伏して眠ってしまった。

 ちなみにカラオケの時は単純に涼音の歌に感動しただけらしい。

 そして麗香はその会話を思い返し、自分の弁当がまずくて涙が出たわけじゃなく、本当に美味しいと思って食べてくれていた事に、顔を綻ばせる。


「よしよーし……」


 穏やかな寝息を立てて眠る煌河の頭を、麗香は撫で続ける。

 カラオケに続き昼食時もたくさん泣いて今では泣き疲れて眠っている。

 『なんだか赤ちゃんみたいで可愛いかも』と麗香は思った。


「あ、ウチもこーが撫でたーい♥」


「ワタシも撫でてあげよーっと」


「ホント……良い身分なんだから……」


 こうして忙しない学校生活のとある昼休みは過ぎていった。




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